死体とご遺体 の商品レビュー
そろそろ自分の死についても、どのような最期を迎えるのだろうと考える年齢になった。まだ両方の親も元気に健在だがいつかは誰にでもやってくる。会社勤めをしていると誰々さんの親が子供が亡くなったと言った話をよく耳にするから、死は現実世界にあふれていることを感じる。 誰もがそうした状況に慣...
そろそろ自分の死についても、どのような最期を迎えるのだろうと考える年齢になった。まだ両方の親も元気に健在だがいつかは誰にでもやってくる。会社勤めをしていると誰々さんの親が子供が亡くなったと言った話をよく耳にするから、死は現実世界にあふれていることを感じる。 誰もがそうした状況に慣れているわけでは無いから、いざそのような時が来てしまったら大半の方は慌てふためいてしまうだろう。私なんぞは飼っている愛犬が亡くなった時でさえ、悲しみに暮れその後の火葬の事も殆ど自分では何も役に立たず準備も出来なかった。ただ泣いてた自分が情けない。 本書は事業に失敗し2000万の借金を抱えながらも、湯灌の事業を立ち上げられ、多くのご遺体やご家族と向き合ってきた方が記載された本である。恥ずかしながら「湯灌」と言う言葉を知らず、本書で初めて知ったのであるが、一言で言えば、ご遺体の身体を洗い化粧を施した上で死装束を着せる儀式(仕事であるからサービスとなる)の事である。近年はそうした仕事を扱うような書籍、映画もあるので何となくはイメージできるのだが、大手の葬儀社にもそのようなサービスを提供し、委託されて出動する側の会社の話である。 筆者は10年間で約4000体ものご遺体に向き合ってきたそうで、凡そ予測はつくのだが、自然死や病死だけでなく、事故、自殺、孤独死などの様々なケースを取り扱われている。特に線路飛び込みや飛び降りなどの場合は、想像もつかないような状態になるため、その様な描写も若干出てくるので注意した方がよい。とは言え物理的にご遺体を処理する事が湯灌の唯一の仕事ではない。4,000体のご遺体には4000人の人生と、それに関わった人々の人生ドラマがある。湯灌士の本当の仕事とはそこに敬意を払い最後の旅立ちをサポートする事なのだと本書からひしひしと伝わってくる。 誰しもご遺体に向き合うのが平然とできるわけではないと思うが、物理的な接触しか出来ないようでは、おそらく長くは続かない仕事だと感じる。亡くなる前も亡くなった後も1人の人間として尊重し、人生の最後のシーンに家族の気持ちで向き合おうとするような、高い人間性の方でなければ恐らく務まらない。 立ち上げた筆者自身も尊敬するが、それ以上に最後の化粧を施す奥様も立派な方だ。こんな想像は難しいだろうか。もし自分自身が亡くなって、誰かが後始末をしてくれる時、どんな最後の時間を過ごして欲しいか。亡くなられたご遺体だけではなく、その死因や家族の気持ちなど全てひっくるめて理解し、気持ちや立場を察する能力がなければ務まらないだろう。 やがて火葬され二度とこの世で目に触れることは無いからこそ、最後に筆者と奥様みたいな方に自分を託してみたいと考えてしまう。
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湯灌師という遺体を洗い清める仕事。普通の人なら普段は接しない「死」というものと常に対面し、それに関わる遺族と向き合う。私なら淡白に仕事をこなすだろうと思う。そうしないとやっていけない気がする。しかし、死体を洗い清め、ご遺体にすることで遺族からの感謝の念を感じれる仕事
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これまで葬儀会社というと、金儲けのイメージしかなかったけど、感情のあるサービスもあるのかもと思うようになった。そもそも湯灌という言葉を知らなかったから、どんな職業かも全くイメージできなかった。最初の本のイメージは、実入りのいいサービスだ、というビジネスライクな話ばかりかと思ってい...
これまで葬儀会社というと、金儲けのイメージしかなかったけど、感情のあるサービスもあるのかもと思うようになった。そもそも湯灌という言葉を知らなかったから、どんな職業かも全くイメージできなかった。最初の本のイメージは、実入りのいいサービスだ、というビジネスライクな話ばかりかと思っていた。 読んでいるうちに、そんな本ではないと気づく。ご遺体をどうやって湯灌してエンジェルメークするか、という話。内容を想像して、しんどくなるところもあったけれど、昨日まで普通に生きていた人が、今日から別人になるわけではなくて、日常の延長線上という言葉にハッとさせられた。本にもあったように、死を穢れたものだと捉えることがよくない。誰だっていつか死ぬ、今日生まれる人がいれば、今日死ぬ人もいる。動物も昆虫も生まれては死ぬ、それの繰り返し。死人を恐れることは何もないのだ。 昔は身内で湯灌するのが当たり前だったようだが、徐々に消えていった文化を、葬儀業者によってサービスとして復活させたよう。定休日がないとか、急に呼ばれるとか、働き方としては息が詰まるところはあるなと思ったけど、職業としては人から直接感謝される良い仕事だと思った。借金からの脱却のために始めた仕事だったかもしれないが、やりがいを感じて続けられるのであれば、天職と巡り会えたんだろうと思う。 最後に、もし身内に不幸があった時は、湯灌を頼みたいと思った。最期に綺麗な姿になって再会できるなら、結局は見かけだけかもしれないけれど、気持ちは収まるような気がする。自己満かもしれないが、それでもやるのとやらないのとでは悔いが残らない方を選びたい。
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葬儀の前に死体を洗う湯灌士の話 自然死以外の死体の衝撃話が幾つか織り込まれているものの、読み進めるうちに死体や死ぬこと自体への恐怖心が薄らいでく 湯灌の話から垣間見える葬儀市場の動向も面白かった
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湯灌、江戸時代からでしょうか・・・、湯灌をテーマにした本も何冊か読みました。死への旅立ちの儀式、家族で行うこと、病院でされること、専門の湯灌師にしていただくこと・・・、この本は、夫婦湯灌師として4000体のご遺体の湯灌をされた熊田紺也夫妻のおはなしです。「死体とご遺体」、2006...
湯灌、江戸時代からでしょうか・・・、湯灌をテーマにした本も何冊か読みました。死への旅立ちの儀式、家族で行うこと、病院でされること、専門の湯灌師にしていただくこと・・・、この本は、夫婦湯灌師として4000体のご遺体の湯灌をされた熊田紺也夫妻のおはなしです。「死体とご遺体」、2006.4発行。内容は次の言葉に収斂されます。「湯灌の本質は、洗体や遺体の修復の技術といった部分ではない。それは、心の問題であり、遺族とのコミュニケーション、いやコミュニケーションを超えた癒しの中にこそある。」
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死体を洗う職業のお話。この仕事の本質は如何に死体を洗うかではなく、如何に遺族をケアするかとのこと。なるほど赤の他人であるからこそできる遺体と遺族の仲介。儀礼的なものはただの慣習と割り切ってきた自分だが、それぞれの必要性があるものだと実感。
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藤原和博さんの『本を読む人だけが手にするもの』で紹介されていて読みました。 亡くなった方を洗体し、棺に納める湯灌師。 湯灌師はベンチャービジネスという筆者。 挫折を経験された筆者だからこそ、自死遺体に対する思いが重い。 死を向き合って、生と向き合う。 そのことを学ばせてくれる本で...
藤原和博さんの『本を読む人だけが手にするもの』で紹介されていて読みました。 亡くなった方を洗体し、棺に納める湯灌師。 湯灌師はベンチャービジネスという筆者。 挫折を経験された筆者だからこそ、自死遺体に対する思いが重い。 死を向き合って、生と向き合う。 そのことを学ばせてくれる本でもあると思う。
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☆☆☆☆ ちょっとの空き時間に読み始めたのだけれど、面白くて一気に読み終えてしまいました。でも、この“面白さ”は、内容にだけあるのではなくて、この経験を本にしようとした著者の姿にあるように感じています。 あきらかに、文筆家ではない、だから惹かれたのかもしれません。 経営してい...
☆☆☆☆ ちょっとの空き時間に読み始めたのだけれど、面白くて一気に読み終えてしまいました。でも、この“面白さ”は、内容にだけあるのではなくて、この経験を本にしようとした著者の姿にあるように感じています。 あきらかに、文筆家ではない、だから惹かれたのかもしれません。 経営していたCMプロダクションが倒産し、多額の借金を背負った後、シルバー入浴サービスを経験し、その後に湯灌ビジネスを立ち上げ、その仕事のなかで、様々な経験を積みながら、湯灌師としての奥深さを極めていきます。 そのあまり知られていない“湯灌”という仕事の世界の描写がこの本の面白さの主役だとしたら、この本の著者 熊田紺也氏の人間味がでている記述項目やその視点が、それをより盛り立てています。 それは、第5章の文章の自分の家族や友人、そして自分自身の行く末を語る文章によく表れています。 『CM製作の時代に自分がしゃべっていた言葉は、本当に本物の本音だったのだろうかと考えることがある。』 『十年間の湯灌サービスの経験は、私の腕に、腰に、背骨に、ずっしりとした手応えを残している。その手応えは、私を素直にものを言う人間にした。いま私が口にしている言葉は、昔に比べ、てらいというものがまったくない。』 『どう表現すればいいのだろうか、おれは底の底から、地べたから見ているんだ、その上でしゃべっているんだ。そんな実感があるのだ。』 ★『そうして、近頃の私は、街の雑踏を歩いていたりして、「いまのおれは掛け値なしの人間なんだぜ、どうだ、ざまあみろ」などと不意に思ったりする』 こういう言葉が湧きでてくる人がした体験だから湯灌という仕事を極められ、この本も読みモノとして成立するんだなぁと感じた本です。(素晴らしい料理も、その器がその良さを伝えてくれるのと同じ。) 2016/07/21
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おそらく「おくりびと」のヒットで出版されることになったのでしょう。なるほどこんなご職業もあるのですね 、という感想しかもてない。読者になにを伝えたいのだろう。
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所持/「湯灌」と検索してヒットした1冊。仕事上の迷いや不安から、読みたかった。この人はどんな湯灌をするんだろう。湯灌を経験したことがない人にはどうしても分かりにくい描写もあると思いましたが、淡々としていて読みやすいです。あまり焦りとか迷いとか、感じられなかった。わたしだって死とい...
所持/「湯灌」と検索してヒットした1冊。仕事上の迷いや不安から、読みたかった。この人はどんな湯灌をするんだろう。湯灌を経験したことがない人にはどうしても分かりにくい描写もあると思いましたが、淡々としていて読みやすいです。あまり焦りとか迷いとか、感じられなかった。わたしだって死というものに思い入れはあるし自分なりに考えてきたつもりだったけど、現場で著者のように冷静ではいられなくて、単純に、悔しくなってしまいました。第4章の奥さんのお話が、やわらかく心に響きました。
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