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朽ちていった命 の商品レビュー

4.4

199件のお客様レビュー

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    96

  2. 4つ

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2017/10/19

胸が痛んだ。1999年9月末に起きた、茨城県東海村の臨界事故で大量被ばくした大内さんの治療の記録である。 すでに知られているように、作業担当者に危険性が知らされていなかったこの事故で、2人の作業員が亡くなった。その亡くなり方が壮絶であった。放射線により、一瞬にして染色体が破壊され...

胸が痛んだ。1999年9月末に起きた、茨城県東海村の臨界事故で大量被ばくした大内さんの治療の記録である。 すでに知られているように、作業担当者に危険性が知らされていなかったこの事故で、2人の作業員が亡くなった。その亡くなり方が壮絶であった。放射線により、一瞬にして染色体が破壊され、細胞が再生されなくなったことにより、多臓器不全となってしまった。 希望を持ち見守る家族、本人にとって苦痛と思われる治療、あらゆる手を尽くしても悪化の一途で無力感に苦しむ医師や看護師。読むだけでも苦しくてもがきそうになり、家族を思うと涙が出た。当事者たちの苦悩は計り知れない。 あれから福島の原発事故があり、現在は総選挙を控え、原発の再稼働が争点の一つとなっている。原子力による放射能の前には、人間はひとたまりもないことを認識されられた本。 治療中の大内さんの写真が掲載されているので、心臓が弱い人は注意されたい。

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2017/10/15

なぜ、人間はこうも簡単に過去のことを忘れてしまえるのだろうかとひたすらに思わされる。そして、被曝したことは重症化するまではパッと見ではわからないという事実も恐ろしい。だからこそ因果関係があるとは言えないとかって言い逃れできるんだろうけど。

Posted byブクログ

2017/07/09

1999年9月に、茨城県東海村の核燃料加工施設JCO東海事業所で起きた、国内で初めての臨界事故における被曝者の83日間の被曝治療について、NHKがNHKスペシャル「被曝治療83日間の記録」として取材を行い、その内容を2002年に書籍化(2006年文庫化)したものである。 本書は、...

1999年9月に、茨城県東海村の核燃料加工施設JCO東海事業所で起きた、国内で初めての臨界事故における被曝者の83日間の被曝治療について、NHKがNHKスペシャル「被曝治療83日間の記録」として取材を行い、その内容を2002年に書籍化(2006年文庫化)したものである。 本書は、数多ある、不治の病に罹った患者と家族の絆の物語でも、病院関係者の献身的な努力の物語でもない。書かれているのは、題名の通り、“朽ちていく”被曝者・大内久氏の身体の変化と、“負け戦”を覚悟の上で病院関係者が行った医療行為である。 そして、その淡々とした記録から感じたことは。。。 NHK取材班の責任者があとがきで、「大内さんのご遺体が写っている写真・・・体の正面の皮膚がすべてなくなって真っ赤になっているにもかかわらず、背中側の半分は皮膚が残って真っ白で、はっきりと境界ができていました。これまでにまったく見たことのない遺体でした。放射線がDNAを破壊し、体を内側から溶かしていく怖さを感じました。私は大内さんが、その怖さを多くの人に伝えてほしいと訴えていると思いました」と語っている通り、まずは、それまで医療関係者でさえ十分な知識のなかった、被曝が人体に与える直接的・具体的な影響とその怖さである。 そして、医療チームのリーダーだった前川氏が、「日本は電力の三分の一を原子力に依存している。しかし、原子力防災体制のなかで、被曝治療の位置づけは非常に低い」、「自分たちのような臨床医が関わっていたら、もっと違う体制をとっているはずだった」と感じているように、原子力防災体制の在り方であり、更に、その後の福島第一原発事故を考え合わせると、原子力政策そのものの是非である。 また、本書は“いのち”についての大きな問いかけもしている。医療チームにいた多くの看護婦が後に語っているのは、原子力や被曝治療に関することではなく、「大内さん本人は、そして家族は、本当はどう生きたいのか。本当はどうしてほしいのだろうと、ずっと思いながらケアをしていました。特殊なケースだから、本人や家族の希望があっても、それを実現するのが難しかったのは確かです。でも、できるならば本人の希望をかなえてあげたかった。・・・死ぬのも生きるのと同じように、その人が自分の死に方を決められればいいのに。最後まで、その人の意志が尊重されるような、そういう最期を。・・・どういうふうに生きていきたいのかを考えるのと同じように、自分はどういうふうに死にたいのか、考えられるようになればいいのに」、「あの治療の意味がいまだにわからずにいます。大内さんの気持ちがわからないから。・・・大内さん自身の気持ちがもう永遠に聞けないから、自分自身がしてきたことへの後悔、罪悪感まで覚えてしまう」。。。という、“いのち”への向き合い方の問題である。 大内氏の“いのち”が示し、残してくれた記憶(記録)を風化させてはならないと思う。 (2017年7月了)

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2017/07/03

心肺停止なら救命措置しない 最初からその方がよかった気が 最初から負け戦、患者はつらい 最近、作業員の内部被ばく事件があったので読む

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2017/06/28
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※このレビューにはネタバレを含みます

2017年、茨城県大洗町で起きたの被曝事故をきっかけにこの本を知り、読んでみた。本書は1999年に同じ茨城県の東海村で起きたJCO臨界事故の際に、多量の放射線を浴びた作業員のその後の経過を克明に記している。 はっきり言っておそろしい。多量の放射線を浴びた作業員が83日間、みるみるうちに見るも無残な姿となり亡くなった様子が生々しく書かれており、「はだしのゲン」レベルの知識しかなかったが、放射線が人間に与える影響の残酷さがよくわかる。 この事故は、正規のマニュアルによらないずさんな作業をさせられた結果起こった事故であり、これをもって「原発は危険だ」「原発反対」という考えは短絡的ではあるが、逆に言えば、少しのミスが重大な結果を招き、その結果は決して人間がコントロールできるものではなく、また多くの人々に影響を与える可能性があるということだ。そのリスクに対する考え方がほとんど確立されないまま原発はどんどん推進され、もはや後戻り不可能なところまできてしまっていると感じる。 我々国民も、このような事実を少しでも知ったうえで原発についての考え方を一人一人持つべきであろう。そのためには、ぜひ読むべき本であり、このような意義のある取材を行うことがNHKの存在意義ではないだろうかと思う。

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2017/06/08

これをもって原子力発電はダメだとはしないが、放射能の前に人間は無力だと実感する。 今回発生した内部被曝もそうだが、どちらも正しい管理を徹底していれば防げたんだろうな。

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2017/02/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

被爆の恐ろしさを思い知りました。また作業現場の管理体制のずさんさに唖然としました。この事故は間違いなく人災です。 被爆した本人はどんなに悔しい思いをしたことでしょう。遺族の方は損害賠償請求をされたのでしょうか。勝訴してもご主人は還ってきませんが。まったくもって犬死です。治療に当たられた医師たちの葛藤も分からないではありませんが、治癒しないことが確実な状態にある患者を生きながらえさせることにどれだけの意味があったのでしょうか。苦痛が長引くのですから、見方を変えると物凄く残酷なことを行ったと感じました。

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2016/12/31
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2006(底本2002)年刊。  1999年、茨城県東海村にある核燃料加工施設で起きた臨界事故。そのため、1年間で人が浴びることを許容されている量の2万倍、20シーベルトもの中性子線を被爆した患者の闘病記録が本書である。  患者の骨髄細胞の染色体がほぼ完全に破壊され、結果、リンパ球も完全に喪失していくという考えられないような症状と、その進行の早さ、さらには余りにも痛ましい症状に絶句するしかない。言葉が出ないのだ。  一方、回復・延命のため全力は尽くすものの、余りにも無力な医療チームの模様に淋しさを感じずにはいられない。「海図なき航海」。余りに寂しげであるが、現実を言い当てているこの言葉に絶句するのみである。

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2016/11/23

ずさんな作業により臨界状態となって青い光を起こし、中性子線を浴びてしまうと人間はどうなるのか。本の内容もあれだが、ネットで調べるとなぜか患者の写真が出てきてトラウマになりそうなぐらいショックだった。原発だろうが核爆弾だろうが、核はおっかない。やめた方がいい。

Posted byブクログ

2016/09/29

言葉が出ないほど打ちひしがれた。 絶望。 見なきゃ良かったと思ったが、やっぱり見るべきだった。 小学校の時、はだしのゲンを読んで、死の恐怖を感じた時と同じ衝撃。 絶対にこんな死に方はしたくない、と思うと同時に、 日々平気で生きていることがどれだけの奇跡の働きに支えられているか感謝...

言葉が出ないほど打ちひしがれた。 絶望。 見なきゃ良かったと思ったが、やっぱり見るべきだった。 小学校の時、はだしのゲンを読んで、死の恐怖を感じた時と同じ衝撃。 絶対にこんな死に方はしたくない、と思うと同時に、 日々平気で生きていることがどれだけの奇跡の働きに支えられているか感謝せねばと思った。 あと個人的に祈らずにはいられなかったのだが、 キリストという人-神も、人類の経験するであろう最悪の痛みと苦痛と絶望の中で死んでいったわけである。 しかし、そこから復活という希望が生まれた。 放射線の事故はまさに、人類の経験した最悪の苦しみ。 だからこそ、だからこそ、人類はここから学んで欲しい。

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