1,800円以上の注文で送料無料

朽ちていった命 の商品レビュー

4.4

199件のお客様レビュー

  1. 5つ

    96

  2. 4つ

    58

  3. 3つ

    19

  4. 2つ

    1

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2022/08/28

被爆事故の現実を知りたくて、信頼できる文献を探していた折、本書に出会った。 細胞が複製をやめて身体が朽ちていくという状態を、誰が想像できるだろうか? 死に方を分類するわけではないが、生物としてあまりにも「不自然」な最期であると思う。 核には、底知れない恐怖とエネルギーがまとわり...

被爆事故の現実を知りたくて、信頼できる文献を探していた折、本書に出会った。 細胞が複製をやめて身体が朽ちていくという状態を、誰が想像できるだろうか? 死に方を分類するわけではないが、生物としてあまりにも「不自然」な最期であると思う。 核には、底知れない恐怖とエネルギーがまとわりついているように感じた。 現実問題、兵器であれエネルギーであれ、核の利用がなくなることはいまのところないのだろう。 「人間は核を制御できるのだ」という傲りは捨て、利用する以上は謙虚に慎重に核を扱っていきたいと一人間として思っている。

Posted byブクログ

2022/07/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

12ページ(本文2ページ目)2行目で絶望 ここからこの人は治るとなく悪化するだけだと知りながら読み進めていくことになる それはこの本を買う前から知っていた 被曝直後は症状がほとんどなかったから希望を持って治療が開始される そして希望を捨てず生きてほしいという想いで治療を続けた83日間 大量の鎮痛剤と鎮静剤を投与されてたとはいえ想像を絶する苦痛だったと思う 大内さんはずっと生きたいと願っていたのだろうか 楽になりたいと思わなかったのだろうか 人工呼吸器をつけて意思表示がしにくくなっていて大内さんの本当の気持ちはどうだったのだろうか 医療者側も悩んだこの疑問 尊厳死についても考えさせられた 手探り状態でしか治療できないにもかかわらず少しの変化も見逃さないように、少しでも回復するように全力を尽くされた医療チームの方々や、医療チームを信じて回復を願い続けたご家族の皆さま、どんなに無念だったろうと読んでいて苦しくなった ただ、先にも書いたように大内さん自身の気持ちが分からないから、全く接点のない私からしたら1度目の心肺停止の時点で逝かせてあげてほしかったと思ってしまう 当時の記録写真も載っていて臨界事故の恐ろしさの一片を垣間見て、原子力発電に頼らざるを得ない日本は絶対にこの事故を忘れてはいけないと思った

Posted byブクログ

2022/05/01

「完全版チェルノブイリの祈り」の解説で梨木香歩さんが取り上げていて知った一冊。東海村の臨界事故で被曝し亡くなった作業員の壮絶な治療記録。今更ながら、内部から身体を蝕んでいく放射線の凄まじい破壊力、前例のない症状に衝撃を受けた。“延命治療”をめぐる議論は残っても、医療チームが人事を...

「完全版チェルノブイリの祈り」の解説で梨木香歩さんが取り上げていて知った一冊。東海村の臨界事故で被曝し亡くなった作業員の壮絶な治療記録。今更ながら、内部から身体を蝕んでいく放射線の凄まじい破壊力、前例のない症状に衝撃を受けた。“延命治療”をめぐる議論は残っても、医療チームが人事を尽くした「海図のない航海」は決して無駄ではなかったはず…と思いたい。

Posted byブクログ

2022/03/20

読破しましたが 後悔、無知、責任、義務、など色々な感情を抱きました プロ意識というのか、知っていたら防げたのか、効率のために裏マニュアルでの事故 後ではなんともいえます、家族と当事者は被害者ですね

Posted byブクログ

2022/01/02

1999年に茨城県東海村で起きた臨界事故で多量の放射線を浴びた患者の治療の話。 危険な物を取り扱う上で当時住民や作業員の健康について考えられていなかったことがとてもよく分かった。放射線を浴びて染色体が壊れていて手の施しようがないのに対し、懸命に治療する意味はあったのかと考えてしま...

1999年に茨城県東海村で起きた臨界事故で多量の放射線を浴びた患者の治療の話。 危険な物を取り扱う上で当時住民や作業員の健康について考えられていなかったことがとてもよく分かった。放射線を浴びて染色体が壊れていて手の施しようがないのに対し、懸命に治療する意味はあったのかと考えてしまう。対処療法、延命治療しかできなくて、自分の意思表示も出来ない中で痛みや苦痛を我慢し続けるのは想像以上に辛いことだと思う。 医療の行き着く先はいつも死に対してどう向き合うかであって、それをとても考えさせられた本だった。 また、こんな事故が起きて犠牲者が出て、遺族はこれからそういうことがないようにって願っていたはずなのに、2011年に福島の原発事故が起きてしまって…やりきれないなと感じた。 日本は資源が乏しい国だから原発を使わざるを得ないのはわかるけれど、危険な物を使用するならできる限りの万全の体制を整えて欲しいと思った。

Posted byブクログ

2021/10/18

書店でおすすめされていたので何となく手に取りました。 事故のことは何となく知ってるくらいで詳細は知りませんでした。 感想は言葉にするのが難しいくらい壮絶で、読みながら大内氏の気持ちにもなり、ご家族(ご遺族)の気持ちにもなり、前川氏にも看護婦(看護師)の気持ちにもなり、感情の整理...

書店でおすすめされていたので何となく手に取りました。 事故のことは何となく知ってるくらいで詳細は知りませんでした。 感想は言葉にするのが難しいくらい壮絶で、読みながら大内氏の気持ちにもなり、ご家族(ご遺族)の気持ちにもなり、前川氏にも看護婦(看護師)の気持ちにもなり、感情の整理がつかないまま読み終えてしまいました。 積極的に完治させようとしていた序盤からだんだんと「負け戦」の兆しが現れ、段々と現状をただ維持することしか出来なくなる苦しさや「誰のための治療なのか」分からなくなってくるやるせなさが克明に記されていて読んでいる部外者の自分も心が苦しかったです。 また、入院したばかりの大内氏の明るくて気丈な振る舞いも、ご家族の献身も、残酷な結末を思うと涙が止まりませんでした。 どうか被害に遭われた方々の生きた証と、この悲惨な人災が風化されることがないよう、多くの人にこの記録が読まれることを願っています。 治療に関わった全ての方に敬意をこめて。

Posted byブクログ

2021/10/17

この事故のことは何となく知っているレベルで本屋で目に入り、読んでみた。 一言。すさまじい。 臨界事故で中性子線を致死量浴びており死は確定しているが、前例がないことばかりなのでもしかしたらと一抹の希望を胸に治療される大内さん。 こんなにつらい治療をしても助かることはないと分かりきっ...

この事故のことは何となく知っているレベルで本屋で目に入り、読んでみた。 一言。すさまじい。 臨界事故で中性子線を致死量浴びており死は確定しているが、前例がないことばかりなのでもしかしたらと一抹の希望を胸に治療される大内さん。 こんなにつらい治療をしても助かることはないと分かりきっている状況。誰のための治療なのか。 原発が必要なのかどうなのか議論する前にこれを読むべきだな。事故が起これば現場の人間が真っ先に犠牲になるし、大規模な事故になると付近の住人にも影響がでる。チェルノブイリ事故の規模となると…。100%安全はないよなぁ。リスクを負ってでも原発稼働させるべき派の人は自分の大事な人が事故にあってこのような状況になってもいいと思えるのか。 私だったらすぐ治療をやめてほしいと言う…ような気がする。何が正解なのかわからない

Posted byブクログ

2021/09/14

今年度高二になった学生です。この本を読むまでJCO東海臨界事故の存在など知らなかったですが、Youtube上に投稿されている解説を行っている方の動画を見て関心を持ち、購入の運びとなりました。 本当に読み進めていく度に『朽ちていく命』と当時の医療じゃ全く歯の立たない患者をイタチごっ...

今年度高二になった学生です。この本を読むまでJCO東海臨界事故の存在など知らなかったですが、Youtube上に投稿されている解説を行っている方の動画を見て関心を持ち、購入の運びとなりました。 本当に読み進めていく度に『朽ちていく命』と当時の医療じゃ全く歯の立たない患者をイタチごっこで延命していくことに疑問と無念さを感じる医療チームの葛藤を書体でもその惨さを実感しました。 近年、原子力の必要性の有無が問われていますが、世界全体としてまだ核兵器や原子力発電を保有しているため、その安全体制、医療体制を改めて見直した時、無駄にしては行けないし、無駄になっていないと思います。また、医療の自由の尊重も最近当方の学校での保険の授業でも『インフォームド・コンセント』として習い、改めてそういったことが見直されて大内、篠原両氏の想いは少しでも晴らされたのかなと感じました。

Posted byブクログ

2021/08/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

東海村JCO臨界事故はもう殆どの人の記憶から失せているだろうし、それこそ知らない人も多いだろう。しかし、私は文庫化される前、2002年の単行本発刊時、それは私が研修医に毛が生えたような頃だが読んだときの印象を強烈に覚えている。当時私は救急医療センターでのICU研修を終えていたが、ICUでは重症熱傷の患者さんのケアを何度か受け持った(チームでだが)。そしてその時に抱いたのは、60%以上の重症熱傷にもし身内や自分が遭ったのなら治療を受けずに死なせたい/死にたいというものだった。水分を保持できない血管から体液成分がダダ漏れとなる中喪失した水分を補うために輸液をしまくるいたちごっこ。患者の意識は落とさざるを得ず、毎日包帯交換する中で患者の外見はどんどんと変わっていく。そして私の見た中ではという条件付きではあるが皆亡くなり、果たして何のための医療なのかとその悲惨さに気持が塞ぐ体験だった。東海村JCO臨界事故で被爆し、急性放射線障害を受けた方の死への路を読むことはまさにその追体験と言えるものという印象だったのだ。 今回約20年を経て読んだのは、アマゾンプライムにてドラマ「チェリノブイリ」を見たからだ。その中で事故原因に関わる操作をした作業員と鎮火のために真っ先に駆けつけた消防士たちがほとんど何もできないまま死んでいく姿が描かれており、本書のことを思い出したから。 20年医者を経験して読んだため、忘れていたことを思い出したり(当時ちゃんと理解していたかな?)、自分も年をとった分亡くなった方の治療を決めた責任者の心情に思いを馳せたりもできた。初読時に抱いた感想は重症熱傷者との違いを見いだせないとのものだったが、改めて読むと大量被爆時(20シーベルト!)の急性放射線障害はもっと凄いのだなとわかる。あの事故ではもうひとりの方も亡くなっているが、その方はおそらく半量くらいの被爆で、しかしながらやはり回復できず211日後に亡くなった。 あの治療中責任者だった前川医師はどんなに絶望的でも少しでもいい点を探そうとし、諦めようとしない。それは決して美談ではなく、今だったら途中で止める決心がしやすいだろう、そうできる世の中だろうと思う。彼らを責める意図は毛頭ないが、あの治療過程は患者にとって残酷な仕打ちでしかなかっただろうと思う。もし私ならあの線量の被爆をしたならば、何もせずに10日も経つ頃からは完全に寝せて死に至らしめて欲しいと願う気もするし、あの方と同じように最後までしてもらって貴重な知見を提供するべきか、という気もする。愛する家族なら涙ながらに14日くらいで治療はストップさせるだろう。 それにしてもこの本は正直でいい。それによって大量被爆時の急性放射線障害の行く末がリアルにわかる。本当に貴重な本だと思う。

Posted byブクログ

2021/07/20

重かった…。読み進めるのが本当に辛かった。「ドキュメンタリー映像と書籍とでは伝えられる内容が異なるので、双方で記録を残したかった」とあとがきにあって、深く納得した。読んでよかったと思う。

Posted byブクログ