朽ちていった命 の商品レビュー
東日本大震災での福島原発事故をきっかけに改めて「原発」のことを何も知らなかったと痛感。 足掛かりとして、国内唯一の原発事故(だった)JCO東海村臨海事故を知ろうとして手にとった本。 医療現場からの視点で被曝者である大内さんが亡くなるまでの83日間を記録したレポート。 毎日予想だに...
東日本大震災での福島原発事故をきっかけに改めて「原発」のことを何も知らなかったと痛感。 足掛かりとして、国内唯一の原発事故(だった)JCO東海村臨海事故を知ろうとして手にとった本。 医療現場からの視点で被曝者である大内さんが亡くなるまでの83日間を記録したレポート。 毎日予想だにしない容態に対し、手探りでの対応を迫られていた様子がよくうかがえる。 終盤にある被曝者大内さんの妻の手紙が印象的。
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東海村臨界事故で被爆した患者の治療記録。助かる見込みがない患者の治療に携わった、終章での4人の医療スタッフの言葉が印象に残った。
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何度も読み直した本だが、今回の原発事故を機に再読。 やや辛い写真もあるが、中でも完全に破壊された染色体の画像には 致死量の被曝の凄まじさ、治療の限界を思い知らされる。 また、生かし続ける為の医療への疑問、という側面もあるので 生命倫理について考える良いテキストでもある。 今...
何度も読み直した本だが、今回の原発事故を機に再読。 やや辛い写真もあるが、中でも完全に破壊された染色体の画像には 致死量の被曝の凄まじさ、治療の限界を思い知らされる。 また、生かし続ける為の医療への疑問、という側面もあるので 生命倫理について考える良いテキストでもある。 今回の原発事故をきっかけに手に取った人も多いと思うが、 被曝や原発に関する知識がほぼゼロの人がいきなりこの本を読むと かなり高い確率でパニックになるように思うので JCO事故が起きた背景と今回の事故との違いを 理解してから読むことをおすすめします。
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放射線の恐怖とは言うものの、それが人体にどのような影響を与え、どのような最期を迎えることになるのか具体的にイメージできている人は果たしてどれぐらいいるのだろうか。DNAを破壊されるということがどんなに人間を無残な姿にしていくのかの克明な記録に言葉を失う。 ある日突然このような形...
放射線の恐怖とは言うものの、それが人体にどのような影響を与え、どのような最期を迎えることになるのか具体的にイメージできている人は果たしてどれぐらいいるのだろうか。DNAを破壊されるということがどんなに人間を無残な姿にしていくのかの克明な記録に言葉を失う。 ある日突然このような形で平凡で幸せな日常を奪われたご家族の気持ちは計り知れない。大内さんは作業の危険性も知らされずに、言われたとおりに作業をしていただけなのだ。 現在、原発関連の仕事をしている人でその危険性を十分に理解している人はどれぐらいいるのだろう。会社はしかるべき説明をしているのだろうか。このような人たちのおかげで日本の電力の3割がまかなわれ、その恩恵を受けている一人として、とても暗澹たる気持ちになる。
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大変重い本だ。東北大震災以後、政府及び東電の奥歯に物が挟まったような会見を日々見ているが、連中はこの本に書かれている事実を知っているのだろうか?机上の空論のみで現在の福島原発の難局に取り組もうとしている節はないだろうか?この本に書いてある大内氏の症例がいい意味で人柱となり、今現在...
大変重い本だ。東北大震災以後、政府及び東電の奥歯に物が挟まったような会見を日々見ているが、連中はこの本に書かれている事実を知っているのだろうか?机上の空論のみで現在の福島原発の難局に取り組もうとしている節はないだろうか?この本に書いてある大内氏の症例がいい意味で人柱となり、今現在、福島原発の最前線で戦っている人々を蔑ろにしない作戦を構築していただきたい。
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「朽ちていった命」5 著者 NHK「東海村臨界事故」取材班 出版 新潮社 p194より引用 “日本は電力の三分の一を原子力に依存している。 しかし、原子力防災体制のなかで、 被爆治療の位置づけは非常に低い事を、 前川は身をもって知った。” 1999年に起こった核燃料加工施設...
「朽ちていった命」5 著者 NHK「東海村臨界事故」取材班 出版 新潮社 p194より引用 “日本は電力の三分の一を原子力に依存している。 しかし、原子力防災体制のなかで、 被爆治療の位置づけは非常に低い事を、 前川は身をもって知った。” 1999年に起こった核燃料加工施設の事故で、 被爆した作業員の治療記録を取材した一冊。 事故が起こってから刻一刻と変化する患者の様子が、 治療に当たった医師達への取材によって、 事細かに描かれています。 上記の引用は、 治療に当たった医師の感想。 現在も世界中で、 原子力発電所が建設されているようですが、 この事故の様な悲劇が起こることの無い、 安全に配慮した方法で電気を作ってもらいたいものです。 この本を読むと、 電気を作るのも命がけなんだなと思います、 今まで以上に感謝して生活したいと思いました。 ーーーーー
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<>放射能というものがどれだけおそろしいか‥こんなにも悲しい死に方ってあるかなと本当に本当に辛くなった。人を治す技術よりも、人を破壊する技術の方が発達している、これがこの世界の一面と言えるかもしるないと思ったりもした。
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東海の民間工場での被爆事件。当時のニュースを鮮明に覚えている。改めて被爆の怖さを知ると共に、企業の在り方を考えさせられた。
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バケツの中で溶かしたウラン溶液をろ過したものを、大型の容器に移し替える作業で、大内さんはロウトを支える役だった。バケツで7杯目の最後のウラン溶液を同僚が流し込んでいる時に、バシッと言う音と共に青い光をみた。臨界に達したときに放たれる「チェレンコフの光」だ。その瞬間に大内さんたち三...
バケツの中で溶かしたウラン溶液をろ過したものを、大型の容器に移し替える作業で、大内さんはロウトを支える役だった。バケツで7杯目の最後のウラン溶液を同僚が流し込んでいる時に、バシッと言う音と共に青い光をみた。臨界に達したときに放たれる「チェレンコフの光」だ。その瞬間に大内さんたち三人の作業員の体を中性子線が突きぬけ、被曝したのだった。大急ぎでその場から逃げたが、すぐに嘔吐し、意識を失った。 本書は、大内さんの治療に当たった前川和彦医師を中心に作られた医療チームを取材したもので、83日間の壮絶な治療現場が描かれている。Actioの記事には、現代医療により延命された結果、ヒロシマ・ナガサキでは見ることができなかった筆舌に尽くしがたいことがたくさんあったと、「これは我々しか分からない地獄」だったと書かれていた。 被曝直後の大内さんは、ロウトを持っていた右手が日焼けしたように赤くなっていた程度だったのが、日を追うにつれ焼け爛れたように変形していく。絆創膏をはがすだけで皮膚もはがれ、新しく皮膚が作られることもなく剥き出しになる。内臓の粘膜は溶けてなくなり、食事を摂る事もできなくなる。全身から一日数リットルの血や体液が流れ出る。爪ははがれ、瞼はなくなる。様々な治療を尽くした結果、被曝83日目についに亡くなる。 司法解剖の結果、心臓の筋肉だけが破壊されていなかった。それは医学的にも説明のつかないことだったらしい。司法解剖にあたった筑波大三澤教授は、「大内さんの痛々しい臓器の状態から、ああ、大内さんは一生懸命生きてきたんだな、本当にがんばってきたんだな、と感じました。そのなかで、一つ鮮やかに残っていた心臓からは「行きつづけたい」という大内さんのメッセージを聞いた気がしました。。心臓は、大内さんの「生きたい」という意志のおかげで、放射線による変化を受けずに動きつづけてこられたのではないかという気さえしました。」と書いている。 また、看護にあたった人にも様々な波紋を投げかけた。「いのち」についてさらに深く考えるようになり、さらに看護の仕事に使命を感じる人もいれば、中には、大きな心の傷を負った人もいる。治療が果たして大内さんのためになったのか、正しかったのかどうか、本人から聞くことができなかったので、後悔や罪悪感まで覚えてしまっているのだ。 Actioの記事によると、この事故の後、日本の被曝医療体制は世界に類を見ないぐらいに整備はされたと書かれていた。しかし、だからと言って、大内さんのような被曝レベルの人が、今の医学で治ることはないだろうと素人ながら思う。 この本は電車の中でほとんどを読んだのだが、失敗だった。最後のほうになると辛くて、特に家族との関わりの描写など、涙が止まらなくなるのだ。今日も福井の原発で放射性物質漏れがあったらしい。環境への影響はないと書かれてはいたが、本当だろうか。
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1999年9月に茨城県東海村のJCOで発生したウラン燃料の臨界事故。大量の放射線を被爆した作業者を救おうとした、医療関係者の戦いの記録。 2001年5月に放送されたNHKスペシャル「被爆治療83日間の記録〜東海村臨界事故〜」が岩波書店から2002年10月に書籍化され、さらに20...
1999年9月に茨城県東海村のJCOで発生したウラン燃料の臨界事故。大量の放射線を被爆した作業者を救おうとした、医療関係者の戦いの記録。 2001年5月に放送されたNHKスペシャル「被爆治療83日間の記録〜東海村臨界事故〜」が岩波書店から2002年10月に書籍化され、さらに2006 年10月に新潮社から文庫された。 この事故では、作業していた大内氏と篠原氏の2名が重大な量の放射線を浴び、大内氏は83日後、篠原氏は211日後に亡くなった。こう書くと簡単だが、死に至るまでの経過は凄絶だ。 実は当時この事故とその後の治療状況をニュースで聞いた時、私は彼らを治療し続けることの意味が理解できなかった。放射線に関する知識が多少あれば、彼らの浴びた放射線の量が致死的なのは明らかで、もし彼らが完治したら教科書を書き換えなくてはならないだろう。実際、本書によれば同程度に被爆した人で2週間以上生存した例はそれまでなかったという。 助かる見込みもなくどんどん苦痛が増していくばかりの患者に、大量の薬を投与し様々な機械を繋いでただひたすら延命させる。それは国家の威信のためなのか、誰かの責任逃れに過ぎないのでないか。そんな風に思っていた。 しかしたまたまNHKスペシャルを見て、そんな自分の考えがいかに浅かったかを恥じた。 医者でもない私が思いつくことなど、現場の医師や看護婦は当然知っていた。だから医療関係者にもすさまじい葛藤があった。その葛藤を抱えながら彼らは戦っていたのだ。テレビの前で勝手な意見を述べていた私の疑問などとは、まるで次元の違う葛藤だ。 本書を読んで学んだこと、気づかされたことはたくさんある。そして考えなくてはならないこともある。世界で唯一の被爆国を自負してきた日本は、実は放射線や被爆についてちっともわかっていなかった。放射線の影響は想像を絶するほど悲惨で、医療は絶望するほど無力で、命のなんたるかは、まだ当分答が得られそうにない。 文庫なので主に電車の中や喫茶店で読んでいましたが、何度も涙を流してしまいました。
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