点と線 の商品レビュー
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#読了 2023.1.26 「時刻表トリック」系を読んだことなかったのでオススメを聞いて。 超有名作品ってことで期待値上がりまくってたけど、それを大満足させる秀作。 昭和32年に書かれたということで、ケータイはもちろん新幹線も出てこないのが乙なところ。 この文庫ももっと早くに買ってれば200円くらいだったろうなぁw( 300ページ弱だが大満足の読み応え。 最近は気付くと10ページくらいサラサラ読めちゃうような文章も多いから、それに比べると叙情的な表現があったり、古き良きなんともご丁寧な文章もあったりするので、人によっては読みづらい人もいるかもだけど。 私もそこまで文章読むのが得意じゃなくて、安部公房みたいなのは面白いけど読むのしんど〜ってなるんだけど、本作は私の中ではジャストな「読み応え」でした◎ この文体で、見事に「読み応え」とされる作品にしたのは、こまかな設定と構成にあると思う。 連載物だったらしいが、アリバイ崩しの実地検証や推理の書き方を、単純な行動描写だけでなく、会話の中で明らかになったり、書簡の形式で事後報告的な書き方だったり、飽きない作りになっていた。 はじめこそ、無骨で真っ直ぐで無駄のない文体だなぁと思っていたが、読み進めるうちに丁寧さがあるなぁと感じ、構成のうまさに飽きさせない工夫があるなぁと感じ、この事件の終わり方に繊細さを感じた。 解説を読むと、先に犯人を確信しててそのアリバイを崩していく構成や、人物の行動心理の丁寧さ、犯行動機が組織悪であることなどは、松本清張の真新しさだったと知り、今ではひとつのジャンルになるような構成を作ったのかと思うと、当時のインパクトはすごかっただろうなと思う。そりゃ松本清張ファンがたくさんいるわけだ。 ちなみに解説の中で平野謙さんが「推理小説としての破綻ポイントを指摘するのが好き」とはっきり書いてて、本作のあるポイントも指摘している。(いい趣味してますなぁ( ̄▽ ̄;) 一読者として心の中でここおかしくない?とかあくまで個人の行動範囲内で語るのはわかるけど、こうして解説者として影響力のある人が直接本作の解説に記載すること、それをOKとする出版社。ペンの力を主張した時代というかね。善し悪しともかく、ここもまた時代を感じて良かった笑 ---以下、明確なネタバレとなる--- 解説で指摘のあった「佐山とお時をどうやって安田が15番線でいっしょにさせたのか」という点について。 (読後もひと盛り上がりあるようにと平野謙さんが解説に書いたとしたらカッコイイんだけど笑) 私は特に疑問には思わなかった。明記されてないのは確かだが想像に難くない。 例えば、佐山はとりあえず博多に身を隠すことになっていて、安田がなんとかしてくれると聞いている。安田から連絡があるまで博多の宿に閉じこもる予定。博多の宿にいる時の様子からして、とても不安に思っていると思う。 一方、お時自身は自分が安田夫妻とグルになってると思ってるから、例えばたまたま出くわした風にすると計画立てていて、文中の推理にある通り、事前に安田・佐山・お時の3人で事前に会ってるとしたら、「あれ?お時さん!」って不安な旅のスタートで安田の仲間とも思えるお時という存在は、偶然だったとしても熱海までだったとしても、佐山の中で少し心を穏やかにする材料になったと思うから、ホームでにこやかに会話をしながら乗車するという点には特段無理は生じていないように思う。 それから。 本作の終わり方について。 基本的に犯人が死んで終わるのはあまり好みでは無いが、少し捻りがあってうまいなぁ、ともすれば繊細だなぁと感じた。 佐山殺しがビジネスとしてという動機がある反面、関係のあるお時を煩わしいと感じた安田が、嫉妬する亮子が、前向きにお時も殺害したんじゃないかと推察する中で、安田夫妻の自殺となる。遺書は安田にはなく亮子のみ。時刻表に詳しかったのは亮子。男女2人で死ねば情死と判断される…。どうしてなかなか!
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終盤に手紙を通して事件の全容が明かされる。容疑者として疑惑を持たれた男の妻が事件に関わっているとは思わなかった。
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今とは違う昭和30年代の世界が手に取るような描写が面白い。 電話ではなく電報・手紙。 移動手段は長距離鉄道が王道で空路など選択肢になかった時代。 不便だからこそモノをいう手がかりの数々。 推理小説を重厚なものにするのにもってこいの時代背景と松本清張の細かな考証がうまく合わさって面...
今とは違う昭和30年代の世界が手に取るような描写が面白い。 電話ではなく電報・手紙。 移動手段は長距離鉄道が王道で空路など選択肢になかった時代。 不便だからこそモノをいう手がかりの数々。 推理小説を重厚なものにするのにもってこいの時代背景と松本清張の細かな考証がうまく合わさって面白い読み物になっている。
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松本清張の名作ということで読んでみました。が何しろ書かれたのが昭和33年。新幹線はまだ開通しておらず、東京-博多間の移動は特急列車、青函連絡船。通信手段は電話と電報。犯人の奥様は不治の病、肺結核で療養中。 本を読む前から「時刻表を使ったトリック」というのは知っていたが、大したトリックではなかった。 昭和33年に読めば旅情を誘い、博多や札幌に行ってみたいと思ったんだろうな。
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巧妙な時刻表のトリックと動機の自然さ、それを解決する地道な捜査と刑事の執念がなるほど所謂「凡人」が探偵役の社会派だなあと思いました。 これまで俗に言う安楽椅子探偵や超人的な探偵をメインに据えた古典よりの本格派ばかりを読んでいたので、探偵役と感情を共有しやすく、順を追って事件を解決...
巧妙な時刻表のトリックと動機の自然さ、それを解決する地道な捜査と刑事の執念がなるほど所謂「凡人」が探偵役の社会派だなあと思いました。 これまで俗に言う安楽椅子探偵や超人的な探偵をメインに据えた古典よりの本格派ばかりを読んでいたので、探偵役と感情を共有しやすく、順を追って事件を解決していく様子を理解出来る社会派推理小説というのはドラマにもしやすいのだと分かりました。
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社会派推理小説、時刻表トリックの元祖と評される作品。 なぜ二人の男女は死んだのか、事件の真相が気になってグイグイ引き込まれてページをめくる手が止まりませんでした。 アリバイ崩しの瞬間は「その手があったかぁ!」と衝撃でした。 事件の主な舞台は福岡。 国鉄(JR)香椎駅から西鉄香椎...
社会派推理小説、時刻表トリックの元祖と評される作品。 なぜ二人の男女は死んだのか、事件の真相が気になってグイグイ引き込まれてページをめくる手が止まりませんでした。 アリバイ崩しの瞬間は「その手があったかぁ!」と衝撃でした。 事件の主な舞台は福岡。 国鉄(JR)香椎駅から西鉄香椎駅まで歩いたことがあるので、より実感を持って読むことができました。 地方を舞台にした作品で、地元以外の人も大絶賛する作品というのは本当に理想的だなと思います。 最近では『ゾンビランドサガ』という作品がそれですね。 (参考) 駅のホームから見える光景の描写からバレーの時間差攻撃を思いつくという発想力が凄いし、現実が創作に影響を与え、創作がまた現実に影響を与えるという循環が面白いですね。 「点と線」が生んだ金メダル - はまのおと http://hama-1987.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-b641.html
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松本清張を初めて読みました。 ゴリゴリの社会派推理小説でした。 1950年代とは思えないほど読みやす買ったけど、やはり時代背景がしっかり落とし込まれてて、今じゃ死後になったものもウジャウジャ出てくるので、取っ付きにくく感じる人もいるんじゃないかな。(自分は楽しめました) 飛行...
松本清張を初めて読みました。 ゴリゴリの社会派推理小説でした。 1950年代とは思えないほど読みやす買ったけど、やはり時代背景がしっかり落とし込まれてて、今じゃ死後になったものもウジャウジャ出てくるので、取っ付きにくく感じる人もいるんじゃないかな。(自分は楽しめました) 飛行機ってトリックは正直、えっ…そんなの誰でもわかるでしょ…ってなったけど、時代が時代なだけに、特急がポピュラーなんですね。 正直動機があっさりというか…あ、そんなもんか、、と肩透かしを食らった感はあったけど、時刻表のアリバイは凄い綿密に練り込まれてて読み応えはありました。 他の作品も読んでみようかな。
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いわゆる推理小説。 ゼロの焦点と同じく昭和の空気感が感じられる。個人的にはより重厚で灰色がかった雰囲気のあるゼロの焦点の方がおもしろかった。
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