女たちの遠い夏 の商品レビュー
娘を亡くした母の心情…
娘を亡くした母の心情がちがうエピソードで語られる。目立たぬ傑作。
文庫OFF
9月に公開予定の映画『遠い山なみの光』を観るために原作読了。今から30年以上前から積読になっていた本作『女たちの遠い夏』は原作改題前の題名で、訳そのものは大きく変わらないように思える。題名自体は “A Pale View of Hills” の訳としては『遠い山並みの光』の方がし...
9月に公開予定の映画『遠い山なみの光』を観るために原作読了。今から30年以上前から積読になっていた本作『女たちの遠い夏』は原作改題前の題名で、訳そのものは大きく変わらないように思える。題名自体は “A Pale View of Hills” の訳としては『遠い山並みの光』の方がしっくりとくる印象だ。 物語は主人公悦子がイギリス在住の現在と、戦後数年経った長崎での生活の回想で進んでいく。 作者は5歳で渡英して以降、現在では英国籍を取得していて、ほぼ英語圏の生活をしているのだけれど、僅か5歳の記憶を元に、こうした物語を生み出しているのだとすれば、それは驚くべきことだと思う。訳者の言葉選びも優れているのか、読み始めから繊細な文章に惹かれずにはいられなかった。底流する不穏な空気に引っ張られて読み進めた。 さて、この物語をどのように映像化するのか、今から楽しみである。
Posted by
純文学的作品。確かに日本の情緒が感じられて海外でうける作品だろうなと思った。 母になっても母親じゃなく女として生きる女は毒親が多いな。娘が見ているのを分かっていながらのあの猫の描写は残酷。連続殺人はなんの話かと思ってたが想起させる文だったのね。
Posted by
『遠い山なみの光』の改名後の邦題で一度読んだ本。戦後まもなくの長崎を舞台に語り手の悦子が不思議な母娘である佐知子・真理子との接点で語られる。悦子がその後、英国へ渡り、長女景子を自死で喪い、次女ニキに見守られる中で過去を思い出す形で話が進んでいく。悦子・佐知子の会話が中心となり、真...
『遠い山なみの光』の改名後の邦題で一度読んだ本。戦後まもなくの長崎を舞台に語り手の悦子が不思議な母娘である佐知子・真理子との接点で語られる。悦子がその後、英国へ渡り、長女景子を自死で喪い、次女ニキに見守られる中で過去を思い出す形で話が進んでいく。悦子・佐知子の会話が中心となり、真理子の未来を暗示しているようなエピソードが、悦子自身の人生と重ね合わされる。佐知子が長崎を離れるに際して、子猫を水死させる場面が淡々と描かれている。著者が日本語をほとんど話せなくなっている英国人であるが、時空を超えた不思議に静謐な世界を描いているように感じる。それは能面を描いたこの本の表紙のイメージそのものである。
Posted by
‹内容紹介より› イギリスに住み、娘の自殺という事態に遭遇した悦子は、自分が生きてきた道を回想する。裏切りの記憶、子殺しの幻影、淡く光った山並みの残像ーー戦後の長崎を舞台に、戦争と戦後の混乱に傷ついた人々の苦しみを、端正流麗な文体で描きあげる。謎めいた構成の背後から、戦後日本の一...
‹内容紹介より› イギリスに住み、娘の自殺という事態に遭遇した悦子は、自分が生きてきた道を回想する。裏切りの記憶、子殺しの幻影、淡く光った山並みの残像ーー戦後の長崎を舞台に、戦争と戦後の混乱に傷ついた人々の苦しみを、端正流麗な文体で描きあげる。謎めいた構成の背後から、戦後日本の一つの透し図が現れ出る……。長崎生まれ英国育ちでブッカー賞受賞の日本人によるイギリス文壇ヘのデビュー作。 ーーーー 2017年ノーベル文学賞を受賞したことを受け、はじめてカズオ・イシグロの著作を読んでみました。 まずはデビュー作。 物語の語り手は、「景子」と「ニキ」という二人の娘を持つ景子。姉の景子は日本人(二郎)との娘、妹のニキは英国人との娘。 細かな理由や原因などは描かれませんが、景子とニキの関係は悪かったようで、景子が自殺した後も、彼女の「影響力」がたしかに家に残っているのを悦子もニキも感じています。 そしてその感覚が、悦子に長崎時代の記憶を呼び起こさせるのです。 戦争から立ち直ろうと前を向くうどん屋の藤原さん、自身のこれまでの教育を否定された舅の緒方さん、日本を飛び出しアメリカへわたることを夢見る佐和子とその娘万里子。 「幸せ」に生きることをそれぞれに考えているのでしょうが、悦子の(あるいは読者の)視点から見て、だれが本当に「幸せ」なのか、考えさせられる作品だと思います。そこはかとなく、「戦後日本における女性の自立」や「戦後日本の思想(思潮)の劇的な変化」が感じられる作品でした。
Posted by
はつきり書かれていることは少なく、読者に補完させるかのような書きぶり。でも、これができる作家は少ない。余韻が良い作家。
Posted by
これは翻訳が素晴らしいからかもしれないが、 初めに読んだ時に日本の小説よりも日本の小説らしい雰囲気をもらったように思う。 訳された題は実は原題とはだいぶ異なっていて今は原題に近い題名になっているが、自分はこの題名で読んだのでこちらのほうが好きである。 原書も買って挑戦したが、ちょ...
これは翻訳が素晴らしいからかもしれないが、 初めに読んだ時に日本の小説よりも日本の小説らしい雰囲気をもらったように思う。 訳された題は実は原題とはだいぶ異なっていて今は原題に近い題名になっているが、自分はこの題名で読んだのでこちらのほうが好きである。 原書も買って挑戦したが、ちょっと途中で止まっている。 ゆっくり辞書ひきながら時間とって読みたいが時間がとれない。。
Posted by
硬質な文章で淡々と綴られる物語は大きな盛り上がりもなく、強い印象を受けずに私もさらりとと読んでいたが、最後の最後に別の女性の人生を語ることでその実語り手自身の人生を語っていたことに気付いた。 慌ててもう一度読み返すと、別々の筈のイメージがいくつも重なり合って、境界が分からなく...
硬質な文章で淡々と綴られる物語は大きな盛り上がりもなく、強い印象を受けずに私もさらりとと読んでいたが、最後の最後に別の女性の人生を語ることでその実語り手自身の人生を語っていたことに気付いた。 慌ててもう一度読み返すと、別々の筈のイメージがいくつも重なり合って、境界が分からなくなる。万里子と景子、悦子と佐知子、猫殺しと子殺し。どこまでが現実で、どこからが記憶なのか。 しっかりした文体なのにどこか幻想的な小説だった。
Posted by
- 1
