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中島敦全集(1) の商品レビュー

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14件のお客様レビュー

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2020/11/29

円環構造の物語の極致と言える「木乃伊」。 ペルシャの武将パリスカスがエジプトに入った時に見付けた一体の木乃伊(ミイラ)。彼はそこに自己を見る。かつてこの木乃伊が自身であったと。 だから話せないはずのエジプト語を理解し得、記憶の中に見知らぬこの国の妻があった。 前々世、前々々世の記...

円環構造の物語の極致と言える「木乃伊」。 ペルシャの武将パリスカスがエジプトに入った時に見付けた一体の木乃伊(ミイラ)。彼はそこに自己を見る。かつてこの木乃伊が自身であったと。 だから話せないはずのエジプト語を理解し得、記憶の中に見知らぬこの国の妻があった。 前々世、前々々世の記憶が無限に連続していることを知った人はどうなるかを描く。十頁に満たない作品ながら、深く考えさせられた。 空想の物語を語るようになった男を描く「狐憑」は、文字さえあれば作家と見做されたろうが、その欠如ゆえに集団から排される。 一方「文字禍」はその対となる作品のよう。過去、人は体験を直接に感じられたのに、文字の発明により、出来事を文字化して影のようにしか感じられなくなったのではないかとする。 文字の精は、文字のためにアッシリヤは蝕まれているとの真理に気付いたナブ・アヘ・エリバを見逃さず、地震で書籍=石板の下で圧死させる。 川端康成が「芥川賞に価ひしないとは、私には信じられない」と書いた『光と風と夢』は、『宝島』の著者スティヴンスンが酷い喀血に見舞われ、健康地を求めて定住先としたサモアでの生活を描く。 夜明け前、眠っている人に良い夢を送るため優しく笛が吹かれるのどかな島を舞台に、植民地化を進める米英独に対しスティヴンスンはペン一本で立ち向かう。 終始、南国の光と風を感じられる作品。極上の読書体験。 また、著者の小説観が、主人公の日記の中で「小説が書物の中で最上(或いは最強)のものであることを疑わない。読者にのりうつり、其の魂を奪い、其の血となり肉と化して完全に吸収され尽くすのは、小説の他にない」と表されている。 うん、この最強の力で魂を奪われた。夭折が悔やまれる著者。 「木乃伊」目当てに手に取った本だけれど、全て良かった。表紙は一体なんだろう、とは思ったけど。

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2020/03/29

作者の伯父の死を描いた「斗南先生」と,スティーブンスンのサモアでの生活を描いた「光と風と夢」を読了. 「山月記」や「名人伝」などしか知らないわたしには,両方とも新鮮.特に後者は病気と闘いながら自分の天職としての作家という職業を強く愛し,サモアの自然と土地の人を愛したスティーブンス...

作者の伯父の死を描いた「斗南先生」と,スティーブンスンのサモアでの生活を描いた「光と風と夢」を読了. 「山月記」や「名人伝」などしか知らないわたしには,両方とも新鮮.特に後者は病気と闘いながら自分の天職としての作家という職業を強く愛し,サモアの自然と土地の人を愛したスティーブンスンと作者自身の姿をどうしても重ねてしまう.

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2019/01/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

寒いので南の物語でも読もうと思って積ん読を手に取ったけど何かが違った……。 「光と風と夢」に作者自身をそのまま重ねるのは短絡的かなと思いつつ、しかし何も思うところなくいろいろな心情を吐かせるわけもなく。 ということを考えながら読んでみると、教科書で山月記を読んだ当初のとっつきにくさもほとんど感じることなく「おもしろく」読めた。 それと、単語は難しいけど文章自体は簡潔ですごく読みやすいのに驚いた。 ページごとの脚注やルビの仕事も大きい。 「狐憑」 定義がなくても価値を認められたり、やっぱり無理だったり。 食われて終わりっていうのが初めて読んだときは衝撃的だったなあ。救いは……?ってかんじ。 「木乃伊」 前々々世。 SFのショートショート的なとこがある。 「山月記」 やっぱ名作。これが連綿と高校の教科書に載っているのもすごい。 「斗南先生」 納棺のシーンたまらない。 この自意識や自尊心と皮肉家的な思考、「かめれおん日記」と比べると三造が若いからまだ穏やかに読める感じ。

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2011/11/18

大事なひとが好きだからと、それだけで読んだのだけれど、驚いた。 こんな文を、こんな新鮮に綴ることが出来る方が居たなんて。

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2014/02/16
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「光と風と夢」の、特に南国の美しい風景や人の生き方が描かれていたのが印象的だった。 改めて読んでみると、山月記の完成度にびっくりする。

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2011/04/22

高校時代に山月記の解釈を巡って教師と大論争したのを思い出した。物語そのものの背景に見える中島敦という人物から、この時代の教養人の気合いの様なものを改めて感じた。

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2011/03/26

かの「山月記」も収められている「古譚」が実に面白い。「山月記」以外の三篇は古代ペルシアに材を取っていて、怪奇・幻想小説の趣がある。「木乃伊」「文字禍」は特に印象深い。「文字禍」には実存的覚醒を思わせる場面もある。それにしても「山月記」は何度読んでも苦い作品だ。「下田の女」「ある生...

かの「山月記」も収められている「古譚」が実に面白い。「山月記」以外の三篇は古代ペルシアに材を取っていて、怪奇・幻想小説の趣がある。「木乃伊」「文字禍」は特に印象深い。「文字禍」には実存的覚醒を思わせる場面もある。それにしても「山月記」は何度読んでも苦い作品だ。「下田の女」「ある生活」こんな女と男の掌編に惹かれるところが僕にはある。「巡査の居る風景」日本帝国主義の植民地化にある朝鮮人の内面に於ける葛藤や屈折。

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2010/01/31

なぜだかこの作家の本が好きでした。 ちなみに、 文庫版の表紙は 「土方久功』という画家彫刻家で、 中島氏とパラオの南洋庁で会った人物です。 この画家の作品 にもとても魅かれるのです。

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2013/06/20

初めての蔵書は、自分の大好きな中島敦さんの全集で。 月並みですけど、全集1のなかでも、僕の心に残っているのは、古譚「山月記」でしょうか。 多くの人がそうであるように、高校の教科書で初めて中島敦さんの作品に接したのが「山月記」でした。 才子が挫折を味わい、果てに発狂しトラとなってし...

初めての蔵書は、自分の大好きな中島敦さんの全集で。 月並みですけど、全集1のなかでも、僕の心に残っているのは、古譚「山月記」でしょうか。 多くの人がそうであるように、高校の教科書で初めて中島敦さんの作品に接したのが「山月記」でした。 才子が挫折を味わい、果てに発狂しトラとなってしまう・・・そんな短編。 漢語を読み下したような言葉のリズム、使用されている言葉一つ一つが美しく感じられ、何度も声に出して読みました。そうしているうちに、最初の節・・・李徴が挫折して、闇に消えていなくなるまでは、暗唱できるに至ったほどです。 しかし、ここまで、この作品に引き込まれたのは、その文章のためだけではないと思うのです。 「臆病な自尊心と尊大な羞恥心」 李徴は、自らがトラの姿になるに至った理由を、このような己の心のせいかもしれぬと、かつての親友に吐露します。 当時の僕は、そんな李徴に、自らと似ているところを見出して、作品にますます引き込まれていったのかもしれません。

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2009/10/04

学校の先生に進められた『名人傳』を読むために借りてきた。 先生の言っていた意味がわかった気がした。

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