1,800円以上の注文で送料無料

九龍城探訪 魔窟で暮らす人々 の商品レビュー

4.2

34件のお客様レビュー

  1. 5つ

    11

  2. 4つ

    12

  3. 3つ

    6

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2023/11/18

廃墟に関する本を探していた際にAmazonのお勧めに出てきた本。 世界でも最大規模のスラム街として名の知れた香港の九龍城。1994年に残念ながら取壊しとなったが27000㎡の敷地に約350棟の建物がぎゅうぎゅうに立ち並び最盛期は約33,000人が住んでいたらしい。 実は建物の...

廃墟に関する本を探していた際にAmazonのお勧めに出てきた本。 世界でも最大規模のスラム街として名の知れた香港の九龍城。1994年に残念ながら取壊しとなったが27000㎡の敷地に約350棟の建物がぎゅうぎゅうに立ち並び最盛期は約33,000人が住んでいたらしい。 実は建物の構造等ハード面に興味を持ち購入したのだが、どちらかといえば城での生活事情や住人の半生が中心だった。しかしながらこれはこれでとても面白かった。 「食べるものだと思われているから鳩にお金をかけるのは馬鹿らしいと思われている。」と鳩ブリーダーのチャンクァンリョン氏がサラッと発言し自国との食文化の違いを感じた。犬肉ヘビ肉はまだしも鳩も食うのか。 本書を執筆したのは写真家2人。 九龍城の住人や店子へ取材をしたもので今はもう決して目にすることが叶わない城内部の写真がふんだんに掲載されている。 いや~、写真を見る限り不衛生でごちゃごちゃしている。カオス。 福利会(175頁)やチェンクーンイウ氏の歯科医院(190頁)、城外では普通かも知れないがとても衛生的に見える。 潔癖には絶対住めないけど、建物自体が生物のようなその妖しさに魅かれてしまう。 ベランダには洗濯物や植木鉢が好き勝手に吊るされている。 最近の綺麗な建物にはどこか無機質な感じを受けるが九龍城からは人間の営みを濃く感じる。 159頁のキャプションにもあるが、ベランダは無茶苦茶に取り付けられており柵に統一感が無く、つぎはぎ手作り感が見える。 (というかまずベランダの高さが揃っていない!) 無秩序なのは勿論ベランダだけではなく、九龍城内の店舗では従業員の保険加入義務もない、休日手当も出さない、営業許可不要(税金を納めない)、その他諸々の許可(衛生や消防など)も不要。着色料の使用基準も知らずに使っていたようだ。 唯一の規制が45メートル以下の高さ制限。これは啓徳空港が近かった為らしい。 しかしそんな無法地帯でもそれなりの秩序があったらしく、泥棒と麻薬所持は多いものの、意外にも大きな犯罪は香港の他地域に比べてむしろ少なかったらしい。 警察がきちんと定期巡回をおこなっていたのも驚きだ。買収されていた警官も多かったようで効果はなかったらしいが、少しは抑止力になったのでは。 ここの住人はここにしかない居場所を守るため、近隣同士のつながりが強く、犯罪が起きにくかったのだろうか。 日本でも治安が悪いとされている地域、実際の犯罪率を見ると他地域よりも低かったりするものだ。 インタビューを受けていた32人の内、歯科医のウォンユーミンさんが印象に残った。 他の住人は補償額に納得いかず不満たらたらの中、この人も満足とはいかないようだが、何も変えることはできないと、政府の言うことを受け入れるという。 「誰にも迷惑をかけないから誰も迷惑をかけないでくれ。」 「これまでここを出ることがなかったから、外の世界のことなんてわからないんだよ。」 無欲さと諦観と。 こんなこと思うのも偏見で失礼ではあるが、中国の方には珍しいタイプだなと少し思った。

Posted byブクログ

2022/11/08

「東洋の魔窟」を大解剖した一冊。 九龍城に魅了された人達には是非手に取ってもらいたい。当時九龍城砦に住んでいた人へのインタビュー、内装や生活の様子が写真付きで詳しく書かれている。 住人の私生活メインで、今や取り壊されてしまった建物なのでしかたがないが、外観の写真がもっと沢山あれば...

「東洋の魔窟」を大解剖した一冊。 九龍城に魅了された人達には是非手に取ってもらいたい。当時九龍城砦に住んでいた人へのインタビュー、内装や生活の様子が写真付きで詳しく書かれている。 住人の私生活メインで、今や取り壊されてしまった建物なのでしかたがないが、外観の写真がもっと沢山あれば良いと感じた。

Posted byブクログ

2022/02/16

 九龍城が好きな人なら持っていて損はないバイブル的な本だと思います。写真が多いのはもちろん、当時お住みになっていた方たちのお話や成り立ちの歴史なども書かれていて勉強になる一冊です。

Posted byブクログ

2020/12/01

謎に包まれた政治のブラックボックス、香港最大のスラムであった九龍城で過ごす人々の生活をリアルに描いた一冊。当時、香港はイギリスの統治下でありながら、九龍城の領有権は中国側にあり、九龍城とはその政治的空白と権利の曖昧さにより誕生した20世紀最後の魔窟なのである。犯罪が横行する無法地...

謎に包まれた政治のブラックボックス、香港最大のスラムであった九龍城で過ごす人々の生活をリアルに描いた一冊。当時、香港はイギリスの統治下でありながら、九龍城の領有権は中国側にあり、九龍城とはその政治的空白と権利の曖昧さにより誕生した20世紀最後の魔窟なのである。犯罪が横行する無法地帯のイメージが根強いが、それは以前の話で、実態は外と比較しても犯罪は少なく、住民の自己決定による独自のルールで成り立った自律性のある一つの社会なのだ。ピーク時は3万人が暮らしていたと言われる九龍城の外観は圧巻の一語であり、建築基準法をガン無視した行き当たりばったりの建物が犇いており、子供がブロック遊びをしたかのように自己増殖していく自由かつ悪夢的な九龍城のビジュアルは素晴らしく、写真だけでもその雰囲気がひしひしと伝わってくる。天井から滴る汚水。ネットにうず高く積まれたゴミ。九龍城内で精製された魚肉団子に無免許の歯医者、学校にストリップ劇場と、まさに自由奔放であり、その世界は凄まじい。水源が貴重であるというのは非常に面白く、ギャングのような集団が管理していたのは中々に興味深かった。九龍城自体の怪しさに反比例して住民の生活は穏やかで、だからこそ取り壊しに対する怒りの言葉は生々しく、その感情の行き所のなさには深く同情すると同時に一抹の哀愁を感じてしまう。個人的に刺さったのは日の光の刺さない九龍城の屋上の写真で、抜けるような空と足元のアンテナの残骸、そして住民の子供の笑顔とのコントラストが素晴らしく、団地住まいだった幼少期のことを思い出してしまった。

Posted byブクログ

2019/06/16

九龍城を退去することになると、もう城外では営業が難しいのが主に医者・歯医者・食品含む工場、という点が後半繰り返されている。

Posted byブクログ

2019/01/06

現代日本に暮らしていては決して見る事のできない建物群に衝撃。写真を眺めているだけで面白いしワクワクする。

Posted byブクログ

2018/05/01

魔窟とも言われた香港の九龍城の住人へのインタビューや、在りし日の写真集。香港の本土返還に伴い取り壊されてしまっているけど、その怪しさに妙に惹かれるのです。 続きはこちら↓ https://flying-bookjunkie.blogspot.jp/2018/05/blog-po...

魔窟とも言われた香港の九龍城の住人へのインタビューや、在りし日の写真集。香港の本土返還に伴い取り壊されてしまっているけど、その怪しさに妙に惹かれるのです。 続きはこちら↓ https://flying-bookjunkie.blogspot.jp/2018/05/blog-post.html

Posted byブクログ

2018/01/27

外観と同等の狂気じみた住人がいるものと思いきや、インタビューを受けているのは至って普通の、常識の範囲内のひとばかり。初中期にはそんな雰囲気もあったらしいが、インタビューが取り壊しの近い時期なのでそんな話は少ない。…やっぱり、この世ならざる場所にはこの世ならざる人がいてほしい。そん...

外観と同等の狂気じみた住人がいるものと思いきや、インタビューを受けているのは至って普通の、常識の範囲内のひとばかり。初中期にはそんな雰囲気もあったらしいが、インタビューが取り壊しの近い時期なのでそんな話は少ない。…やっぱり、この世ならざる場所にはこの世ならざる人がいてほしい。そんなエピソードが読みたかった。でもま、そういうもんよね。

Posted byブクログ

2017/08/24

何故ひとは九龍城にこうも惹かれるのか。 世には廃墟マニアという人種が存在する。私にもまたその傾向がある。 恩田陸は著作の中でこう語る、廃墟とは人がいたところ、過去の残骸、かつてたしかにあった営みの記憶の焼きついた場所であると。 歳月が経ちその営みの記憶が風化してもなお形骸化した器...

何故ひとは九龍城にこうも惹かれるのか。 世には廃墟マニアという人種が存在する。私にもまたその傾向がある。 恩田陸は著作の中でこう語る、廃墟とは人がいたところ、過去の残骸、かつてたしかにあった営みの記憶の焼きついた場所であると。 歳月が経ちその営みの記憶が風化してもなお形骸化した器は―「建物」は残る。 九龍とはかつて混沌の代名詞であった。世界最大のスラムであり、犯罪の温床と忌避される危険地帯であった。しかし私たちはどれだけ正確に九龍の本当の姿を知っているのか、一人歩きする風聞に惑わされ果たして往時の九龍の姿を把握してると言えるのか。 本書は九龍内部を撮った多数の写真とともにそこに住む人々へのインタビューで構成されている。 一口に九龍城といえど中は広く多数の区域や通りに分かれている。 本書ではその様々な区域に居住する様々な職種のもの、飴職人、歯医者、宣教師など幅広く取り上げて、それぞれの波乱万丈の半生を九龍城の歴史に絡め振り返る形での取材を試みている。 九龍城は要塞である。そして有機的に胎動する一つの都市である。 犯罪が多発する危険地帯として外の住人に恐れられた九龍城も、中に住まう者からすればそれが日常であり、けっして危険で不潔なばかりの魔窟ではないのだ。九龍城で生まれ九龍城で育ったものにとってこそは九龍城こそがかけがえのない故郷であり、彼らは自分が生まれ育った土地に愛着を抱いている。 九龍城は闇を抱えている。上下水道の整備も整っておらず、家庭で出たゴミは中庭に張った網の上に投げ捨てられ何層も積み上げられる仕組みだ。しかし、託児所がある。保育園がある。教会がある。老人ホームがある。人が人らしく生活する為に必要な最低限の施設はちゃんと備えているのだ。汚水滴る壁や床で絡み合いのたくる配線、迷宮の如く複雑怪奇に入り組んだ路地、猥雑に立て込んだ建物と狭隘な通路。異形の建物である。九龍城とはいくつもの高層建築の複合体である。 すなわち、九龍城は生きているのだ。

Posted byブクログ

2016/06/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 アジアンカオスの外側と内側。  九龍城というものを知ったのがつい最近でして。興味があったので、見かけた瞬間衝動買いしたもの。  香港にあったスラム、九龍城の外側の写真、内側の写真、そこに生きていたひとたちの姿、彼らの話をまとめたもの。興味深かった、面白かった。欲を言えばもう少し写真が欲しかったけど、そもそも城外のひとが入っても大丈夫になったのも取り壊し前くらいからみたいなので、資料も少ないんだろうなって。  でも全景を収めた上空写真と、外観の写真はずっと見てても飽きないと思う。すげぇもん、なんか、いろいろ。  1993年に取り壊しが開始。前年までには住人のすべてが立ち退いていたみたいですが、彼らは今、どんなふうに生きてるんだろうね。

Posted byブクログ