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pink の商品レビュー

4.1

44件のお客様レビュー

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  2. 4つ

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2019/12/23

作者の絵が上手い下手で賛否両論分かれがちだが、このある意味で現代を風刺する、底抜けに明るく愚かで、痛ましくもおかしい話に、ゆるゆると脱力した線はよく合っている。 欲しいものは欲しい、手に入れる為なら体を売ることも辞さない。昼はOLとして商社で働き夜はホテトル嬢としてカラダを売る主...

作者の絵が上手い下手で賛否両論分かれがちだが、このある意味で現代を風刺する、底抜けに明るく愚かで、痛ましくもおかしい話に、ゆるゆると脱力した線はよく合っている。 欲しいものは欲しい、手に入れる為なら体を売ることも辞さない。昼はOLとして商社で働き夜はホテトル嬢としてカラダを売る主人公は、自宅で飼うワニに愛情を注ぐ。 ワニは肥大する物欲のメタファーであると同時に、けっして満たされない渇望を象徴している。 後半でワニのモノローグが挿入されるのだが、ワニもまたふるさとへの郷愁に駆られ、常にここではないどこかを求め続けている。 ワニのように貪欲な主人公を取り囲む家庭環境は複雑だ。反りの合わない継母と天衣無縫な義妹、母は嫌いだが妹は好き。そこへ母親のヒモが現れ、妹も加わった奇妙な共同生活がはじまるのだが…… 特に印象的なのはラスト近く、OL仲間とカフェでお昼をしていた主人公の言葉。 欲しいものはなんとしても手に入れなきゃ気が済まない彼女は、ある意味では足るを知り、自分の身の程をわきまえた友人へ凄まじい怒りと反感を抱く。 彼女が本当に欲しかったものは何か。幸せといってしまえば短絡だ。居場所といってしまえば安っぽい。 彼女が本当に欲しかったのは、言葉にできない何か、よるべない自分が依れるリアリティだ。 ヒモと義妹が共同制作した寄せ集めの切り貼りが、「小説」として立派な賞をとってしまうように、彼女たちのアイデンティティはすかすかだ。 世間の評価なんててんであてにならない、外側さえ辻褄が合ってれば一人の人間として認められてしまうもどかしさ。 明るく笑えるシーンもたくさんあるのだが、そのくせ乾いた諦観が漂っている。 誰も彼もが誰かを妬み何かを欲しがり決して満たされることがない、今の世の中では誰もが虚無を食べるワニだ。 結局彼女は何も手に入れられなかった。 やっと手に入れたと思ったしあわせは夢と消え、だが空港で薔薇色の未来を夢見る彼女はそれを知らない。 ここで切るのは非常に憎い演出。 未完成のまま放り出された小説のように、リアリティのないリアルを生きる彼女もまた、白昼夢のような現実のただ中に放り出された。 実の母の言葉を忘れられないまま大人になった彼女は、心のどこかで「永遠」も「王子様」も信じていたのかもしれない。 そんなモノどこにもないのにどこかにあるかもと期待して、それが報われず渇望に変化しなお探し続け欲しがり続けて、どこまでも転がり落ちていく。 ワニは肉食だ。 ピンクの薔薇では腹はふくれない。

Posted byブクログ

2018/01/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

わがまま娘なユミちゃんが可愛くて可愛くて惹かれる物語だった。ああいった仕事をしていてもあっけらかんとしているのは、きっと相手も愛だとか優しさを求めている人間たと言うことを知っているからだろうね。だから行為中クズみたいな相手であっても仕事として扱って穏やかでいられるんだと思う。寛容すぎる心を持っているのかなぁ。 あと、幸せを目の前にして結末が辛い未来になりそうで読んでいて辛かったのだけど、でも見えていない未来は好きなように予想して良いと思うのよね私。事故によりユミちゃんの夢は遠のいてしまい、ハルヲくんは全身打撲と内臓の損傷で危ないながらも生命に別状は有りませんでした。しかし問題なのは週刊誌に振り回される日常なのでした。人の噂も七十五日とは言うものの週刊誌の興味が薄れても人はネチネチと無意識に他人を追い込む物なのです。それをも屈せず軽やかに生きるユミちゃんをみてハルヲくんは惚れ直すのでした。チャンチャン。で良いと思う(*´-`)

Posted byブクログ

2016/10/26

 ヘルタースケルターで岡崎京子さんに興味を持って、なんとなーく古本屋で買った『pink』。  主人公は、昼はOL夜はホテトル嬢として働くユミちゃん。ユミちゃんの人間性の壊れ方がなんだか読んでいて心地よい。  妹と一緒に煩く喚くトイプードルをワニのエサにしちゃったり、「部屋をジャ...

 ヘルタースケルターで岡崎京子さんに興味を持って、なんとなーく古本屋で買った『pink』。  主人公は、昼はOL夜はホテトル嬢として働くユミちゃん。ユミちゃんの人間性の壊れ方がなんだか読んでいて心地よい。  妹と一緒に煩く喚くトイプードルをワニのエサにしちゃったり、「部屋をジャングルみたくしちゃおう」という思いつきで熱帯植物を部屋に溢れるほど買ってきちゃったり、そういう直情的すぎる性格は、どこまでもピュアで、でもそれって大人としては欠陥でしかなくて…。  しかしその欠陥が作中で指摘されるでもなく、そのまんま社会に適合してしまっている歪さもこの作品の魅力だと思う。  本当は、適合出来ていないのかもしれないけど。  だから渋谷の街中で、 「だれかあたしをたすけて おねがいです」 になっちゃうのかもしれないけど。

Posted byブクログ

2015/04/07

ほぼ俺が生まれた頃の作品だけど、当時どう読まれていたのかがとても気になる。 今読んで過激だなぁと思うけど、当時は当たり前だったのか、はたまたもっと過激に思われてたのかとかとか。

Posted byブクログ

2015/02/25

ワニを飼う女の子・ユミを通して描く愛と資本主義をめぐる冒険と日常。 初めて読んだのは高校生の頃だった気がする。昼はOLで夜はデリヘル嬢、継母と険悪で、ワニ飼ってる…その他諸々の設定にしてもストーリーにしても当時大変純情だった私には刺激が強すぎて、とんでもない漫画を読んでしまった...

ワニを飼う女の子・ユミを通して描く愛と資本主義をめぐる冒険と日常。 初めて読んだのは高校生の頃だった気がする。昼はOLで夜はデリヘル嬢、継母と険悪で、ワニ飼ってる…その他諸々の設定にしてもストーリーにしても当時大変純情だった私には刺激が強すぎて、とんでもない漫画を読んでしまったと思った。 それから早幾年。久しぶりに手にとると、設定も内容も相変わらずパンク。挑戦的で、勢いと我のかたまりで、一本筋が通っていて、ブッ飛んでいる。その真ん中にいるユミちゃんも相変わらずブッ飛んでるけど、以前よりずっと愛せるようになっていた。 好きなものに囲まれて、好きなものに囲まれるために仕事して、好きなひとは好きでいる。それだけ。時に周りに毒を吐きながらも、素直で揺るぎない価値観を持った彼女がかっこ良く見えた。 スピード感のある内容は多くの別れとともに突然終わりを迎える。 でもユミちゃんは今もきっと、カバンひとつ抱えて気の向くままにたくましく生きていそうだと思った。

Posted byブクログ

2013/08/17

昼はOL、夜はデリヘル嬢のユミちゃん。ペットはワニ。 色々と無茶な設定だけど、あっけらかんとしたユミちゃんが可愛くて引き込まれます。作家の卵のハルヲもだめんずだけど、なんか可愛い。 「ヘルタースケルター」よりも、こっちの方が好きだなぁ。

Posted byブクログ

2013/07/31

これは…素晴らしい傑作でした、ね! 「ヘルタースケルター」も買ったんですけれども、なぜだかあちらはストーリーが好みじゃないというか、とっつきにくい感じがして敬遠気味…割りと普通な女の子がアレする本作を先に読んでみたのでした。普通の女の子といってもワニを飼っている時点で普通じゃない...

これは…素晴らしい傑作でした、ね! 「ヘルタースケルター」も買ったんですけれども、なぜだかあちらはストーリーが好みじゃないというか、とっつきにくい感じがして敬遠気味…割りと普通な女の子がアレする本作を先に読んでみたのでした。普通の女の子といってもワニを飼っている時点で普通じゃないかもですが…だけれども、僕には普通の女の子に見えました、ね! 社畜死ね!! ヽ(・ω・)/ズコー あとがきにもありましたけれども、都会に生きる女の子の息苦しさ…生きにくさ…そういったものを見事に表現している! と僕などは思いましたかね。漫画読むの久しぶりなんであれですけれども、ページ数的に少々長いかなー、読むの途中で面倒臭くならないかな…と心配したんですけれども、そんな心配は杞憂、一気に読み進めることができました、ね! 社畜死ね!! ヽ(・ω・)/ズコー うーん…今後も何度も読み返したい傑作でありましたね。さよなラーメン… ヽ(・ω・)/ズコー

Posted byブクログ

2016/10/16

後年の暴力的な作品群への助走段階のような作品。 昼はOL、夜はデリヘル[※]嬢、 (※作中では当時の一般的な呼び名「ホテトル」と記載) マンションでワニと暮らすユミちゃんの 退屈にしてスリリングな生活。 友人の勧めで初めて読んだ岡崎作品だったが、 どっぷりハマッた。 デタラメ三昧...

後年の暴力的な作品群への助走段階のような作品。 昼はOL、夜はデリヘル[※]嬢、 (※作中では当時の一般的な呼び名「ホテトル」と記載) マンションでワニと暮らすユミちゃんの 退屈にしてスリリングな生活。 友人の勧めで初めて読んだ岡崎作品だったが、 どっぷりハマッた。 デタラメ三昧みたいなユミちゃんが、 ダブルワークをこなすだけでなく、 きちんと掃除したり料理したりと、 意外に真っ当な生活者であることに好感を覚えたし、 その点にリアリティを感じた。

Posted byブクログ

2017/03/25

岡崎京子さんの作品はすごくいい。 時代背景は違えども、独特の世界観が面白く、一気に読んでしまった。愛と資本主義。ワニ。鞄。 ワニ飼いたい。

Posted byブクログ

2011/08/16

「すべての仕事は売春である」と同時に愛である。(あとがき)資本主義世界で愛を売り、それに怯えることも屈することもなかったユミちゃんの物語。ユミちゃんがもうやって来ない幸福を待つラストが、絶妙。

Posted byブクログ