アラバマ物語 の商品レビュー
映画でカットされた箇所も含め、読み応えのある名作だった。1930年代、アメリカ南部メイコームの町を舞台に、黒人青年の婦女暴行事件が持ち上がる。 この物語は、事件に関わる弁護士アティカスを父に持つ私(スカウト)の回想シーンから始まる。 「ディルがやって来たあの夏は…」 兄のジェム...
映画でカットされた箇所も含め、読み応えのある名作だった。1930年代、アメリカ南部メイコームの町を舞台に、黒人青年の婦女暴行事件が持ち上がる。 この物語は、事件に関わる弁護士アティカスを父に持つ私(スカウト)の回想シーンから始まる。 「ディルがやって来たあの夏は…」 兄のジェム10歳、ディル7歳、そして私6歳は、姿を見かけたことのないお隣のブー・ラッドリーをなんとか外に連れ出そうと試みるが… 子どもの頃の風景やそこで暮らす人々、楽しかった遊び、怖かった経験、それら凝縮された思い出が見事に描かれている。 学校に上がったスカウトは家と学校は違うのだと感じるようになる。学校では兄と遊ぶことを禁止され、受持のキャロリン先生から「あなたに字を教え込まないようお父さんに言いなさい」と言われ反発を覚えてしまう。弁当を持ってこれないウォルターを食事に誘ったスカウトだが、下品な食べ方につい文句を言ってしまう。毅然とした態度で諌めた料理人カルパーニアが偉いと思った。 「お友達に口出しして辱めるなんて思い上がりもほどがある!」 学校に行きたくないと打ち明けた娘に根気よく、納得いくまで話して聞かせる父アティカスの姿が印象に残った。 男手一つで二人の子を育てるのは大変だが、子どもであっても一人の人間として尊重しているなぁと思える場面がいくつもあった。親子間の距離がとても近い。弁護士としてもその姿勢を決して崩さないアティカスを好ましく思った。 63ページ(236〜298)にわたる法廷シーンは圧巻。中でも陪審員への長い弁論の最後にアティカスが言った「法廷において万人は平等につくられている。彼を信じてください。」の言葉にぐっときた。判決が下された後、ジェム(七年生)スカウト(三年生)の二人は新たな事件に巻き込まれてしまうが、助けてくれたのが会いたかった人だとわかり、本当に良かった。 黒人差別は根深く、白人の中にも階級差別がある。偏見と差別に負けることなく、一歩でも半歩でも前に踏み出す勇気が皆にあれば少しずつだが状況を変えることができる。 この本は文字が小さく二段になっているが、読み始めるとすぐに物語に引き込まれてしまう。ニグロなど差別用語もそのまま使われており、新訳本と比べながら読んでみても良かったと思う。
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弁護士の父アティカス・フィンチと4つ上の兄のジェムとアメリカ南部のアラバマ州メイコームに暮らす私スカウトの家族のお話。母は早世していた。そして、カルパーニアというコックが子どもたちの躾もしてくれていた。 アティカスが黒人の裁判を引き受けた事で、様々な波紋が広がる。大人たちだけでは無い、ジェムやスカウトにもその影響は及ぶ。当時、南部では黒人差別は当たり前で、人権はなかっただろう。ニグロという言葉も当たり前に使われていた。その中で黒人と言うだけで犯罪を犯すと決めつけてはならない、と言うのはかなり勇気が必要だったはず。ユダヤ人をかばいながら、黒人を差別する学校の先生をスカウトは疑問に思う。 スカウトの賢さは家系なのかしら。学校初日に担任の先生を圧倒してしまう(笑) 地味な装幀で活字も小さく、読んでもらう気は無いな、と思える本だったが、映画も見ていなかったので、内容はほとんど知らずに読み始めた。が、なんて素敵なお父さん。お兄ちゃんのジェムも賢くて、また、カルパーニアがいい人で、家族で仲がいいのがとても素敵。 今でも残る人種差別。あからさまに差別する人の気が知れない。と思えるようにしてくれた教育には感謝しかない。平和ボケと言われようが、戦争は嫌だ、ダメだと言い続けたい。
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最初に映画を観た。いい映画だなあ、と思い、原作読んでみた。いい本でした(特に翻訳がいいなあ。私は断固こっちを支持する)。「裏庭でドロップ・キックをして遊んだ」(P156下段)に目を白黒。あちらでは別の意味があるのかしらん。スカウトは8歳くらいのはずだが・・・。 アメリカでの黒人を...
最初に映画を観た。いい映画だなあ、と思い、原作読んでみた。いい本でした(特に翻訳がいいなあ。私は断固こっちを支持する)。「裏庭でドロップ・キックをして遊んだ」(P156下段)に目を白黒。あちらでは別の意味があるのかしらん。スカウトは8歳くらいのはずだが・・・。 アメリカでの黒人をめぐる暴動(デモではないよね、あれは)の最中だったので、「なんだかなあ」と。
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アメリカの課題図書的な本、To kill a mockingbird の翻訳版「アラバマ物語」を読みました。ずっと読みたかったこの本、人種差別が題材というのは知っていました。南部アラバマ州でのびのびと育つお転婆な女の子スカウトは無実の黒人青年の弁護をする父アティカスの姿勢や、それ...
アメリカの課題図書的な本、To kill a mockingbird の翻訳版「アラバマ物語」を読みました。ずっと読みたかったこの本、人種差別が題材というのは知っていました。南部アラバマ州でのびのびと育つお転婆な女の子スカウトは無実の黒人青年の弁護をする父アティカスの姿勢や、それをよく思わない周囲の人たちを目にしながら、自分の頭でちゃんと考えて育って行きます。 奴隷制が無くなったあとも、人々の感情はそう変わらない。住む地域が白人と黒人で別なのも、お互いのテリトリーに入らないのも「差別ではなく区別」だからと言って正当化する人もいる。黒人と結婚した白人は変人扱い。 無実の黒人青年は悲しい結末に終わってしまった。何故…という思いが止まらない。 この本に出てくるディルはトルーマン・カポーティがモデルなのですね。実際にハーパーリーと幼馴染だったとか。カポーティの小説は私はまだ読んだ事がないので次回の帰国時に買いたい本リストに入れました。
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人種差別、貧困問題、婦女暴行冤罪、引きこもり、裁判での逆恨みと弁護士の幼い子供たちへの復讐…など結構どぎつく悲惨というか現代的で殺伐とした一連の出来事を描きながら、読んでいて郷愁を感じ、終始爽やかで温かい気持ちになれる大好きな本。
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ようやく読めた。1960年発表で、ナチスが台頭する頃のアラバマ州メイコームという街が舞台。主人公スカウトは女の子なのにオーバーオールを着て殴り合いの喧嘩も厭わない、気の強い女の子。アメリカの南部。いろんな状況を知らずに読むと、古い翻訳なのもあって理解が追いつかないところもあるので...
ようやく読めた。1960年発表で、ナチスが台頭する頃のアラバマ州メイコームという街が舞台。主人公スカウトは女の子なのにオーバーオールを着て殴り合いの喧嘩も厭わない、気の強い女の子。アメリカの南部。いろんな状況を知らずに読むと、古い翻訳なのもあって理解が追いつかないところもあるのでは?と思う。人種差別や貧困、男女観とか、8歳の女の子の語りにハッとさせられる部分と、そうではないところとあった。それでも発表当時は新しい視点だったのだろうとも思う。 アメリカという国が、黒人に対する差別とともに、「働く」ことに高い価値を置いて「働かない」ということに対して差別的であることも伺える。いわゆるチャヴであるユーイル一族をどう扱うのか。善良な市民が、明らかに無害で不具の黒人を有罪にしてしまうこととも重ねて、ちょっとしか出てこなかったけど、ドルファス・レイモンドの存在は光ってた。正しくまっとうできちんとしている世間さま、その中身ってどんなものでできているのだろう、と、スカウトの目を借りて見る読者。 映画の写真がついてるせいかアティカスが良いお父さんすぎてひねくれ者としては斜めに見てしまう部分があったのだけど、続編ではそうではないらしい。ということでがぜん続編も読みたくなった。
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1900年代初めの頃、アメリカ南部の古い町での子供時代の回想。母は亡く、弁護士の父と家政婦、兄と妹の一家。家柄を誇る白人家系、近所のひきこもりさん、さまざまな背景を持った小学校の同級生たち、黒人の婦女暴行冤罪と不公正な裁判、逆恨みによる襲撃事件。 事件メインというより、背景とし...
1900年代初めの頃、アメリカ南部の古い町での子供時代の回想。母は亡く、弁護士の父と家政婦、兄と妹の一家。家柄を誇る白人家系、近所のひきこもりさん、さまざまな背景を持った小学校の同級生たち、黒人の婦女暴行冤罪と不公正な裁判、逆恨みによる襲撃事件。 事件メインというより、背景として描かれている時代、ひとびとの考え方や行動、父子家庭の兄妹の成長なんだなあと知りました。
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◆きっかけ 『子どもが「読書」に夢中になる魔法の授業』で筆者ドナリン・ミラーが一度は読むべき(p112)と書いていて。2017/8/18
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アメリカ南部の田舎町、父親に育てられた元気あふれるジーンルイーズ。弁護士である父は白人女性をレイプしたと訴えられた黒人の弁護を引き受ける。この黒人がレイプした証拠を法廷で証明したにもかかわらず、陪審員は有罪の判決を下す。本人は護送中に絶対無理な状況で脱走を企て射殺される。そして被害者の父親がレイプしたことを示唆した恨みから、ある夜ジーンと兄は襲われて・・・ 子ども達のごっこ遊びはリンドグレーンの世界を思い出し生き生きとしているけれど、差別の実態が迫ってくる。
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アメリカ法曹協会でしたか、何かで、もっともよく知られている弁護士として、「アッティカス・フィンチ」が挙げられていて、小説「アラバマ物語」の主人公の父の名前としりまきた。アメリカ人なら誰でも知ってる本らしいですが、読んだことがないままでした。読み終わっての読後感。「もっと早く読まな...
アメリカ法曹協会でしたか、何かで、もっともよく知られている弁護士として、「アッティカス・フィンチ」が挙げられていて、小説「アラバマ物語」の主人公の父の名前としりまきた。アメリカ人なら誰でも知ってる本らしいですが、読んだことがないままでした。読み終わっての読後感。「もっと早く読まなければならなかった」。 翻訳がやや古くなっているのと、現代の感覚からはどうかなという表現もありますが、舞台は第二次大戦の前、1930年代の南部ですので、やむをえないでしょう。そのことは、この作品の価値をなんら損なっていません。
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