虹 の商品レビュー
コバルトな人ではないのだけど、良い意味でコバルトっぽさが抜けないというか、三十才になっても恋を夢見る感が溢れている。でも、コバルトでは決して無いんだよな、ばななは。
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「世界の旅」シリーズ、4作目のこの作品は、タヒチが舞台。 訪れたことのある国を舞台にした物語を読むのは、リズムがわかるために心地よく感じます。 ぎこちないほど真面目に、誠実に生きているだけに、肉親を喪って心身のバランスを崩してしまった主人公。 リハビリを兼ねて短期間、勤務先のオ...
「世界の旅」シリーズ、4作目のこの作品は、タヒチが舞台。 訪れたことのある国を舞台にした物語を読むのは、リズムがわかるために心地よく感じます。 ぎこちないほど真面目に、誠実に生きているだけに、肉親を喪って心身のバランスを崩してしまった主人公。 リハビリを兼ねて短期間、勤務先のオーナーの家政婦として働きます。 ペットや植木に、丁寧に愛情を注ぐ彼女とオーナー。 在宅時間が違うため、実際に会うことはなくても、お互いが家のものに向ける愛情をしっかりと感じているという関係に、確かな安定を覚えます。 都会の合理性や拝金主義、せわしなさに抵抗を感じながらも、なんとか折り合いを見つけて自分らしい幸せを見つけようとしている二人。 惹かれあうのは自然なことでしょう。 オーナーが既婚者であるために、それぞれに抱える懊悩。 二人の人間性と歩み寄りが非常にゆったりと描かれているため、よくある不倫ものとはまた違う必然性を感じられるような話の作りになっています。 日本からはるか遠いタヒチを一人旅で訪れ、その自然に癒されていく彼女。 自然の持つまっすぐな生命力を受けて、深い喪失感から少しずつ立ち直っていきます。 言葉に書き切れないような心の揺さぶりを、丹念に表現していくのは、前回のエジプト版と一緒。 さすが作家だなあ、と思います。 ものいわぬ生命体の放つ鮮やかさが、さまざまな形で語られていきます。 タヒチを知らない人は、どのように読むのだろう、とふと思いました。 どこか遠くの夢の島のようにとらえているのかもしれません。 一人旅の割には流れるようにことが運んでいるのは、確かに現実味が薄いもの。 それにしても華やかなリゾート地であるタヒチに一人旅とは、なかなか思い切ったものです。 それだけ、主人公のよるべなさ、孤独感がくっきりと浮き立っています。 タイトルの虹は、最後のシーンに登場しました。 彼女の選んだ道と重なって、美しいだけではない、非情なまでの覚悟を含んだものとなっていました。 自分も「ラグナリウム」体験をしましたが、その後この言葉をすっかり忘れており、懐かしくなりました。 タヒチだけに作られたものかもしれません。 キーワードのように登場するレモン色の鮫には遭遇しませんでしたが、巻末に写真が載っており、イメージをつかむことができました。 イラスト担当は、前回のエジプト版と同じ原マユミ氏で、彼女は著者の旅に同行していたと知りました。 今回は遺跡ではなく自然がメインであるため、物語と絵には特に違和感がなく、雰囲気が合っていました。 ばなな作品の登場人物は、それぞれに深い闇のような孤独を抱え、その重さを持て余している人々ばかり。 春樹作品の人物も、特徴的なほどに孤独ですが、双方のベクトルは明らかに異なっています。 孤独の種類も表し方も、作家によっていろいろと違うものだと考えました。 丁寧に、ていねいに書き進められたと思われる、つぶらな作品。
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吉本ばななさんの小説。 激しく心を揺さぶられるということはないにしても、 深く心に染み入るお話でした。 くわしくはアメブロで。 (ネタバレなしです) http://ameblo.jp/waremoko-tadoku/entry-10241434358.html
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2011/10/11読了 主人公とご主人様が、そうなったらいいなぁー、と思う方向に進んでいってくれて、じんわり幸せになれました。 きっと人は、好みやさまざまな欲望に対して同じ価値観を持っている相手と結ばれるのが1番幸せなのではないでしょうか。 そんなことを感じさせてく...
2011/10/11読了 主人公とご主人様が、そうなったらいいなぁー、と思う方向に進んでいってくれて、じんわり幸せになれました。 きっと人は、好みやさまざまな欲望に対して同じ価値観を持っている相手と結ばれるのが1番幸せなのではないでしょうか。 そんなことを感じさせてくれた、一冊です。
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旅シリーズの中ではこれが一番好きかも。二人と猫太郎が雨の中のカフェにいるシーンがよかったな。あとは、コテージから一人で帰ってくるときに、固い決心をしたところが清々しくてとっても好きだ。
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これは、あくまで個人的に、だけど、 あたしの思考やものごとの感じ方と非常に良く似た視点から書かれていて、 ちょっとしたフレーズやセリフの全てに共感できた。 「生きる」ということの本質を、大袈裟にではなく、 優しく掴んでいるヒロインの、大事なものや大事な生活が、 タヒチの光景とい...
これは、あくまで個人的に、だけど、 あたしの思考やものごとの感じ方と非常に良く似た視点から書かれていて、 ちょっとしたフレーズやセリフの全てに共感できた。 「生きる」ということの本質を、大袈裟にではなく、 優しく掴んでいるヒロインの、大事なものや大事な生活が、 タヒチの光景といい具合に溶けていて、とても良かった。 ファンタジスタに突っ走るわけでも、 リアリストに徹するわけでもない、絶妙なブレンド。 吉本ばななの凄いところは、超!有名な作家になっても、 こういった感覚を忘れずに一貫して表現し続けているところだと思う。 お金も名誉も会社の事情もご時世もいろーんなものが絡んでくる世界にいて、 大事なものを見失わない強さ、みたいなもの。 このシリーズはだいたいどれもそうだけど、 南国の濃い緑や甘い果物の香りがそのまま目の前に現れたかのような、 素敵な土地柄の描写にうっとりしてしまう。 そしてこのシリーズは基本全部「アタリ」です。 【あらすじ】 タヒチ風レストラン、「虹」。 そこで長年、一生懸命頑張って働いてきた瑛子。 が、母の急死を期に、一気に生活リズムや体調を崩してしまい、 店のオーナーの家のお手伝いさんとしてしばらく休養を取ることになる。 庭の植物や、オーナーの奥さんからは嫌われている動物を通して、 じょじょにオーナーと心の距離が近づいていく瑛子だが、 複雑な気持ちにケリをつけるためにも、 美しいタヒチへ旅に出る。
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本当に忘れられない本 読むと優しい気持ちになれる自分の世界をふわふわ旅している感じになるとっても幸せ これはどの旅行案内書を読むより効果的 絶対タヒチにいきたくなる!!
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人間のしていることは実のところ、原始時代とあまり変わらないみたいだ、本当は、と私はそういうのを繰り返し見ては、いつも思った。 このところ、ある瞬間は楽天的になり、ある瞬間は絶望が胸に満ちた。混乱が考えを激しい波のように翻弄した。ただ、この人生でしたいことはずっと決まっていた。 面...
人間のしていることは実のところ、原始時代とあまり変わらないみたいだ、本当は、と私はそういうのを繰り返し見ては、いつも思った。 このところ、ある瞬間は楽天的になり、ある瞬間は絶望が胸に満ちた。混乱が考えを激しい波のように翻弄した。ただ、この人生でしたいことはずっと決まっていた。 面白みは必ず遺体気持ちと引き換えになっているような気がしていた。世界に繋がるには幾千ものきっかけがある。 よく知らない人なのに、縁があってなぜかちょっとだけの時間を深く共有する存在とたまにであることがある。そういう人たちは、何かしら、そのときの生き方にかかわるヒントを持っている。
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舞台は東京、そしてタヒチです。世の中のせちがらさに翻弄される人たちと自分の大切なものをしっかりと見つめ翻弄されない主人公、両方がしっかりと描かれていてすごい説得力。ものいわない植物や動物がどんなに毎日を豊かにしてくれるか改めて気づかされます。載っているタヒチの写真も美しい。人間ら...
舞台は東京、そしてタヒチです。世の中のせちがらさに翻弄される人たちと自分の大切なものをしっかりと見つめ翻弄されない主人公、両方がしっかりと描かれていてすごい説得力。ものいわない植物や動物がどんなに毎日を豊かにしてくれるか改めて気づかされます。載っているタヒチの写真も美しい。人間らしく生きることを深く、濃く教えてくれる名作。
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すごくステキだった。文章自体がすごく美しくて、読んでいて気持ちが良い。元気になる。気持ちが浄化される。リセットされると思う。
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