りかさん の商品レビュー
ひな祭りの前に『人形の家』を読んでいたころに知人から勧められ、人形やぬいぐるみと人との関係に興味が尽きないところ。 ゴッテンの人形の家 に出てくる人形たちはエミリーとシャーロットの家に暮らしていたけど、りかさんは外からやってきます。 おばあちゃんから電話で、今度のひな祭りに何...
ひな祭りの前に『人形の家』を読んでいたころに知人から勧められ、人形やぬいぐるみと人との関係に興味が尽きないところ。 ゴッテンの人形の家 に出てくる人形たちはエミリーとシャーロットの家に暮らしていたけど、りかさんは外からやってきます。 おばあちゃんから電話で、今度のひな祭りに何が欲しい?と聞かれたようこは、リカちゃん人形が欲しいと答えます。 おばあちゃんは、 「お人形のりかちゃんなら気立てのいい子だ、雛祭りにはぴったりだ…よし。」 怪しいですよね気立てがいいとか…おばあちゃん、知ってるのかな… で、やって来たのは半紙に『りかちゃん』と筆で書かれて古い箱に入れられた、真っ黒な髪の市松人形だったのです! あーあーあー。と人ごとなので面白く読んでいたんですが、 このりかちゃんにもちゃんと思いがあるのです。人形の家のトチーのように、願うのとはちょっと違いますが、思いのようなものが、特定の人に伝わるのです。その夜のりかのメランコリックな感情の粒で翌朝目覚めたようこは、いつもと違う部屋の感覚、草原の朝の気持ちよさを感じて、箱に入れたままのりかちゃんを出して声をかけてみる。 おばあちゃんからのりかちゃんの説明書を読むと、ようこがりかを幸せにする責任があるという。毎朝着替えさせ、髪をとかして、箱膳をしつらえて一緒に朝夕の食事をする…など。 ある日りかちゃんからいつもと違う空気を感じ、ようこはりかちゃんと話せるようになる。ようこの家のお雛様たちがもめているのだ。 この時のようこのあまり驚かない感じもとってもおもしろい。 この家のお雛様はりっぱなものだけど、お内裏様に問題があったのです。 ここも、大河ドラマ『光る君へ』を観てる人にはおおお!ってなるエピソード。 りかちゃんからようこはりかさんと呼んでくださらない?と言われるように、とても頼りになるお人形。どうやらおばあちゃんともこうして話してきたようだ。 それからりかさんとおばあちゃんの助けをかりて、この家のお内裏様、 お友だちの登美子ちゃんの家の人形たちの問題にもりかさんがかかわってゆく。 登美子ちゃんのおじい様は相当な人形の収集家で、後半の物語では戦争中の出来事まで遡り、ようこのおばあちゃんの助けを得て人形たちを幸せにしてゆく。 怨霊とも違った、優しい人形と人とのつながりの世界が描かれます。 ようことおばあちゃんの関係がどんどん深まって素敵なものになってゆくのは 『西の魔女が死んだ』にも通ずるものがありました。 おばあちゃんは、ようこが大人のように「ちょっとはなしがあって」なんて言って、大人ぶってかわいいこと。と思っても、そういうことは口にださないセンスがある。(ようこ談) 人形に興味があるあるのかないのか、登美子ちゃんのセリフにもはっとさせられる。 人形たちが昨日と違う場所にいた時、夜中の大冒険から元の場所に戻れず落ちたふりをしている。そういうことを察してからは、人形だけでなく世の中の物はみんなふりしてるだけなのかなぁって思い始めたと言うのです。 なんと哲学的な少女たち! ご飯はご飯のふり、わたしはわたしのふり、お母さんはおかあさんのふり… これもまた、児童文学を超えた、大人のお人形を愛したひとたちに響く物語とおもうのです。
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リカちゃん人形が欲しかった小学生のようこにおばあちゃんが贈ったのは、おかっぱ頭の市松人形のりかさんだった。 落胆しながらも人形のお世話をしていくうちに、ようこはりかさんの声が聞こえるようになった。 おばあちゃんの元に来る前の持ち主にも、おばあちゃんにも大切にされていたりかさんは、気立が良く賢く、いつも洋子の味方になってくれる存在。 友達の登美子ちゃんのお家に雛人形を見せてもらいに行ってから、ようこのお家に着いてきてしまった、背守がなくて帰れないと泣く少女の存在。 登美子ちゃんのおじいちゃんが集めていたお人形たちの声を聞いて、お人形を通じて過去の人の思いを感じ取っていくようことりかさん。 汐汲がずっと守っていた黒こげになったアビゲイルと登美子ちゃんのおばあちゃんの姉の悲しい過去。 お人形は人の強すぎる思いを整理してくれる存在。 嬉しい時も楽しい時も、悲しい時も寂しい時も、お人形が人の気持ちを整理してくれる。 良いなあ。児童文学だけど、大人が読んでも大変面白い。
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段飾りの雛人形が印象的な表紙。 主人公のようこは、自分と同世代くらいだろうか。 1970年前後に生まれた女の子が、小学生の頃のお話だ。 いわゆるリカちゃん人形が欲しかったのに、おばあちゃんがくれたのは、日本人形のりかさん。 ちょっとガッカリしたけれど、このりかさん、なんとよう...
段飾りの雛人形が印象的な表紙。 主人公のようこは、自分と同世代くらいだろうか。 1970年前後に生まれた女の子が、小学生の頃のお話だ。 いわゆるリカちゃん人形が欲しかったのに、おばあちゃんがくれたのは、日本人形のりかさん。 ちょっとガッカリしたけれど、このりかさん、なんとようこと意思疎通ができるのだ。 雛祭りの頃、大きな蔵のある登美子ちゃんのおうちに、りかさんを連れて遊びに行くと、登美子ちゃんの段飾りの雛人形や古いお人形達の声が聞こえてくる…。 人形たちとその持ち主たちとの思い出が、人形の中に宿っている、ようこは、りかさんを通して人形たちの声を聞き、そこにある障りを解決していく。 りかさんをようこに託したおばあちゃんは、手を出さず、その子の力を信じて見守るところが、「西の魔女が死んだ」のおばあちゃんを思い起こさせる。 「こういうお話大好き」というレビューがおおいのだが、私は『人形モノ』がとても苦手なのだ。 小学生の頃、 美内すずえさんの「妖鬼妃伝」(1981年「なかよし」に連載) や、 あしべゆうほさんの「悪魔ディモスの花嫁」シリーズ(プリンセスコミック) を、怖いもの見たさで読んだトラウマが未だに残っていて、落ち着いて読めない。 あの絵柄が脳内に満ちて、背筋がゾクゾクしてしまう。 そして、「リカちゃん」じゃなく、「りかさん」を渡されて、ちょっとガッカリですむようこちゃん、いい子すぎやしませんか⁉︎ 「リカちゃん」が売り切れで、誕生日に「ハルミちゃん」を渡され、かなりブーたれたかつての私からすると、とんでもなく良い子である…その時点で感情移入できず…。 それは置いといて。この作品、表紙の雰囲気とは違い、心あたたまるお話というわけではないと思うのだ。 かつては日米友好の証として日本に来た西洋人形が、太平洋戦争のせいで酷い仕打ちにあう物語もあったりするのだから…実際にこういう事があったのだろう。 戦争とは、人間の心をこうも変えてしまうのか…と ゾクゾクの理由は、トラウマのせいだけではなかったはず。 2022.1.14
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1999年初版から20年、再読。 何回読んでも、大好きな世界。 ようことおばあちゃんが感じとる世界がとても好き。こんな世界を描ける梨木香歩さん、凄いです。 りかさんを通して人形たちのざわめき、想いをたくさん聴いた。 人形はそれぞれの想いを抱えて、そこにいる。 アメリカから親善大...
1999年初版から20年、再読。 何回読んでも、大好きな世界。 ようことおばあちゃんが感じとる世界がとても好き。こんな世界を描ける梨木香歩さん、凄いです。 りかさんを通して人形たちのざわめき、想いをたくさん聴いた。 人形はそれぞれの想いを抱えて、そこにいる。 アメリカから親善大使として贈られてきたアビゲイルも、いっぱいの愛を蓄えられて、その愛を届けるために来たのに…。その悲しみを引き受けて守り続けている汐汲み人形も憐れ。 人は業が深いから人形を必要とした、と同時に人形を慈しむ気持ちも持ち合わせている。 人形の使命は人間の感情の濁りを吸い取ることだという。 「濁り」この言葉は、ようことおばあちゃんが桜染めをしている時にもでてくる。 植物染料は媒染をかけてようやく色をだす。するとどうしてもアク(濁り)が出る。そのアクを含んだ色を「少し、悲しげ」だと著す。 一つのものを他から見極めようとすると、そこに差別が起きる。この差別にも澄んだものと濁りのあるものがある。澄んだ差別をして、ものごとに区別をつけて行かなくてはならない。自分の濁りを押し付けない、とおばあちゃんはようこに言う。 とても大切なことを伝えている。 濁りやアクを「少し、悲しげ」と受け入れ、そこから澄んだ方に向かう、それは梨木香歩さんの変わらない志向なのだろう。 「媒染を変えたら、出てくる物語も変わるだろう。ようこちゃんは、媒染剤みたいな人になれるよ」 なんて善い言葉でしょう。
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再読。 思えば、私が読んだ梨木香歩2作目。そして、確実に梨木ファンになったきっかけの本でした。ああ、出会えてよかった。
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ようこは自分の部屋に戻り、箱を見た。お人形のおいてあった下には、着替えが幾組かたたんであり、さらにその下のほうにもう一つ、箱のようなものが入っている。開けると、和紙にくるまれた、小さな食器がいくつか、出てきた。「説明書」と書かれた封筒も出てきた。中には便せんに、おばあちゃんの字で...
ようこは自分の部屋に戻り、箱を見た。お人形のおいてあった下には、着替えが幾組かたたんであり、さらにその下のほうにもう一つ、箱のようなものが入っている。開けると、和紙にくるまれた、小さな食器がいくつか、出てきた。「説明書」と書かれた封筒も出てきた。中には便せんに、おばあちゃんの字で、つぎのようなことが書いてあった。『ようこちゃん、りかは縁あって、ようこちゃんにもらわれることになりました。りかは、元の持ち主の私がいうのもなんですが、とてもいいお人形です。それはりかの今までの持ち主たちが、りかを大事に慈しんできたからです。ようこちゃんにも、りかを幸せにしてあげる責任があります。』…人形を幸せにする?…どういうことだろう、ってようこは思った。どういうふうに?
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図書館から借りて読む。 懐かしい雰囲気のお話で、始終安心して読むことができた。なんでも知っていて頼れるおばあちゃんと、優しくて気立ての良いお姉ちゃんが欲しくなるようなお話。 少し難しい言葉遣いもあるが、娘が小学4年生くらいになったら勧めてあげたい。
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からくりからくさを読み終えてから少し間をおいて手に取った。 読んでいる間ずっと、「西の魔女…」と同じ安心感に包まれている感じがした。この世界のことをよく知っていて、どんなことにも動じない、とても信頼できる大人がそばにいる…という感じ。 自身の経験との共鳴かもしれない。 私が...
からくりからくさを読み終えてから少し間をおいて手に取った。 読んでいる間ずっと、「西の魔女…」と同じ安心感に包まれている感じがした。この世界のことをよく知っていて、どんなことにも動じない、とても信頼できる大人がそばにいる…という感じ。 自身の経験との共鳴かもしれない。 私が社会人になり結婚して間もなく亡くなった祖母。田舎から息子(私の父)を訪ねてくる時は、いつも和服に羽織を重ねた正装だった。苦労に苦労を重ねた祖母は、再婚して改姓していたが、父のところへは定期的に顔を見に来た。 祖母は何でも知っていて、どんなこともくしゃくしゃの笑顔でやり過ごしていた。 祖母のそばにいるのが好きだった。 このことを、読み終えて思い出したのだ。 アビゲイルの話は、胸の奥からうめき声が出てしまっていたくらいに辛かった。比佐子の苦しみが苦しみとして出せなかった時代の日本を思う時、それは私の父の子供時代や、若かった祖母の日々に重なる。 多くの人間や人形の魂が、その重さに見向きもされないままに消えていったことだろう。 からくりからくさの、りかさんの最期を思い出した。彼女は…きっと幸せの中で燃えたのだと思えるようになった。 梨木作品の妖しさとあたたかさには、いつもやられてしまう。心にしみて、しばらくは動けない。
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図書館にて。 自分にとって、身近な人でも、よくよく考えてみると、あまり、その人について、多くの事を知らないなと思う時がある。 特に、苦手な人だったり、あまり付き合いのない人だったりしたら、尚更だ。 だけど、みんな、それぞれ見えない所で、きっと、様々な物語を抱えて、生きている...
図書館にて。 自分にとって、身近な人でも、よくよく考えてみると、あまり、その人について、多くの事を知らないなと思う時がある。 特に、苦手な人だったり、あまり付き合いのない人だったりしたら、尚更だ。 だけど、みんな、それぞれ見えない所で、きっと、様々な物語を抱えて、生きている。 悲しい話も。楽しい話も。 相手の悪い面ばかりに目が向く人ではなくて、相手のいい面を見つけられる、良い所・魅力的な所を引き出せる人になりたいと思った小説でした。
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子供向けの棚にあっただけに、さらさらと読めた。内容はからくりからくさに繋がるもので、読んでるだけに読みやすかったのかな? 素敵なお話です。
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