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イギリス人の患者 の商品レビュー

4.3

17件のお客様レビュー

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2022/08/12

舞台は第二次大戦下のイタリアの僧院。北アフリカの砂漠に不時着したパイロットが収容され、手当を受けている。「イギリス人の患者」としか身元を明かさない彼は、全身に火傷を負い、容貌も不明、記憶も喪失している。だが、瀕死の患者が若い看護婦に語り紡ぐ言葉は、この上なく深くミステリアスな愛の...

舞台は第二次大戦下のイタリアの僧院。北アフリカの砂漠に不時着したパイロットが収容され、手当を受けている。「イギリス人の患者」としか身元を明かさない彼は、全身に火傷を負い、容貌も不明、記憶も喪失している。だが、瀕死の患者が若い看護婦に語り紡ぐ言葉は、この上なく深くミステリアスな愛の世界だ。美しい文章と濃密なストーリーで大きな話題を呼んだブッカー賞受賞作。

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2021/04/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

3度目のチャレンジ、10年越しで読了。チュニジアの撮影地に行ったのに映画も本も読まずに来た。文章は詩的なんだけど、どうも読み進まない。「この良さがわからないのは、あなたの理解が足りないのです」と言われているようで疲れた。ただ一つ、今回は『少年キム』を読んでいたので少し楽しめた。というか読んでないと世界観がわからなかったかも。死に寄り添っている4人の死ねない物語、ということでいいのかな?

Posted byブクログ

2020/09/12

映画『イングリッシュ・ペイシェント』では省かれた様々なシーンが絡み合い、深く重い作品。 原書も難解だったが、邦訳もなかなか。

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2020/08/02

ドイツ敗北から日本敗北までの間、イタリアの古城の様な小さな廃修道院を舞台に、それぞれのやるせない事情を抱えた4人の登場人物が織りなす物語。植民地カイロにおける欧米白人社会のあり様とその中で展開するロマンス。欧米白人社会のなかで自己形成をしながら、彼らが戦争中に撒き散らした地雷や爆...

ドイツ敗北から日本敗北までの間、イタリアの古城の様な小さな廃修道院を舞台に、それぞれのやるせない事情を抱えた4人の登場人物が織りなす物語。植民地カイロにおける欧米白人社会のあり様とその中で展開するロマンス。欧米白人社会のなかで自己形成をしながら、彼らが戦争中に撒き散らした地雷や爆弾を処理し続けるシーク教徒の若者。そして、戦争の中で父と子を失った若い白人女性。映画はまだ見ていないが、脚本化はさぞかし簡単だったのではなかろうか。原作にして既にカット割りが完成しているような印象。「よくできた」小説である。

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2019/08/17

とても難解な文章で、読みづらい。詩的な表現らしいが、私には向かなかった。 時代背景が過去の戦争の話だと、なかなか想像が難しいというのもある。(多くの海外文学にあるように) ブッカー賞受賞作は4作品読んだけど、どれも愉快な面白さはない。芥川賞などの日本の小説がいかに読みやすいか。

Posted byブクログ

2021/02/06

文章が美しく、想像しながら読むことであらためて読書の楽しさを実感することができました。 高校生の時に初めて読みましたが、授業中にこっそり読んでいて気付いたら終了のチャイムも聞こえないくらい物語に引き込まれてしまったのが懐かしいです。

Posted byブクログ

2017/08/07

素晴らしい本。美しい言葉で形作られ、練り上げられた重厚なストーリー。時間をかけて少しづつ頁を進めたが、物語はずっとそこにあった。 町と屋敷を遮る谷間へロープを掛け、闇夜の雨の中へと消えていったカラバッジョの姿が忘れられない。 「言葉だ、カラバッジョ。言葉には力がある。」

Posted byブクログ

2016/04/19

1945年、イタリアの僧院。 イタリアは降伏し、退却するドイツを進攻してきた連合軍が追う。 戦地は北上し、それにつれて医者や看護婦も北上していくのだが、一人の看護婦が僧院にとどまる。 瀕死のけが人がいるから、と。 けが人は全身を火傷に覆われ、イギリス人であることしか身元がわから...

1945年、イタリアの僧院。 イタリアは降伏し、退却するドイツを進攻してきた連合軍が追う。 戦地は北上し、それにつれて医者や看護婦も北上していくのだが、一人の看護婦が僧院にとどまる。 瀕死のけが人がいるから、と。 けが人は全身を火傷に覆われ、イギリス人であることしか身元がわからない。 看護婦は廃墟になったその僧院で、患者の世話をしながら日を過ごす。 そこに一人の男が現れる。 看護婦ハナの父親の旧友。 泥棒の腕を見込まれ連合軍のスパイとして働いていた。 今は両手の親指を無くしたけが人。 イギリス人の患者は、身動きをとることすらできないけれども、話をすることは出来る。 博学な彼の話は、ハナやカラバッジョを楽しませ、また、ハナが読む物語はイギリス人の患者やカラバッジョを楽しませる。 さらに、地雷撤去のために訪れた工兵キップ。 インド人の彼は、イギリス兵として爆発物処理のエキスパートとなる。 ハナとキップ、若いふたりの恋。 キップがどこからか持ってくるワインを飲みながら、ラジオのから流れる音楽に合わせてのダンス。 痛み止めのモルヒネを打ちながら語りあうイギリス人の患者とカルバッジョ。 4人はそれぞれに戦争による傷を抱えていた。 身体や心に。 戦場は北に移動しているのに、動かない4人。 それは、傷が癒えるまでじっとその場にうずくまっている動物のように。 4人の日常。4人の過去。それに差し込まれてくる砂漠のイメージ。 静謐な物語。 日に焼けて茶色くなった、パリパリに乾いた紙に描かれた絵のような、簡単に壊れてしまいそうな4人の関係が、ただ静かに書かれている。 そんな小説かと思って読んでいた。 カズオ・イシグロの『日の名残り』のようだと。(カバーの折り返しを見たら、訳者が同じだった) あとは日本が降伏したら、この戦争も終わるわね。 しかし、繭にくるまれていたかのような日々は突然終わりを告げる。 “一つの文明の死” “これが白人の国だったら、決してそんな爆弾は落ちなかったろう” 突然の終わり? 最初から彼らの関係は終わりを含んではいなかったか? 彼らは終わりの気配に気づかないふりをしていただけではないのか? そして読者の私も、進んで作者にだまされようとしていたのではないか? シーンごとの美しさに見とれている時、足下に不確かさを感じてはいなかったか? 400ページ弱の小説に5日かけて、この世界をじっくりじっくり味わってきたつもりだったのに、最後の慟哭の激しさに全てがひっくりかえったような、でも最初から予感していたような。 なんというか…やられました。

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2015/06/07

滑らかに流れる言葉が砂漠のように乾いた皮膚に染み込んでいく。ひび割れた悲しみを繊細な文体が包み込んでくれる。読んでいる間中、筆舌に尽くしがたい昂揚感に幾度となく襲われていた。第二次世界大戦末のイタリアの修道院を舞台とした、4つの破壊された人生の物語。それは時に支え合い、寄り添い、...

滑らかに流れる言葉が砂漠のように乾いた皮膚に染み込んでいく。ひび割れた悲しみを繊細な文体が包み込んでくれる。読んでいる間中、筆舌に尽くしがたい昂揚感に幾度となく襲われていた。第二次世界大戦末のイタリアの修道院を舞台とした、4つの破壊された人生の物語。それは時に支え合い、寄り添い、そして時にすれ違う。個人はいつだって歴史の力には無力で、国境や人種は嫌が応にも人々を無理解という病に溺れさせる。しかし本当の優しさや美しさはいつだって、そんな痛みの向こう側から生まれてくるのだと教えてくれる素晴らしい傑作であった。

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2013/11/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

具体的な言葉は思い出せないのに、想像上の情景が心に残る一冊。 第二次世界大戦末期、イタリアの屋敷にたった二人で残っているイギリス人の患者と看護婦、そこに加わる二人の人物。4人で過ごす、不思議と心地よい時間と空間の物語です。 壁一面に草原が描かれた部屋に横たわる、黒焦げの体。 枕元のろうそく、読まれる物語、夜の静寂。 麻薬、失われた親指と生垣沿いの道。 大音量のラジオと、地雷をほどく精密な作業。 レコード、コンデンスミルクをすする井戸、図書室のソファ。 カイロの街、そして砂漠。 テントの中、そしてバイクで疾走する夜道。 何とも言えないせつなさが漂う本でした。 詩的な文章だと思ったら、筆者は詩人でもあるそうです。この作品は映画化もされていて、脚本には手が加えられているようですが、この作品の情景がどう映像化されているのか非常に興味があります。

Posted byブクログ