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イギリス人の患者 の商品レビュー

4.3

17件のお客様レビュー

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2013/07/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

(再読) 映画を観たのはずいぶん前で、断片的なイメージだけが記憶に残っていたが、理解の助けにはなっただろう。映画を観ていなければ最初は戸惑ったかもしれない。 この物語の主人公は誰なのか。飛行機の事故により火傷で顔を無くした“イギリス人の患者”、若くして既に多くの兵士を看取っている看護婦のハナ、ハナの父親と親交があった盗賊カラヴァッジョ、イギリス兵として地雷を処理するインド人の兵士キップ。 それぞれの人物の立ち位置から、記憶から、彼らの見ている情景が、まるで歌うような、叙事詩のような、リズム感のあるフレーズが心地良い。体言止めの重なりが効果的。信頼出来る土屋政雄訳。 多くの兵士を看取ったハナが最後に選んだ患者は知的な謎のイギリス人。その患者が断片的に語る自分の人生、砂漠の風景、愛した女性の追憶。父親を介したハナとカラヴァッジョの親子とは違う信頼関係。ハナと兵士キップの愛情の親密さ。イギリス人に学びたいというインド人の文化的渇望。彼らそれぞれの記憶と経験は繰り返し咀嚼しながら生活が流れていく。 映画ではイギリス人の患者と呼ばれるかつての砂漠探検家アルマーシとクリフトンの妻キャサリンのラブストーリーが中心になっているが、原作の小説は地雷処理兵キップの物語の色合いが圧倒的に強い。彼のイギリス人に仕える身のインド人としての立ち位置の描かれ方。キップの兄はインド人がイギリス人の戦争を戦う矛盾をとなえる、その兄は投獄されている。 アルマーシは人妻キャサリンに歴史書『ヘロドトス』を貸す。彼女があえてその本を砂漠の仲間の前で朗読する。それはカンダウレス王が寵愛する妻があるがゆえに部下ギュゲスをそそのかす、その部分をあえて彼女が朗読することによってその後の展開が暗示される。クリフトンは妻を寝取られるカンダウレス王に重なり、アルマーシは自身をギュゲスに重ねる。砂漠の地図を描くアルマーシは、欲望の対象となった女性に新たな地図を見出している。彼女の庭園と、プラムのイメージ。 いつか戦争は終わる。唐突にラジオから伝わる情報。誇り高いキップは圧倒的な破壊力を持った新たな爆弾の出現に、これまでの自身の経験が否定されて立ちすくむ。もし彼らの肌が白かったら緑の島国に原爆は落ちなかっただろう、日本に想いを馳せるインド人のイギリス兵キップ、その怒りを“イギリス人の”患者に向ける、その心境。 映画を観た後でも、小説は独自のイメージが喚起された。再読に耐えうる傑作。

Posted byブクログ

2013/03/11

第二次世界大戦末期のフィレンツェ郊外にある崩れかけた屋敷において従軍看護婦だったカナダ人のハナ、彼女の父親の友人で泥棒(のちにスパイ)のカラバッジョ、爆弾処理の仕事を専門とするインド人でシーク教徒でイギリスの工兵キップ、そして「イギリス人患者」と呼ばれる瀕死の男。 四人それぞれの...

第二次世界大戦末期のフィレンツェ郊外にある崩れかけた屋敷において従軍看護婦だったカナダ人のハナ、彼女の父親の友人で泥棒(のちにスパイ)のカラバッジョ、爆弾処理の仕事を専門とするインド人でシーク教徒でイギリスの工兵キップ、そして「イギリス人患者」と呼ばれる瀕死の男。 四人それぞれの物語が詩的表現で綴られていく。

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2012/06/17

映画イングリッシュペイシェントの原作。舞台は終戦直前のイタリア。看護婦ハナ、全身やけどの患者、元泥棒のカラバッジオ(ハナの叔父)、爆弾処理のインド人のシン。この4人の物語が交互に語られていく。最初は非常に読みづらいが、後半から誰の話なのか、いつの話なのか、つかめてくると、非常に興...

映画イングリッシュペイシェントの原作。舞台は終戦直前のイタリア。看護婦ハナ、全身やけどの患者、元泥棒のカラバッジオ(ハナの叔父)、爆弾処理のインド人のシン。この4人の物語が交互に語られていく。最初は非常に読みづらいが、後半から誰の話なのか、いつの話なのか、つかめてくると、非常に興味深く読めるようになる。何よりも、哲学的な言葉が随所にちりばめられ、そこにサスペンス、恋愛の要素がからみ、非常に高尚な読み物に仕上がっていると思う。映画とかなり違うようだが、映画を観て、それも楽しみたい。ブッカー賞受賞作品。

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2009/12/15

主人公が何人もいるように思える。 それぞれの感情の起伏が繊細かつ美しい。 キップが怒りをぶちまける場面が印象に残る。

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2009/10/04

詩のような物語。 様々な登場人物のエピソードがバラバラに重なり合っていくので 最初のテンポをつかむまでは読みにくかった。 だけど、一旦流れをつかんだら後は駆け抜けるのみ。 読み終わってしまうのが惜しいくらい幻想的な世界。 映画も有名らしいけれどこの小説の世界を表現するのは大変だ...

詩のような物語。 様々な登場人物のエピソードがバラバラに重なり合っていくので 最初のテンポをつかむまでは読みにくかった。 だけど、一旦流れをつかんだら後は駆け抜けるのみ。 読み終わってしまうのが惜しいくらい幻想的な世界。 映画も有名らしいけれどこの小説の世界を表現するのは大変だろうなぁ。 全くの別物と思って観てみたいかも。

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2009/10/04

イタリアの忘れ去られた屋敷を舞台に自称「イギリス人」の死に瀕した患者と三人の男女の悲しい過去が少しずつ語られていく。叙情詩のような文章と美しい断片を集めて出来た物語。

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2009/10/04

読み終えたは良いものの、描写が細かすぎて飽き飽きしていました。でも映画を観たら、情景が事細かに豊かに浮かんできて、涙があふれました。

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