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物語が、始まる の商品レビュー

3.5

52件のお客様レビュー

  1. 5つ

    2

  2. 4つ

    26

  3. 3つ

    15

  4. 2つ

    5

  5. 1つ

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2021/04/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

目次 ・物語が、始まる ・トカゲ ・婆 ・墓を探す どれもこれもそこはかとなく哀しいような恐ろしいような、ちょっとエロティックでもしかするとユーモラスな作品ばかり。 だけど一番好きなのは、やっぱり表題作だなあ。 男の雛型を拾い、同居していくうちに…っていう話なんだけど。 男の雛型ってのがまずよくわからない。 ”大きさ1メートルほど、顔や手や足や性器などの器官はすべて揃っている。声も出す。本が読め、簡単な文章が書け、サッカーのルールは知らないがボールを蹴ることはできる、というくらいの運動能力がある。子供の背丈だが、顔つきは子供ではない。かといって、大人でもない。どちらともつかぬ、雛型らしい顔つきとしか言いようのない、中途半端な顔つきである。” いや、やっぱりわからない。 素材は何? 主人公は彼を拾い、食事を与え、絵本の読み聞かせなどして育てるのだ。 主人公には恋人がいて、そのうち結婚をなどと考えているが、彼女の作品の多くの恋人たちのように、彼らの恋愛は極めて温度が低めである。 でも、彼は雛型に対して拒否感を隠さない。 主人公と雛型の仲が親密になるにつれ、そして雛型の体形がすっかり大人のそれとなった時、ふたりの間に恋が芽生える。 恋? 雛型にそもそも感情があるの? 行きつ戻りつする主人公の気持。 恋人という切り札もあるけれど、どうも読み進むにつれ、これは哀しい物語なのではないかという予感が押し寄せる。 もし私が拾うなら、男でも女でもいいので、1メートルより大きくならない雛型がよい。 毎日絵本を読んで、お散歩に行って、公園で遊ぼう。 どこに落ちているのかな。

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2020/10/04

ちょっと不気味な短編集。神様の様な雰囲気の方が好きかな。しかしこういう話を書けるのは才能なんだろうな

Posted byブクログ

2018/06/27

面白かったです。 とても奇妙なお話なのですが、ぐいぐい引き込まれました。 「婆」と「墓を探す」が好きです。川上さんの描く、強引なお年寄りは良いなぁと思います。 生と死は近いものなのだということを感じました。 登場人物たちは流されているようで、でも芯があるようで。 ぼんやりとたゆた...

面白かったです。 とても奇妙なお話なのですが、ぐいぐい引き込まれました。 「婆」と「墓を探す」が好きです。川上さんの描く、強引なお年寄りは良いなぁと思います。 生と死は近いものなのだということを感じました。 登場人物たちは流されているようで、でも芯があるようで。 ぼんやりとたゆたう川上ワールドよりも、ちょっとだけ力強い世界でした。 穂村弘さんの解説も面白かったです。

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2018/02/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

短編集。奇妙で独特な世界。『雛型』は最初、比喩なのかなと思いましたが、“雛型”だったのですね。どういう風に受け止めようか迷ったのは、私が常識にとらわれ過ぎているからなのかなぁと読みながら思ってしまいました。『トカゲ』も少々気味が悪い感じがしました。

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2017/09/20

短編4作を収録しています。 「物語が、始まる」は、主人公の女性が公園の砂場で男の「雛型」を拾い、育てる話です。やがて「三郎」と名付けられた雛型と彼女との間で少し奇妙なラヴ・ストーリーが展開されていきます。 「トカゲ」は、マナベさんという近所の主婦から、幸運の「座敷トカゲ」を授...

短編4作を収録しています。 「物語が、始まる」は、主人公の女性が公園の砂場で男の「雛型」を拾い、育てる話です。やがて「三郎」と名付けられた雛型と彼女との間で少し奇妙なラヴ・ストーリーが展開されていきます。 「トカゲ」は、マナベさんという近所の主婦から、幸運の「座敷トカゲ」を授かったカメガイさんの話です。トカゲはヒラノウチさんの家に預けられ、急速に成長していきます。 「婆」は、主人公の女性が一人の老婆に手招きされ、彼女の家で奇妙な時間を過ごす話です。最後の「墓を探す」は、寺田なな子が、父親の霊に促された姉のはる子に付き添って、先祖の墓を探す話です。 著者の作品には、どこか現実感の欠如した不思議な味わいの物語が多いのですが、本書に収められている作品は、とくにそうした印象が強いように感じます。といっても、ファンタジー作品のロジックに従って世界観が構築されているわけではなく、むしろ現実を支える骨組みが脱臼されてしまうような感覚に陥ってしまいます。

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2016/12/12

川上弘美さんの小説のなかなら「蛇を踏む」以来の奇妙な作品群。 はっきり言うとすごく変。笑 けど癖になるし、妙に惹かれてしまう。 雛型と人間の恋「物語が、始まる」、幸運の座敷とかげと主婦たちの日々「とかげ」、迷い込んだ奇妙な猫屋敷「婆」、姉妹が父親の本家の墓を探しておかしな世界に...

川上弘美さんの小説のなかなら「蛇を踏む」以来の奇妙な作品群。 はっきり言うとすごく変。笑 けど癖になるし、妙に惹かれてしまう。 雛型と人間の恋「物語が、始まる」、幸運の座敷とかげと主婦たちの日々「とかげ」、迷い込んだ奇妙な猫屋敷「婆」、姉妹が父親の本家の墓を探しておかしな世界に迷い込む「墓を探す」。 さらっと説明しただけでも奇妙さが溢れてしまう短編集。 最初2つのお話は読み物としても面白く、「物語が、始まる」は切なさもあり、「とかげ」は妙にエロティック。 だけど後半2つのお話は、ぼんやり読んでいると物語に置いてきぼりを食らう感じが。何がどうなってこうなっているのか…考えてもどうしようもない類なのだけど、集中して読まないと置いていかれる。 「蛇を踏む」を読んだときもなんじゃこりゃ!と思ったけど、今回も似たような感想を持った。こういう発想って、一体どこから生まれるのだろう、という感嘆。 心地好い気持ち悪さ、というのが私のなかではしっくり来る表現。 同じ著者の作品を読んでいてもたまにこういう出逢いがあるから読書はおもしろい。

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2014/04/11

川上弘美の小説を読んだ後は、いつも現実とそうでないものとの境界が曖昧になったような心地がする。 それも、最初の話ではそうならず、読み進めて行くほどに何が何だか分からなくなる。 ストーリーは理解できるのに、何か確かだったものが不確かになって行く。 そんな感覚を味わいたくて、彼女の小...

川上弘美の小説を読んだ後は、いつも現実とそうでないものとの境界が曖昧になったような心地がする。 それも、最初の話ではそうならず、読み進めて行くほどに何が何だか分からなくなる。 ストーリーは理解できるのに、何か確かだったものが不確かになって行く。 そんな感覚を味わいたくて、彼女の小説を読んでいる気もする。

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2014/04/13

雛形を拾うことで、物語が、始まる。 生きながらえることとはまた違う、物語の始まり。 ーーーーー ときどき、私と本城さんの会話は、こうなってしまう。たぶん、何か大切な一語一文を、私たちは抜かしてしまっているのだ。 ところどころに大きな平たい穴が開いたようなものーー 歩いている...

雛形を拾うことで、物語が、始まる。 生きながらえることとはまた違う、物語の始まり。 ーーーーー ときどき、私と本城さんの会話は、こうなってしまう。たぶん、何か大切な一語一文を、私たちは抜かしてしまっているのだ。 ところどころに大きな平たい穴が開いたようなものーー 歩いていると、私だけが穴に沈み、話しかける本城さんの膝くらいの位置に頭があるようになる、しばらく私は本城さんの膝に向かってあれこれ話しかける、膝は笑ったりのほほんとしたりして、存外普通に会話をかわしてくれる。

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2014/02/20

面白いけど・・・! で、どうしても止まってしまう。 作品世界は濃密だけど、如何せん生かせるだけの実力がなかったように思えて仕方ない。 柔らかい雰囲気だけど、それを裏付ける核がないから、とてもアンバランスで、それが味になる前に生まれてしまった気がする。 芥川賞受賞前の作品、とい...

面白いけど・・・! で、どうしても止まってしまう。 作品世界は濃密だけど、如何せん生かせるだけの実力がなかったように思えて仕方ない。 柔らかい雰囲気だけど、それを裏付ける核がないから、とてもアンバランスで、それが味になる前に生まれてしまった気がする。 芥川賞受賞前の作品、というのも一理ある気がした。 他の作品も読んでみたいけど、再読はないかなー。

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2013/09/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

表題作を含めて4つの物語を収録。いずれも、この作家らしく、日常に非日常がさりげなく紛れ込んでくるという構成。あいかわらず、とぼけた味わいだ。しかし、うまいなあ。この奇妙なリアリティは捨てがたい。雛型がリアルな(?)恋人よりも重いのだから。 この人の場合は想像力というより、もうほとんど空想力という感じだ。幻想というのとも、また違うし、本当に独特のの世界を見せてくれる。

Posted byブクログ