ソクラテスの弁明・クリトン の商品レビュー
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訳出は平易で非常に読みやすい。ソクラテスの弁明とクリトンを両方読むことで、理解が深まる良書。 ◆ソクラテスの弁明 不敬神の罪で裁判にかけられたソクラテスの弁明の様子が書かれている。 以下内容の雑理解と所感。 ソクラテス「なんか神曰く、俺が一番知者らしい。マジで?」 と言う感じで、いろんな知者に会いに行き、本当に自分が一番知者か確かめる。 ソクラテス「こいつ自分では知者だと思ってるけど、知ったかぶりじゃん。俺は知ったかぶりしないと言う意味ではこいつより知者だわ(無知の知)」 と自分の方が格上だと理解。相手にそれを伝えて激怒させまくって回る。 裁判では正論でメレトスを綺麗に論破。 ソクラテス「これってこうだよな?」 メレトス「うん」 ソクラテス「これもこうだよな?」 メレトス「うん」 ソクラテス「じゃあこれおかしいだろ」 メレトス「えーと、それはこうこうこうで(あ〜ソクラテスうぜぇ)」 「いやいやおかしいだろ矛盾してるだろ。なぁ?アテナイの諸君!」 メレトス「(あ〜うぜぇ)」 みたいな感じ。ソクラテスって、権力者からすごい嫌われそう。 裁判では正論&持論で貫き通す。真理に対して誠実というか頑固というか。 ◆クリトン 「ぼくという人間は、ぼくの中にある他の何のものにも従わず、ただ論理的に考えてみていちばんよいと思われる言論のみ従う、そういう人間なのだ」 この一言にソクラテスの全てが表れている気がする。 ソクラテスにとっての、「よく生きる」こととは、「正しく生きる」ことであり、それはつまり論理的に正義なものにしたがって生きる、ということである。 「よく生きる」ことの意味は、人それぞれ異なる。それは人の性格や価値観が異なるからである。ソクラテスの場合は、「よく生きる」こととは、論理的に正義なものにしたがって生きることであって、彼は超頑なまでに彼の理想とする生き方を貫いた(からこそ最後処刑を受け入れるのだが)。ソクラテスの弁明だけを読むと、ソクラテス頑固だな〜〜〜と思うのだが、クリトンを読んで、ソクラテスは自分の良しとする人生を生き抜いた人なんだな、と考えが改まった。 ▶︎「悪法も法なり」に関して ソクラテスが処刑を受け入れる一つの理由に、たとえ無実の罪であっても、 ・アテナイの法律を正す権利 ・アテナイから出て行く自由 (+アテナイに育ち長年住んでいる) を有した上で、国法によって裁かれるのだから、この国法に従わないことは不正であるという。 もし国によって自分が損害を受ける立場になった時に、納得して悪法(もしくはその他の処置)を受け入れられるかな、と考えた。自分がその国のルール作りに真剣にコミットできているか、反省するよい機会になった。損害を受ける当事者になる前に、しっかりと国のあれこれを考える必要があるし、しっかりコミットできているのならば、「悪法に裁かれる」としても、納得感は少しばかりは増えるだろう。
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哲学と呼ばれるものはソクラテス以前にもあったが、西洋哲学はソクラテスから始まったと言われる。 もっとも、ソクラテスの書いた書物はなく、プラトンの書いたものの中に登場するのみである。 そして、プラトンがソクラテスについて書いたものとして、有名なのがソクラテスの弁明とクリトンで...
哲学と呼ばれるものはソクラテス以前にもあったが、西洋哲学はソクラテスから始まったと言われる。 もっとも、ソクラテスの書いた書物はなく、プラトンの書いたものの中に登場するのみである。 そして、プラトンがソクラテスについて書いたものとして、有名なのがソクラテスの弁明とクリトンであろう。 昔の哲学者は、演説や話し言葉調で書かれているため、読みやすくはあるが、冗長になりがちで逆に分かりづらくなることがある。 これも、書いてある文章の意味はとりやすいが、書き言葉に直せばもっと端的に分かりやすくなったのだろうと思う。 なお、原典が裁判上の弁明を書いたものだからそうなっているのであって、訳者の責任ではない。 この本には原文の全訳の後に訳注がついているだけでなく、解題という部分がついている。現代の人の書いた解説である。これはとても分かりやすく書かれていると思う。 書いてあることが本当に真理であるかどうかはともかく、西洋哲学の礎として読む価値のある本だ。
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バーネット版と1995年の新版を底本とした新訳。訳注と解題が非常に詳細で、作品としての弁明、クリトンのほか、そこに見出せるソクラテスの生と死、政治との関わり、知る、知らないとは何についてなのかなど、哲学的内容に踏み込んでいます。まさに、「書物を探求する」一書。読んでよかった。
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割とサクッと読める内容ながら、注釈も多く、中身も深い、良書である。 話だけ知っていた学生の頃は、ソクラテスの事を変人のように思っていたが 実際に本書を読んでみたら、生への執着よりも、名誉や正義を尊ぶ人なのだと共感できた。
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不敬神の罪に問われた法廷で死刑を恐れず所信を 貫き、老友クリトンを説得して脱獄計画を思い止 まらせるソクラテス。「よく生きる」ことを基底 に、宗教性と哲学的懐疑、不知の自覚と知、個人 と国家と国法等の普遍的問題を提起した表題2作 に加え、クセノポンの「ソクラテスの弁明」も併 載。各々に懇切な訳註と解題を付し、多角的な視 点からソクラテスの実像に迫る。新訳を得ていま 甦る古典中の古典。
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古典ですが、ちゃんと現代語訳されてるので非常に読みやすい。巻末の訳注・解説も便利かつ詳しく、サクサク読めます。活字に慣れてる人なら、恐らく数時間あれば読了できるでしょう。 構成としては、理不尽な言いがかりで裁判にかけられたソクラテスが自身を弁護する『ソクラテスの弁明』、それを受けたソクラテスと友人クリトンとのやり取りを記した『クリトン』、さらにソクラテスの弟子のクセノポンという人の視点から書かれた『ソクラテスの弁明』が収録されてます。素直に最初から読むのが正解です。 ソクラテスといえば有名な「無知の知」ですが、これがこの本に収められている『ソクラテスの弁明』に出てくるというのは知りませんでした。前後の文脈が分かると、この言葉の意味がより深く理解できるかなと感じます。 また、同様に有名な「人はただ生きるのではなく、よく生きることが大事である」というのは『クリトン』で述べられています。これも、哲学らしく実はかなり深い意味を持っていたんだということに改めて気づかされました。 うろ覚えのソクラテスによる哲学を、できればラクしてサクッと振り返っておきたいという方には最適の本の一つでしょう。
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無知の知ソクラテスの社会契約論。また、自らの善に従うことの追求。前提として、完璧な自律心がない人間には通じない論理だろう。クリトンとのやりとりは、非常に分かりやすく、相手に物事を説明したり説得したりする上で重要な技術がこの問答に詰められている。ツッコミどころはたくさんあり、そりゃ...
無知の知ソクラテスの社会契約論。また、自らの善に従うことの追求。前提として、完璧な自律心がない人間には通じない論理だろう。クリトンとのやりとりは、非常に分かりやすく、相手に物事を説明したり説得したりする上で重要な技術がこの問答に詰められている。ツッコミどころはたくさんあり、そりゃ屁理屈だろうと斜めに見なければ、哲学の興味深さや清哲な論理の深さに陶酔できる。
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哲学書というととかくとっつきにくく、非常に有名な本書に対してもなかなか手にする勇気がおきなかったが、いざ読みはじめるとどうしておもしろく、気がつけばソクラテスの思想世界にどっぷりハマっていった。有名な「無智の智」という概念をはじめ、非常に示唆に富んだその内容は、やはり一読する価値...
哲学書というととかくとっつきにくく、非常に有名な本書に対してもなかなか手にする勇気がおきなかったが、いざ読みはじめるとどうしておもしろく、気がつけばソクラテスの思想世界にどっぷりハマっていった。有名な「無智の智」という概念をはじめ、非常に示唆に富んだその内容は、やはり一読する価値があるものであったと思い、まずは読み終えたことを素直に誇りにしたい。ただ、それでもやはり簡単には理解できないもので、死さえも畏れずに受け容れる姿勢、あるいは「悪法もまた法なり」(この言葉は直接登場しないが)として、不当な裁判や法律であっても抵抗せずに受け容れるべきだという考えは、その趣旨はわかるけれども、社会全体というおおきな枠組で考えたときに、それがはたしてほんとうに意味があるのかどうか、ちょっと釈然としない。しかし、死刑制度の存廃など、社会問題を議論するうえでも参考になる考えかたであろう。こういう複雑なイシューを、哲学や宗教の論点からのみ検討することは同様に誤りであろうが、しかしある程度の説得力があることもまた事実であり、一方的に死刑賛成とはいえなくさせるような力はある。とにかく、基本的にはすべてにおいてたいへん素晴らしい内容が語られている。哲学をこれっぽっちもわかった気になんてなっていないが(無智の智w)、それでも雰囲気というか、そういう道徳的な感じはじゅうぶんに堪能したつもりだ。そのエッセンスを身体のなかにわずかでも取り込めたことで、今後生きてゆくうえで活かされる場面がきっと来るだろうと思う。
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ソクラテスの公判記録および刑務所の面会。 ソクラテス四大福音書のうちの二つらしい。 ベンジャミン・フランクリンは十三徳の謙譲の項目で、 「イエスおよびソクラテスを見習うべし」としていた。 イエス・キリストの態度は謙譲そのものだったが、 私は正しい人間です!間違っているのはこいつ...
ソクラテスの公判記録および刑務所の面会。 ソクラテス四大福音書のうちの二つらしい。 ベンジャミン・フランクリンは十三徳の謙譲の項目で、 「イエスおよびソクラテスを見習うべし」としていた。 イエス・キリストの態度は謙譲そのものだったが、 私は正しい人間です!間違っているのはこいつです! と主張するソクラテスの姿はこれが謙譲か?と思った。 だが、読み進めるうちに弁舌を行なうソクラテスの姿が、 ゴルゴダの丘を登るイエス・キリストと被った。 裁判で情に訴えるという方法を取らずに自らの立場を説明し、 獄中では、彼を助けるために脱獄を勧めに来た親友に対し、 国が判断したのだから死ぬことが正しいと主張するソクラテス。 キリストもソクラテスも人々によって無実の罪で裁かれたが、 彼等の生き方は書物として残り、後世の我々が模範とする正義となった。 なるほど、これが「善く生きる」ということなのかも知れない。 2017/6/18追記 何とも感傷的で取り留めの無い文章を書いてしまったが、 キリストの謙譲とは善行をしているからと言って高ぶらないこと。 ソクラテスの謙譲とは自分は何も知らないという事実を認めることである。
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表題のプラトン版『ソクラテスの弁明』『クリトン』のほか、クセノポン版の『ソクラテスの弁明』も当書に含まれています。 久保訳はもちろんのこと、当書より後に出版された納富訳と比べても、単純な注釈の数だけでも、また注釈の内容の充実も当書の方が上回っているので、『弁明』『クリトン』を本格...
表題のプラトン版『ソクラテスの弁明』『クリトン』のほか、クセノポン版の『ソクラテスの弁明』も当書に含まれています。 久保訳はもちろんのこと、当書より後に出版された納富訳と比べても、単純な注釈の数だけでも、また注釈の内容の充実も当書の方が上回っているので、『弁明』『クリトン』を本格的に読みたいという方は、当書がその入り口となるのではないでしょうか。
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