東京奇譚集 の商品レビュー
不思議な感覚
5つの作品を収めた短編集。「奇譚集」とある通り、現実ではない不思議な話のはずなのですが……他人から話として聞いたら「ありえない」ことも、起こり得る日常なのかも。そんな不思議さに打たれる一冊。
yama
*日々移動する腎臓のかたちをした石 ・キリエはギリシャ語で「主」という意味 ・主なのに日曜日も働く ・バランスが大事 ・特定の人にのめり込まない ・人称の問題 ・石は捨てても戻ってきた。過去の象徴?は変えられない?全くの自由はありえない? ・高いところが好き。自分で自由に命綱を外...
*日々移動する腎臓のかたちをした石 ・キリエはギリシャ語で「主」という意味 ・主なのに日曜日も働く ・バランスが大事 ・特定の人にのめり込まない ・人称の問題 ・石は捨てても戻ってきた。過去の象徴?は変えられない?全くの自由はありえない? ・高いところが好き。自分で自由に命綱を外せるから、経営。キリエの職業は神だと思えた。 ・腎臓の形をした石は、不倫相手に埋め込んだ。 ・腎臓は体の老廃物を出す”下水処理場”。見えないところで動いている。生活からは見えないようになっているが必須のもの。必須機能。既婚者のとって自分が下水処理機能を担っていること。 ・腎臓石を活性化させている「なにか」とは、良心?正義?このままで良いのか?まっとうさ。健全さ。 ・この物語を駆動するキリエは、自分と世界としか向き合わない神のような存在。村上春樹のような作家であるともいえる。 ・最後の石が消える下りは、どこで語られた物語なのだろう。小説は完結しているはずなのに。創作とリアルの融合。譬喩と現実の融合?物語内物語の意味。夏帆でもあった。 *品川猿 ・名前が変わったのは結婚。職場の体制も契約ができない立場。女性の根こぎが描かれているのでは? ・カウンセラーはみずきも疑いを抱いたように、逸脱した存在。守秘義務を破り、自分の夫に伝えてしまう。おばさん性。 ・みずきは特殊な存在だから名前を失ったわけではない。 ・学校の名札は管理体制の象徴。 ・学校の名札は、今の名忘れとつながっている。過去と現在の重要な関係。 ・松中優子は逆になにもかも持っている生徒。みずきに嫉妬の感情があるかどうか聞きたかった。 ・名札をあずけたのは、自分をわかってほしかったから。それが嫉妬の感情との関係は、自分をうらやましがらないから、センセーショナルに、興味本位に扱わずに、正当に、正面から受け止めてくれそうだから。剃刀での自殺は自分の生を実感したかったから。 ・しかし、嫉妬の感情がないのは自分が大切に扱われていなかったから。夫には面倒なことは言わなかった。その孤独ゆえに優子は名前を預けたのではないか。 ・猿は現代文明から抜け落ちているものの象徴。文明は猿をいじめる。規範性と対立してしまう。 ・親(母)子の業にケジメをつけるのは子(みずき)の側。竜女の伝説のように。 ・品川はかつては宿場町。人とモノが行き交う“通り道・玄関口”の歴史をもつ。行き詰る場所ではなく、通り道。 ・猿が名前をとることで、人間にとっての本質とはなにか?を描ける。また、本質を盗むことはなにかが問える。本質はすべてではないのだ。本質とは愛=エロスの源泉ともいえる。自分にない価値あるもの(美、知恵など)を欲する力。 ・最後は猿に自殺した後輩の名札を与えて、追いやり、自分の名前は返してもらう。これは霊や死を向こうに追いやり、名前という近代性を取り戻す、極めて近代擁護的な物語に終わっている。カウンセリングも宗教の後にやってきた極めて近代的なものだ。それを経て、現実に戻ってくる。それを必要とせずに。猿が駆逐されるのは前近代的なものの敗北であるようだ。 ・この後、母との対決はありうるのか?夫婦の結合はありうるのか?子孫を育むことはありうるのか? *偶然の旅人 ・形のないものを選べ ・姉の涙に胸を打たれる。この期間に何があったのだろう。いや、乳がんの手術を控え、まさに弟との確執がいちばんの懸案だったのだ。 *ハナレイ・ベイ ・子を亡くした母。異国でサーフィンの最中にサメに噛まれて、溺死。余韻はすごくある。追って現れる日本人二人組も憎めない。 *どこであれそれが見つかりそうな場所で ・世にも奇妙な物語のよう。どこにも行かない物語だが、本流ではない、空間と人々がいることがわかったのは楽しい
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村上春樹さん 新潮社2007年12月発行 短編5編 大切な誰かを思いながら読みます ・偶然の旅人 10年も音信不通だった姉に会えて良かった きっかけは、ほんの偶然だとしても ・ハナレイ・ベイ 息子が亡くなったその場所に、3週間過ごす母 大切な場所に変わっていく ・どこであれそ...
村上春樹さん 新潮社2007年12月発行 短編5編 大切な誰かを思いながら読みます ・偶然の旅人 10年も音信不通だった姉に会えて良かった きっかけは、ほんの偶然だとしても ・ハナレイ・ベイ 息子が亡くなったその場所に、3週間過ごす母 大切な場所に変わっていく ・どこであれそれが見つかりそうな場所で 20日ぶんの記憶が消滅しても戻ってこれてよかった ・日々移動する腎臓のかたちをした石 本当に意味を持つ女は3人しかいない という父の言葉を考え、誰かひとりを受容しようという気持ちを理解する。ってすごく大事 ・品川猿 私もいつか記憶がなくなったとき、ふとこの話を思い出したい。心を惹かれる名前ではなく、心を惹かれる記憶を盗まれたと思いたいから…
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
中編集だったので読むのをためらっていたし、冒頭がエッセイなのか?と思える文章だったので。 気持ち新たに読んでみたらこれはやっぱり、 他のと違うというイメージ。 らしさはあるからそれぞれの中編を楽しめた。 「奇譚」の名の通りちょっとゾッとしたり妙なポッカリとした気持ちになったり。
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いきなり自己紹介からはじまるからエッセイかと思ったがそんなことはなかった。 不思議な話5選。 一言で済む事を何行にも渡って寄り道して伝える感じが癖になる。
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ブクログでオススメしてもらった作品 文学作品はどうも苦手で 村上春樹もなかなか手が出なかったのですが こちらは読みやすかったです(^^) ちょっと不思議な5つの短編集でした。 この不思議な雰囲気と、 村上さんの書く文章と、 短編の長さがちょうどよかったです ちょっ...
ブクログでオススメしてもらった作品 文学作品はどうも苦手で 村上春樹もなかなか手が出なかったのですが こちらは読みやすかったです(^^) ちょっと不思議な5つの短編集でした。 この不思議な雰囲気と、 村上さんの書く文章と、 短編の長さがちょうどよかったです ちょっとした時間に 不思議な世界に浸ることができて 短編なら村上さんの作品も楽しめるかもと 思わせてくれる作品でした(^^) 20年近く前の作品なのに 色褪せず楽しめるのはすごいですねー 一人称単数も読んでみようかな(^^)
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『回転木馬のデッド・ヒート』系列のすこし・不思議な話の短篇集である。この本が出た2005年はまだ本屋さんをやっていて、巻頭の短篇「偶然の旅人」が載った「新潮」誌を普段より多く仕入れて文芸書コーナーに平積みしてみたりしたなあ(特に売れなかった)。 「偶然の旅人」村上春樹のジェンダ...
『回転木馬のデッド・ヒート』系列のすこし・不思議な話の短篇集である。この本が出た2005年はまだ本屋さんをやっていて、巻頭の短篇「偶然の旅人」が載った「新潮」誌を普段より多く仕入れて文芸書コーナーに平積みしてみたりしたなあ(特に売れなかった)。 「偶然の旅人」村上春樹のジェンダーや性的マイノリティの描き方にはちょっとフェアとはいえないような部分があるような気がするのだけど、当事者ではないのではっきりと断言ができない。この話もゲイ当事者が読んだらどう感じるのだろうと思う。あとアン・タイラーに『アクシデンタル・ツーリスト』という小説がありますが、これと関係あるのかしら(小説は読んでないけど映画を見た。内容はとくに関連しないと思う)。 「ハナレイ・ベイ」この話に出てくる大学生のサーファーもことさらバカみたいに描かれていてちょっと不愉快である。 「どこであれそれが見つかりそうな場所で」びっくりするほど印象に残らない。 「日々移動する腎臓のかたちをした石」この話がいちばん面白かった。幕切れが見事。 「品川猿」羊とか烏とか、動物をこういう風に使うよなあという感じ。 全体に、小手先でちょこちょこと書いた感を感じてしまいました。
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偶然の旅人、が一番今の気分に合致。偶然の一致は日常的なありふれた現象だけど、見過ごされているだけ。素敵な考え方です。
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村上春樹短編集2冊目。 「女のいない男たち」よりも前の作品にあたる。内容としてはこちらの方が響くものがある。「ハナレイ・ベイ」は特に。不思議と響く。
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短編中、あまり期待していなかったけど、面白かった! 偶然の旅人、ハナレイ・ベイ、どこであれそれが見つかりそうな場所で、日々移動する腎臓の形をした石、品川猿の5つのお話。
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