破戒 の商品レビュー
専ら現代小説ばかり読むから、近代の作品は古いものと比べて下手に読めるから苦手。漱石や芥川、太宰位しか読まなかったけれど、始めて藤村に手を出してみた。 部落差別の問題とそれに悩む瀬川君。最初は読みにくいなと思っていたけれど、登場人物が増えるに従って物語の展開が面白くなって来る。気が...
専ら現代小説ばかり読むから、近代の作品は古いものと比べて下手に読めるから苦手。漱石や芥川、太宰位しか読まなかったけれど、始めて藤村に手を出してみた。 部落差別の問題とそれに悩む瀬川君。最初は読みにくいなと思っていたけれど、登場人物が増えるに従って物語の展開が面白くなって来る。気が付いたら時間も忘れて熱中していた。 校長先生には怒りを覚えたし、その甥は甥で行き場のない憤りがある。悶々と悩む瀬川君に対し、心から接してくれる友人たちの姿。 ちゃんと読んでみると、少し言葉遣いが古いだけであって、内容としては今読んでも面白い。今こそ部落差別など死語のようになってきているけど、差別としては残ってるわけで、今だからこそ読むべき作品なのかな
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この本について何かを言うには自分にはまだまだ知識も経験も足りていないように思える。被差別階級、そんなものが日本にあって、その人たちがどんな扱いを受けてきたのか。この本を読むまでそんなことを考えたことはほとんどなかった。もちろん知識として知ってはいた。教科書にも載っていた。でもそれ...
この本について何かを言うには自分にはまだまだ知識も経験も足りていないように思える。被差別階級、そんなものが日本にあって、その人たちがどんな扱いを受けてきたのか。この本を読むまでそんなことを考えたことはほとんどなかった。もちろん知識として知ってはいた。教科書にも載っていた。でもそれだけだったのだ 自分は世の中でどういった存在なのか。世の中に自分以外どんな人々が暮らしているのか。知らなくてはならないことがたくさんあると感じた
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主人公は瀬川丑松という青年で、先祖は被差別身分の人でした。 明治時代、士農工商という身分がなくなった、というのはご存じの方も多いでしょうが、それと同時に、その士農工商の外にいた被差別身分の人たちも普通の人になりました。 制度的な差別がなくなった、とはいえ、人々の中の偏見は残ってい...
主人公は瀬川丑松という青年で、先祖は被差別身分の人でした。 明治時代、士農工商という身分がなくなった、というのはご存じの方も多いでしょうが、それと同時に、その士農工商の外にいた被差別身分の人たちも普通の人になりました。 制度的な差別がなくなった、とはいえ、人々の中の偏見は残っています。 もともと被差別身分の出身者だとわかれば、社会から追放されてしまうような時期です。 その被差別身分の出身であることを誰かにも明かしてはいけない、それがこの主人公が父から何度も言われている戒めです。 その一方で、彼が先輩と慕う人は被差別身分であることを明かして社会から追放されてもしぶとく活動をしている人でした。 彼はその先輩にひどく惹かれていきます。 けれど、彼は惹かれている相手にすら自分のことを隠しています。 隠しているから、まだどこか先輩と自分が隔てられているように感じてしまいます。 彼は先輩にだけは自分の秘密を打ち明けようと決心します。 同じ頃、地域である噂が広まります。 彼が働いている学校でその被差別身分出身の先生がいること。 そんな人には教えてほしくない、と人々はささやきます。 もちろん、それは彼のことです。 彼は身分を隠しているので、あたかも普通の人として扱われています。 生徒から尊敬もされています、友だちもいます。 けれど、彼らは何も知りません。 知らないから、彼とその被差別身分の出身者のことを話して悪く言います。 彼の他にも被差別身分出身の登場人物が何人か出て来ます。 その人たちと、何も知らない人たちの言葉からその被差別身分の人たちがどんなに息苦しい生活をしていたかが想像できます。 話を聞きながら、丑松は『人間は平等である』と思います。 思いながらも、そうやって反論することができません。 そういう心の叫びを抱えた人は今もまだ世界にたくさん存在していると思います。 被差別身分の出身でなくても、ちょっとした他者との違いでつまはじきにされてしまう場合もあります。 他人と違うこと、個性的であること、それはそんなにもいけないことなのかな、と思います。 これだけ人間がいるんだから、みんな違うのなんて当たり前。 マイノリティが差別されない世の中になることを祈ります。
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泣けました。本書から察するに、差別する側も差別される側の当時の状況も公平な目で描いているのではと思います。その上で信州の田舎の生活、風情などの美しい描写、登場人物の貧しいながらも生き生きとした描写などは素晴らしいと思います。だからこそ、丑松の行動も、とってつけたような結末も許容出...
泣けました。本書から察するに、差別する側も差別される側の当時の状況も公平な目で描いているのではと思います。その上で信州の田舎の生活、風情などの美しい描写、登場人物の貧しいながらも生き生きとした描写などは素晴らしいと思います。だからこそ、丑松の行動も、とってつけたような結末も許容出来るほど、感情移入して読んでしまった。当時の状況下では、部落出身者である事が判明すれば、職を追われるのは致し方なしという結論になるのも納得出来ました。 本書解説に詳しいが、部落問題の歴史から考えると部落解放を訴えているわけでは無く、むしろ問題からの逃避に近い結末で非常に扱いの難しい作品のようですが、作者本人も過去のものだと後に認めているように、当時の状況を馴染みやすいフォーマットで現代に伝えるには非常に良い小説だと思う。
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読む前の想像とは全然違って、なんて清々しい話だろうと思った。 読むのに時間がかかったが、読んで良かった。 世に名作と受け継がれる作品は、やはり読むに値するということか。 人生を己に誠実に生きること。 生きるということに、真面目に向き合うこと。 それが肯定される物語には、やはり素...
読む前の想像とは全然違って、なんて清々しい話だろうと思った。 読むのに時間がかかったが、読んで良かった。 世に名作と受け継がれる作品は、やはり読むに値するということか。 人生を己に誠実に生きること。 生きるということに、真面目に向き合うこと。 それが肯定される物語には、やはり素直に心を動かされる。
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2009年に既読。当時18歳の私には難しい内容だったが差別について考えさせられるものだった。あと情景描写がきれい。
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学生時代文学史で習ったものの、実際に読むのは初めて。身分の差、部落出身ということがここまで個人の人生に重くのしかかる時代。現代でも当然差別はあるが、今の時代に感謝。丑松はテキサスに行って、向こうで納得できる人生を送ったのか、とその後が気になる。
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瀬川丑松は小諸出身の小学校教員であり、部落民である。彼は父の「隠せ」という戒めを厳に守り、一般の人々に紛れて生活をしていた。 しかし、同じ部落民の猪子連太郎の生き様に触れ、彼と交流するうちに、自分の出自について告白をしようという思いを徐々にあらわにし始める。 父の戒めを守...
瀬川丑松は小諸出身の小学校教員であり、部落民である。彼は父の「隠せ」という戒めを厳に守り、一般の人々に紛れて生活をしていた。 しかし、同じ部落民の猪子連太郎の生き様に触れ、彼と交流するうちに、自分の出自について告白をしようという思いを徐々にあらわにし始める。 父の戒めを守るか、告白(=破戒)をするか、様々な思いに揺れ動くなか、丑松の下した決断は…? ****** 世が日露戦争のさなか、島崎藤村が「人生の従軍記者」にならんと考えて執筆、自費出版した力作。発表当時から、現在にいたるまで、文学の世界ではその賛否が大いに議論されてきた作品である。(研究点数は、ゆうに300本を越える。) また、いわゆる「部落問題」を文学のテーマとして真正面からとらえた最初期の作品だともされている。もちろん、これ以前にも部落の人々の生活を描いた作品はあるが、ある問題意識をもって描いたのはこれがはじめてというのが定説となっている。 透谷との影響関係もほのかに感じられるような、浪漫的要素も読みとれる。とにかく、何度読んでも発見が多い作品。一度読んでみて、様々なことについてあれこれ考えてみるといいかもしれません。
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穢多に生まれた主人公。 その素性を隠し生きて来たが、ある日暴かれてしまう。穢多である事を告白し、新たな人生を歩む。 父の戒めを破る。そこに至るまでが話の9割。ラスト1割は引き込まれた。ちょっと希望がありそうな終わり方だったのも良かった。 こういう本を読むと差別社会は悪だ...
穢多に生まれた主人公。 その素性を隠し生きて来たが、ある日暴かれてしまう。穢多である事を告白し、新たな人生を歩む。 父の戒めを破る。そこに至るまでが話の9割。ラスト1割は引き込まれた。ちょっと希望がありそうな終わり方だったのも良かった。 こういう本を読むと差別社会は悪だと思うが、養老孟司とかを読むとインドのカースト制が例に挙げられたりして善だと思ってしまう。 自由を知ってしまった不幸 と 自由を知らない幸福 最近 良く思うのが、開けない方がいい箱もある。
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最近、差別系のものをよく読む。色々と考えさせられます。 自分を貫くことの大切さ。そして、周りの人たちを想うことの大切さを改めて実感した。
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