笑う男 の商品レビュー
久し振りのイ-スタ署のヴァランダー警部、冒頭から正当防衛で殺した事件で悩んでいる。転地しても効果がなくうつ状態は深まるばかり。 そこに友人の弁護士が尋ねてくる、父親が交通事故で死んだが、腑に落ちないので調べて欲しいと言う。ヴァランダーは警官を辞めようかと思っているときであり、断っ...
久し振りのイ-スタ署のヴァランダー警部、冒頭から正当防衛で殺した事件で悩んでいる。転地しても効果がなくうつ状態は深まるばかり。 そこに友人の弁護士が尋ねてくる、父親が交通事故で死んだが、腑に落ちないので調べて欲しいと言う。ヴァランダーは警官を辞めようかと思っているときであり、断ってしまった。 帰宅して新聞でその友人が射殺された記事を見る。 彼は負い目を感じ、やっと前向きに立ち上がれそうな予感がする。 重い腰を上げて復帰、早速父親の事故から調べ始める。 暫く空けていた署内は、新人のアン=ブリッド=フーグルンドが配属されていた。女刑事と言うのが気に入らなかったが、頭も切れ、その上美しい彼女は、戦力になりそうな有望株だと思えた。 父親の秘書の庭に地雷が埋められ、自分の車に爆破装置を仕込まれたが生き延びる。県庁の会計捜査官が自殺をする。 次々に起きる事件を繋いでるかのような、姿を見せない富豪の城主が何か気にかかる。彼は5年前に郊外の城を買って住み始めた。県内あちこちの施設の高額の寄付をし、研究費を補助し、尊敬されている人物だった。 ヴァランダーは挨拶目的で彼に会う。城はがっちり固められたセキュリティーの中にあった 非常に紳士的で隙のない男だったが、顔に笑みを張り付かせた様子はなにかひっかった。しかし事件の根拠がわからない。また思い惑う。ハーデルベリ(城主)に関する情報を確認する捜査に一週間かかった。その間、ヴァランダーもほかの者たちも、平均して5時間も眠らなかった、あとで彼らはその一週間を振り返って、必要とあらば自分たちも高度の捜査能力を発揮することが出来ると実感したのだった。 オーケソン検事は言う「この捜査法は時が着たら、警察本庁と法務省がイースタモデルという名で一般に公開することになるだろう」(略) 「私の云っているのは、警察本庁のお偉方の捜査会議のことだ。また政治家のまか不思議な世界のことだ。大勢が集まって 御託をならべて<アリを篩にかけ、ラクダを飲み込む>ようなことばかりしているではないか。彼らは実際の仕事をしないで毎晩就寝時に明朝目が覚めたら水がワインに変わっていますようにと祈っているようなものだ」 なすすべも無く、時間が過ぎた。 署長のビュルクは相変わらず事なかれ主義で、城主に対しても弱腰である。しかし鑑識のニーベリやオーケソン検事に励まされ、同僚も休み返上で動く。ヴァランダーは少しずつ前進する。 今回は、完璧に武装した城の中に潜入して調べたいという焦りと、若くして成功した世界的な事業主の闇を暴こうとする執念が、非力なヴァランダーの支えになっている。 彼の家庭や親子のつながりなど、多くの紙数を費やして、彼の人柄を浮き彫りにしている。事件を負いつつ、同僚や上司の人物の描写も多い。 いつもの「何かおかしい」というヴァランダーの天性の勘と経験に裏打ちされた警官の心が、物語を牽引する。 格好のいい警官ではない、逆に悩みも多く、たまにはそれに負けて逃げようとする、そんな身近な人となりが、読者を捕らえている。 11月初めに起きた事件は複雑な背景を持っていたが、クリスマス前にやっと目処がつき片付く。 最後、ダイハードもどきのヴァランダーの活躍にはビックリした。
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スウェーデンのヴァランダーシリーズ第4弾。 あらすじ 前作で正当防衛とはいえ人を殺してしまったヴァランダーは休職中。そこへ友人が訪ねてくる。田舎の弁護士だった父親には、国際的な企業が顧客であり、つい最近事故死したという。一旦捜査を断ったヴァランダーだが、後日友人が何者かに射殺されたことを知り、現場に復帰する。相手は、町外れの城に住む、大企業のトップ。自分の車を爆破されたりしながら相変わらず単独で向かっていく。 突然の勘?感や思い込みで行動するヴァランダー。感情が激しすぎて警察組織ではついていけなさそう。今回からできる女性刑事が加入。世代の違いや社会の変化を感じながら協力する。臓器移植が出始めっていうのも面白い。タイトルの笑う男とは、黒幕のトップのこと。
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前作と全く異なり、一気に読んでしまいました。いきなり彼の歳が上乗せされていて驚きましたが…。迷いながら、怯えながら(人間の弱さを見せながら)それでも行動してしまうヴァランダーをちょっと見習わねば(笑) ただ、エンディングで一気に片付きすぎな感もあります(作者の癖か?) それと愛車...
前作と全く異なり、一気に読んでしまいました。いきなり彼の歳が上乗せされていて驚きましたが…。迷いながら、怯えながら(人間の弱さを見せながら)それでも行動してしまうヴァランダーをちょっと見習わねば(笑) ただ、エンディングで一気に片付きすぎな感もあります(作者の癖か?) それと愛車の古いプジョーは1作目で...以下略w 新人の女性もいいですねぇ。あとがきにもびっくり! 次作が楽しみ。 一気読みだったので、明日にでももっとじっくりと読んで楽しもうっと。
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クルト・ヴアランダーシリーズの4作目。 一見、情けない中年男なのに芯の太い正義感の強い男。 残り少ないページ数で不安になったが『笑う男』との対決の決着のつけ方は文字通り手に汗握るシーン。 続きも楽しみ。 六年後の今日、再読 読了。 なぜか、ヴァランダーを再読したくなる。 六年前は、字面を読むだけだったけれどずっと読んできている読者にとってあまりにも自身を投影出来る人物になってきている。それだけ自分自身もある意味到達したのか?否、年齢を重ねてきているというだけなのかもしれないが。 小説の内容には触れずにおくけれどヘニングマンケルのいない今、ヴァランダーを再読するのは年齢を実感してまた、自分を見つめ直すことになると言うこと、強く感じている。
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<クルト・ヴァランダー>シリーズ4作目。ヴァランダーようやく再生の巻。相変わらずハードな展開でよれよれの割には不死身すぎだが、主人公の魅力(?)と、登場人物たちがうまく脇を固めている為最後まで一気に読ませてしまう。今回はお疲れ様のご褒美があって良かった。
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図書館で。 個人的に思ったのは身近で言うと千葉県警が日本を背負って立つような大企業の創立者に挑むような話なのでどうするのかなあ〜こんなのとやりあえるのかしら?と思っていたのですが。思った以上に悪い人がおしゃべりでびっくり。まあいいですけど。 続きもあるみたいなのでまた借りて読...
図書館で。 個人的に思ったのは身近で言うと千葉県警が日本を背負って立つような大企業の創立者に挑むような話なのでどうするのかなあ〜こんなのとやりあえるのかしら?と思っていたのですが。思った以上に悪い人がおしゃべりでびっくり。まあいいですけど。 続きもあるみたいなのでまた借りて読んでみようかなと思います。
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今まで読んできたこのシリーズの中では、一番ミステリーらしい作品。 主人公がショックから立ち直って動き出す様子も良いし、 有能な女刑事が登場したのも良い。 シリーズ冒頭からぐだぐだだった主人公の人生が、 ようやく持ち直し始めたという感じ。
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刑事ヴァランダーシリーズ、第4弾です。 前回、人を殺めてしまってから、 心を病んでしまい、休職しているところから 話は始まります。この辺りを丁寧に描いてくれるところが、この小説の好きなところ。 知り合いの弁護士が殺された事件をきっかけに刑事に復職してからは、キレ味のよい捜査を見せ...
刑事ヴァランダーシリーズ、第4弾です。 前回、人を殺めてしまってから、 心を病んでしまい、休職しているところから 話は始まります。この辺りを丁寧に描いてくれるところが、この小説の好きなところ。 知り合いの弁護士が殺された事件をきっかけに刑事に復職してからは、キレ味のよい捜査を見せ、ラストはいつものあまり格好良くないアクションシーンがあって解決。 バイパとの関係も気になるし、次回も期待です。
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読了までにえらく時間が掛かってしまった。最初から犯人がわかっている状態で発生する殺人事件。城に籠もる世界的な企業のトップに田舎町の警察官である主人公がどうやって挑むのかが作品の読ませところのはずだったが、なかなか進まない捜査に少々うんざり。石が転がり出せば早かったが、予想範疇の結...
読了までにえらく時間が掛かってしまった。最初から犯人がわかっている状態で発生する殺人事件。城に籠もる世界的な企業のトップに田舎町の警察官である主人公がどうやって挑むのかが作品の読ませところのはずだったが、なかなか進まない捜査に少々うんざり。石が転がり出せば早かったが、予想範疇の結末にあまり評価はできなかった。エンディングは良かったけどね。
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シリーズものと知らずに読んでしまった。 頭の中ですごく映像化しやすくて、 時節柄ヴァランダーは007のダニエル・クレイグを 思い浮かべながら読んだ。 そういえばハリウッド超大作!って最近少ないような 気がするけど、スパイものとかで正当防衛のために 相手を殺すシーンってやたらたくさん出て来てた記憶があり、 だからヴァランダーが1年以上も休職し、 あてもなく浜辺をさまよう姿を想像して 職業で拳銃を持っている人の命に対する思いは 本来こういうものではないかと感じた。 まだその時ではない 作品中何度か出てくるフレーズは 見えない事件を一刻も早く解決したいという焦りを ふっと落ち着かせる効果的な言葉で、 日ごろあわてものの私に教訓めいた言葉でもあった。
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