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心のなかの冷たい何か の商品レビュー

3.4

32件のお客様レビュー

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2024/07/20

作者と同姓同名である、若竹七海が主役を務めるシリーズの二作目にして、(恐らく)最後の作品。 前作同様凝った構成が目を惹きますが、こちらはハードボイルドの雰囲気が色濃い印象で、後に発表される葉村晶シリーズへの繋がりが感じられます。 作者の持ち味であると思われる、悪意や狂気といっ...

作者と同姓同名である、若竹七海が主役を務めるシリーズの二作目にして、(恐らく)最後の作品。 前作同様凝った構成が目を惹きますが、こちらはハードボイルドの雰囲気が色濃い印象で、後に発表される葉村晶シリーズへの繋がりが感じられます。 作者の持ち味であると思われる、悪意や狂気といった歪なものを抉り出す技巧が、すでに確立されているのも見事でした。 もう一つの持ち味である軽快さは影を潜めていますが、この重くて暗い内容はイヤミスと呼ぶに相応しい一冊ではないかと思います。

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2023/11/06

中編2編の連作。旅で知り合った女性が自殺未遂をし、彼女から「手記」が送られてきた。手記に沿った形で事件の真相を追う。叙述トリックがお見事。第1話の最後はあっけに取られ「そうかー」と唸り、第2話はさらにその手記を深く掘り下げながら真実に対峙する。けっこう重い内容だった。

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2022/10/01
  • ネタバレ

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若竹七海に送られてきた、一ノ瀬妙子からの手記。彼女はガスによる植物状態になっていた。その中身は「ねえさん」へ訴えかける罪の告白であり、そこは瀬沼透の手記。最後には妙子が透を止めるシーンがあって、妙子は石井友代のことで会社に潜入していた、というところで終わる。 パニックになったけど、ここまでが妙子の手記で、第2章では七海が妙子の周りにあたって犯人を突き止めようとする。手記と人物が一緒なのに役割が違っていて混乱するけど、とめられないほど恐ろしいし、面白い。人の悪意とか自分よがりなところが出ている。救いは?

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2022/05/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

若竹七海シリーズ二作目。 前作「ぼくのミステリな日常」の明るさとはうって変わって、 暗かった。 社内報を任され重責にあえぎながらも楽しんでいたのに対して、 今回は「悪夢のような出来事」があって その会社にいられなくなったせいなのか。 (そういえば、前作の社内報で暴かれた殺人のせいなのか?) それとも、自分が勝手に前作の中に、 バブルの香りをかいで浮かれていたのか。 とにかく退職後ひきこもっていた七海が、 突然箱根に旅に出たことから話がはじまる。 ロマンスカーの中で一人の女性に出会い、 後日彼女から手記を託されたために、 彼女が勤めていた会社に勤め始める…、 という話だと思っていた。 なので、途中で驚いて、ちょっと訳が分からなくなってしまった。 手記の中のサイコパスの自分語りは、 かなりたんたんとしていて、本当にありそうな感じで怖かった。 あとは、七海の大学時代の先輩=同級生=後輩で、 バーでのバイトを誘ってくれた力也が いい味を出していた。

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2022/04/09

葉村晶シリーズと葉崎市シリーズを読み尽くし、単発物を探していたときにこの作品に行きあたった。 若竹七海の描く、コージーでありながらブラック、ユーモラスでありながら毒がある作品の虜なんだけど、この作品はなんだかよくわからなかった。 確かに毒は効いている(毒殺犯が出てくるぐらいだか...

葉村晶シリーズと葉崎市シリーズを読み尽くし、単発物を探していたときにこの作品に行きあたった。 若竹七海の描く、コージーでありながらブラック、ユーモラスでありながら毒がある作品の虜なんだけど、この作品はなんだかよくわからなかった。 確かに毒は効いている(毒殺犯が出てくるぐらいだから)、なんだけど〜作中作のような「手記」なるものの扱いに苦労したのだ。 そして、たった1回会っただけで友達認定して、最後まで死者に翻弄された主人公も結局何だったのか。七海と友人・ラビの会話も暗示的すぎて手に負えず、敢えなく敗退。 それでも社会がバブルで浮かれまくっていた時代に胡散臭さを感じ、「暗い話でも書いてやろうじゃないか」と暗〜いクリスマスの話を書いた若竹さんの姿勢が大好きです。

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2022/01/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

一番に思ったことは、頬を引っ叩くシーンが多いなぁということ。こんなに人の頬を叩くことってありました? 時代なのかしら。バブルの…。 旅先で知り合った妙子からかかってきた電話で、クリスマス・イヴの約束をした七海。その数日後、妙子が自殺未遂をして植物状態に。しかも七海の元に彼女から手記が送られてきて――。 真相を知るために七海が動きます。 手記のところで勘違いをした私は二度読みしてしまいました(笑) 全体的に陰鬱な気持ちでモヤモヤとしたまま読み終わりました。そういう作風で書いた小説のようですから読み方としては正しいのかなぁ。うーん。

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2021/09/04

長らく入手困難だったそうで文庫化されたのも去年の12月中旬。 すじもクリスマスイブに向かってにぎやかに、華やかに、怖くたどっていくもの。 同時進行だとよかったのだが読み終わったのが年も明けてで、 もう一度戻りかえったような気がした。 バブル崩壊前とてさぞや派手なクリスマス週間...

長らく入手困難だったそうで文庫化されたのも去年の12月中旬。 すじもクリスマスイブに向かってにぎやかに、華やかに、怖くたどっていくもの。 同時進行だとよかったのだが読み終わったのが年も明けてで、 もう一度戻りかえったような気がした。 バブル崩壊前とてさぞや派手なクリスマス週間だったろうと想像できる時。 主人公「若竹七海」は恐ろしい「手記」を読むことになる。 自殺未遂で植物人間になってしまった友の「手記」。 二重にも三重にももつれもつれた人間関係。 心の闇。 その恐ろしさはしかし、現在普通のことである。 いや、あまりにも見聞きする事件である。 だから、怖ろしい! 昨日も何ものかが閑静な住宅地で母娘を包丁殺傷した事件があったばかり。 去年は東海地方で母を毒薬中毒に追い込んだ娘の事件。 「心のなかの冷たい何か」 バブル期の華やかさの中では一層悲惨だったろう。 15年前に読んだ人はさぞや暗い気持ちになっただろう。 と、思う慣れてしまった今が怖い。 玄関のドアは注意して開けよう、いや、心のドアもやすやすと開けてはいけないんだ。 なんて、嫌な世の中。

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2018/10/15

「わたし」こと若竹七海の毒に当てられ、暴走気味の探偵行に若干引きつつも、その辺のイタさをまたしも逆手にとっていて感心することしきりである。そうはいっても奇策を弄して読者を煙に巻くというんではなく、その根っこには直球勝負を望んでいる作家像が見え隠れする。「わたし」の友人で、ロマンス...

「わたし」こと若竹七海の毒に当てられ、暴走気味の探偵行に若干引きつつも、その辺のイタさをまたしも逆手にとっていて感心することしきりである。そうはいっても奇策を弄して読者を煙に巻くというんではなく、その根っこには直球勝負を望んでいる作家像が見え隠れする。「わたし」の友人で、ロマンス作家でもあるラビのこんな台詞に若竹七海の作家魂をみた気がする。「でも映画や小説や音楽やそんなもののなかからストーリーや状況を使いながらも、もっとなにか本当のことを下敷きにして話ってのは作られていくもんさ」。

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2017/11/09

第1部の終わりで混乱。 今まで誰目線で読んでいたのか。 これは続けてもう1度読むと理解できて面白いのかもしれない。 ーーー 失業中のわたしこと若竹七海が旅先で知り合った一ノ瀬妙子。強烈な印象を残した彼女は、不意に電話をよこしてクリスマス・イヴの約束を取りつけたかと思うと、間もなく...

第1部の終わりで混乱。 今まで誰目線で読んでいたのか。 これは続けてもう1度読むと理解できて面白いのかもしれない。 ーーー 失業中のわたしこと若竹七海が旅先で知り合った一ノ瀬妙子。強烈な印象を残した彼女は、不意に電話をよこしてクリスマス・イヴの約束を取りつけたかと思うと、間もなく自殺を図り、植物状態になっているという。悲報に接した折も折、当の妙子から鬼気迫る「手記」が届いた。これは何なのか、彼女の身に何が起こったというのだろう? 真相を求めて、体当たりの探偵行が始まる。

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2016/06/11

若竹七海、ノンシリーズの初期作品。 著者ならではの、探偵役のキャラクターがよい。表面はドライでクールな20代半ば以降の女探偵だが、他人とのコミュニケーションに悩み、自分の限界に苛立ち、世の中の理不尽さに憤慨する、つまりいかにも人間らしい内面を持っている。 淡白になりすぎず、かとい...

若竹七海、ノンシリーズの初期作品。 著者ならではの、探偵役のキャラクターがよい。表面はドライでクールな20代半ば以降の女探偵だが、他人とのコミュニケーションに悩み、自分の限界に苛立ち、世の中の理不尽さに憤慨する、つまりいかにも人間らしい内面を持っている。 淡白になりすぎず、かといってクドクならない絶妙な書き口とこの人物描写によって、少しだけひねってある話をとても良好なエンタメに化かしていると思う。 昔より、よさが分かるのが嬉しい。人物の造形は特に。 3+

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