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歩兵の本領 の商品レビュー

3.9

90件のお客様レビュー

  1. 5つ

    21

  2. 4つ

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  3. 3つ

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2019/06/12

2019.6.12 36 星の数と飯(メンコ)の数。 高度経済成長期の自衛隊の中の若者たちの青春の物語。ホンネとタテマエ、それは、制度だけでなく、組織の中で生きる者たちの中にもあるものなのだろうか。相手を思ってないようで思ってて、思ってるようで思ってない。軍隊には落ちこぼれがいな...

2019.6.12 36 星の数と飯(メンコ)の数。 高度経済成長期の自衛隊の中の若者たちの青春の物語。ホンネとタテマエ、それは、制度だけでなく、組織の中で生きる者たちの中にもあるものなのだろうか。相手を思ってないようで思ってて、思ってるようで思ってない。軍隊には落ちこぼれがいないというけれど、なるほどとうなずかされた。一つ一つの話が面白くて、一気に読んでしまった。

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2018/12/09

1970年頃の自衛隊を舞台にした短編集。戦争の記憶を引きずる川原准尉の話(若鷲の歌)内務が悪い小村二士が半長靴を失くして戸惑う話(小村二等兵の憂鬱)和田士長と渡辺一士の諍いの話(バトル・ライン)青年援護会の借金に喘ぐ赤間一士の話(門前金融)これから自衛隊に入営する米山の話(入営)...

1970年頃の自衛隊を舞台にした短編集。戦争の記憶を引きずる川原准尉の話(若鷲の歌)内務が悪い小村二士が半長靴を失くして戸惑う話(小村二等兵の憂鬱)和田士長と渡辺一士の諍いの話(バトル・ライン)青年援護会の借金に喘ぐ赤間一士の話(門前金融)これから自衛隊に入営する米山の話(入営)佐々木二士と今野二士の初外出の話(シンデレラ・リバティー)自衛隊の連帯に怯え、脱柵を計る高津二士とバディの佐藤二士の顛末を描いた(脱柵者)元旦の不審番となった赤間一士の話(越年歩哨)満期除隊をする二士と坂崎一曹の話(歩兵の本領)。全編に自衛隊の組織の中の人間として絆が強く描かれている。

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2018/10/23

団塊世代が若かりし日の自衛隊の物語。当時は、ゲバ棒をもった革命家気取りの馬鹿学生が、自衛隊を目の敵にして、マスコミもそれに同調するような世相だったそうだ。しかも時は、高度成長期。一般企業ではどんどん給料も上がっていく中、3K+薄給の自衛隊に入る若者たちには、さまざまな事情があった...

団塊世代が若かりし日の自衛隊の物語。当時は、ゲバ棒をもった革命家気取りの馬鹿学生が、自衛隊を目の敵にして、マスコミもそれに同調するような世相だったそうだ。しかも時は、高度成長期。一般企業ではどんどん給料も上がっていく中、3K+薄給の自衛隊に入る若者たちには、さまざまな事情があった(なので、この若者たちは世間をシャバと呼ぶ)。一言では言い尽くせない個々人が抱える事情。これを軸に何本かの物語がこの本を形成する。なんとも形容しがたいオリのようなものが心に残る物語であった。

Posted byブクログ

2018/10/19

自衛隊へ勧誘されて入隊した若者の経験を描く。1970年代の自衛隊の様子が描かれる。まだ旧軍体験者が少数だが残っていた時代だ。作者も自衛隊の経験者だと解説にあった。

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2018/10/08

短編集、大戦後の左翼日本社会で防人となった自衛隊員の青春物語、泣ける、近代日本史好きおすすめ、読んで損なし

Posted byブクログ

2018/06/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

目次 ・若鷲の歌 ・小村二等兵の憂鬱 ・バトル・ライン ・門前金融 ・入営 ・シンデレラ・リバティー ・脱柵者 ・越年歩哨 ・歩兵の本領 1970年頃の自衛官たちの物語。 ゲバ棒を持った大学生も、ラブ&ピースのTシャツを着た若者も、それなりに就職していい暮らしをしているときに、それぞれの事情で自衛隊に入らざるを得なかった若き自衛官たち。 理不尽なしごきやいじめに涙を流し、戦争に行くことのない軍隊生活を嗤う。 自由がなくて、安月給で、慢性的人員不足のせいで、やらねばならないことだけはいくらでもある。 けれど自衛隊にいるのは彼ら若者たちだけではない。 もう何年もこの生活を続けている先輩兵。 旧陸軍の生き残りの古兵。 著者はきっと、自衛官だったときは自衛隊を好きではなかったのではないだろうか。 痛いし、苦しいし、理不尽だし。 青春の苦しさだけではなく、生きていかねばならない大人の苦さ。 それに気づいた時、作者のまなざしは優しいものになったのではないのかな。 存在の是非ではなく、現実にそこにある存在として、生き延びるための術がある。 自衛隊には落第生がいないのだとか。 ひとりの落第生のために全滅することもあるから。 “だから軍隊というのはどこの国でもそうだけど、優秀な兵隊を作るんじゃなくて、クズのいない部隊を作ろうとするんだ” なるほど。それは気付かなかった。 けれど行き過ぎたそれが、往々にして全体主義になっちゃうんだよね。 「若鷲の歌」に出てくる川原准尉。 昭和20年8月15日の日付が入った、自分の位牌を持つ。 「日輪の遺産」に出てくる真柴少佐のモデルなのかと思ったり。 “川原准尉の小さな体は、少年飛行兵のまま成長を止めたのだと思った。その夜、私はこの世で最も気の毒な、最も救いがたい、どんな念仏にも祈りの言葉にも成仏することのできない幽霊を、この目で見た。それは、勝手に戦をして、勝手に負けて、その理不尽なツケを私たちの世代にそっくり押しかぶせた軍人のなれの果てには違いなかった” こーゆー書きぶりが、ほんと、上手いんだよな。

Posted byブクログ

2018/06/09

名誉も誇りもない、そして戦闘を前提としていない、世界一奇妙な軍隊・自衛隊。世間が高度成長で浮かれ、就職の心配など無用の時代に、志願して自衛官になった若者たちがいた。軍人としての立場を全うし、男子の本懐を遂げようと生きる彼らを活写した、著者自らの体験を綴る涙と笑いの青春グラフィティ...

名誉も誇りもない、そして戦闘を前提としていない、世界一奇妙な軍隊・自衛隊。世間が高度成長で浮かれ、就職の心配など無用の時代に、志願して自衛官になった若者たちがいた。軍人としての立場を全うし、男子の本懐を遂げようと生きる彼らを活写した、著者自らの体験を綴る涙と笑いの青春グラフィティ。

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2017/11/08

1970年代ですから、随分世情も違います。自衛隊もそうでしょう。ここで描かれた旧帝国陸軍的世界が今も残っているとは思えません。 旧帝国陸軍と書きましたが、決して悪い意味で書いたのではありません。確かに暴力的です。理由の無い制裁も多くあります。しかし、どこかカラリとして陰湿さはあ...

1970年代ですから、随分世情も違います。自衛隊もそうでしょう。ここで描かれた旧帝国陸軍的世界が今も残っているとは思えません。 旧帝国陸軍と書きましたが、決して悪い意味で書いたのではありません。確かに暴力的です。理由の無い制裁も多くあります。しかし、どこかカラリとして陰湿さはありません。世間の常識からみれば、そこは異常な世界でしょう。しかし、別の論理で動いているというだけで、一旦中に入り込んでしまえば、それはそれなりに居心地の良い世界なのでしょう。私は耐えられそうにもありませんが(笑)。 作者自身の経験を元に書かれた作品ですが、余りくどくない笑いと人情が随所に組み込まれた佳品と思います。

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2017/08/08

今、話題の憲法改正問題渦中の自衛隊もの。経験者の浅田次郎だけに内情がよく描かれている。安倍や稲田に読ませたい。変わらないものの中で必死になる人々。足搔いている姿が辛いが、確実に彼らの中には一本背が通っていくのが感じられた。 しかし、自衛隊の実像は皆がわかっているのに、それを利して...

今、話題の憲法改正問題渦中の自衛隊もの。経験者の浅田次郎だけに内情がよく描かれている。安倍や稲田に読ませたい。変わらないものの中で必死になる人々。足搔いている姿が辛いが、確実に彼らの中には一本背が通っていくのが感じられた。 しかし、自衛隊の実像は皆がわかっているのに、それを利して憲法改正をごりおしして、正当化しようとするのは?日本はどこに向かっているのか?

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2018/08/23

浅田次郎が陸上自衛隊時代を思い出しつつ描いたと言われる青春群像。自衛隊に対する国民意識は今や大きく変わり、国会は改憲前夜の様相を呈しているが、しかし、この物語は1970年代「軍隊にあって軍隊にあらず」という矛盾を抱え、リベラル陣営からは悪魔のように扱われ、上官の殴る蹴るは当たり前...

浅田次郎が陸上自衛隊時代を思い出しつつ描いたと言われる青春群像。自衛隊に対する国民意識は今や大きく変わり、国会は改憲前夜の様相を呈しているが、しかし、この物語は1970年代「軍隊にあって軍隊にあらず」という矛盾を抱え、リベラル陣営からは悪魔のように扱われ、上官の殴る蹴るは当たり前の時代に、人生に、恋に、人間関係に悩みぬく男たち(そう、WACはまだ名ばかりで登場すらしない)が主人公だ。 どの一編も浅田次郎らしい笑いあり涙ありの短編に仕上がっているが、連作集として読むとまた個々の登場人物の魅力が増す。 お気に入りは、儚い恋愛を描いて悲しい「シンデレラ・リバティー」と自衛隊を去る日を描いた表題作「歩兵の本領」。

Posted byブクログ