ぼんくら(下) の商品レビュー
面白かった。 「長い影」の最後の10ページほどに、この物語で訴えたかったことが凝縮されているように思える。 「この世の中に、どんな『本当のこと』があるのでしょうね?」というセリフが意味深だ。 うそをうそのままにし続ければ「本当のこと」になる。 うそをうそのままにし続ける難しさ。そ...
面白かった。 「長い影」の最後の10ページほどに、この物語で訴えたかったことが凝縮されているように思える。 「この世の中に、どんな『本当のこと』があるのでしょうね?」というセリフが意味深だ。 うそをうそのままにし続ければ「本当のこと」になる。 うそをうそのままにし続ける難しさ。そのために利用され翻弄される長屋で暮らす人達。これがこの物語の肝だ。 役人脳の平四郎と科学者脳の弓之助の会話も秀逸だし、平四郎のぎっくり腰になった理由が女房にばれているくだりもいい。 そして、最後の「幽霊」という短編に出てくる謎の女。誰なのかは想像できる。 どうやらシリーズ作『日暮らし』への伏線でもあるらしいので、勢いで読み進めることにしよう。
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江戸時代の長屋を舞台にしたミステリー物語だが、青空に浮かぶ雲や鳥たちの鳴き声などの描写によって怪事件であるにも関わらず江戸の底抜けに明るい風情が温かく感じてしまう。それは宮部みゆきならではのなせる技なのだろう。 見廻り役の平四郎、長屋の煮売屋のお徳そして差配人である佐吉などキャラ...
江戸時代の長屋を舞台にしたミステリー物語だが、青空に浮かぶ雲や鳥たちの鳴き声などの描写によって怪事件であるにも関わらず江戸の底抜けに明るい風情が温かく感じてしまう。それは宮部みゆきならではのなせる技なのだろう。 見廻り役の平四郎、長屋の煮売屋のお徳そして差配人である佐吉などキャラクター設定が抜群で逆にストーリーが霞んでしまうほどだ。
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弓之助とおでこがかわいい!!弓之介に嫉妬する小平次もかわいい。葵さんの生死と最後の締め方。嫌な人が嫌に表現されててどろっとしたところが残るのが宮部みゆきさんだなあ。
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時代物の小説は、日本でありながら今と違う世界観があり、読んでいて非常に面白い。 物語の舞台は鉄瓶長屋というある長屋。そこで起きる様々な出来事と次々といなくなる店子。そう書くと一見、連続殺人?と思いきや、意外に穏便に物語は進んでいく。大げさでは無いが何か裏を感じさせる出来事と、それ...
時代物の小説は、日本でありながら今と違う世界観があり、読んでいて非常に面白い。 物語の舞台は鉄瓶長屋というある長屋。そこで起きる様々な出来事と次々といなくなる店子。そう書くと一見、連続殺人?と思いきや、意外に穏便に物語は進んでいく。大げさでは無いが何か裏を感じさせる出来事と、それをおう面倒臭がりの同心。そして、美形の甥っ子。 話はいくつかの小話のように分かれているように錯覚するが全ては一つの物語。軽快に話は進むが、時折時代考証の説明くさい文が出てくると読んでいるリズムを崩されてしまうのが難点か。 最後に驚きの事実的な要素もあるが、「うーん、それはちょっとなぁ」と思う結末に僕はちょっとがっかりした。なので、星4つ止まり
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上巻のエピソードを一気にするっと束ねる鮮やかな展開。推理部分は想像が逞しいのではないかとかんじたが、平四郎の旦那も「憶測」と言っていたからまあいいや。 大団円ではないのだけど、それもまた世の常であろうし、こましな感じで収まったと言うべきなんだろうなぁ。1日で読んでしまった。勿体無...
上巻のエピソードを一気にするっと束ねる鮮やかな展開。推理部分は想像が逞しいのではないかとかんじたが、平四郎の旦那も「憶測」と言っていたからまあいいや。 大団円ではないのだけど、それもまた世の常であろうし、こましな感じで収まったと言うべきなんだろうなぁ。1日で読んでしまった。勿体無かったなぁ。 続編注文しました。早く届かないかな。
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2000年4月に出版された宮部みゆきの長編歴史小説。 上巻序盤で鉄瓶長屋が舞台の人情連作短編と思わせて、その後長屋での出来事はすべて裏でつながっているのではないか、と大きな謎を呈示したところで下巻突入です。 上巻では登場人物、中でも主人公井筒平四郎の人物描写が面白く、その寛容...
2000年4月に出版された宮部みゆきの長編歴史小説。 上巻序盤で鉄瓶長屋が舞台の人情連作短編と思わせて、その後長屋での出来事はすべて裏でつながっているのではないか、と大きな謎を呈示したところで下巻突入です。 上巻では登場人物、中でも主人公井筒平四郎の人物描写が面白く、その寛容さと子供っぽさに共感し、こんなふうにブラブラしながら生きていけたらと無い物ねだりをしつつ読んでいたら、平四郎が少し真面目に仕事をしだし、そして弓之助が登場しました。 下巻では弓之助のキャラの立ちっぷりがとにかく目立ちます。上巻では平四郎の細君イチ押しの井筒家の養子候補であること、大変な美形であること、何でも正確に測量してしまうことなどが語られていますが、下巻に入っては平四郎をしのぐ魅力を発揮します。 想像だけで事件の真相にたどり着く名探偵ぶり、12歳にして「私の顔を見てぼうっとしない女子は他に思い人がいる」という世慣れた様子の一方、おやつを食べ、風鈴を買ってもらったときの喜びようやたどり着いた真相を考えすぎておねしょしてしまう幼さの両極端を持つ、ギャップ萌えがその魅力の中核でしょう。 魅せ場も十分用意されています。特に物語のクライマックスでは、測量趣味を活かして犯人を追い詰め、そして大立ち回り!その後の雨降りまで含めて弓之助の一人舞台です。 ブラブラしていたのがことを大きくしてしまったかと反省気味の平四郎、ギャップ萌え弓之助のダブル主人公に加え、渦中の巻き込まれキャラ佐吉、近眼のお転婆みすず、鉄瓶長屋の心お徳、回向院の茂七の一の子分政五郎、何でも覚えてしまう異能者おでこ、「骨の髄まで差配人」の久兵衛、悪役の見本のような仁平と、上巻に続き脇役たちも魅力的。特に仁平はあらゆるところに手を回し、どこまでもつきまとってくる執念深さといい総身に知恵が回りかねている子分を連れているあたりやどんでん返しを食らったあとの悪あがきの仕方なんかのなんとも言えない小物っぷりといい、これほどやっつけられたときに読者が快哉を叫びやすい悪役もなかなかいないと思います。 湊屋の落としている長い影の真相へ、弓之助と平四郎はほぼ想像だけで辿り着きました。それは読者からしても意外なものではありませんでした。どちらかと言えば、直接対決のあとの平四郎の態度のほうに違和感…ではなくて、すっきりしないものを感じました。できることはないのかもしれませんが、それにしても面と向かって話している相手に一言ぐらい言ってやればいいのに…。そんな読者の思いには、エピローグでお徳が応えてくれました。 幽霊と名乗っている相手は、名は明かされませんが、葵でしょう。もう少し日陰の花みたいな感じなのかと思っていましたが、意外にちゃきちゃきしていました。追い払ってあっかんべえをするって、子供っぽい仕返しですが、一連のすっきりしない事態への片の付け方としてはまあまあふさわしいように思えます。 なお、上巻でも思いましたが、初期の作品とは少し作風が違ってきたのかなと感じました。何よりこの「登場人物は納得しているのに読者が納得しない感」なんて「模倣犯」とか「ペテロの葬列」でも同じことを感じましたw。この「ぼんくら」は幸いなことにシリーズの続編がまだ2編読めます。平四郎と弓之助の魅力の続きを楽しみにしています。
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弓之助の推理が冴えるが、最後は湊屋のいい様にされてしまった。しかし、真実が幸せにする訳ではないので、この有り様はアリかもしれない。
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みんなへの愛がさらに高まる 下!!!! 私はお徳さんが好きww こんな人周りにいてほしい!!! そのほかの登場人物もそれぞれほんとよくって江戸の人の繋がりが心に染みた
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時代ものはあまり得意じゃないと思って敬遠していたところがあるのだが、宮部みゆき作品は時代物といってもなんの抵抗もなく読めてしまうのが素敵です!最後の最後まで、息つく間もなく読みきってしまいました。こんな時代物ならもっと読みたい!という気持ちになりました。
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