空の境界(下) の商品レビュー
矛盾螺旋で終わっていたら、すっきりとした読後感を得られたかも。 橙子 vs アルバ、式 vs 荒耶をピークに、以降、物語は終わりにむかって収束していくわけだが、正直、読書熱も冷めていく感じです。ちょっと自分には合わなかったかなぁ。 (矛盾螺旋の単品なら★4かな)
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罪人達の楽園。空(そら)ではなくて空(から)。そこに「から」があるというと哲学のケネオンの存在論を思い浮かばずにはいられない。存在しないもの(から=ケネオン)の存在はこの世界を根本から覆す。そう、それは人格の二重化と死線の可視化、その両方が係り結びの如く強い重力で、ある種の同化と...
罪人達の楽園。空(そら)ではなくて空(から)。そこに「から」があるというと哲学のケネオンの存在論を思い浮かばずにはいられない。存在しないもの(から=ケネオン)の存在はこの世界を根本から覆す。そう、それは人格の二重化と死線の可視化、その両方が係り結びの如く強い重力で、ある種の同化と言ってもいいほど、くっついてはなれないのである。両儀式という名には「儀式」が含まれている。またその前詞として「両」を持つ。双つの儀式。それは人間の無意識的な混沌である「大人」と「子供」、もしくは「男」と「女」、また「生」と「死」、「聖」と「俗」の二元論を同時に持つ者を指摘している。そして、これは乙一「GOTH」のテーゼとなる「殺すもの」「殺される者」の分化といった通常不可能なことを式と織の両者の存在『』に内在されている。彼女らの統合人格『』の括弧(確固)たる存在は仮説的構築概念であるがいわゆる帰無仮説H0を棄却して貪欲に生きている物質いやむしろ状態そのものといえる。儀式とは「特定の信仰、信条、宗教によって、一定の形式、ルールに基づいて 人間が行う、日常生活での行為とは異なる特別な行為」とされるが、いわずもがな彼女らそして彼、黒桐幹也をとりまく環境の日常は「儀式」の概念と同様に我々にとって非日常であり、無理解、無意味、無碍なるものとして認識できる。非一般的なそれはつまりは「無」つまりは「空」なのである。ファイ記号を用いる空集合に含まれるのであろう式の生活にとって彼女を狙う数々の敵対者もまた空集合なのである。空即是色色即是空という言葉は彼女に捧げるオマージュであり全は無、無は全なのである。「両」方の「儀式」を持つ両儀式のこの伝奇物語はパンデモニウムに入城するかのように、またグランギニョールを観覧するかのように切なくて虚無だ。それは「空」だからなのである。ここに一つの命題がある。「空」の境界は何処と何所のボーダーなのか。それは地獄と天国か、もしくは祝福と呪詛か、正論と暴論のそれだろうか、否、それは有と無の存在の境界なのであろう。このナラティブは、存在しない。故に存在する。この逆説を許すことができることは「空」と「無限」の二つしかないが、その両者は同義と断言してもいい。空とは何も入っていないこと、故に無限。例えば「瓶詰の地獄」さながらの瓶らしい、瓶の中には空気すらない真空だったとき、そして蓋をしていない場合、どこからが「空」で、どこまでが「存在」なのだろうか。その境界こそ、このストーリィの中身である。つまり二重構築として真空の中身が「空の境界」のコンテンツなのである。そもそも「真空」という二字熟語を分解、分析すると、そう「真(まこと)」の「空(から)」なのである。空そのものが境界なのであり、境界とは存在しないものとしての存在。カオスに十把一絡げになっているのである。
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黒幕がアクティブ過ぎるので時系列や因果関係を気にしすぎると疲れます。アクション小説としては非常に面白いし、頭に映像が浮かぶほどリアルな描写が為されていると思いました
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竹箒発行版の上下巻読了。 噂には聞いていて読んでなかった一冊。 やっとよめた。読み応えもあったしおもしろかったと思う。 なんていうか、橙子さんが好きです。
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何も書くことはない。この素晴らしい作品の、美しいエンディングを、是非見届けて欲しい。 誰よりも凡庸に生きる青年はその実誰にも理解されない異常者で、誰よりも孤高に生きた少女は、いつだってすぐ傍に差し出されていた、手の平の温かさを知る――
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幼い時分火見櫓に登ったことがあるのだけどそこで感じたのは高さへの恐怖には違いなかっただろうがいつもの世界ではない異界へでも足を踏み入れたような高揚と不安の宙ぶらりんでおぼつかなき位置でその場所もあるいは空の境界であって式の恐怖はそんな恐怖だったのかもしれずその梯子をどこまでも登っ...
幼い時分火見櫓に登ったことがあるのだけどそこで感じたのは高さへの恐怖には違いなかっただろうがいつもの世界ではない異界へでも足を踏み入れたような高揚と不安の宙ぶらりんでおぼつかなき位置でその場所もあるいは空の境界であって式の恐怖はそんな恐怖だったのかもしれずその梯子をどこまでも登ってしまうのかそれとも降りてしまうのか式。 (2005年10月22日読了)
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全ての内容を食い付くように読みました。矛盾螺旋や殺人考察(後)で描かれていたような人間の葛藤が好きです。魔術や戦闘シーンなど、奈須きのこさんならではの表現方法はとてもすばらしいです。やはりほかの人とは違いますね。私は式と幹也が大好きなので、最終的に幸せになってくれたのはうれしいです。もちろんほかの人物も好きですが。敵側も憎めないですね。
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コクトー君に脱帽です。何者でもない優しい彼がいたからこそシキの物語は人の物語たりえたのだ。このエンディングは好きです。
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人喰いのシーンにぞぞっ、としました。狂人怖い。 幹也くんのセリフに感動しました。普通が一番ですよね。 綺麗な終わり方だったとは思いますが、個人的にはもっと幸せになってほしかったです。
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次第に明らかになってくる「あの日」の記憶と、最後の戦いの記録が描かれた一冊。 前半の橙子さんの活躍に一人ときめいていました。あの猫可愛い。 絶対的なハッピーエンドとはいえない、危うさとささやかな孤独と絶望を含んだ終わりはどの季節よりも雪景色が似合うやりとりでした。 隔たりが空の境...
次第に明らかになってくる「あの日」の記憶と、最後の戦いの記録が描かれた一冊。 前半の橙子さんの活躍に一人ときめいていました。あの猫可愛い。 絶対的なハッピーエンドとはいえない、危うさとささやかな孤独と絶望を含んだ終わりはどの季節よりも雪景色が似合うやりとりでした。 隔たりが空の境界になる日が来ないとしてもお互いの手を取って歩くというのは、それだけで価値あることなんじゃないかと思いました。 愛とか恋とかそういうのとは次元の違う感情がもたらす幸福感が胸にちょっと突き刺さります。
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