空の境界(下) の商品レビュー
矛盾螺旋までだけだったなら、あくまで荒耶宗蓮があまりに強すぎる世界観だった、と個人的に思う。けれど、以降の忘却録音、殺人考察(後)と全巻の(前)があるからこそ、全巻通して、両儀式・黒桐幹也の物語として成立して、荒耶宗蓮や青崎燈子などの超越者は対比の対象としての立ち入りに収まる事が...
矛盾螺旋までだけだったなら、あくまで荒耶宗蓮があまりに強すぎる世界観だった、と個人的に思う。けれど、以降の忘却録音、殺人考察(後)と全巻の(前)があるからこそ、全巻通して、両儀式・黒桐幹也の物語として成立して、荒耶宗蓮や青崎燈子などの超越者は対比の対象としての立ち入りに収まる事ができたと思う。 それだけでなく、両儀式と黒桐幹也のキャラクターの対比、そして『空の境界』の両義性が出来ている気がする。両儀式は事故によって「」の袂で死に触れすぎ、且二年間の昏睡が自身を自身と認識できないという、不安感にさいなまれる。さらに彼女の内にいた織というもう一人の自分が死んでしまった。それらによる彼女自身の自己に対するあやふやさ、危うさ、空虚感が彼女の『空の境界』である。が、黒桐幹也は存在そのものが『空の境界』なんだろう。あまりに誰でもあり、誰でもなく。誰に対しても優しく、しかし誰に対されても理解されない。あらゆる色であり、色が全く無い。それは、一種の超越者の領域だ。それ故に孤独すぎる。そしてあまりに彼岸の魂の持ち主となってしまった。そういう意味で、彼は『空の境界』という存在になってしまっている。彼らだけでなく、出てきた超越者と言われるものたち、特に魔術師はそれぞれ『空の境界』をもっている。強さで見えなくなった(見ようとしなくなった)弱さの象徴のようなものが彼らにとっての『空の境界』かな。 超越者だけでなく、誰もが心に空っぽの境界をもっている。その空っぽの部分をどうやって埋めていくのか。織を亡くした式が幹也によってその穴を埋めようとするように、自身を自身足らしめる、その穴を埋める何か。それこそが、人生に大事なんだろう。
Posted by
なんとなくタイトルで惹かれるモノがあったので、買ってみたんよね。 ワールド全開なんですかね。 微妙にもうちょっとなにか・・・うーん。
Posted by
書くことがなかったから、これについて書いておこう。いずれ読む機会はあるだろうと探っていて、ついに読む機会を得たのが少し前。手元に本がないのはいつものことだが、読んだときに思ったことをつらつらと書き連ねることにする。ちなみに、いつもの事だがネタバレは一切ない。 まず、世間に溢れ...
書くことがなかったから、これについて書いておこう。いずれ読む機会はあるだろうと探っていて、ついに読む機会を得たのが少し前。手元に本がないのはいつものことだが、読んだときに思ったことをつらつらと書き連ねることにする。ちなみに、いつもの事だがネタバレは一切ない。 まず、世間に溢れる理系文学少年(?)が書きたい書きたいと思っていた世界をついに商業という形で具現化してくれたな、と言うのが印象。不思議な事の仕組みだとか、魔法だの魂だのの世界における位置づけは、理系文学少年なら誰もがやりたいと思っていたことで、その行いは本来ネット小説の文化であったはずだ。それがネット小説から抜きん出てついに商業出版し始めたことは、一つの革新的出来事であるし、ある意味商業の幅が広くなったとも言える。 ここで言う理系文学少年が書きたかった内容とは、理系少年なら魔法だの奇術だのを世界に持ち込むとき、何よりもまずそのシステムを考えたくなるのが常だと思うが、その盛大に組み上げたシステムの事である。では、ここではそのシステムにどういう位置づけを置くかが問題になる。本書で言えばそれがお話の元になる者であり、決して物語の副産物にとどまらない。ましてや、奈須きのこの場合はシステム自体が主人公と言っても過言ではない。人物にシステムに関するトークをさんざんさせ、主人公とともにシステムを学んでいく。システムの説明が終演したとき(言い過ぎかもしれないが)同時に物語は終了する。つまり、主題はストーリーでなくシステムなのだ。 友人Yは似たような魔法の世界観を徹底的に説明させる小説(上記に記したやたらシステムを説明する小説?の事だ)がこの本のおかげで増えたと言うが、俺は実際表舞台に出ていなかっただけだと思っている。この本の繁栄によりそれを許容するマーケットというか編集者が現れただけだ。今まで隠されていた者が商業化して明るみに出ることはよいことなのか面白いが、この風はしばらく続くだろう。俺自身はこの世界観の押しつけ小説はあまり好みはしないが。 かと言って、この本が面白かったかどうかと問われれば、面白かったと答える。確かに奈須きのこの作り出すシステム(世界観と書けばよいのだが、皮肉を込めてシステムと書く)は実に面白い。斬新であるかどうかと問われれば、確かに斬新であるが、意外性は持たないと言っておこう。そして、やはり魅力的なのだ。だから奈須きのこの説明をだらだら書く性格も耐えられるわけで。かつ、奈須きのこのキャラクターは後で気づいたのだが、かなり魅力的なラインナップに仕上がっている。この奈須きのこの実力は『月姫』で恐ろしいほど味わったが、だがその分惜しいと思える点がある。お願いだから、奈須きのこには台詞の書き方を勉強して欲しい。それさえ解消されれば、俺は奈須きのこの不条理システムの世界も苦もなく読めるだろう。そう、キャラクターは魅力的なクセに台詞がどうしようもない、というのが俺の感想である。できればだが、説明しない事にトライしてみて欲しい。それに、だらだらと説明を書き続けるだけあって、長いし起伏が途絶えるし、疲れる。一気に読むことはできなかった。 まぁ、どちらかと言えば、俺は奈須きのこが一発屋であることを望んでいる。というのは、好きだから読みたいのだが、ひたすら疲れるから読みたくないというのが本音である。ギャルゲー『Fate/stay night』の時に相当疲れたのがキているようだ。 しまった、書きすぎた!
Posted by
人気同人ゲーム「月姫」のシナリオライターが書いた同人誌「空の境界」が書籍として発売されました。 是非上下巻あわせて読まれる事をお薦めします。
Posted by