ローマ人の物語(12) の商品レビュー
ポンペイウス死後、カエサルの帝政樹立までと、その政策のまとめ。 常にオープンなカエサルによる、ポンペイウス派への寛容な対応し、もとの元老院議員にもどすこと、その元老院を多民族議会化したこと、都市の防御壁をなくすことでローマの平和樹立を目指す。 元老院を多民族化したあたりは、地...
ポンペイウス死後、カエサルの帝政樹立までと、その政策のまとめ。 常にオープンなカエサルによる、ポンペイウス派への寛容な対応し、もとの元老院議員にもどすこと、その元老院を多民族議会化したこと、都市の防御壁をなくすことでローマの平和樹立を目指す。 元老院を多民族化したあたりは、地中海をかこむローマ属州の民族代表 の議会入りなため、都市ローマに対して活躍した元老院を国家ローマとして考える集団に変えようとしていたことととらえることができ、 カエサルの視界の広さに驚く。
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著者が最も愛しているであろう男、カエサルである。ほとんど衆愚政治と化してしまった元老院と対立し、少しでもローマを良くしようとするカエサル。しかしその行動があの悲劇を引き起こすのである。 民主制から専制政治への移行は、第二次大戦時の世界情勢を考えても、現代にあっても注視しなければならない事項であろう。 天才の行動は当代の人には理解できないのが特徴である。しかし、後世の人から見れば、その行動の正しさが明白であることも特徴だ。その意味で言えば、カエサルは天才だったと言える。 ローマ人がイタリア半島周辺に留まっていた時期には有効に機能していた共和制も、支配地域が拡大してしまうと機能不全に陥ってしまう。なぜなら、ローマで開催される市民集会に参加できない市民が増えすぎ、多数の声が反映されなくなった結果、地方に火種が燻る状態となってしまったからだ。この火種を消そうと軍を差し向けても、その指揮官以下中核は1年交代の任期制。敵地で戦争をしなければならないのに、戦争の才を持たない指揮官が任命されるかもしれないのだ。 カエサルは、ローマ共和制の欠点を明確に認識していた。そして、どういう支配制度を敷けば、広がったローマ世界を平和のうちに治めることが出来るかを考えて行動していた。この制度が有効であることは、カエサルの後継者オクタヴィアヌスの手により生まれ変わったローマ帝国が存続した事からも明らかだろう。しかし、カエサルにとっては自明なローマの欠陥も、当時の元老院議員には理解できなかった。彼らにとって、カエサルの行動は王を目指すための利己的な行動にしか見えなかったのだ。 現代の政治家は理想を持って政治を行っているのか。こういう話を読むと疑問を感じてしまう。確かに、自分なりの理想を持って政策を立てている人もいるかもしれない。でも、その政策とは、例えれば、いまある道を右に曲がるか左に曲がるかを決めるという程度のものではないのか。新しい道を切り開くように、滑走路を敷設して空を飛ぶというように、抜本的に何かを変えるということまで考えて政治をしている人はいないように思う。 現代の政治制度は、ローマ共和制が抱えたような問題を孕んでいる気がする。これを劇的な変化によって乗り越えるのか、緩慢な衰退を迎えるのか、静かに選択の時は迫っている。
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エジプト、アフリカでの戦役を終え、ローマに戻り、改革を進めていくカエサルのお話。とうとう、最後に3月15日のことが、、、 話の半分は改革の内容。政治体制はもちろん、通貨、市民権問題、属州統治、司法、福祉政策、治安などなど、ほんと一気に進めてます。 治水とか公共事業にいたっては、...
エジプト、アフリカでの戦役を終え、ローマに戻り、改革を進めていくカエサルのお話。とうとう、最後に3月15日のことが、、、 話の半分は改革の内容。政治体制はもちろん、通貨、市民権問題、属州統治、司法、福祉政策、治安などなど、ほんと一気に進めてます。 治水とか公共事業にいたっては、ずいぶんと後世になって完成するものがあったり、その先見性とアイデア豊富なところも驚きのひとつ。 個人的に興味深かったのは、 ①造本 ②教育・医療 の2点。 いまのスタイルで本を読めるのが、まさかカエサルのアイデアとは。。。 そして、教師と医者に市民権を与え、設備投資も行って、水準向上に努めたこと。 著者が大のカエサル好きらしいのですが、カエサルはかっこよすぎます。 その一方で、キケロが、ものすごく嫌な奴に思えるんですけど。 CREMENTIA (寛容) これはほんと大事だと思う。 あと、腹切り、多神教(八百万の神)、、、 ローマと日本は似てるところもある。
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ポンペイウス亡き後、もはやカエサルの行く手を遮るものはいなくなった。カエサルは首都ローマに戻り、内政の改革を次々と手をつける。広大になったローマを治めるためにはもはや弊害ばかりとなった元老院の弱体化を計るカエサルに、その失墜を狙うブルータスを盟主とする保守派の水面下の攻防は、カ...
ポンペイウス亡き後、もはやカエサルの行く手を遮るものはいなくなった。カエサルは首都ローマに戻り、内政の改革を次々と手をつける。広大になったローマを治めるためにはもはや弊害ばかりとなった元老院の弱体化を計るカエサルに、その失墜を狙うブルータスを盟主とする保守派の水面下の攻防は、カエサルの暗殺という最悪のシナリオを迎える。 カエサルが目指していたローマとは何か、そしてブルータスを担ぎあげた反カエサル派に見えなかったローマの未来とは何なのか。 非常に興味深い考察が続く。
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ついにカエサルが暗殺されるところまできた。 知れば知るほど魅力的な人物だったのだろうと思う。 それにしてもこの時代から人間は何も進歩していないと言われると納得してしまう。
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「市民たちよ、女房を隠せ。禿の女たらしのお出ましだ!」。 凱旋式で子飼いの兵士たちにこんなシュプレヒコールされる 最高司令官って…。カエサルにしてこの部下ありってとこか。 生き残りのポンペイウス派の蜂起も平定し、実質、ローマの 最高権力者に登りつめたカエサル。...
「市民たちよ、女房を隠せ。禿の女たらしのお出ましだ!」。 凱旋式で子飼いの兵士たちにこんなシュプレヒコールされる 最高司令官って…。カエサルにしてこの部下ありってとこか。 生き残りのポンペイウス派の蜂起も平定し、実質、ローマの 最高権力者に登りつめたカエサル。次に手を付けたのは クラックス兄弟の昔から課題だった階級闘争の緩和である。 国家の最高決定機関となっていた元老院の権力を弱め、 属州民や奴隷さえもローマ市民権を持てるように改める。 国家改造の断行だ。 カエサルが行ったことはまだまだある。通貨改革や暦の改定。 彼が定めたユリウス暦は1582年に法皇グレゴリウス13世による 改良が行われるまで、なんと1627年間もヨーロッパと中近東の 暦として在り続けた。 そして、属州の統治にはカエサル配下の兵士を入植させる。 彼らは軍団で覚えた土木工事の技術を活かし、現在の ヨーロッパの主要都市を作り上げる。 終身独裁官となり、数々の改革に取り組んだカエサルだが全て を成し遂げるまでには至らなかった。 巨大になったローマは既に寡頭制の政体では機能しない。 帝政を目指したカエサルの改革は、彼を初代の皇帝にする ことなく途絶する。 「ブルータス、お前もか」。かの有名な台詞を、私ならこう 変えたい。 「ブルータス、お前は阿呆か」 ポンペイウス派につき、それでもカエサルの寛容によって 許された若者は、その後ろめたさの為に暗殺を決意した のか。
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カエサルの高潔さに痺れる。『しかし、孤独は、創造を業とする者には、神が創造の才能を与えた代償とでも考えたのかと思うほどに、一生ついてまわる宿命である。それを嘆いていたのでは、創造という作業はできない。』
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20110502読了。 内戦の終焉から、カエサルによる各種改革、そしてカエサルの死まで。 「寛容」をモットーにしながら、自分の考えに忠実に生きてきたカエサル。 行動だけをみれば、非常に良い振る舞いにあふれているようにみえる。 しかし、結局は暗殺されてしまう。 カエサルに好意を...
20110502読了。 内戦の終焉から、カエサルによる各種改革、そしてカエサルの死まで。 「寛容」をモットーにしながら、自分の考えに忠実に生きてきたカエサル。 行動だけをみれば、非常に良い振る舞いにあふれているようにみえる。 しかし、結局は暗殺されてしまう。 カエサルに好意をよせていたようにみえるキケロでさえも、カエサルの死を知った直後には喜びの声をあげている。 カエサル自身、寛容によって許した相手に裏切られることすら考えていたようだけど、自分にはそれにしても悲しい結果のように感じてしまう。
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紆余曲折を経て、漸くローマ内部の改革に着手するカエサルを描く。絶大な権力を得たカエサルがチャッチャカ、制度やインフラを作り替えていくように見えるが、ここに上り詰めるまでの何十年と温めてきた計画と、それに向けた行動が土台にある。その背景とカエサルのビジョンが見えない他者は、心酔する...
紆余曲折を経て、漸くローマ内部の改革に着手するカエサルを描く。絶大な権力を得たカエサルがチャッチャカ、制度やインフラを作り替えていくように見えるが、ここに上り詰めるまでの何十年と温めてきた計画と、それに向けた行動が土台にある。その背景とカエサルのビジョンが見えない他者は、心酔するか恐怖するかしかなかったんだろう。次巻でいよいよあの名言「ブルータスお前もか」がでてくる。
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ローマの覇権を手に入れたカエサルがパクス・ロマーナ実現の為に何をしたかをメインに描いている。カエサルが唯一破壊したものがローマを囲う城壁であり城壁が無い事がローマの平和を象徴することになるという思想がカエサルらしく最も印象に残った。政治改革の数々を読んで、この人が現代の政治家であ...
ローマの覇権を手に入れたカエサルがパクス・ロマーナ実現の為に何をしたかをメインに描いている。カエサルが唯一破壊したものがローマを囲う城壁であり城壁が無い事がローマの平和を象徴することになるという思想がカエサルらしく最も印象に残った。政治改革の数々を読んで、この人が現代の政治家であればどんなに夢がある事か、現代の経営者であればどんなに面白いサービスが提供される事か、とすっかりファンになってしまった。
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