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南の島に雪が降る の商品レビュー

4.1

17件のお客様レビュー

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2023/12/24

戦場にあって戦禍以外に病魔とも闘うことを余儀なくされながら、これほどに生きる希望となりペースメーカーとなるものがあったとは驚いた。そして有名らしい雪の場面の悲壮さは言い尽くしがたい。

Posted byブクログ

2020/08/15

 俳優・加東大介の従軍記。加東(加藤徳之助・市川莚司)は、1933年の現役時に千葉陸軍病院で伍長勤務上等兵、1943年の応召時には衛生伍長として東京第二陸軍病院から西部ニューギニア・マノクワリに上陸、野戦病院スタッフとして働くことになっていた。マノクワリ上陸は1943年12月8日...

 俳優・加東大介の従軍記。加東(加藤徳之助・市川莚司)は、1933年の現役時に千葉陸軍病院で伍長勤務上等兵、1943年の応召時には衛生伍長として東京第二陸軍病院から西部ニューギニア・マノクワリに上陸、野戦病院スタッフとして働くことになっていた。マノクワリ上陸は1943年12月8日だったという。  しかし、加東の戦争体験が他の兵士たちと違っているのは、米軍の飛び石作戦によって前線に置き去りにされてしまったマノクワリで、上官命令で演芸分隊の「班長」として文字通り東奔西走したことだ。軍隊に入る前は会社経営者だったという苦労人の経理部長と、東大出の演劇評論家だったという輸送隊の大尉の肝煎りで、部隊の中から演芸経験者をセレクト、美術や衣裳、カツラの担当者までピックアップして、「マノクワリ歌舞伎座」という常設劇場を立ち上げていく。日中戦争では阿南惟幾の側近だったという軍司令官も、加東らの演芸分隊に肩入れし、「目標のない日常」に彩りを与える重要な任務だと評価した。  餓死が日常だったニューギニアの地で、兵士たちは「日本」と「故郷」を求め、眼の色を変えて劇場に通った、と加東は書いている。『瞼の母』『父帰る』『浅草の灯』『暖流』『転落の詩集』など、演目もぞくぞくと増えていった。本書のタイトルともなったエピソードは、東北出身の部隊の兵たちが、長谷川伸の『関の弥太ッぺ』の舞台に拡がる雪景色を見て、300人がジッと静かに泣いていた、というものだ。加東は、演劇人としてマノクワリ時代ほど、自分が求められていると感じたことはなかった、と述懐する。ここには、人間にとってなぜフィクションが必要なのか、という根源的な問いに対するひとつの答えが示されていると思う。  面白いのは、復員後に加東が本格的に映画界に進出するきっかけとなったのが、ニューギニア時代の戦友たちから「映画なら、どこにいても会えるからね」と言われたことだった。加東は小津の『秋刀魚の味』で、「敗けてよかった」としみじみ語る元海軍兵曹を演じていたけれど、その時かれの心中には、どんな思いが去来していたのだろうか。

Posted byブクログ

2019/06/28
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

芸に関する知識はまるでない私ですが、楽しめました。 戦争で西部ニューギニアに送られた男たちが生きるために劇を行う話です。 「戦争なのに、戦地で娯楽をやってしまって上司に「何を考えとるかっ、キサマァッ!!!」とか言われるんじゃないか?…」 と本を読みながら思っていましたが、「劇をやる事は戦地へ送られてしまった男達の生きる活力になっていた」という知り、こんな一面もあったのかと驚きました。 故郷を思う男たちが劇に感動して涙するシーンが何回か出てくるのですが、その中で一番頭に残っているのは故郷の雪景色が再現された劇を見て泣いていた男達でした。本のタイトルをなぜこれになったのか?という事がよくわかります。これしかない。 ユーモアのある部分あり、涙する部分あり。 電車の中で読んじゃいけない感じがします。(シーンごとに顔の表情が変わる可能性があるので…)

Posted byブクログ

2017/07/28

古典芸能一家に育った著者による戦場体験のノンフィクション。 最前線に居ながら、補給物資が枯渇した中で、技術や残り少ない資源をフル活用し、仲間たちに生きる希望を与え、自らも生きる希望を忘れなかった事は、爽やかで感動できる素晴らしい作品。 銃弾の一撃で死ぬのではなく、 じわじわと栄養...

古典芸能一家に育った著者による戦場体験のノンフィクション。 最前線に居ながら、補給物資が枯渇した中で、技術や残り少ない資源をフル活用し、仲間たちに生きる希望を与え、自らも生きる希望を忘れなかった事は、爽やかで感動できる素晴らしい作品。 銃弾の一撃で死ぬのではなく、 じわじわと栄養失調で死んでいく戦場のリアルは、表現できないぐらいに恐怖が伝わってくる。 題名の項目は、泣けてくる。 今の戦争に巻き込まれていない平和に、感謝を絶えない作品。

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2015/08/13

あらすじ(背表紙より) 昭和18年、俳優・加東大介は召集を受け、ニューギニアへ向かった。彼は、死の淵をさ迷う兵士たちを鼓舞するために“劇団”づくりを命じられ、島中の兵士から団員を集め、工夫を重ねて公演する。そしてついには熱帯の“舞台”に雪を降らせ、兵士たちに故国を見せたのだった—...

あらすじ(背表紙より) 昭和18年、俳優・加東大介は召集を受け、ニューギニアへ向かった。彼は、死の淵をさ迷う兵士たちを鼓舞するために“劇団”づくりを命じられ、島中の兵士から団員を集め、工夫を重ねて公演する。そしてついには熱帯の“舞台”に雪を降らせ、兵士たちに故国を見せたのだった—感動的エピソードに溢れた記録文学の傑作。

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2015/07/12

書店に出向くと時々こういう出会いがある。 目指す本をネットで注文ではなく、目当ての本があるわけでもなくぶらっと書店に出かけて自分を待っていたような本に出くわす事が。 子供の頃たしかテレビの舞台中継のような物で見た「南の島に雪が降る」だ。 「南の島」になぜ雪が降るのかと母に聞いた覚...

書店に出向くと時々こういう出会いがある。 目指す本をネットで注文ではなく、目当ての本があるわけでもなくぶらっと書店に出かけて自分を待っていたような本に出くわす事が。 子供の頃たしかテレビの舞台中継のような物で見た「南の島に雪が降る」だ。 「南の島」になぜ雪が降るのかと母に聞いた覚えがある。 役者加東大介の記録文学とも言える作品ですね。 沢村貞子さんの「後記」も素晴らしかった 戦時下、荒んだ兵士の心を慰撫するため、死んでいく戦友の弔いのため戦地で懸命に芝居を続ける。 役者加東大介さんの実体験に基づくこの作品は読む物をして一人の戦友であるがごとき錯覚を起こさせる。

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2014/08/15

舞台「南の島に雪が降る」を観に行き、原作を読んでみたくなって買いました。 舞台もとても素晴らしかったのだけど、原作も本当に素晴らしかった。 色んな人の想いがあって、そこで生きて、死んで、それでも尚「芝居をした」ということに涙が出ました。 こんなすてきなことって、あるんだなぁ…。...

舞台「南の島に雪が降る」を観に行き、原作を読んでみたくなって買いました。 舞台もとても素晴らしかったのだけど、原作も本当に素晴らしかった。 色んな人の想いがあって、そこで生きて、死んで、それでも尚「芝居をした」ということに涙が出ました。 こんなすてきなことって、あるんだなぁ…。 原作を読んだ上で、また舞台が観たくなりました。 再演してくれないかなぁ(笑

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2014/01/24

「兵隊ってのは世の中の縮図だから、たいていの職業がある。しかし、そう突飛なのは見あたらなかった」 しかし、第二次世界大戦末期、西部ニューギニアはマノクワリに集結した日本軍のなかには、俳優である著者をはじめ、長唄師匠(三味線弾き)、スペイン舞踏の教師、演劇評論家、歌手、針金職人、...

「兵隊ってのは世の中の縮図だから、たいていの職業がある。しかし、そう突飛なのは見あたらなかった」 しかし、第二次世界大戦末期、西部ニューギニアはマノクワリに集結した日本軍のなかには、俳優である著者をはじめ、長唄師匠(三味線弾き)、スペイン舞踏の教師、演劇評論家、歌手、針金職人、友禅職人、男性服の仕立屋、カツラ職人、僧侶にして博多仁輪加の名手、奇術師、脚本家、節劇役者までが在籍していた……。 飢餓と熱病に侵されて死の淵をさまよい、いつ終わるともしれない戦争の日々に荒む兵士たちを鼓舞するために、上官から「演芸分隊」をつくるよう命じられた著者は、突飛な職業の兵士たちを演芸員とし分隊を編成、「マノクワリ歌舞伎座」を建てて公演の日々を送ることに――。 演目は『瞼の母』。 病や飢餓で衰えた足を叱咤し、動けなくなった仲間を担架にのせて、密林の最奥から何時間も歩き続けて観に来る多くの兵士たち。舞台の書き割りや小道具に故郷・日本を見出し、快方に向かう者、そのまま「思い残すことはない」と絶命する者も。 そうやって彼らは荒んだ廃兵から、“日本人”に戻り、ある者は生還し、ほとんどは死んだ。 ある時の観客は東北出身の国武部隊の兵士約300人。 雪のなかで生まれ育った彼らは、舞台に降る紙の雪を見て故郷を思い出し、一人の例外もなく両手で顔を覆って、肩をふるわせ、ジッと静かに泣いていた。 「生きているうちに、もう一度、雪がみられるなんて……」 末期の病人は、もう力の入らない指先で紙の雪をソーッといじっていた……。 想像を絶する極限状態のなかで、日本人の心を支えた即席の演芸分隊。その分隊を率いた俳優・加東大介(1911- 1975)による回想の記録文学。 引用部分は実際手に取ることのできたちくま文庫版のページ数にて記録。

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2012/11/06

戦中の南方戦線の話だが、悲惨な箇所は殆ど書かれておらず(書きたくなかったのかも)、作者の楽観主義的な感性に救いがあってよかった

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2012/03/22

有名な本なので?期待していなかったが、いやどうしてどうして、面白い。置き去りにされた戦場で、兵士達に生き延びる意欲をかきたてる為に演芸部隊を正式の命令により組織し、連日の公演?を行う。極限の状況下における人間の不可思議さを納得させられる。芝居の力と芝居への愛情を見せつけられる一冊...

有名な本なので?期待していなかったが、いやどうしてどうして、面白い。置き去りにされた戦場で、兵士達に生き延びる意欲をかきたてる為に演芸部隊を正式の命令により組織し、連日の公演?を行う。極限の状況下における人間の不可思議さを納得させられる。芝居の力と芝居への愛情を見せつけられる一冊であった。

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