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海猫(下) の商品レビュー

3.7

40件のお客様レビュー

  1. 5つ

    10

  2. 4つ

    11

  3. 3つ

    16

  4. 2つ

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2022/04/29

北海道ならではの文学があると思う。そしてそれは女性作家によって紡がれる系譜のような気がする。たとえば、三浦綾子、桜木紫乃といった作家たち。そして谷村志穂もその系譜に連なる人物ではないだろうか。北国を舞台にしたどこか現実と隔絶したように(関東生まれ関東育ちには)感じられる物語。上下...

北海道ならではの文学があると思う。そしてそれは女性作家によって紡がれる系譜のような気がする。たとえば、三浦綾子、桜木紫乃といった作家たち。そして谷村志穂もその系譜に連なる人物ではないだろうか。北国を舞台にしたどこか現実と隔絶したように(関東生まれ関東育ちには)感じられる物語。上下巻からなる『海猫』もそうした魅力を十分に含んだ長編小説。 物語は漁師町に嫁入りする薫から始まる。ロシア人を父にもつ美貌の薫はそれを疎ましく思いながら生きてきた控えめな人。でも心の芯に熱いものをもっていて義弟と心から愛し合う仲になり、物語の中盤で二人は心中するかのように同時に命を投げる。後半は薫が残した二人の娘、美輝と美哉を中心に描かれる。 薫、美輝、美哉のいずれもが主人公といえるだろうか。三者三様の性格と生き方は主人公にふさわしい。一方で、その描かれ方にひかれたのは、薫の母・タミと薫の弟である孝志の妻・幸子、そして薫の夫だった邦一と後妻の啓子の4人。 タミは苦境に陥りそうでもくじけないそのバイタリティある生き方がすてき。幸子は自分の薄幸を承知しているかのようにしょうもない孝志に添い遂げ、終盤はそう悪くない生き方をつかんだところにひかれる。邦一はその不器用な生き方が、薫に対してはつらくあたることになったけど悪者には思えない。啓子は、疎まれ者になった邦一に寄り沿う損な人生を自ら選ぶところにひかれる。 多くの登場人物がいるけど、誰もが何かを抱えながら一生懸命ひたむきに生きている。悪い関係や素直になれなかったりもするけれどそういうふうにしか生きられない人間の姿が丁寧に綴られている。いろいろあっても、時がたつうち落ち着きどころが見つかるような。最後の命がつながれていくようなシーンも静かで熱く、心に響くいい終わり方だった。

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2021/03/14

ようやく読めた下巻。 さすが下巻なだけあって(?)、怒涛の展開となる。 まずは薫と広次がああなってしまう。一応ネタバレ防止。 それ以前に赤木家が壊れている様が何とも恐ろしい。 そんな衝撃の展開後、舞台は長女・美輝が高校を卒業する時代へ。 こちらの第2部は、親の残した有形無形の環...

ようやく読めた下巻。 さすが下巻なだけあって(?)、怒涛の展開となる。 まずは薫と広次がああなってしまう。一応ネタバレ防止。 それ以前に赤木家が壊れている様が何とも恐ろしい。 そんな衝撃の展開後、舞台は長女・美輝が高校を卒業する時代へ。 こちらの第2部は、親の残した有形無形の環境を全身で受け、 強く生きていく様を描いている。 第1部がどちらかというと閉鎖的なある漁村の物語であったが、 第2部になると垢抜けた感じが出てきて、こちらの方が読み進めやすかった。 芯のしっかりした美輝と、世間知らずな妹・美哉が 様々な影響を受けて成長していく姿に、見事に感情移入してしまう。 ラストは落ち着いた雰囲気で、読後感も深い。 でも、薫の弟・孝志はなんだか上手く生き抜けてるなぁ、と変な感心もしてしまった。 あと、実は主人公は薫の母・タミ何じゃないかと思ったりして。 全体的に、壮大な大河ドラマといった感じだが、 どちらかといえば女性向けかと思う。(偏見?) というか、女の人だからこそ共感を得られるような物語なのではないかと。 良作。

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2017/12/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

評価は4. 内容(BOOKデーターベース) 広次と薫の恋は、壮絶な結末を迎えた。それから十八年後、薫の愛したふたりの娘は、美しい姉妹へと成長していた。美輝は北海道大学に入学し、正義感の強い修介と出会う。函館で祖母と暮す美哉は、愛してはいけない男への片想いに苦しむ。母は許されぬ恋にすべてを懸けた。翳を胸に宿して成長した娘たちもまた、運命の男を探し求めるのだった。女三代の愛を描く大河小説、完結篇。島清恋愛文学賞受賞作。

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2017/10/05

氷柱の愛(薫編)は、全く共感できないまま終わった。夫を欺いても子どもといたいといいながら、夫を拒んで関係を悪くし、義弟と逃げ出したと思えば、現実から逃走するという。子どもはどうするんだと言いたい。広次も、なにも考えすまに後を追い、何を考えているのかと驚く。少数派なのかもしれないが...

氷柱の愛(薫編)は、全く共感できないまま終わった。夫を欺いても子どもといたいといいながら、夫を拒んで関係を悪くし、義弟と逃げ出したと思えば、現実から逃走するという。子どもはどうするんだと言いたい。広次も、なにも考えすまに後を追い、何を考えているのかと驚く。少数派なのかもしれないが、邦一の苦しみが一番理解できた。 流氷の愛(娘編)は、重い問題がわりとあっさり片付いてしまっていたが、薫編の救済的な部分があって、読み終わってほっとすることができた。 個人的地雷が多かったわりに一気に読んでしまったのは、文体や描写が美しくうまいからかな。

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2017/06/11

大沼ワルツがよかったので これも買ってみたんだけど 面白かったー。映画になってたなんて知らなかったなぁ。 このストーリーじゃ やっぱり広次の方が惹かれるよなぁ。男気があって気持ちが優しくて 頼もしくて。 でも薫も邦一も だれのことも心から愛してないように思えて仕方ない。それぞれが...

大沼ワルツがよかったので これも買ってみたんだけど 面白かったー。映画になってたなんて知らなかったなぁ。 このストーリーじゃ やっぱり広次の方が惹かれるよなぁ。男気があって気持ちが優しくて 頼もしくて。 でも薫も邦一も だれのことも心から愛してないように思えて仕方ない。それぞれが強い愛を貫いて この悲劇にたどり着いたなら それはそれで仕方ないと思えるけど ほんとに誰かを愛したのって広次だけだったんじゃないかなぁ。 それでこの結末はつらすぎる。

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2016/09/23

函館から漁師町の南茅部に二十歳で嫁いだ薫を中心とした、女三代の大河小説的物語。 ロシアの血を引き、美しすぎるゆえ孤立してきた薫。邦一という漁師の男と出逢い結婚して子どもももうけるが、数年後、薫の運命の歯車が狂い出す。 上巻は薫、下巻は薫の二人の娘が中心となった小説。 解説で小池...

函館から漁師町の南茅部に二十歳で嫁いだ薫を中心とした、女三代の大河小説的物語。 ロシアの血を引き、美しすぎるゆえ孤立してきた薫。邦一という漁師の男と出逢い結婚して子どもももうけるが、数年後、薫の運命の歯車が狂い出す。 上巻は薫、下巻は薫の二人の娘が中心となった小説。 解説で小池真理子さんが「色香に満ちた作品である」「ここまで色っぽい小説にはめったにお目にかかれない」と書いているのだけど、その意見にまず頷いた。 性的なシーンもけっこう多めの小説ではあると思うけれど、色香が立ち上ってくるように感じるのはむしろ、薫や二人の娘の清廉さが描かれているシーンだったりする。 無機的なまでに美しい女性の描写から滲み出る清潔な色気、というような。 悲しいけれど力強い、小説全体の印象は、イコール薫の印象でもある。 美しさゆえに疎外感を感じて生きてきた薫が、本物の愛に気づき、その愛のために生きる。その強さと儚さが壮絶だった。 美しいから人々を夢中にさせ、そのことが薫を縛りつけるという、彼女にとっては苦しい循環。 函館、南茅部、札幌など北海道の風景、教会とキリスト教、漁師町、北海道大学、など、たくさんのキーワードを含む大長編。 とにかく惹き付けられて、一気に読んだ。 薫は自分の愛に生きたけれど、本当は周りの人間たちのことを深く愛していたということに気づく描写たちに、涙が溢れた。 久々に、正統であり波乱に満ちたラブストーリーを読んだ気がする。

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2016/07/31

上巻のヒロイン薫の娘たちを中心とした物語。 舞台は漁村から函館・札幌へ。 第2部は1部と比べて展開が早かった気がしますが、きれいにまとまっていると思います。 女性たちが強くたくましい反面、男性たちが弱々しく情けない印象。

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2015/04/13

物語は意外な展開を迎え、娘たちを中心に進んでいく。 基本的には環境は変わっていないけれど、年月の流れが人々を穏やかにしていくのだろうか。 過去を振り返らずに生きていくことは結構しんどい。 振り返っても、もっと苦しいような気がしている。 だけど、もがきながら生きていくしかない。そう...

物語は意外な展開を迎え、娘たちを中心に進んでいく。 基本的には環境は変わっていないけれど、年月の流れが人々を穏やかにしていくのだろうか。 過去を振り返らずに生きていくことは結構しんどい。 振り返っても、もっと苦しいような気がしている。 だけど、もがきながら生きていくしかない。そういったメッセージがこめられていたように感じる作品だった。

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2014/12/18

3代に渡る女性の人生を描いてますが、重点を置かれていた薫よりも、その母である粋で気丈なタミに一番惹かれた。 薫の話では漁村が、娘の美輝、美哉の話では札幌や函館の情景が自然に思い浮かべることができて、読み応えがあった。

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2014/11/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

【本の内容】 <上巻> 女は、冬の峠を越えて嫁いできた。 華やかな函館から、昆布漁を営む南茅部へ。 白雪のような美しさゆえ、周囲から孤立して生きてきた、薫。 夫の邦一に身も心も包まれ、彼女は漁村に馴染んでゆく。 だが、移ろう時の中で、荒ぶる夫とは対照的な義弟広次の、まっすぐな気持に惹かれてゆくのだった―。 風雪に逆らうかのように、人びとは恋の炎にその身を焦がす。 島清恋愛文学賞受賞作。 <下巻> 広次と薫の恋は、壮絶な結末を迎えた。 それから十八年後、薫の愛したふたりの娘は、美しい姉妹へと成長していた。 美輝は北海道大学に入学し、正義感の強い修介と出会う。 函館で祖母と暮す美哉は、愛してはいけない男への片想いに苦しむ。 母は許されぬ恋にすべてを懸けた。 翳を胸に宿して成長した娘たちもまた、運命の男を探し求めるのだった。 女三代の愛を描く大河小説、完結篇。 島清恋愛文学賞受賞作。 [ 目次 ] <上巻> <下巻> [ POP ] 港町函館。親子三代の愛憎の物語。 いつまでも、高く響く海猫の鳴き声と青い目が忘れられない。 人を愛することはどういうことなのか。 夫婦の契りを交すこととは。 生命の誕生とは何を意味するのか。 多くを考えさせられた作品だった。 谷村志穂のこれぞ力仕事というか、背負い投げを喰らってズッシリと青い畳に投げつけられた、そんな作品だ。 運命の男女、薫と広次がふたり歩いていて、函館山の山肌から順に、夕陽が海へ向かって石畳の道を美しく照らしていく象徴的なシーンがある。 禁断の恋を貫いたふたり。 父親の違う姉妹。 すべてを見守る、おばあのタミ。 誰にも止められない時という齢。 北海道人の心意気とやさしさ、知恵、哀愁そして人生がランボーの詩のように函館の海に溶けていく。 どうにもならないのが人生の真実だが、わたしの魂は救済された気がした。 [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]

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