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憲法と平和を問いなおす の商品レビュー

3.9

33件のお客様レビュー

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2015/12/30

 出張中に読んだ「憲法と平和を問いなおす」(長谷部恭男著:ちくま新書)。筆者は先日の国会参考人意見陳述で 「安保法案は違憲」を明晰な論理で断じたこの国を代表する憲法学者。情緒や感情と一線を画した民主主義、立憲主義、平和主義を論じ憲法と平和を冷静に考えさせる。「理」の世界に浸る感覚...

 出張中に読んだ「憲法と平和を問いなおす」(長谷部恭男著:ちくま新書)。筆者は先日の国会参考人意見陳述で 「安保法案は違憲」を明晰な論理で断じたこの国を代表する憲法学者。情緒や感情と一線を画した民主主義、立憲主義、平和主義を論じ憲法と平和を冷静に考えさせる。「理」の世界に浸る感覚で読む、終章が見事。電車で時々居眠りしつつ18時間。                朝日歌壇(7日)にあった歌、「総理大臣からその国をまもらねばならないといふこの国の危機」。原発やTPP、そして安保法案、加えて消費増税、ひどい話がこれでもかこれでもかと続く。だが、何となく別の胎動が聞こえるような気もするこの頃。

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2015/10/23

違憲証言で脚光を浴びた著者。「憲法とは何か」と同様、憲法の本質を哲学的、政治学的に追究していく一方で、立憲主義と民主主義の両立しない側面、立憲主義と平和についての矛盾点?を追究していく。これまた内容の濃いコンパクトな一冊!。今回の安保法案は両立しえない典型例だった!平和を囚人のジ...

違憲証言で脚光を浴びた著者。「憲法とは何か」と同様、憲法の本質を哲学的、政治学的に追究していく一方で、立憲主義と民主主義の両立しない側面、立憲主義と平和についての矛盾点?を追究していく。これまた内容の濃いコンパクトな一冊!。今回の安保法案は両立しえない典型例だった!平和を囚人のジレンマ命題、またチキン・ゲームに譬えての説明はユニークで斬新に感じた。絶対平和主義を唱えることが非常に危険であることも諄々と説いていく姿勢に感銘さえした。自民はこの点でこの人を国会召致したのかも。しかし、立憲主義の大切さを訴えることからすると自民は浅薄だった!次の言葉があった。「集団的自衛権は自国の安全と他国の安全を鎖でつなぐ議論であり、国家としての自主独立の行動を保障するはずはない。自国の安全が脅かされているとさしたる根拠もないのに言い張る外国の後を犬のようについて行って、とんでもない事態に巻き込まれないように、あらかじめ集団的自衛権を憲法で否定しておくというのは、合理的自己拘束として充分にありうる選択肢である。」(P162)

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2015/08/31

国家の、憲法の、そして平和の「そもそも」を解説してくれている。 扱っているテーマも簡単なものであるから、内容も一読だけでは理解できないものも多い。 終章がすごい。

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2015/08/28

自衛隊と9条の関係や、集団的自衛権等9条の解釈変更の危うさという点は参考になった。が、全体的に少し難しい

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2015/08/02

今や時の人になってしまった感もある長谷部恭男先生の著書。昨年夏に読んだものを再読。しかし難しい。去年読んだときも難しいと思ったが、再読でもなお難しい。この1年間に噴出した様々な憲法がらみの議論と照らし合わたとき、その多くが的外れであると指摘する内容だけに、現実とアカデミックな事実...

今や時の人になってしまった感もある長谷部恭男先生の著書。昨年夏に読んだものを再読。しかし難しい。去年読んだときも難しいと思ったが、再読でもなお難しい。この1年間に噴出した様々な憲法がらみの議論と照らし合わたとき、その多くが的外れであると指摘する内容だけに、現実とアカデミックな事実とのすり合わせによけい頭を使うことになる。しかしここには「民主主義や立憲主義やとは何か?」に関する様々なヒントが書かれていて、その豊潤さは汲めども尽きない。 昨年初めて読んだとき、「ソーシャルライブラリー」用に書いた感想が意外にまとまっているので、それを以下に再録しておく。 タイトルのイメージとはだいぶ違う本である。日本の憲法、特に第九条について詳しく書かれた本かと思いきや、憲法や立憲主義の意味について、ロック、ホッブス、ルソーまで遡って考えていく"政治哲学"の本だ。新書の体裁を取りながら、大学の教科書なみの歯ごたえ。「なぜ多数決なのか?」「なぜ民主主義なのか?」など、普段その意味を深く考えず、当たり前のように受け取っている事柄について根本から問い直していく。当然スラスラ読みこなすのは難しい。 しかしこれがすこぶる面白い。目から鱗の連続。立憲主義というものは多様な価値観を共存させるために生まれたものであるため、そこには違う価値観同士の対立が必然的に内包されていること。それ故に、自分が一番大切だと思う価値観を抑制しなければ維持できない不自然なシステムであること…そのような立憲主義の本質と限界を踏まえた上で、日本にとっての戦争と平和について考え直すと、これまでとかなり違う風景が見えてくる。改憲派と護憲派、どちらの立場にも情緒的な動機や、自らのイデオロギーを普遍の正義だと思い込む面が見られるが、それは立場の如何にかかわらず、立憲主義に反するものだということが分かってくる。立憲主義とは「普遍的な正義など無い」という立場から違う価値観同士の共存を目指す、非常にシニカルなシステムなのだ。 終章の「憲法は何を教えてくれないか」の一部を引用しよう。 # 立憲主義は現実を見るように要求する。世の中には、あなたと違う価値観を持ち、それをとても大切にして生きている人がたくさんいるのだという現実を見るように要求する。このため、立憲主義と両立しうる平和主義にも、おのずと限度がある。現実の世界でどれほど平和の実現に貢献することになるかにかかわりなく、ともかく軍備を放棄せよという考え方は、「善き生き方」を教える信仰ではありえても、立憲主義と両立しうる平和主義ではない。 # ここだけ読むと改憲派(軍備拡張派)が喜びそうな内容にも聞こえるが、もちろんそんなことはなく、次の下りでは、憲法が定める枠組みは、自然ではなく人為的なものであるからこそ、いったん後退を始めると踏みとどまることが出来なくなってしまうという趣旨が述べられていて、改憲派に冷水を浴びせるような内容になっている。 要するに、改憲派・護憲派双方の議論や活動が、いかに立憲主義の基本理念から外れたものになりがちであるかが、この本を読むとよく分かる。 立場の違いにかかわらず、憲法と平和の問題に興味を持つ人なら、ぜひ一度読んで欲しい本。文章は無駄に難しい部分もあるが、この著者の他の本も読んでみたくなった。

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2015/06/10

先日おこなわれた憲法審査会での答弁がメディアで広く取りざたされるようになった著者が、立憲主義と平和主義との関係について基礎から考察をおこなっている本です。 著者によれば、立憲主義が前提とする国家は、市民の生に包括的な意味と目的を示すものではなく、多様な価値観を持つ人びとが平和に...

先日おこなわれた憲法審査会での答弁がメディアで広く取りざたされるようになった著者が、立憲主義と平和主義との関係について基礎から考察をおこなっている本です。 著者によれば、立憲主義が前提とする国家は、市民の生に包括的な意味と目的を示すものではなく、多様な価値観を持つ人びとが平和に共存し、社会生活の便益とコストを公平に分かち合う枠組みを作るための限定された役割を担うものとされています。そして著者は、公共性に高い価値を与えて、そこにこそ市民の生きる意味があると考えるアレントの立場を批判します。 一方で、社会契約論の系譜を参照しながら、そこで国家を設立することで平和な社会の実現をめざすプロジェクトについて考察をおこない、立憲主義と平和主義の間にどのような仕方で折り合いをつけることができるかを、あくまで理論的な観点から冷静に考察を進めています。やや議論が簡潔にすぎるような印象もありますが、立憲主義と平和主義をめぐる本質的な議論の地平を示しているところに、本書の一番の魅力があるように思います。 憲法をめぐって左右両陣営が喧しい議論を戦わせている今だからこそ、本書の議論が展開されている地平にまで立ち戻って考えなおすことがますます必要になっているように感じました。

Posted byブクログ

2014/04/12

どのような場合に民主的に決めてはいけないのか。多様な価値観の共存の可能性を探ります。 [配架場所]2F展示 [請求記号]080/C-7 [資料番号]2004103567、2005104903、2005104902

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2014/03/25

前半の立憲主義、民主主義に関するくだりは面白かったが、肝心の戦争と平和の問題になったら失速してしまった感がある。確かに「情緒論に陥りがちなこの難問を冷静に考え抜く手がかり」を示してはいるか…。何より、あとがきが面白かった。

Posted byブクログ

2013/07/12

なぜ多数決なのか、民主主義なのかに対して自己決定の最大化、功利主義、一人一人を平等に扱うこと、コンドルセの定理と四つの説を紹介するとこから始まる。そして良好に民主政治が機能するためになぜ立憲主義が必要かって話になる。究極的な比較不可能な価値観が対立すると、それは血みどろの争いに向...

なぜ多数決なのか、民主主義なのかに対して自己決定の最大化、功利主義、一人一人を平等に扱うこと、コンドルセの定理と四つの説を紹介するとこから始まる。そして良好に民主政治が機能するためになぜ立憲主義が必要かって話になる。究極的な比較不可能な価値観が対立すると、それは血みどろの争いに向かう。だから政治などの公にそのような私を持ち込まないよう公私が区別される。そしてそれを憲法で規定する立憲主義が出てくる。んで国家や権威にどこまで、なぜ従うのかといった議論が紹介される。オデュッセウスの寓話で憲法九条を合理的自己拘束として紹介してて面白い。 憲法や民主主義、平和主義、自然権とかってのを考える上で大きなヒントを与えてくれる本。大学で政治哲学のクラスを取ってた時に聞いた名前がいっぱい出てきて懐かしかったし。

Posted byブクログ

2013/07/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「あとがき」の著者のコメントがなかなかいじらしい。性格がにじみ出ている気がする。 ホッブズやルソー等、どうしても避けては通れない話(112頁〜)なのだろう、と思う。でも、これらの頁は自分にとっては知りたいことに至るまでの単なる「過程」に感じられ、関心度が下がってしまったので星4つにした。 宗教戦争→なかなか決着がつかない(カトリックとプロテスタントで)→互いに疑う(懐疑主義)→価値観の対立→「自分が大事」(自己保存)なのは全員の共通の認識らしい→価値観が違っても共存できる仕組みを!→立憲主義へ という流れは分かりやすかった。 以下は気になった頁についてのメモ・コメント 36頁: 庶民に「強い意見」を求めるのは賢明ではない、というある小説の引用からの「凡庸な政治家に任せておいても、一般人の生活に大きな(悪い)影響をもたらさない程度に民主政治の行動範囲を枠づけることは…立憲主義の重要な役割である。」という著者の主張には頷ける。 〈個人的に思ったこと〉 政治家の質が優れていることを常に要求するのは非現実的なんだろう。それを満たせなくても政治が上手く回っていく仕組みを保持しているのが今の日本国憲法。こういう意味において、現在の安倍総理のような人がいるのも(憲法の)想定の範囲内なんだろう(憲法を改正しようとしていることを除いて…)。 41頁: 「社会全体としての統一した答えを多数決で出すべき問題と、そうでない問題があるというわけである。…その境界を線引きし、民主主義がそれを踏み越えないように境界線を警備するのが、立憲主義の眼目である。」 92〜94頁: 女性の天皇がいないのは男女不平等原則に反するのではないか、という問いに対する答え。皇族の人たちは酷く窮屈な生活していて、しかもそれを是正しようと考える人たちもほとんどいない状況を思い浮かべた。 130頁: 「なぜ、そしてどこまで国家に従うべきなのか」→バカロレアの哲学の試験で見たような命題。 「我々は国家に対していかなる義務を負うか?」(http://id.fnshr.info/2013/06/24/bac-philo-2013/) 158頁: 立憲主義は市民に生きる意味を与えない。従って、立憲主義国家は徴兵制を採用できない。なぜなら、立憲主義は主義主張の異なる人たちが共同して生きていける社会を単に前提としているだけだから。 171頁: 原理(principle:特定の方向へ導く力に留まるもの)と準則(rule:行動を一義的に決めるもの)の区別。9条は原理なのか準則なのか。憲法典の存在意義:民主的手続への過重負担をさけること、民主政治が自ら手に負えないことにまで手を出さないよう、ハードルを設けることにある。立憲主義の眼目と重なる部分(41頁) 175頁: 犯罪への対処手法である修復的司法(restorative conference)の平和回復への応用。自分が知らないだけで間違いなく以前から存在しているんだろうけど、画期的な方法に思えた。ただし、「抑止的処罰」や「無害化」等の強制的な手段とセットで初めて効果を期待できる。

Posted byブクログ