わたしの名は「紅」 の商品レビュー
細密画師各人はスルタンと師匠の考えがわからないので、なんでこうなるんだというところから事件が起こる。その犯人を細密画師それぞれが歩んできた道のりから探っていく。
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一つには絞れない様々なテーマがこの作品を形作っているのだと思うが、私には特に「抗えないものに飲み込まれるとき、人はどう思いどう動くのか」ということを考えさせられた。 ベオグラードの人民博物館を訪れた際、正教会の伝統的なイコン美術が時代が下るにつれて西洋の新古典的な絵画スタイルに...
一つには絞れない様々なテーマがこの作品を形作っているのだと思うが、私には特に「抗えないものに飲み込まれるとき、人はどう思いどう動くのか」ということを考えさせられた。 ベオグラードの人民博物館を訪れた際、正教会の伝統的なイコン美術が時代が下るにつれて西洋の新古典的な絵画スタイルに侵食されていくのを見て物悲しい気持ちになったことを思い出した。 イコン職人たちも黙って自分の立場を明け渡したわけではないだろう。そこにあったであろう葛藤や怒り、無力感、そんなものを考えさせられてしまった。
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読了した自分をホメてあげたい。部厚がその「障害」であったワケではない(その理由は他のヒトの評にも散見されるもの)。殺人の動機に関わる部分(というか関わるさま)にエーコ『薔薇の名前』が連想された。語り手(語り口)がめまぐるしく代わって魅力ある物語世界(世界観)の拡がりやその多彩が想...
読了した自分をホメてあげたい。部厚がその「障害」であったワケではない(その理由は他のヒトの評にも散見されるもの)。殺人の動機に関わる部分(というか関わるさま)にエーコ『薔薇の名前』が連想された。語り手(語り口)がめまぐるしく代わって魅力ある物語世界(世界観)の拡がりやその多彩が想像されるのでその、そのうち新訳版で再読したい。 同著者の旧訳『雪』も読了まで難儀したが、訳者の異なる『白い城』では稀有の豊潤な物語を堪能(耽溺)できた。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
本当はハヤカワ新訳版で読みたかったのだが、図書館にあったこっちを読んでみた。 スゲーしんどかったってのが第一印象。読み応えありすぎ、小説でここまでの歯ごたえは数年来ではないだろうか。 とにかく濃密なのである。イスラム世界を題材にした細密画ってのがこの小説の重要な舞台かつ設定にあるんだが、文章で細密画を表現すると確かにこうなるよなぁって細かさっぷり。目も集中力も限界が来て、途中で読み飛ばしたくなるんだが、読み飛ばすとせっかく構成されてきた精緻な世界が瓦解しそうで、また数ぺージ戻って読み直して… 隙間時間も駆使して一所懸命読んで1日100Pが精いっぱい。ほぼ1週間の濃密だったこと。こってりと脂ったイスラム世界を堪能しました。ミステリーであり恋愛小説であり中近東史であり芸術小説である本書。じっくりゆっくり読書の濃密な世界を味わいたい人は手に取る価値あり。トルコに行ったことのある人行ってみたい人は是非とも! 正直言うと俺には少し濃密すぎた。読み終わった時も小説の世界に浸ったというより、最後のページまで読み終えた達成感に満足を覚えてしまい、それは読書じゃなく、苦行の域に属するもので…。 心と時間の余裕、何よりもイスラム細密画の世界にとっぷり1カ月くらいかかって浸ってやろうってな気持ち、これらが足りない俺には。この本の神髄は理解しきれていないのかもなぁ…。残念なのは小説ではなく、読書スキルの追いつけなかった俺である。
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2006年にノーベル文学賞を受賞したトルコ人の作家の代表作。 「世界32言語に訳されたベストセラーで、著者の最高傑作」と帯にある。 舞台は16世紀のイスタンブール。細密画師の殺人事件をめぐる歴史ミステリーである。解説の焼き直しになるけど、この小説の魅力は、第1にミステリとしてお...
2006年にノーベル文学賞を受賞したトルコ人の作家の代表作。 「世界32言語に訳されたベストセラーで、著者の最高傑作」と帯にある。 舞台は16世紀のイスタンブール。細密画師の殺人事件をめぐる歴史ミステリーである。解説の焼き直しになるけど、この小説の魅力は、第1にミステリとしておもしろい。「犯人は誰か」という興味で最後まで飽きない。第2に16世紀のイスタンブールの人々や社会が描かれ興味深い。日本では戦国時代だったんだとか思うと、当たり前だけど全然違っていて、新鮮である。第3に恋愛小説としてのおもしろさ。私は恋愛ものは苦手なのだけど、最後の部分に結構心が動いた。第4に、人々の芸術観が迫力をもって描かれるところである。作者が画家を目指していたこともあり、薄っぺらい芸術論ではない。 形式も変わっている。59の章は一つ一つ語り手が変わっていく。例えば1章は「わたしは屍」、31章は「わたしの名は紅」という風に。31章の語り手は「色」である。 この小説で作者はノーベル賞を受賞したと言われている。ミステリーとしても読めて、しかもまぎれもなく重厚な文学。正直疲れたけど、良かった。
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久々に読み応えのある、重厚な、文学らしい文学作品を読んだ。イスタンブール出張に何の本を携行しようかと思い、長らく積読状態になっていたこの本を読み始めたが、結構読了に時間がかかった…。語り手が(主役級の人物のみならず、時には死体が、時には木の絵が、時には紅の色が語り出す)入れ替わり...
久々に読み応えのある、重厚な、文学らしい文学作品を読んだ。イスタンブール出張に何の本を携行しようかと思い、長らく積読状態になっていたこの本を読み始めたが、結構読了に時間がかかった…。語り手が(主役級の人物のみならず、時には死体が、時には木の絵が、時には紅の色が語り出す)入れ替わり立ち替わり、さまざまな視点で重層的に紡ぐ物語は、カラとシェキュレの恋愛、細密画師の殺人の謎解きのみならず、細密画という世界を舞台に、イスラム世界全体が、西欧的価値観やスタイルのインパクトに抗いながらも、受け入れざるを得ない、アイデンティティ・クライシスや、パラダイム・シフトを描いていて、壮大かつ重厚。トルコ人であり、西欧文学に傾倒したパムクだからこそ描ける物語。おもしろかったけど、コーランや、イスラム世界では知ってて当たり前のさまざまな物語、たとえ話などがたくさん出てくるので、それなりに覚悟して読まないとキツイかも。でも、画家を目指していたパムクらしく、芸術に関しての慧眼には感服するし、シェキュレやエステルの俗っぽさや庶民の(そして、女性の?)たくましさは生き生きと描かれていて魅力的だし、ミステリーの要素もある、かなり贅沢な文学作品だった。 今回のイスタンブール出張中、トプカプ宮殿を訪れたので、作品中、スルタン様の宮殿が出てくる場面は情景が浮かんだし、イスタンブールの町中の描写も親近感が持てた。やっぱり、作品の舞台となっている場所の空気を感じながら作品を楽しめるのはいいなぁ。 蛇足ながら、今回の出張で訪れたボアジチ大学の元副学長はパムクのお兄さん、シェヴゲト・パムクなんだとか!ちょっと縁を感じる。
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トルコ文学は初めて読んだので、風習や名称等よくわからないものもあったが、これをきっかけに色々調べたりしたのでかえって勉強になった。
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オルハン・パムクは恋愛小説家だと思って読んでいる。 繰り返されるテーゼ、寓話の登場人物に投影される男女、静かに確信の周辺について語られていき、二人の距離が詰まらない。じれじれして、最終章の埃っぽい薄暗い部屋、荒い記事のカーテン、インク壺とペンが最高のご褒美でした。
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やはり翻訳の限界はあるのだろうけれど、イスラムの世界をわずかでも覗き込めた気がした。物語はさておき、コーラン(翻訳者は「コラーン」という読み方に妙な意地を見せているが「クルアーン」の方が実際には近いと思う)の持つ意味やイスラムで言う偶像の意味がわかるという点でとても参考になった。
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2006年ノーベル文学賞受賞 wikipedia. → http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%AB%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%91%E3%83%A0%E3%82%AF オルハン・パムク(O...
2006年ノーベル文学賞受賞 wikipedia. → http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%AB%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%91%E3%83%A0%E3%82%AF オルハン・パムク(Orhan Pamuk, 1952年6月7日 - )はトルコの作家。コロンビア大学教授(比較文学)(2006年~現在)。イスタンブル生まれ。イスタンブル大学ジャーナリズム学科卒業。
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