スカイ・クロラ の商品レビュー
恥ずかしながら、森博嗣先生の作品を拝見したのは今作がはじめてになります。代表作といえばミステリの傑作「すべてがFになる」ですが、このような作品も書かれることを知りました。 本作「スカイ・クロラ」は、一見戦闘機と少年という若年世代向けに見えますが、実はそこかしこにテーマが散りばめ...
恥ずかしながら、森博嗣先生の作品を拝見したのは今作がはじめてになります。代表作といえばミステリの傑作「すべてがFになる」ですが、このような作品も書かれることを知りました。 本作「スカイ・クロラ」は、一見戦闘機と少年という若年世代向けに見えますが、実はそこかしこにテーマが散りばめられており、大人に響く寓話テイストの作品ではないでしょうか。というのも、キルドレと呼ばれる「大人にならない少年」を題材にしており、その世界観を存分に生かすことで、大人の知性と少年の矛盾する感情を描くことができているのではないかと思うのです。中でも「僕たち子供の気持ちは、大人には決してわからない。どうしてかっていうと、僕らは理解されることが嫌なんだ」という独白がありまして、これは自身の青春時代と重なるような気がします(当時は言葉にできませんでしたが笑)。このように、不思議な世界観でありながら、どこかメッセージ性が高くなっている印象を持ちました。 そして、それに花を添えるのは、森先生の高い文章力でしょう。「完成された作家」とあるように、詩のような美しい文章が続きます。表紙の「僕がまだ子供で〜」と続く文を見ただけで購入された方もいらっしゃったかもしれません。 また、解説の鶴田健司先生が仰っているように、説明がなくスムーズに話が展開されるのも評価されるべき点だと思います。このような説明しない手法は流れが軽やかですが、ときに説明不足を招く可能性もあります。そのような点を一切感じさせないのは、先生の高い実力あってこそだと思います。 重めのテーマながら、どこか透明感の感じられる「スカイ・クロラ」は、現実から逃避させ、最後に一欠片の教訓のようなものを残してくれます。今困っている人こそ是非、昨今の先行き見通せぬ情勢から逃げ出し、森先生の世界に飛び込んでみましょう。
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アニメは視聴したことがあり、森さんが原作とは知らなかった 原作の方がとてもいいと思います 読み終わったので、アニメを再び見直してみようと思います
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もりひろしさんの本、シリーズ一作目。 淡々とかたられる描写には戦争という大きいものに対して何も知らないキルどれからの目線がしっかり書かれている。日常も含め後半に行くにつれどんどん判明していき(複雑さが)明るくなる感じがいい。 ラストは衝撃だった。個人的に草薙水素が好きだからかも。
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スカイ・クロラシリーズ第1弾。ちょっと難しくて面白さが分かりませんでした。(まだ1作目だからかな?)ただ、シリーズを通して読み深めると好きになれそうな世界観と設定だったので続きは楽しみです。
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再読。このシリーズは全部読んだのだけれど当時読んだ時はいまいち没入しきれなかったので最初からまた読んでみたいと思ったので再読してみた。この作品は世界観も雰囲気も独特でそれがぴったりハマる人は滅茶苦茶好きになる小説だと思う。過剰な装飾もなく余分な説明もなくただただシンプルでどこか澄...
再読。このシリーズは全部読んだのだけれど当時読んだ時はいまいち没入しきれなかったので最初からまた読んでみたいと思ったので再読してみた。この作品は世界観も雰囲気も独特でそれがぴったりハマる人は滅茶苦茶好きになる小説だと思う。過剰な装飾もなく余分な説明もなくただただシンプルでどこか澄み渡った青空を思わせる本作。続きも再読していこうと思う。
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読みながら、カズオイシグロの「わたしを離さないで」の提供者の設定を思い出した。←ドラマを見ていてその設定に気分が悪くなって途中から見なくなった。最後まで見たら印象変わるのかもしれないけど、子ども産んだばかりのわたしには辛すぎた。 スカイ・クロラも、大人にならない、殺されない限り死ねない、闘うための子ども、、という設定に目眩がして、読むのを断念しようかと思った。 淡々とした文体。飛行機のことはよくわからないから戦闘シーンとかほぼ素通りしてしまう。 Wikipediaで見たらスカイクロラは後編の内容とのことなので、ナバテアから読み直してみようと思う。
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アニメ映画版の独自解釈はさておき、文章の方が心情描写において優れているという所感。視聴者の知り得ない情報も入ってくる。食欲と性欲の欠落した村上春樹っぽくて好みの文体だ。
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人が乗っていても、乗っていなくても、堕ちていくのは飛行機であって、その飛行機の内臓まで考える暇なんてない。 僕たちは、確かに、退屈凌ぎで戦っている。 でも……、 それが、生きる、ということではないかと感じる。 呼吸さえしていれば、死ぬことはない。食べて、寝て、顔を洗い、歯を磨...
人が乗っていても、乗っていなくても、堕ちていくのは飛行機であって、その飛行機の内臓まで考える暇なんてない。 僕たちは、確かに、退屈凌ぎで戦っている。 でも……、 それが、生きる、ということではないかと感じる。 呼吸さえしていれば、死ぬことはない。食べて、寝て、顔を洗い、歯を磨く。それを繰り返すだけで、たったそれだけで、生きていけるのだ。 唯一の問題は、何のために生きるのか、ということ。 生きていることを確かめたかったら、死と比較するしかない、そう思ったからだ。 どうしてコクピットを開けなかったかって? たぶん、死ぬときは、何かに包まれていたかったのだ。 生まれたときのように。 そんな死に方が、僕の憧れだから。 ボールの穴から離れた僕の指は、 今日の午後、 二人の人間の命を消したのと同じ指なのだ。 僕はその指で、 ハンバーガーも食べるし、 コーラの紙コップも摑む。 こういう偶然が許せない人間もきっといるだろう。 いつ堕ちても良い。 いつ死んでも良い。 抵抗があっては、飛べないのだ。 同じ時代に、今もどこかで誰かが戦っている、という現実感が、人間社会のシステムには不可欠な要素だった。 本当に死んでいく人がいて、それが報道されて、その悲惨さを見せつけないと、平和を維持していけない。いえ、平和の意味さえ認識できなくなる。
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【あらすじ】 主人公は戦闘機パイロットのカンナミ・ユーヒチ。カンナミが配属された基地には4人のパイロットと指揮官の草薙水素がいた。カンナミは何度か出撃を重ねながらも淡々と日々を過ごしていた。 カンナミの前任者クリタは、噂によると草薙に銃で撃ち殺されたらしい。キルドレである草薙はカンナミに「死にたい、君も殺して欲しい?」と言う。キルドレとは、戦争のために作られた永遠に生き続ける人間である。 カンナミは以前いたクリタの生まれ変わりだった。草薙はクリタを愛していたため殺した。そんな草薙をカンナミは銃で撃ってあげたのであった。 【感想】 生と死について考えさせられる、何度も読んでいるシリーズ。小説と映画では草薙の結末が異なる。時系列としては5/6番目に当たる。
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初読の時には本作の面白さが理解できていなかった。主人公カンナミ・ユーヒチの一人語りの物語は、読者に必要と思われる状況説明を極限まで削ぎ落されたまま進行していたし、それから、途中途中に出てくる叙事詩的な文章が受け入れられなかったのかも知れない。本文に出てくる戦闘機がプロペラ機である...
初読の時には本作の面白さが理解できていなかった。主人公カンナミ・ユーヒチの一人語りの物語は、読者に必要と思われる状況説明を極限まで削ぎ落されたまま進行していたし、それから、途中途中に出てくる叙事詩的な文章が受け入れられなかったのかも知れない。本文に出てくる戦闘機がプロペラ機であることや、後半で説明されるプロペラを機体後部に置くプッシャー式なのが、プロペラを機体前部に置くトラクター式しか想像できなかった自分には興味深かった。
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