夜叉ヶ池・天守物語 の商品レビュー
泉鏡花の文がとても美しい。 天守閣に住む異界の姫と、人間である図書之介の純愛物語。 凛々しく堂々とした富姫が、どんどん図書之介に惹かれていく様子が可愛い。
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歌舞伎座、坂東玉三郎の『天守物語』を観て、この本を読んだ。 美しい人(男女関わらず)を苦境に追いやる人間たちが妖怪に退治される筋だが、玉三郎様や舞台の残像が残っているせいか、『夜叉ヶ池』までも、背景が思い浮かぶように一気に読んだ。 台詞の語調も耳に残っているので、目に慣れない文章...
歌舞伎座、坂東玉三郎の『天守物語』を観て、この本を読んだ。 美しい人(男女関わらず)を苦境に追いやる人間たちが妖怪に退治される筋だが、玉三郎様や舞台の残像が残っているせいか、『夜叉ヶ池』までも、背景が思い浮かぶように一気に読んだ。 台詞の語調も耳に残っているので、目に慣れない文章もすらすらと読め、読むタイミングはとても良かった。 舞台を観る前だったら、耳にも目にも慣れない表現に難儀したかもしれない。 玉三郎様がインタビューの中で、 歌舞伎役者は次々と演目に追われているので、一つの作品をじっくり読み解く、というのは難しいが、舞台にかけている間の1か月間は、毎日声に出して台詞を言っているので、体で読む、『体読』しているようなものだ… というようなことを言っていたが、玉三郎様が体読したもを、観客は体で聴く、『体聴』しているようなものかもしれない。 歌舞伎演目を、初めて通しで文字で読んだわけだが、全部の演目そうしたい。そうすれば、もっと歌舞伎が面白くなるだろうに。 泉鏡花という作家に関しては、違う作品を読めば、また違う感想を持つと思うので、とりあえず、歌舞伎ネタで感想をまとめてみた。
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某乙女ゲームがきっかけで再読。以前、読んだ時よりはするすると~。 お百合さんと白雪が可愛いのよねぇ。 民俗学での境界の区別を考えながら、今回は読んでいました。(初めて読んだ時はいまほど民俗学のことは知らなかったので) 百合さんがいるところが境界線。白雪がいるところは異世界(神...
某乙女ゲームがきっかけで再読。以前、読んだ時よりはするすると~。 お百合さんと白雪が可愛いのよねぇ。 民俗学での境界の区別を考えながら、今回は読んでいました。(初めて読んだ時はいまほど民俗学のことは知らなかったので) 百合さんがいるところが境界線。白雪がいるところは異世界(神の世界)村人たちのいるところが俗世。 互いに不可侵を決めていた。それが晃している鐘楼守なのだけれど、その境界線が破られた時に村は瓦解する。 柳田國男とも交流があったことは知られているけれど、今回はある意味で楽しく読書。 この2作品は読みやすいし、短いので。 久しぶりに玉三郎の映画が見たくなった。
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幻想的で美しく、文字を追うだけでも美しい情景や美しい女性たちの凛とした声が聞こえてくるよう。 最終的には恋する者たちが結ばれてハッピーエンドかと思いきや、傲慢な人間たちは大勢死んでいる。 純愛の勝利を妖怪側に負わせるということに、真の純愛、落命も辞さない美しい愛は、幻想の・彼岸の...
幻想的で美しく、文字を追うだけでも美しい情景や美しい女性たちの凛とした声が聞こえてくるよう。 最終的には恋する者たちが結ばれてハッピーエンドかと思いきや、傲慢な人間たちは大勢死んでいる。 純愛の勝利を妖怪側に負わせるということに、真の純愛、落命も辞さない美しい愛は、幻想の・彼岸の世界において達成されるという気持を感じた。
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『夜叉ヶ池』雪なす羅、水色の地に紅の焔を染めたる襲衣、黒漆に銀泥、鱗の帯、下締なし、裳をすらりと、黒髪長く、丈に余る。銀の靴をはき、帯腰に玉のごとく光輝く鉄杖をはさみ持てり。両手にひろげし玉章を颯と繰落して、地摺に取る。 文体の美しさもさることながら、人間の浅ましさを描くこの作品...
『夜叉ヶ池』雪なす羅、水色の地に紅の焔を染めたる襲衣、黒漆に銀泥、鱗の帯、下締なし、裳をすらりと、黒髪長く、丈に余る。銀の靴をはき、帯腰に玉のごとく光輝く鉄杖をはさみ持てり。両手にひろげし玉章を颯と繰落して、地摺に取る。 文体の美しさもさることながら、人間の浅ましさを描くこの作品は泉鏡花の有体でない才能を感じさせる。 白雪の心理描写は、恋が清濁併せ持つことを具現しているように思った。 残忍さすらも彼が描けば美しい悲劇として映し出される不思議。 旧い人はどのようにして戯曲を読み、舞台を見て、作品を感じたのだろう。同じ場面で息をのみ、焦がれたのか。そうとまで考えさせる、妖しく艶やかに心に残る作品。
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※このレビューにはネタバレを含みます
三島由紀夫と澁澤龍彦の二人がこぞって絶賛している。まさに鏡花戯曲の最高傑作だろう。お芝居は、幕開きの花釣りの場面から美しく、そして幻想的だ。亀姫の訪問と図書之助とのかりそめの恋と、物語のプロットはシンプルなのだが、それが却って幻想性を高めている。舞台は姫路城天守閣第五重。登場する富姫も亀姫も、図書之助も皆ことごとく美しい。とりわけ富姫の妖艶さは、この世のものとも思えない(実はこの世のものではないのだが)。シネマ歌舞伎では富姫に玉三郎、亀姫に中村勘太郎、図書之助が海老蔵と、なんとも豪華なラインナップだった。
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教科書や授業以外で古典を読むのははじめてかも。 きっかけはラノベの文学少女シリーズです(苦笑)。 そこでどのように記述されていたのかはすでにおぼろげなのですが図書館で見かけて、「あ、これあったなぁ…」くらいの感じで借りてみました。 薄いから早く読めるかなぁ…と思ったけど、やっぱり...
教科書や授業以外で古典を読むのははじめてかも。 きっかけはラノベの文学少女シリーズです(苦笑)。 そこでどのように記述されていたのかはすでにおぼろげなのですが図書館で見かけて、「あ、これあったなぁ…」くらいの感じで借りてみました。 薄いから早く読めるかなぁ…と思ったけど、やっぱり古典(?)を読むのは今の小説より時間がかかりますね。 ちゃんと振り仮名も振ってあるから、読みやすいハズなんですが。 泉鏡花ってもっと怖い感じなのかな、と思っていましたが、全然ですね。 妖怪達もとても人間的。 まぁ、行動が巻き起こすスケールは全然違いますが。 たまにはこーゆー古典作品を読むのも良いかなと思いました。
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人外の姫がメインの二つの物語。誰にも知られず生きている二人の、人間を見下す態度はまるで大自然の意志が形を持ったかのよう。大衆の中では逆に浮いてしまうような善良な人間だけが許されるという展開は、所謂日頃の行いがものを言うということが表されているのだろうか。一握りが助かったことに安堵...
人外の姫がメインの二つの物語。誰にも知られず生きている二人の、人間を見下す態度はまるで大自然の意志が形を持ったかのよう。大衆の中では逆に浮いてしまうような善良な人間だけが許されるという展開は、所謂日頃の行いがものを言うということが表されているのだろうか。一握りが助かったことに安堵するということは、多くの人間が犠牲になった悲劇を肯定することになる。そんな自分に気づいたとき自分がいかに愚かで傲慢かを見せられたような気になる。
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妖怪の話が好きで手を出してみた一冊。 これが最初の泉鏡花の本。 妖怪三部作ともいうべき鏡花の戯曲のうちの二作を収録。 最も有名な天守物語の完成度がやはり他よりも高い。 戯曲という形態なので、会話とト書きで物語が進んでいくが、陰影の濃い文体と濃密な世界観に引き込まれる。 現代の作家...
妖怪の話が好きで手を出してみた一冊。 これが最初の泉鏡花の本。 妖怪三部作ともいうべき鏡花の戯曲のうちの二作を収録。 最も有名な天守物語の完成度がやはり他よりも高い。 戯曲という形態なので、会話とト書きで物語が進んでいくが、陰影の濃い文体と濃密な世界観に引き込まれる。 現代の作家には描けない妖艶な雰囲気が素晴らしい。
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泉鏡花の戯曲2篇を収録している。夜叉ヶ池が1913年、天守物語が1917年に書かれたものです。どちらも映画や舞台になっている作品です。どちらも人の住む世界とアヤカシの住む世界の境界線上で起こる事件を題材にしており、神秘的で美しく妖しい世界が展開します。どちらも、アヤカシを前にして...
泉鏡花の戯曲2篇を収録している。夜叉ヶ池が1913年、天守物語が1917年に書かれたものです。どちらも映画や舞台になっている作品です。どちらも人の住む世界とアヤカシの住む世界の境界線上で起こる事件を題材にしており、神秘的で美しく妖しい世界が展開します。どちらも、アヤカシを前にしているにも関わらず、ヒトのエゴの方が醜く思える作品です。彼の作品は、文語体で読むのに苦労するものが多いのですが、本作は、短く、また戯曲ということもあり話し言葉のため、比較的読みやすいです。美しい日本語に触れるには最適かと思います。
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