オイディプス王 の商品レビュー
古典的名作を是非。『…
古典的名作を是非。『オイディプス王』は、今日でも耳にするオイディプス・コンプレックスの元ネタです。
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発端の自信に満ちた誇…
発端の自信に満ちた誇り高い王オイディプスと運命の運転に打ちひしがれた弱い人間オイディプスとの鮮やかな対比。数多いギリシア悲劇のなかでも、古来傑作の誉れ高い作品である。
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ソポクレス著、藤沢令夫訳『オイディプス王(岩波文庫)』(岩波書店) 1967.9発行 2020.4.30読了 オイディプス王は、ソポクレス(前496(495)年~前406年)がギリシア神話を翻案して作品化させた戯曲である。同時代には、ソポクレスのほかアイスキュロス、エウリピデ...
ソポクレス著、藤沢令夫訳『オイディプス王(岩波文庫)』(岩波書店) 1967.9発行 2020.4.30読了 オイディプス王は、ソポクレス(前496(495)年~前406年)がギリシア神話を翻案して作品化させた戯曲である。同時代には、ソポクレスのほかアイスキュロス、エウリピデスがあり、3人をまとめて「ギリシア三大詩人」という。数多いギリシア悲劇の中でも、このソポクレスのオイディプス王は後世名高い作品と言われている。私も筋は知っていたが、藤沢令夫氏の訳ということで、つい手にとってしまった。戯曲なので科白で構成されているのだが、格調高い藤沢氏の翻訳によって、幕引きまで引き締まったムードで読者の心を摑んで離さない。当時の観客らもギリシア神話の筋は知っていただろうから、ネタバレの中でも観客らの心を摑むための工夫が行われていたはずであり、ソポクレスのオイディプス王について言えば、やはりこの緊迫感であろう。藤沢氏の解説の中で、この作品の特徴として、真相の発見と、それに伴う運命の逆転が取り上げられているが、まさにこの「どんでん返し」がこの作品の肝であることは間違いないだろう。スフィンクスの謎かけも、「汝みずからを知れ」という伏線としてうまく機能している。そして、罪なき善意の王を無慈悲に奈落に突き落とす構成が、人間の意のままにはならない現実社会の無常さ、ひいては人間の意志の働かない自然の掟に対する畏怖を覚えさせるのである。「オイディプス王」の時代設定の中で、疾病の流行が取り上げられているが、ソポクレスの生きた時代にも「アテナイのペスト」と呼ばれる疾病が蔓延しており(前430年~)、こうした時代背景も、彼の作品の人気を押し上げる動力になったのではないかと思われる。なるほど疾病は確かに悲劇を生む源だろう。 オイディプス王は、しかし、幾多の人たちから真相解明を止すように警告されるにも関わらず、残酷な運命へと突き進んでいくのであるが、途中から、自ら墓穴を掘っているようにも見える。己の出生の秘密を詳らかにすることで、かえって清々しく絶望の淵に浸ろうとするような節がある。言い換えれば、破滅願望と言おうか。これが悲劇の典型なのかどうかは分からないが、人間には確かにそういう一面があることも事実だ。人間共通の「弱さ」と言っていいのか分からないが、人間の一側面を照射した優れた作品であることは間違いない。 https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001098492
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海辺のカフカから。 父を殺し、母と交わる 朝は4本、昼は2本、夜は3本 自らの出生を知っていくオイディプス。 ブワーっと1時間半ほどで読了 結末を知っていたからこその、先へ先へと急ぐ気持ちがあったのかもしれない。 経験があるが、AとBという可能性があったとき、つい自分に都合...
海辺のカフカから。 父を殺し、母と交わる 朝は4本、昼は2本、夜は3本 自らの出生を知っていくオイディプス。 ブワーっと1時間半ほどで読了 結末を知っていたからこその、先へ先へと急ぐ気持ちがあったのかもしれない。 経験があるが、AとBという可能性があったとき、つい自分に都合のいい方を選んでしまいがちだ。 オイディプスも例の如くであり、人間本当にいいように解釈するんだなあと思った。 はじめクレオンや預言者をバカにしていて信じようともしない やがてどんどん真実が現れていく。身が破滅していく。 自分の目を 目というのが象徴的だと思った。 イオカステは首を吊ったが、オイディプスは首吊りではなくみずから、己の目をつぶした。 でもなんかオイディプスは避けようがなかったよねーって感じ。強いていうなら人殺ししなければよかったねって感じ。運命は逃れられないって感じがする ・結末がわかっているのに面白いのはすごい ・知らぬが花だなあ ・真実のために良かれと思って行動していくうちに真実が明るみに出る。清々しさ。清々しいって感想すごいなあ
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ずっとドキドキしながら、目を見開いて読み切ってしまいました。 王が問い詰める場面では、ああああ、その辺でやめとこうよ…なんてつぶやきながらハラハラハラハラ。 あぁ舞台で見てみたい!
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話の構成自体(内容は別として)は、今となっては定番というか、ある話。 が、セリフの言い回しがすごく含みというか、わかりやすく奥もある感じがとても良い。 古典傑作は伊達ではなかった。 この悲劇もそうだけれど、喜劇、笑劇等々の作品は読むことが少なかったけれど、読んで愉しいとわかったの...
話の構成自体(内容は別として)は、今となっては定番というか、ある話。 が、セリフの言い回しがすごく含みというか、わかりやすく奥もある感じがとても良い。 古典傑作は伊達ではなかった。 この悲劇もそうだけれど、喜劇、笑劇等々の作品は読むことが少なかったけれど、読んで愉しいとわかったので他のも読んでみたいと思った。 次はマクベスでも。 ちなみにあらすじはある程度知っていたオイディプス王ですが、事前に知っていても知らなくても面白いです。
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出てくる人みんな、そんな大げさな……という感じだが、戯曲ということを考えるとまあそんなものか。 実の母を妻にするっていう呪われた設定を思いついたソポクレス怖いな。どういう人だったんだろうか。 ってか2000年以上読みつがれるって普通にヤバくない?(頭悪い感想)
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概要は知ってしまっていたのでどんなものかが分かればよい程度で捉えていたが、なかなかどうして、想像以上に面白かった。 結末を知っていてもなお楽しめる。これが演出の力か。 巻末の解説にもあるが、各登場人物が良かれと思って行動することによって少しずつ真実が明らかになっていく構図にワク...
概要は知ってしまっていたのでどんなものかが分かればよい程度で捉えていたが、なかなかどうして、想像以上に面白かった。 結末を知っていてもなお楽しめる。これが演出の力か。 巻末の解説にもあるが、各登場人物が良かれと思って行動することによって少しずつ真実が明らかになっていく構図にワクワク感があり。 また予言を避けようとして、結果的に予言の通りとなってしまうという無情さもまた心を打つ。 複雑なのは、真実を知らねば、オイディプスはイオカステや子供たちとも幸せに暮らせていたという点。 ただ、その真実が明らかになってしまったが故に苦しみ、自殺し、光や未来を閉ざしてしまう。 それならば、真実など知らない方が良かったのではないか、と思ってしまう。 その行為自体によって悪影響は出ておらず、その情報が一部の真実を知る者の記憶の彼方や神託の中にのみ存在しているだけなのだから。 冒頭で「疫病が広がり、畑が枯れ、家畜が死に…」とあるが、現実的にはオイディプスとその家族の不実が疫病を広げ、畑を枯らし、家畜を死に絶えさせることなどありえない。 また最終的にオイディプスが国を出ることによってそれらの災厄が回復したという情報も出てこない。 オイディプスが先王ライオスを亡き者にした犯人をなんとしてでも見つけ出して追放または処刑すると発奮するのが質が悪いので、厳しく言えば身から出た錆なのかもしれない。 こういった考えを出来るのは、論理的、科学的、物理的な基礎知識を我々が備えているからであって、この登場人物たちはそういった歴史の積み重ねをまだ経ておらず、災厄は神々による罰や気まぐれという風に考えているため、無理もない。 いずれにせよ、悲劇は起こってしまったものの、登場人物みんなに今の自分から見てヴィランが存在せず、みなが善良であるという点においては、清々しさがある。もちろん、ライオス殺しを正当化することはできないが、この時代では、そういったことはありふれたことであったことだろう。
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テーバイ国のライオス王は神から「お前はわが子に殺される」と神託を受ける。怖くなったライオス王は生まれたばかりの息子オイディプスを野獣がうろつく森に捨てる。しかしオイディプスは羊飼いに助けられて、子のいないコリント王に献上される。オイディプス、コリント王子として育てられ成長。ある日...
テーバイ国のライオス王は神から「お前はわが子に殺される」と神託を受ける。怖くなったライオス王は生まれたばかりの息子オイディプスを野獣がうろつく森に捨てる。しかしオイディプスは羊飼いに助けられて、子のいないコリント王に献上される。オイディプス、コリント王子として育てられ成長。ある日、オイディプスは神から「お前は父を殺し、母と交わる」と神託を受ける。オイディプス、おぞましい神託を回避しようと隣国テーバイ(じつは生まれ故郷)へ逃げる。途中、傲慢な老人に会い、侮辱されたので殺した。それが父ライオスだったが、オイディプスは知らない。テーバイに入り、オイディプスはテーバイ王に即位。実の母の夫となる。妃となった母と交わる。が、オイディプスは知らない。▼テーバイ国に疫病が流行。オイディプスは神に救いを求めると、神は言う「ライオス殺害の犯人を見つけて処罰せよ。そいつが災いの源だ」。オイディプス、犯人探しをしているうちに、自分こそが犯人であると気づき絶望。妃(じつは母)は息子オイディプスを捨てた罪、息子と交わった罪に苛まれ発狂、首を吊って自殺。オイディプス、首を吊りぶら下がる母を見て凄まじい叫び声をあげ、金の針で自分の目を突き刺す。オイディプス「もはや見てはならぬ。わが恐ろしき苦しみも、呪わしき罪も。この目は見てはならぬ人を見、知りたいと願った人を見分けられなかった。これからは闇の中で見るがいい」。ソフォクレス『オイディプス王』悲劇 ※神々が導くとき、人間はそれから逃れられない。 〇イオカステ。オイディプスの母。 〇クレオン。母イオカステの弟。 〇アンティゴネ。オイディプスと母イオカステとの間にできた娘。 ※スフィンクス。道行く者になぞなぞを出して、解けない者を食べてしまう化物。オイディプスにスフィンクスが出したなぞなぞ「朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足で歩くものはなんだ」。答えは人間。はいはい赤ちゃん、成人、杖つく老人。 オイディプスの娘アンティゴネ。彼女の兄が戦死。しかし彼女の兄は国法に反したとして埋葬を禁止される。しかし彼女は埋葬した。家族を埋葬するのは自然の法だ。国法に反していても。ソフォクレス『アンティゴネ』 *自然法の原型。 真理の言葉は単純である。ソフォクレス ****** 総大将アガメムノン。トロイア戦争から帰ると妻とその愛人に殺される。妻はわが娘を夫アガメムノンに殺されていた。愛人の方も、父がアガメムノンの父に殺されていて恨みがあった。▼倒れた者を、さらに蹴りつけようとするのが人間の生まれつきの性である(ミケーネ王)。▼少しも羨望せず、友人の成功を喜ぶほど、強気性格をもつ者は稀である。▼苦しみの報酬は経験である。アイスキュロス『アガメムノン』悲劇 真の悲しみは苦しみの支えである。アイスキュロス『断片』 ***** 女は臆病で、戦争に怯える。しかし、夫婦の間の誠が踏みにじられると女は残虐で非情な心となる。エウリピデス『メデイア』悲劇 長い話を切り詰めて、短い言葉で適切に語るのは賢人である。エウリピデス『アイオロス』 心の底を傾けた深い交わりは禁物。 愛情の紐は解けやすくしておいて、会うも別れるも自由なのがよい。エウリピデス『ヒッポリュトス』 待っていたことはやって来ず、思いがけないことがやって来る。▼すでに過ぎ去った困難を思い出すことは、何と快いことか。プルタルコスの道徳論より▼経験こそが人にとり万事の教師となる。▼沈黙は真なる英知の最上の応答なり。エウリピデス
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テーバイの王オイディプスは国に災いをもたらした先王殺害犯を追及するが、それが実は自分であり、しかも産みの母と交わって子を儲けていたことを知るに至って自ら目を潰し、王位を退く。アポロン神の残酷な神託から逃れようとすればするほど、父子ともに神託のとおりに陥っていく救いようのない悲劇。...
テーバイの王オイディプスは国に災いをもたらした先王殺害犯を追及するが、それが実は自分であり、しかも産みの母と交わって子を儲けていたことを知るに至って自ら目を潰し、王位を退く。アポロン神の残酷な神託から逃れようとすればするほど、父子ともに神託のとおりに陥っていく救いようのない悲劇。 そもそも文字で楽しむものではないので、機会があれば舞台で見てみたい。とにかく筋立てが恐ろしくよく出来ている。が、単なる物語ではなく、「哲学」である。これがギリシア悲劇の奥深いところ。オイディプスは優れた人間で、しかもヒーローであるが、己れが“何者か”を知らない。人々のために災いの真相を解き明かそうとして、実は自分が災いの張本人だと知ることになる。 人は知らないでいる方がよい時もあるが、人生の絶頂期にあった血気盛んなオイディプスには、自分になし得ないことなどないと思えたのだろう。ギリシアの神は恐ろしく残酷である。運命の前に、人間という生き物がいかに卑小であるかを思い知らされる。 眼が開いていた時には見えず、眼を潰した時にようやく見えた・・・というお話。 いやはや、こんな凄い話を2500年も前に書かれてたんじゃ、我々、現代人には残せるものなど何もないように思う。 満天の星空に星座が浮かんで見えてしまうように、古代ギリシアの詩人の耳には本当に神の声が聴こえていたのかも知れない。
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