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エドウィン・マルハウス の商品レビュー

4.6

15件のお客様レビュー

  1. 5つ

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  2. 4つ

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2021/11/20

最初はエドウィン変な子だなーと思いながら読んでたけど途中でジェフリーの異常さに気づくとエドウィンが子供らしくて可愛く感じてくる。

Posted byブクログ

2016/06/29

「グロテスクな愛らしさ」これはジェフリーがエドウィンの嗜好について表した言葉だけれど、私はジェフリー自身のことをより表していると思った。子どもは決して純真な天使などではなく、生々しく闇を抱えた存在でもあることが鮮やかに感受性豊かに描かれていた。傑作。

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2014/12/29

12/26 読了。 11歳のジェフリー・カートランドは、その驚異的な記憶力を駆使して、同じく11歳で死んだ幼馴染エドウィン・マルハウスの伝記を書く。それは生後6ヶ月のジェフリーが新生児のエドウィンと初めて対面した瞬間から、彼の心を支配し続けた使命だった。エドウィンは言葉の持つ意味...

12/26 読了。 11歳のジェフリー・カートランドは、その驚異的な記憶力を駆使して、同じく11歳で死んだ幼馴染エドウィン・マルハウスの伝記を書く。それは生後6ヶ月のジェフリーが新生児のエドウィンと初めて対面した瞬間から、彼の心を支配し続けた使命だった。エドウィンは言葉の持つ意味と音とを全く別のものとして捉えていたがゆえに、平均よりも言葉を覚えるのが遅かったが、それは特異な言葉遊びのセンスを培う土壌でもあった。絵本とアニメ映画が大好きなエドウィンは、病弱なために両親によって地下室に閉じ込められている年上の男の子エドワード・ペンが壁に書き殴ったアニメキャラの世界に夢中になる。性悪な少女に恋をしたことを誰にも話さず衰弱するまでふさぎ込んだり、不良の転校生に預けられた銃を引き出しの中に隠し持っていたりもする。そして遂に10歳にして傑作小説「まんが」(足穂の「一千一秒物語」そっくり!)を完成させたエドウィンは、"11歳の誕生日に自分の人生そのものを芸術へと昇華させる"という考えに取り憑かれ始める。幼馴染のジェフリーはその全てを見届け、そして書いた。 ミルハウザーの偏執狂的なディテールへの拘りが、セピア色のノスタルジーではなく極彩色の悪夢としての少年時代を眩暈がするほどくっきりと立ち上がらせる大傑作。 まず、11歳という年齢の設定が絶妙。思春期を目前としながら異性を見下しているため、同性同士の繋がりの方が余程強固で依存度が高く、とはいえ自分は親友よりもちょっぴり優位に立っていたい、という年齢の焦燥感と執着心。こういうプレティーンあるいはローティーン期における性愛未満の同性愛的な友情は少女について書かれたものが多いが、少年たちだって切実に"自分の片割れ"を求めているのだ。エドウィンが挙げた「僕の人生に大きく影響を与えた3人の人物」の中に入れてもらえず、後から「それと、君もね」と慌てて付け足したエドウィンに対して悔し紛れに「君は昔から計算が下手くそだからな」と返すジェフリーの姿には、心臓を針の先で突かれているような痛みを感じる。 ジェフリーは自らの執着心を伝記作家としての使命と結びつけているが、実際なかなか危うい地点まで進んでいる。例えば、エドウィンが再び恋の病に取り憑かれたと思い込み、恋の候補者である少女4人に聞き込みをしているうちに勘違いされて(仕向けて)ジェフリーは全員からラブレターを貰ってしまうのだが、そのラブレターをベッドで伏せているエドウィンに読ませながら「エドウィンよ、泣くがいい!叫ぶがいい!頼むからその手紙を破り捨ててくれ。あの女狐たちの顔など、二度と見たくないと言ってくれ」と吐き出す心情は、屈折した恋心と呼んでもいいのではないだろうか(私は『こころ』の先生がKに「向上心のない者はばかだ」というシーンにも匹敵すると思う)?また、執筆にかかりきりになったエドウィンの代わりに彼の妹のカレンと遊びながら、「僕は兄たちに見捨てられたこの世の妹たちの哀れさを思い、悲しみに胸を詰まらせた。それが他ならぬ自分に対する悲しみだと、心のどこかで知りながら」と独白するジェフリーは、自分の感情に気付き始めていたに違いない。勿論、これは本書を同性愛小説だと断じたいわけではなく、11歳という年齢ならではの切実な問題がプロットと分かち難く結びついていることを言いたいのである。思い当たる節がありすぎるエピソードがザクザク出てくるので、自分の小学生時代のトラウマをたくさん思い出してしまった…。 エドウィンの伝記を書き終えたあと、ジェフリーはどこへ行ったのだろう。序文によれば行方知れずになっているというが、私はジェフリーはこの本の中に閉じ込められてしまったのだと思う。ジェフリーは徹底して観察者であり、エドウィンを映し出す鏡として存在した影=分身だった。彼は自らの使命を好んでおり、「芸術家は芸術を生み出すが、伝記作家は芸術家を生み出す」「僕がいなければ、エドウィン、君は果たして存在していただろうか?」と嘯くが、彼の方こそエドウィンなくして存在することはできないのである。だからこそ遂にエドウィンが11歳の誕生日を迎える一連のシーンは、ポーの「ウィリアム・ウィルソン」のクライマックスにも似た緊迫感を持つ。エドウィンの存在が伝記なしには証明できないように、エドウィンの消えた世界に観察者の生きる場所もないのだ、永遠に少年時代を閉じ込めたこの本以外には。

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2014/06/21

こと細かな美しい描写が子供のころを思い出させる。 登場人物の子供達の行動範囲は物理的には限られていて、世界は狭いのだが、日々は濃密である。雪の日、不思議で刺激的な友人、初恋の女の子、雷、乱暴な転入生...。 子供の青空のような純粋さだけではなく、暗闇の部分が印象的だ。執着、わが...

こと細かな美しい描写が子供のころを思い出させる。 登場人物の子供達の行動範囲は物理的には限られていて、世界は狭いのだが、日々は濃密である。雪の日、不思議で刺激的な友人、初恋の女の子、雷、乱暴な転入生...。 子供の青空のような純粋さだけではなく、暗闇の部分が印象的だ。執着、わがまま、気まぐれ、嫉妬、残酷さ...。 そして、それだけでは終わらなかった。 最後まで読んで、混乱させられた。

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2013/03/10

処女作にはその作家が後に書くことになるすべての要素がつまっているといわれる。ここには、後に何度も登場することになる地下室に棲む画家がいる。賞賛されることだけを愛し、決して自分からは愛さない女がいる。兄妹と兄の友人という関係、月夜の彷徨、そしてお気に入りの小物達。ミルハウザー的世界...

処女作にはその作家が後に書くことになるすべての要素がつまっているといわれる。ここには、後に何度も登場することになる地下室に棲む画家がいる。賞賛されることだけを愛し、決して自分からは愛さない女がいる。兄妹と兄の友人という関係、月夜の彷徨、そしてお気に入りの小物達。ミルハウザー的世界はここに始まったのだ。 十一歳で早逝した少年が一冊の本を書くに至るまでのできごとを、その一部始終に付き合ってきた親友が伝記として書く。一見何の不思議もなさそうだが、その伝記が親友の死の三時間後から書き始められ、八ヶ月後に完成したのだとしたら。『エドウィン・マルハウス<あるアメリカ作家の生と死>』は天才少年作家の伝記という体裁をとった一種異様な小説である。 作家は始め、主人公に二十五歳という年齢を想定していたという。もし、初めの構想通りに、見られる側と見る側、つまり、天才とそれを嫉妬した競争相手の愛憎劇として書かれていたなら、よくある心理ドラマの一つとして人の口の端にのぼったりはしたろうが、これほどまでに話題をさらうことはなかったはずだ。舞台を子ども時代に限定し、特有の心理、お気に入りの本や玩具、遊び等の材料を贅沢に使用し、濃密に描写しきったことが作品の成功の秘密だろう。 「何かに執着できる能力を天才と呼ばずして、いったい何を天才と呼ぶのだろう?普通の子供なら誰だってその能力を持っているのだ。君も、僕も、誰もがかつては天才だった。しかしじきにその才能は擦り切れて失われ、栄光は色褪せていく。そして七歳にもなれば、僕らはもうひねこびた大人のミニチュアになってしまっている。したがって、もっと正確に言うなら、天才とは何かに執着する能力を維持する才能である。」 伝記作者であるジェフリーの言葉だが、作家の告白と見て差し支えないだろう。他のあらゆるものを犠牲にしても、成長によって喪われることになる「何かに執着する能力」を維持し続ける人物を描くことがこの作家畢生のモチーフである。人間的な快楽に見向きもせず依怙地なまでに自分の仕事に執着する主人公を書かせたらミルハウザーの右に出る者はいない。成人が主人公であっても彼らは何かに執着し続けることによって≪成熟することの醜怪さ≫から己を守っているのだ。 ミルハウザーの小説に頻出する遊園地や遊戯場の遊具、見世物、玩具、マンガ映画その他のアイテムは、子どもにとっては城や宝物に類する物だ。一方でそれは、ジェフリーがエドウィンの作品を評した「アメリカという名の野蛮で舌足らずの哀れな巨人の魂の発露たるテクニカラーと金粉のイメージ」と通底する。アメリカは若い国だ。「アメリカの夢」という言葉は、成熟した国の見せる絶望や諦念とは無縁に輝いている。しかし、現実の「アメリカの夢」は作品の中で何度も描かれる廃業した遊園地のメリーゴーランドやコースターのように既に遠い過去の遺物と化している。 物語や小説は、普通、過去形で書かれる。つまり終わってしまった物や事しか語ることのできない宿命を帯びていると言えよう。伝記作家は生きている対象を伝記にすることはない。その意味ですべての伝記作家は自分が書くべき対象が死んで始めて心おきなく筆を執ることができるのだろう。幼年期に心躍らせた対象を執拗に描き続けるミルハウザーは、死んでしまった「アメリカの夢」を描く伝記作家なのかもしれない。

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2011/03/28

先日初めて作品を読んだミルハウザーの、処女長編。11歳で亡くなった“天才作家”エドウィンの人生を描いた、同い年の幼馴染による伝記作品――という体裁で書かれている。0歳から11歳までの人生を「幼年期」「壮年期」「晩年期」と分けるなど、全体がミルハウザーによる伝記文学のパスティーシュ...

先日初めて作品を読んだミルハウザーの、処女長編。11歳で亡くなった“天才作家”エドウィンの人生を描いた、同い年の幼馴染による伝記作品――という体裁で書かれている。0歳から11歳までの人生を「幼年期」「壮年期」「晩年期」と分けるなど、全体がミルハウザーによる伝記文学のパスティーシュ的な面白さに満ちている上、子どもの目線で子どもの生き様を描いている(ただし表現技術は大人レベル)内容そのものも細部まで非常に面白い。面白いが、コミカルとグロテスクが紙一重に近接する瞬間、そもそも幼馴染としてこの身近な距離で“伝記作者”として友人を見つめ続ける書き手の眼差しの異常さにも気付いたりして、ただ楽しいだけの作品ではない。読後感も、それこそコミカルの果てにあったグロテスクな結末ゆえに、衝撃が残る。子ども時代の新鮮な驚きや世界の眩しさを思い出す一方、繊細な感情の揺れやむらのある不安、残酷な真剣さなども思い出さずにはいられない作品。こうした感情を文字で表現できるミルハウザーの、プルーストばりの表現力と文章力にますます心酔。

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2010/12/29

この小説は電車の中で読んでいることが多かった。読み終わって、子供の頃の懐かしさと子供たちのグロテスクが目立った。第一部三章の遊園地は「イン・ザ・ペニーアーケード」につながっていると感じた。ただ小説自体少し冗長に感じ、読み進めずらかった。 あとエドウィンの死はあれで良かったのか...

この小説は電車の中で読んでいることが多かった。読み終わって、子供の頃の懐かしさと子供たちのグロテスクが目立った。第一部三章の遊園地は「イン・ザ・ペニーアーケード」につながっていると感じた。ただ小説自体少し冗長に感じ、読み進めずらかった。 あとエドウィンの死はあれで良かったのか。少し衝撃的。私の場合理解できなくて二回読み直した。あのような死だと、訳者の解説どうりエドウィンは天才ではなく、ジェフリーの伝記作家の素晴らしさを示すために天才として描かれたのではないか。そのため、死ぬ(?)必要があった。つまり、エドウィンはただのガキだった?!あとがきを読んで、この小説の面白い解釈だと感じた。 これを書いているうちに、自分の中でこの小説の評価が上がった気がする。最後まで読んでよかった~

Posted byブクログ

2010/03/14

熱病にうなされるように読み終わった。 書き手であるジェフリーの親愛と嫉妬と嘲笑に満ちた目。 愛憎のはざまで揺れに揺れる少年の心境。 すごい本に出会ってしまった。 ただ、それだけだ。

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2009/12/02

エドウィン、エドウィン、嗚呼、エドウィン! 11歳で生涯を終えた、一人の少年小説家の少年らしからぬ、でもある意味とっても少年らしい生涯。それを日々逐一、細部に至るまで愛情と冷静さを込めてじっと見守る少年ジェフリー。彼が物した天才小説家エドウィンの、これまた天才的に美しい伝記、と...

エドウィン、エドウィン、嗚呼、エドウィン! 11歳で生涯を終えた、一人の少年小説家の少年らしからぬ、でもある意味とっても少年らしい生涯。それを日々逐一、細部に至るまで愛情と冷静さを込めてじっと見守る少年ジェフリー。彼が物した天才小説家エドウィンの、これまた天才的に美しい伝記、という小説。さらにそれ(伝記)を発見した、もはや大人になった小学生時代の同級生による前書き。このたまらん入れ子構造。1950年代のアメリカの少年の明るくポップな日常を綿密に描写しつつ、底には暗く重い死の影がどろりと流れている。ことばに向き合い、カートゥーンに魅了され、ギラギラ照り付ける日光から逃げ込んだエドウィンの部屋。そこで生まれた物語。…なんてパンキッシュなんだろう!心臓に来た!

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2009/10/04

好きな小説は?と聞かれたら、真っ先に浮かぶのはこの作品。 好きな作家は?と聞かれたら、真っ先に浮かぶのはこの作家。 とにかく全てが好きで好きでしょうがない。考えているさ、ふざけてはいるけれど…を地で行くような小説。

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