地獄の季節 の商品レビュー
ランボオも小林秀雄もすきだ。 一番感動した一篇は「出発」である。 「見飽きた。夢は、どんな風にでも在る。 持ち飽きた。明けても暮れても、いつみても、街々の喧噪だ。…」(p.82) 決してニヒリズムに終わらず、 「出発だ。新しい情と響きへ。」(p.82 岩波文庫) きれい...
ランボオも小林秀雄もすきだ。 一番感動した一篇は「出発」である。 「見飽きた。夢は、どんな風にでも在る。 持ち飽きた。明けても暮れても、いつみても、街々の喧噪だ。…」(p.82) 決してニヒリズムに終わらず、 「出発だ。新しい情と響きへ。」(p.82 岩波文庫) きれいな詩だと思った。
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彼の叫びが木霊する。世界は明滅を繰り返す。 生きていることが地獄であると知ってしまうことはどれほど窮屈なことだろうか。社会だとか、貧困だとかで地獄なのではない。そんなものは彼が何よりも嫌ったものだ。生きて死ぬこと、このことを前にしては、そんなもの些末なことに過ぎない。どんなにこと...
彼の叫びが木霊する。世界は明滅を繰り返す。 生きていることが地獄であると知ってしまうことはどれほど窮屈なことだろうか。社会だとか、貧困だとかで地獄なのではない。そんなものは彼が何よりも嫌ったものだ。生きて死ぬこと、このことを前にしては、そんなもの些末なことに過ぎない。どんなにことばの地獄で汚そうとしても、どんなにことばで新しいものを錬金しても、どこまで行ってもことばから離れられない、そして、それゆえにすべてのことが許されてしまっている。だから、地獄なのだ。もう、ひとにもまれて踏みにじられ、そうやって生活して生きるよりほかないのだ。人生は茶番ではない。 そんな彼の乾いた孤独を誰がわかってくれただろう。あのヴェルレーヌでさえ、結局は腑抜けた腰抜けだった。 筆を折ったのはもう語ることが何ひとつないと気づいてしまったからなのか。『酔いどれ船』で宇宙に飛び出したかと思っていたが、彼が飛び込んだのは実は深い深い土の中だった。その時彼は泣かなかったのだろうか。書くということから背を向けて歩き出す彼の姿が、強く見えて、でも悲しく見える。
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※このレビューにはネタバレを含みます
【引用】 ・あれには、一人の知人もありません。決して働こうとはしますまい。夢遊病者のように暮して行きたいのです。 ・聞き給え。この物語も数々の俺の狂気の一つなのだ。 ・俺の性格は鋭く痩せて行った。物語の中にいて、人の世には俺は別れを告げたのだ。 ・歓喜のあまり、俺は出来るだけ道化た。錯乱した表現を選んだ。 ・俺の精神が、この瞬間から絶えずはっきりと目覚めていてくれるものとしたら、俺たちはやがて真理に行き着くだろうに。
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小林秀雄氏の訳によるランボォの散文詩集。小林秀雄氏の流麗な文体に引き込まれる。キリキリとした切迫感があった。若さや青さから一歩離れたところから自分を見ている感じが強いので面白い。 この本の皮肉や渇いた訴えを読んでいると、自分の中の、ありがちな感受性や飢え、欲求、傷つき易ささえも、...
小林秀雄氏の訳によるランボォの散文詩集。小林秀雄氏の流麗な文体に引き込まれる。キリキリとした切迫感があった。若さや青さから一歩離れたところから自分を見ている感じが強いので面白い。 この本の皮肉や渇いた訴えを読んでいると、自分の中の、ありがちな感受性や飢え、欲求、傷つき易ささえも、経年劣化で曇ってしまったことを思い知らされる。もっと若い頃に読みたかった。
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3作品目は、19世紀のフランスの詩人アルチュール・ランボー(フランス語: Jean Nicolas Arthur Rimbaud)の代表作『地獄の季節』です。 私がこの作品を手にしたのは、16歳の時でした。若くして第一級の詩を生み出し、彗星のごとく消え去った天才の作品が、当時の...
3作品目は、19世紀のフランスの詩人アルチュール・ランボー(フランス語: Jean Nicolas Arthur Rimbaud)の代表作『地獄の季節』です。 私がこの作品を手にしたのは、16歳の時でした。若くして第一級の詩を生み出し、彗星のごとく消え去った天才の作品が、当時の私に残した傷痕は今でも時に熱を帯びます。 数行の詩を引用して、終わりたいと思います。 『かつては、もし俺の記憶が確かならば、俺の生活は宴であった』 『ある夜、俺は「美」を膝の上に座らせた。苦々しい奴だと思った。俺は思いっきり罵倒してやった。俺は正義に対して武装したーーー俺は逃げた。』 『俺の奈落の手帖の目も当てられぬ五・六枚、では、貴方に見ていただく事にしようか。』 『倦怠はもはや俺の愛するところではない。忿怒と自堕落と無分別、ー俺はその衝動も災厄もみな心得ている。』 『さて、俺一人の身を考えてみても、先ずこの世に未練はない。仕合せなことには、俺はもう苦しまなくて済むのだ。ただ、俺の生活というものが、優しい愚行のつながりであった事を悲しむ。』 『火は亡者を捲いて立ち直る。』 『また見つかった 何が 永遠が 太陽と溶け合う海が』 『とはいえ、あの人の優しさもやっぱり命取りなのです。私はあの人の思いのままです。ああ私は気が違ってしまいます』 『道徳とは脳髄の衰弱だ』 『精神を通じて人は神に至る。想えば身を裂かれるような不幸』 『季節よ。城よ。過ぎ去ったことだ。今、俺は美を前にしてお辞儀の仕方を心得ている。』
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見飽きた。夢はどんな風にでも在る。 持ち飽きた。明けても暮れても、 いつみても、街々の喧騒だ。 知り飽きた。差し押さえをくらった命。 ――ああ、『たわ言』と『まぼろし』の群れ。 出発だ。新しい情と響きとへ。 地獄の季節 飾画より ランボオ・作 小林秀雄・訳 ずいぶん昔に読んだ...
見飽きた。夢はどんな風にでも在る。 持ち飽きた。明けても暮れても、 いつみても、街々の喧騒だ。 知り飽きた。差し押さえをくらった命。 ――ああ、『たわ言』と『まぼろし』の群れ。 出発だ。新しい情と響きとへ。 地獄の季節 飾画より ランボオ・作 小林秀雄・訳 ずいぶん昔に読んだ。 次から次へと繰り出され紡がれていく膨大なイメージの羅列に、まったく置いてけぼりを食らうだけで、つくづく呆然としたものだ。 しかし、何だか憎めない、何かな不思議な共鳴感、みたいなものにとらわれる感動を味わった。 その中でも比較的わかりやすい、というのかな大好きな一編は、「出発」だ。 はじめて読んだ訳だったこともあってか、この訳が特に僕の心の琴線に響く、響く。
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≪サイコパス・PSYCHO-PASS≫で引用されている著作を探しているときにたまたま偶然手に取る。 詩集でした。うん詩集。 ≪十六歳にして第一級の詩をうみだし、数年のうちに他の文学者の一生にも比すべき文学的燃焼をなしとげて彗星のごとく消え去った詩人≫というおもしろいアオリ...
≪サイコパス・PSYCHO-PASS≫で引用されている著作を探しているときにたまたま偶然手に取る。 詩集でした。うん詩集。 ≪十六歳にして第一級の詩をうみだし、数年のうちに他の文学者の一生にも比すべき文学的燃焼をなしとげて彗星のごとく消え去った詩人≫というおもしろいアオリに惹かれて購入したら、これがとんだ間違いでした。 いえ、間違いと言いますか、なんというか、途中、何度生欠伸を噛み殺し船をこいだことか。 ランボオと彼のファンにぶん殴られそうだ。 しかしながらそれ、陰鬱なる叫びがだだもれてびくびくする。 なんというか、これは、若い感性があるうちでしか書けない作品のひとつだったのだろうと穿ち過ぎかもしれないけれどそう感じられるような吐露で、嗚呼、若いうちからこんな吐露をしていたらすべてが青く見えるだろうなあと。
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ヴェルレーヌに「非凡な心理的自伝」と評された『地獄の季節』。散文詩が主調をなしているが、「歌う」詩というよりは「絶叫」するかのようだ。もっとも、ランボーにあっての文学的営為は絶叫することに於いてしか表現のしようがなかったのだろうが。また、詩集全体の構成意識も(普通の意味では)きわ...
ヴェルレーヌに「非凡な心理的自伝」と評された『地獄の季節』。散文詩が主調をなしているが、「歌う」詩というよりは「絶叫」するかのようだ。もっとも、ランボーにあっての文学的営為は絶叫することに於いてしか表現のしようがなかったのだろうが。また、詩集全体の構成意識も(普通の意味では)きわめて希薄だ。いわば次から次へと魂の彷徨のままに言葉が衝きつけられていったかのようだ。こうしたあたりは、まさにシュールレアリスト達の「自動筆記」に先駆するものだろう。『飾画』は一転してものやわらかな散文詩だ。訳文は朔太郎を思わせる。
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小林秀雄訳ランボーの引用を、全く予期しない本で見てその格好の良さに驚いて購入。小林全集は持っていたが翻訳はスルーしていた。ランボー詩集は別訳のを数冊持っているがこの訳者のは明らかに違う。意味とか脈絡とか関係なく、言葉の迫力やアジテーションや喚起するイメージの力が素晴らしい。ようや...
小林秀雄訳ランボーの引用を、全く予期しない本で見てその格好の良さに驚いて購入。小林全集は持っていたが翻訳はスルーしていた。ランボー詩集は別訳のを数冊持っているがこの訳者のは明らかに違う。意味とか脈絡とか関係なく、言葉の迫力やアジテーションや喚起するイメージの力が素晴らしい。ようやくランボーの凄みが分かった。個人的に断定の歯切れ良さと発想の飛躍さは訳者の評論を連想した。
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小林秀雄氏を通したランボオ 詩の受け止め方が下手なのですが、熱いものが伝わってくる。 夭折した人間のエキスがぎゅーっと詰まっている感じ。
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