夢十夜 他二篇 の商品レビュー
32冊目『夢十夜 他二篇』(夏目漱石 著、1986年3月、岩波書店) 「小品」と称される、漱石の短編作品を集めた文庫本。表題作の他、「文鳥」と「永日小品」という作品が収録されている。表題作は、10本の短い短編からなる連作である。胸を締め付けるほどロマンチックな「第一夜」、背筋も凍...
32冊目『夢十夜 他二篇』(夏目漱石 著、1986年3月、岩波書店) 「小品」と称される、漱石の短編作品を集めた文庫本。表題作の他、「文鳥」と「永日小品」という作品が収録されている。表題作は、10本の短い短編からなる連作である。胸を締め付けるほどロマンチックな「第一夜」、背筋も凍るほど恐ろしい「第三夜」、コメディとトラジェディが見事に同居している「第十夜」など、バラエティに富んだ短編が揃っている。夢と現の境目がわからなくなるような、独特の読後感に痺れる。漱石ビギナーにも易しい一冊。 「こんな夢を見た。」
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「夢十夜」。 黒澤明監督「夢」の元となった、「こんな夢を見た」で始まる(実際には前半のお話だけだけど)不思議な十篇の物語。 「文鳥」。 細部にわたる情景や心情などのうつろいの描写に感嘆した。ひょっとしたら初めて夏目漱石の偉大さにふれたかもしれない。 「永日小品」。 随筆とも短...
「夢十夜」。 黒澤明監督「夢」の元となった、「こんな夢を見た」で始まる(実際には前半のお話だけだけど)不思議な十篇の物語。 「文鳥」。 細部にわたる情景や心情などのうつろいの描写に感嘆した。ひょっとしたら初めて夏目漱石の偉大さにふれたかもしれない。 「永日小品」。 随筆とも短編ともつかない、落語の小噺のようで、それでいて漱石の身の回りを語ったものもあり、お話が詰まったショートショート。漱石の才能に振り回される。 ページ数は少ないが、声に出してみるようにゆっくり読むのがおすすめ。 正直、教科書から出ることなくなじめなかった漱石のイメージが、変わった。
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こんな夢を見た・・・というフレーズで始まる不思議な話し。全体的にホラー要素が強かったように思える。夢というのはあいまいで、だからこそ面白く。その無軌道な進行が物語に奥行きを持たせ、さらに不思議な迷宮の中をさ迷うような感覚を再現するのだ。特に、3夜の子供を背負う父親の話しが好みだっ...
こんな夢を見た・・・というフレーズで始まる不思議な話し。全体的にホラー要素が強かったように思える。夢というのはあいまいで、だからこそ面白く。その無軌道な進行が物語に奥行きを持たせ、さらに不思議な迷宮の中をさ迷うような感覚を再現するのだ。特に、3夜の子供を背負う父親の話しが好みだった。後半、いきなり百年前に盲人を殺した話しになるのが怖い。7夜の行先不明の船旅行の話しは、明治時代の人たちの時代背景をよく表していると思った。
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「こんな夢を見たんだ」と話を切り出すことがある長男から借りた「小品」と呼ばれる短編集。気軽に読めるが内容は濃く、漱石の人となりを感じる。『夢十夜』はちょっと不気味。特に「第七夜」はホントの夢に出てきそう。一転、『文鳥』は微笑ましく展開するが、最後はちょと複雑。『永日小品』はブログ...
「こんな夢を見たんだ」と話を切り出すことがある長男から借りた「小品」と呼ばれる短編集。気軽に読めるが内容は濃く、漱石の人となりを感じる。『夢十夜』はちょっと不気味。特に「第七夜」はホントの夢に出てきそう。一転、『文鳥』は微笑ましく展開するが、最後はちょと複雑。『永日小品』はブログ的なのりで漱石を味わえる。長男の“切り出し”は『夢十夜』の影響なのかな。
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こんな夢を見た。 そこから始まる夢のお話を10話。 夢のお話なので摩訶不思議。ここに何か意味やメッセージがあるのか、よくわからない世界です。
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なんとも不思議な世界観の見せてくれる作品。短編だが味わい深い。持っていた漱石の印象とは少し異なる。 後半の2作は、作者の日常を描いている。文鳥に対しては、 飼ったからには面倒を見てほしいと思った。死なせたのは下女のせいにせずに。この作品によらず、所々少し冷酷な点が垣間見えるが、...
なんとも不思議な世界観の見せてくれる作品。短編だが味わい深い。持っていた漱石の印象とは少し異なる。 後半の2作は、作者の日常を描いている。文鳥に対しては、 飼ったからには面倒を見てほしいと思った。死なせたのは下女のせいにせずに。この作品によらず、所々少し冷酷な点が垣間見えるが、それがまたリアルなのかもしれない。
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正統派ブンガク かかった時間は…こまぎれに読んだのでわからない 「夢十夜」「文鳥」「永日小品」が収録されている。まあ購入したのは「夢十夜」でも読んでみるかな、と思ったからだが、「永日小品」がものすごくよかった。 思えば私にとっての夏目漱石は「吾輩は猫である」が始まりだった。小...
正統派ブンガク かかった時間は…こまぎれに読んだのでわからない 「夢十夜」「文鳥」「永日小品」が収録されている。まあ購入したのは「夢十夜」でも読んでみるかな、と思ったからだが、「永日小品」がものすごくよかった。 思えば私にとっての夏目漱石は「吾輩は猫である」が始まりだった。小学生の自分にとってさえ、作品全体に流れる、なんとなく対象と距離をおく視点や、逆に対象に没頭する視点、そして日常や光景の切り取り方にユーモアのようなものを感じ取ったことを覚えている。 「永日小品」はまさに、その「吾輩」の面白さと相通ずるものであると思う。それぞれの断片が、どこかもの悲しく、というか皮肉めいて描かれながら、そういうもの悲しさや皮肉めいた現実への愛というか、そこから面白さや美しさを同時に切り取るスタンスというか。 今更ながら、名作に出会ったと思う。これは折に触れて再読したい。
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夢十夜も永日小品もいろんな話があって、解説を細かく調べたくなる話もいくつかあった。 どんどんのめりこんでしまった。
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漱石先生の夢日記、妄想日記、普通の日記。 普通の日記は読んでてちょっとしんどかった。 「文鳥」は漱石が自分勝手なことばっかり言ってるのが面白い。
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夢十夜、読んだことないと思っていたが、第一夜に覚えがある。これは、多分、学生時代に教科書で出会った気がする。 第一夜が一番好き。美しい。亡くなる女性の願いは、真珠貝で墓を掘り、星の欠片で墓標を作ること。そして、さらに控え目に申し出たのが百年待ってほしい。そして、墓の傍で待つ男の...
夢十夜、読んだことないと思っていたが、第一夜に覚えがある。これは、多分、学生時代に教科書で出会った気がする。 第一夜が一番好き。美しい。亡くなる女性の願いは、真珠貝で墓を掘り、星の欠片で墓標を作ること。そして、さらに控え目に申し出たのが百年待ってほしい。そして、墓の傍で待つ男の下に、ゆりが花を手向けてきた。そして気づく。百年目だということに。 この日本文学の繊細さ、美しさ。 百年待ってほしいというのをためらう女性の奥ゆかしさ。 どこに忘れ去ってしまったのでしょうか。 解説本は多くあって、例えば、ゆりが何を象徴しているのかなどネットでも議論されているけど、ただ純粋に言葉や情景の美しさを楽しむだけではだめなのかと最近思ってきた。 後は第七夜が好き。 行方も、いつ接岸するのかも分からない船にいるより、死ぬことを選ぶ主人公。その瞬間、命がある方がよかったと悟る。深い。。。 実際の夢を文字に起こしたのか、夢と言う設定の物語を創作したのか分からないが、うまい。これだけの短いページでどれも起承転結で綺麗に完結している。 そして、どの主人公も結構孤独やら寂寥感がある。解説にあるように、「荒涼たる孤独に生きた漱石」を感じる。 文鳥については、引用した個所が漱石の繊細さを現していて好ましい。
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