シュルレアリスムとは何か の商品レビュー
デ・キリコ展の予習のために購入。今の私にとって全てが斬新&自分の無知を痛感させるもので、仕事終わりの平日夜に一気に読み終えた。 まず、シュールレアリスムが巷で言われるように「現実から離れたもの」ではなく、現実・客観に向き合うこと、それを知るとデ・キリコやマグリット、ブルトンの絵が...
デ・キリコ展の予習のために購入。今の私にとって全てが斬新&自分の無知を痛感させるもので、仕事終わりの平日夜に一気に読み終えた。 まず、シュールレアリスムが巷で言われるように「現実から離れたもの」ではなく、現実・客観に向き合うこと、それを知るとデ・キリコやマグリット、ブルトンの絵が「よく分からないもの」から「客観的に事物が生成・想起されるもの」のように思えてきて感慨深い。 本書では、シュルレアリスムの輪郭を捉えるために、メルヘンやユートピアを取り扱っている。ユートピアの本来の意味を知れば、ジョージ・オーウェルが1984年で何を表現したかったのかも分かる気がする、というか、そんな前提知識も知らずに1984年を読んでいたのが恥ずかしく思えてくる。新たな世界・世界観に気づかせてくれた感動的な一冊。
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ミロ展を観に行って、なにやら可愛らしいけど全然分からないや、と思ったので本書を購入。 美術で使われている言葉というイメージがあったので、もともと自動記述から始まったものだということに驚いた。 「私」が記述の速度の中で溶けて、オブジェクトが並べられていく…好きな小説作品がそんな...
ミロ展を観に行って、なにやら可愛らしいけど全然分からないや、と思ったので本書を購入。 美術で使われている言葉というイメージがあったので、もともと自動記述から始まったものだということに驚いた。 「私」が記述の速度の中で溶けて、オブジェクトが並べられていく…好きな小説作品がそんな感じだなと思って、ミロを読み解く手がかりにするつもりが、意外にも自分の好きな作家に思いを致すことになった。 自動記述には少し神おろし、神がかり的な印象を抱く。 なんだろう、考え抜いて作り込んだもの…というよりはひと呼吸のうちにどこかから湧いてくる…というような。 それが主観か客観か、というのは難しいなと思う。あくまで「書き手が」「見る」ものだなあと。 並べられたオブジェクトって、なんなんだろう。 速度の中でバラバラになった世界の断片が言葉やモチーフとして現れ出てくるかのような。 すごく読みやすくて、はじめてシュルレアリスムの定義に触れる私にはありがたい1冊だった。 『シュルレアリスム宣言』も読んでみようかなと思う。
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あとがきで巖谷さんも述べていますが、本書『シュルレアリスムとは何か』では、そのダイダロス的迷宮としてのシュルレアリスムにおいて、ミノタウロスの姿こそ見せたものの、その全貌は明らかにされていません(要は宙吊り)。 確かに、語り始めるときっとキリがないのでしょうが、それでも十分にレリ...
あとがきで巖谷さんも述べていますが、本書『シュルレアリスムとは何か』では、そのダイダロス的迷宮としてのシュルレアリスムにおいて、ミノタウロスの姿こそ見せたものの、その全貌は明らかにされていません(要は宙吊り)。 確かに、語り始めるときっとキリがないのでしょうが、それでも十分にレリーフしてくれているので、とってもためになるしありがたい本でした。 そして、なんと言っても特徴的なのは、この本が講義の内容を文字に起こしたものだ、ということで、その内容自体が幾分か「自動筆記」的であって面白いんですよね。「シュルレアリスム」「メルヘン」「ユートピア」と話題を転じて論じながらも、巖谷さんの言う連続性が垣間見えるような気がして、読み物としても興味深かったです。
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現存するシュールは,どうも「シュルレアリスム」とは別物のようで,じゃあ本物の「シュルレアリスム」は何かと言われても,なかなか明快な例は思いつかない。現代では幻想ばかりが摂取され,ブルトンのいう思想は淘汰されてしまったのだろうか,わからない。 シュルレアリスムの解説書としては,明...
現存するシュールは,どうも「シュルレアリスム」とは別物のようで,じゃあ本物の「シュルレアリスム」は何かと言われても,なかなか明快な例は思いつかない。現代では幻想ばかりが摂取され,ブルトンのいう思想は淘汰されてしまったのだろうか,わからない。 シュルレアリスムの解説書としては,明らかにわかりやすく易しい本である。実際にはシュルレアリスムの他に,メルヘンとユートピアについてもシュルレアリスムの延長線上に説明される。 あえていうなら,わかりやすいゆえに危険な本に類いするものだと思う。シュルレアリスムの誤解を解こうというのは良い,しかしこの手の記述は著書の思う世界そのものへと引き込んでしまうことを念頭において読むべきだろう(ユートピアと現代日本の批判のあたりで大体気づくだろうが)。 本書は入門書であるには違いないが,学術書としてはおそらく機能しない。本来の意味でのシュルレアリスムを知りたいのであれば,まずはブルトンの著書に目を通すべきであろうし(それで幻滅する可能性は大いにある),その派生系の流れを自分で辿る必要がある。その辺りは酒井健「シュルレアリスム」が一つの参考として挙げられる。
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シュルレアリスム、メルヘン、ユートピアという言葉が日本において通用している意味とは全くと言っていいほど異なる対象を指している事がよくわかった。 上記の3概念のそれぞれに人々に共通の無意識的なものを露わにする機能が含まれていると考えると、思想としての奥行きの深さが伺える。
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とてもわかりやすく、読みやすい本だった。美術の知識がほぼ皆無の私にもよく理解でき、読み終わった後には良い満足感を味わうことができた。シュルレアリスム=超現実、この意味を様々な例を交えた上で説明されていたのでスッと頭に入る感覚で読み進められた。 最後の章のユートピアについては歴史と...
とてもわかりやすく、読みやすい本だった。美術の知識がほぼ皆無の私にもよく理解でき、読み終わった後には良い満足感を味わうことができた。シュルレアリスム=超現実、この意味を様々な例を交えた上で説明されていたのでスッと頭に入る感覚で読み進められた。 最後の章のユートピアについては歴史とかなり深く関係しているようで少し複雑に感じたが、それは私の理解力と知識不足。
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・シュルレアリスムとは、現実を超えた世界ではなく、強列に現実的であること。 ・シュルレアリスムの世界は、現実の延長線上にあるということが肝。 ・「桃源郷」と「ユートピア」の違いについて。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
[ 内容 ] 現実に内在し、ときに露呈する強度の現実としての超現実―シュルレアリスム。 20世紀はじめに登場したこの思想と運動について、ブルトンやエルンストを中心に語り、さらに「メルヘン」「ユートピア」へと自在に視野をひろげてゆく傑作講義。 文学・芸術・文化を縦横にへめぐり、迷路・楽園・夜・無秩序・非合理性などをふたたび称揚するとともに、擬似ユートピア的な現代の日本を痛烈に批判する。 いま、“幻想を超えて生きるには”。 [ 目次 ] 1 シュルレアリスムとは何か(シュルレアリスムという言葉;「超現実」とは何か;ワンダーランドと超現実、そして町 ほか) 2 メルヘンとは何か(メルヘンと童話とのちがい;おとぎばなしの発生;「眠れる森の美女」の例 ほか) 3 ユートピアとは何か(反ユートピアの立場から;トーマス・モアと大航海者;ユートピアさまざま ほか) [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]
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現実的でありすぎるがゆえのシュルレアリスムという解釈。 超現実とは現実を超えて、別言すれば現実をかけ離れていることではなく、その逆だと著者は言う。ここは辞書的解釈とは異なる点。 現実の中にシュルレアリスムは既に存在している。 連関するメルヘン、ユートピアについての論及も面白い。
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新宿で「遊ぶシュルレアリスム」という展覧会が開催されているということで、シュルレアリスムについて知りたくて読んでみました。 芸術についての知識が皆無な俺でも分かりやすい言葉で書かれています。 だがしかし、俺の読み方が悪いのか「シュルレアリスムって何?」という疑問を解決できませ...
新宿で「遊ぶシュルレアリスム」という展覧会が開催されているということで、シュルレアリスムについて知りたくて読んでみました。 芸術についての知識が皆無な俺でも分かりやすい言葉で書かれています。 だがしかし、俺の読み方が悪いのか「シュルレアリスムって何?」という疑問を解決できませんでした。 「辞書に書かれているシュルレアリスムや、一般に認知されている『シュール』とは違うんだよ」 というところから始まりましたが、それに対する明確な答えが示されていなかった感じがします。 著者はシュルレアリスムを専門に研究しているから「これがシュルレアリスムだ!!」と一行で説明することはできないのだろうな、と思います。 しかし、自動記述やデペイズやコラージュなどの概念はなんとなく掴めた気がします。
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