シュルレアリスムとは何か の商品レビュー
3回にわたる講義録。「シュルレアリスムとは何か」「メルヘン」「ユートピア」に分けて。文学としてのシュルレアリスム関係の本はこれが初めてだったけど、かなり興味深く読んだ。これで終わるだけじゃなく、他の関連書籍にも興味が広がり、楽しい。
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ほんのさわり程度の内容だが、わかったような気分になる。まあ話はわかりやすいし、とっつきにくかったシュルレアリスムがなんだか楽しくなってきて興味がわいてきたから、この手の本としては成功しているのじゃなかろうか。 シュルレアリスムの訳語は「超現実」だが、それは「現実離れ」とか「非現実」を意味しない。この「超」はいわば、「超スピード」的な使われ方であるという。シュルレアリスムが示す「超現実」はあくまで現実と地続きにある、しかしある点で現実を越えてしまって普段とは見え方が違ってきたりする、そういうもののことを言う。それ自体、現実に内包されている。 シュルレアリスムのまずは定義から、そして発見の経緯へ―こっちのほうが話としてはおもしろい。 文学の実験として行われた「自動記述」、それは普段の書くスピードをだんだんとあげていって、最終的には手が自動で動いているような状況をつくりだす、いわば「書く速さの実験」だった。 「書く速さ」をあげていくと文章からはまず主語が消え、そして動詞までも消えていく。残ったのは無秩序に並列される物と物、概念と概念のオブジェ世界。そこに客観だけの世界が築かれる。 「自動記述」は物を書くことが少なからず自動的であることを思い出させた。「自動記述」はランボーのいった「オン・ム・パンス」(だれかが私において考えている)の体験でもある。 絵画の世界にも「自動記述」の概念が及んで、その流れでコラージュやフロッタージュといった技術が生み出される。 エルンストは「人間というのは創造する力をもっているという一種の神話を信じていたけれども、それはウソではないかという。(略)そして、創造するんじゃなく、創造されるのだという」。そこまでいってしまう。 「本来あるべき場所から物あるいはイメージを移して、別のところに配置したときに、そこに驚異が生れる」ことを「デペイズマン」と言う。 こうして絵画の世界では主として「デペイズマン」のほうに注目してシュルレアリスムと呼ぶ風潮があるが、作者は「自動デッサン」と「デペイズマン」というふたつの流れを分断して考えることはできないという。 まあなんか不思議なことに、「デペイズマン」なんてのをやっていたら物と物が無秩序に並べられて、その風景がもともとの「自動記述」に似てきたと。そんな風なことらしい。 でもってシュルレアリスムと隣接する概念として、「メルヘン」と「ユートピア」を扱う。 メルヘン=おとぎばなしとは。 メルヘンと童話はまったく別ものであり、童話は「子供」という概念がうまれた比較的最近になって成立したもの 近代的な自我、個人の悲しみや喜びを描かない集団的な物語 時代と場所が非限定的(主人公の名も) 森が重要である。文化と対立するものとしての森。 「ファンタスティック」とは現実的レベルで考えて、説明しえない何事かが起ること。それに対して「フェーリック」とはそもそも、我々の現実とはまったくちがうレベルの世界、別世界の出来事をいう。 作者いわくシュルレアリスムとは「現実のなかにフェーリックをめざめさせようとする考え」。 〈ユートピア=理想国の定義〉 島。防壁がはりめぐらされている。町は直線道路が上下左右を区切る幾何学的な構造。管理社会。家の形・大きさも平等化・画一化されている。自然を矯正したり橋をかけるのが好き。土木工事も好き。ユートピアには時間=歴史がない。個性がない。裸が好き(矛盾みたいだけど!)。衛生観念が行き届いている。照明が多い=暗闇がない。デオドラント。貨幣経済を好まない。 規則性・反復性・合理性によって社会が営まれる。作者いわく、ユートピアは「時計・結晶・蜜蜂の巣」にそっくりだという。 ユートピアの反対として、アジア、自然、迷路、母権。 こんなにユートピア的な国はないという作者の、現今の日本批判は口が酸っぱいよー。
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シュルレアリスムとは、現実そのもの+本能だけど客観という理解で合ってるのかしら?さらにメルヘンとは、ユートピアとはとあわせて今まで思っていた理解と異なる考えを知りました。やや散漫ではあるがなるほど感あり。
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シュルレアリスムに興味をもったときに一番最初に読んだ一冊。 最初のシュルレアリスムの項目はとても分かりやすい。 語り口調で書かれており、親しみやすい本だった。
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シュルレアリスム。メルヘン。ユートピア。 この三つの単語をそれぞれに調べ、外縁だけはわかったような気でいましたが、この三つを繋げる作業をしていなかったなあ、と思うに至りました。歴史的観点から、そして民族的観点から、多彩な方面から色々なことを見ることが必要かな・・・とも。 入門編...
シュルレアリスム。メルヘン。ユートピア。 この三つの単語をそれぞれに調べ、外縁だけはわかったような気でいましたが、この三つを繋げる作業をしていなかったなあ、と思うに至りました。歴史的観点から、そして民族的観点から、多彩な方面から色々なことを見ることが必要かな・・・とも。 入門編としては良い本だと思います。 この三つを繋げられれば更に。 (2011.09.04)
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シュルレアリズム展で購入。「シュルレアリスム」、「メルヘン」、「ユートピア」をテーマにした3回の「講演」録。『シュルレアリスムとは何か』と題しつつも、3つのテーマを包括した説明がいまいち尻切れトンボ。が、1つ目の「シュルレアリスム」は、入門的概説としては、それなりに理解しやすい。...
シュルレアリズム展で購入。「シュルレアリスム」、「メルヘン」、「ユートピア」をテーマにした3回の「講演」録。『シュルレアリスムとは何か』と題しつつも、3つのテーマを包括した説明がいまいち尻切れトンボ。が、1つ目の「シュルレアリスム」は、入門的概説としては、それなりに理解しやすい。とは言え、文庫でお値段1200円。決してコストパフォーマンスがよいとは言えない。
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博覧強記の著者が、文学や美術に留まらずメルヘンやユートピア思想に材を取って、シュルレアリスムの解説を試みた書。シュルレアリスムに対する基本的なイメージはつかむことが出来た。 「理性を介さない裸のままの自我/世界」(=超現実) i.e. 存在の全体性 を志向し、それを現前させよ...
博覧強記の著者が、文学や美術に留まらずメルヘンやユートピア思想に材を取って、シュルレアリスムの解説を試みた書。シュルレアリスムに対する基本的なイメージはつかむことが出来た。 「理性を介さない裸のままの自我/世界」(=超現実) i.e. 存在の全体性 を志向し、それを現前させようとする芸術運動。自らの理性を解除して生(なま)のままの世界に向かおうとする「自動記述」や、世界を覆う理性的秩序の被膜に驚異と共に裂け目を入れようとする「デペイズマン」(一種の異化作用)など、多様な実験的手法を試みた。非/前理性的な夢・無意識・狂気・幼児性・未開原始文化・オカルティズム etc. への関心を有する。 個々の話に対する独立的な興味はそそられるものの、思想的なレヴェルでは、僕はシュルレアリスムに対して魅力を感じない。しばしばダダは美術史に於いてシュルレアリスムの露払いに貶められている感があるが、思想的な徹底性という点では、寧ろシュルレアリスムこそダダの中途半端な後退形態といえないか。勿論、シュルレアリスム運動の芸術領域に収まらぬ広範な影響力、及びそこから生まれた多くの魅力的な作品に対する評価は別にして。 シュルレアリスム画家として分類されるマグリットだが、その作品に顕われる彼の「自己意識」に対するアイロニカルな構えは、多分にダダ的ではないか?
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これは面白かった!シュルレアリスムについては本当に概要しか知ることが出来ず、十分に理解したとは言えないが、そこから広がりを見せ、メルヘン、ユートピアから様々なことを知ることが出来た。この一冊からさらに本の広がりを持つことが出来ると思う。
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シュルレアリスム、メルヘン、ユートピアについて大した予備知識がなくともすんなり聞ける程度のライトな感じで語った講演をまとめた一冊。 全体的にシュルレアリスムと絡めていくというスタンスではあったけども少し重点的に語って欲しかった感はある。
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とりあえずラーメンズでもふかわりょうでもないらしい。 【目次】 Ⅰ シュルレアリスムとは何か Ⅱ メルヘンとは何か Ⅲ ユートピアとは何か あとがき 解説にかえて
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