シンプルな情熱 の商品レビュー
ノーベル文学賞受賞。 初めて読む、アニー・エルノー作品。 生のすべてを捧ぐような情愛。道ならぬ恋。 同時にそれをどこか客観視するような筆致。
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ほにゃらら賞って、つまり世の中をばっきりと複数にわけるような賛否両論を生んでしまう作品がとるんかな。 私はめーちゃ好きだな。他の本も読みたい。 早川書房はすごい……
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こんなに恋に溺れて、こんなに冷静に記述できるのか。 この恋は性的な行為を行うだけで、素敵な会話やデートやイベントなどは全くない。だけど恋する著者の頭は彼のことでいっぱいで、何をしていても彼のことばかり考えてしまう。 恋、恋情、激しい恋、情熱。様々な色のパッションが描かれる。 ...
こんなに恋に溺れて、こんなに冷静に記述できるのか。 この恋は性的な行為を行うだけで、素敵な会話やデートやイベントなどは全くない。だけど恋する著者の頭は彼のことでいっぱいで、何をしていても彼のことばかり考えてしまう。 恋、恋情、激しい恋、情熱。様々な色のパッションが描かれる。 言葉が美しく飾らず荒々しくて直接的だったのが、新鮮に感じた。 特に91年2月の再会からラストの文章までは素晴らしく、恋の移り変わりは全くもってシンプルではなくそして美しいということがよく現れている。 著者の恋の感じ方記述の仕方に惚れ惚れとした作品 (そのため映画を観る意欲なし)
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※このレビューにはネタバレを含みます
シンプルな情熱 著者:アニー・エルノー 訳者:堀茂樹 発行:2002年7月31日 ハヤカワepi文庫 単行本は1993年1月発行 今年、ノーベル文学賞を受賞したフランスの作家、アニー・エルノー。もちろん、読んだことなかった。ブックオフで主だった本にネット上でチェックしておいて、最初に入荷した古本がこれ。今日、店舗まで取りに行って読んだ。本文がP7~110、訳者あとがきがP111~159、斉藤由貴による解説がP160~166(これだけは文字が細かい)。無理矢理一冊にしている感じ。映画化されたようで、表紙カバーが2重になっているパターン。 パリ郊外に住む中年女性。子供も大きく学校に出ていて、一人暮らし。高校教師であり作家。10歳年下の東欧の国の外交関係の仕事をしている妻帯者の男と付き合っている。彼は現在はパリに赴任中。実は、アニー・エルノー自身の性愛を綴った話だとのこと。訳者あとがきによると、1988~1989年ごろの1年間つきあったらしい。ロマンスではなく情熱(パッション)の話だとしている。しかし、読んでいると恋愛、ロマンスのように思える。性的快感が中心だとしたら、性描写がなさすぎる。しかし、それも訳者あとがきを読むと理解できる。 彼女は、すべて受け身だった。彼からの連絡を待ち、彼が訪れることだけを待った。人に見られるようなところには出かけず、自分からは電話、手紙、訪問を一切しない。彼が帰る時に手紙を渡すだけ。彼は読んで帰りの車の中から破り捨てて高速道路にまき散らしているだろう、と思いつつ。彼の妻に自分の気配が感じられないように、細心の注意を払う。 彼から連絡が来なくなる。やがて、彼は別の国へ。別れが訪れた。その前に、自分からもう会わないようにと決意をしていた。それなのに、なにをしても、どこへ行っても、彼とともにしたことと結びつけて考えてしまう。そのあたりの「これでもか」という書きぶりが、読んでいて段々と共鳴に変わってくる。異性に対する思いとは、愛か性かどちらに重きがあろうとも、そういう面があるものだ、と思えてくる。誰にも言わない、自分の心の中だけで感じ、思い描き、叫ぶ、さまざまなこと。 別れた後のことが日付入りで書かれる。1991年2月。湾岸戦争の描写が入る。戦争勃発後の最初の日曜日、夜、別れて以後、初めて彼から電話が入る。パリに来ているとのこと。彼は彼女の家にやってきて、2人はセックスをする。そして、ホテルへと戻っていく。 こうした自分の性愛を描くことで、なにが言いたかったのか、それは簡単には分からないが、最後に書かれていることは明確にイメージできた。 「彼がいてくれたからこそ、私は、自己を他者から分離している境界に接近し、時折その境界を越えるようなイメージさえ抱くことができたのだ」「彼は、彼自身の知らぬ間に、私を以前より深く世界に結びつけてくれた」 ところで、訳者あとがきで理解できた「情熱」の意味だが、これにはおどろいた。 情熱(=パッション)は、語源に遡ると、受け身の状態であり、苦しみであるという。自己の内側から自発的に湧いてくる力ではなく、外から取り憑いて、自分を虜にする力だと理解した方がいい、とのことだ。「恋(パッション)に燃える」は、解放された状態ではなく、囚われの状態に入ることなのだそうだ。これですとんと落ちた。
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最後の終わり方が素晴らしかった。恋することにも、いろいろなランクがあるのだと知る。パッション、情熱、受難。フランスの大人の女。憧れるけど、全てがマネすらできない、今の私。
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登場する著作・作家 グロースマン 生と運命 マーガレット・ミッチェル 風と共に去りぬ ラシーヌ フェードル トルストイ アンナ・カレーニナ マルグリット・デュラス 愛人 フローベール
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今年のノーベル文学賞受賞したアニー・エルノーの文庫本が平積みされていたので衝動買いしました。 妻子ある外国人男性との不倫体験を回想し、まるで独り言のような脳内妄想をそのまま書き起こしたような印象。 この体験記が人の目に晒されることにも自覚的で、 恋に翻弄される女心を赤裸々に包...
今年のノーベル文学賞受賞したアニー・エルノーの文庫本が平積みされていたので衝動買いしました。 妻子ある外国人男性との不倫体験を回想し、まるで独り言のような脳内妄想をそのまま書き起こしたような印象。 この体験記が人の目に晒されることにも自覚的で、 恋に翻弄される女心を赤裸々に包み隠さず描写している。 しかしそこにはまるで艶かしさは感じられない。 なぜならそれは過ぎ去ったことで、今の自分は空虚だからと言わんばかりだ。 しかし、ノーベル文学賞とのつながりは今ひとつ分からなかった。 映画化もされているそうだけど、 なんとなくエリック・ロメールの映画のイメージに近い気がした。
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原典、Passion Simple 邦題、シンプルな情熱 今の私には、贅沢とは、ひとりの男、またはひとりの女への"激しい恋”(=パッション)を生きることができる、ということでもあるように思えるように。
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文学ラジオ空飛び猫たち第56回紹介本。 本書は作家自身の体験に基づいた年下男性との不倫の話ですが、単なる恋愛小説ではなく、恋のパッションに燃えた一人の女性の記録であり、省察です。人生におけるパッションとは? 深く考えさせられる一冊でした。 ラジオはこちらから→https://an...
文学ラジオ空飛び猫たち第56回紹介本。 本書は作家自身の体験に基づいた年下男性との不倫の話ですが、単なる恋愛小説ではなく、恋のパッションに燃えた一人の女性の記録であり、省察です。人生におけるパッションとは? 深く考えさせられる一冊でした。 ラジオはこちらから→https://anchor.fm/lajv6cf1ikg/episodes/56-e17pnur
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とても感動的な本。外部からの「苦痛」であるパッションを、それに捕らわれながらもなお明晰さを失わず、自立を保っている。そんな彼女の文体は、彼女のパッションに限りなく近い。書くことと愛することが同義であるように。シンプルな情熱、それはとても純粋で、冷たい透き通った水のよう。直截的な表...
とても感動的な本。外部からの「苦痛」であるパッションを、それに捕らわれながらもなお明晰さを失わず、自立を保っている。そんな彼女の文体は、彼女のパッションに限りなく近い。書くことと愛することが同義であるように。シンプルな情熱、それはとても純粋で、冷たい透き通った水のよう。直截的な表現で少しも自分を誤魔化さず、真摯に自分と向き合うことは、ひどく恐ろしいことだ。一歩間違ってしまえば、狂人になりかねない。それでも彼女は真正面から自分を受け止める。甘いことも、苦いことも、激しいことも、捌け口のない欲望も、かっこ悪くみじめな自分も、しっかりとした目で見据え続ける。そこに留まり、パッションを受け続けた者だけがたどりつくことのできる境地を、ついに見出すことができるまで。すべてを奪われて恍惚と立ち尽くす自分の姿さえ、彼女の眼は冷静に見つめる。
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