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“民主"と“愛国" の商品レビュー

4.7

33件のお客様レビュー

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2024/11/08

 900ページを超える大作で、読了するまでひと月半以上かかったが、読者に理解してもらうことに最大限配慮しているような書き方なので、政治·哲学の知識が限られた私でも、興味深く読み続けることができた。  戦中戦後の日本と国民の状況を丁寧に描き出しているので、新たに発見することも多かっ...

 900ページを超える大作で、読了するまでひと月半以上かかったが、読者に理解してもらうことに最大限配慮しているような書き方なので、政治·哲学の知識が限られた私でも、興味深く読み続けることができた。  戦中戦後の日本と国民の状況を丁寧に描き出しているので、新たに発見することも多かった。知識人たちが徴兵前に遺書のつもりで書き残した論文の圧倒的な力強さは感動的だった。一方、戦後に限定的な戦争体験しかしていない戦中派が、年長の戦前派を批判して若者に喝采を浴びる様は、うっすら怒りを感じるほどだった。だから、その後に登場した、苛烈な戦争体験を経た鶴見や小田がとても柔軟な市民運動を展開したのは、市民による民主主義の萌芽を感じさせて、とても感動的だった。  日本政府が植民地的アメリカ追従であることの根源もよくわかった。確固たる理念を語る政治家の姿を久しく見ていない今、この現状を変えることは望むべくもないだろうが、少なくとも政権が安定しすぎないことが、アメリカからの過剰請求を控えさせる効果があるらしいことがわかった。  

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2022/11/27

本書の内容は、あとがきからそのまま引けば「戦後日本のナショナリズムと「公」にかかわる言説が、敗戦直後から1970年代初頭までにいかに変遷してきたかを検証したものである。結果として本書は、丸山眞男、大塚久雄、竹内好、吉本隆明、江藤淳、鶴見俊輔など主だった戦後知識人の思想を検証したば...

本書の内容は、あとがきからそのまま引けば「戦後日本のナショナリズムと「公」にかかわる言説が、敗戦直後から1970年代初頭までにいかに変遷してきたかを検証したものである。結果として本書は、丸山眞男、大塚久雄、竹内好、吉本隆明、江藤淳、鶴見俊輔など主だった戦後知識人の思想を検証したばかりでなく、憲法や講和問題、戦後歴史学、戦後教育、安保闘争、全共闘運動といった領域までをも視野に含めるものとなった」(p.951)。 引用頁が示すとおり、900頁を超える大著。戦後の約四半世紀の、知識人やふつうの人々のあり方も含めて、リーダビリティを保持しながら丁寧に描かれていて、ゆっくりと楽しく読んだ。 描かれる人物たちに対する作者の評価は様々で、そのなかでも好意的に描かれたもの(安保闘争、鶴見俊輔、小田実、竹内好など)には共感を持ち、関連する本を読みたいと思った。不正確な言葉になるのだけれど、私なりに共感をもったのは、彼らは戦争体験を単純化せず、加害と被害の折り合わさったものを、なるだけ保持しながら思考しているところだったように思う。 あとがきに、作者の父のシベリア抑留について書かれているが(これは後に岩波新書で『生きて帰ってきた男』としてまとめられ、こちらも読み応えのある本だった)、もう亡くなってしまった私の祖父も、満州〜パラオと戦地に赴いていた。戦地での話をよく聞いていたのだけれど、かれの戦争反対の言葉とともに、当時を生き生きと語る姿が記憶に残っていた。本書を読み、その折り合いのことをより考えるようになった。

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2021/12/25

研究者でも学生でもない自分が著者の大著を読み続けるのは、著者が近代日本社会を研究し続ける姿を著書によって追体験でき、また時系列で出版されるので何か大河小説を読んでいると感じられるからだ。 この本もその後の『戦争が遺したもの』『1968』にも繋がる鶴見俊輔・小田実へのシンパシー(...

研究者でも学生でもない自分が著者の大著を読み続けるのは、著者が近代日本社会を研究し続ける姿を著書によって追体験でき、また時系列で出版されるので何か大河小説を読んでいると感じられるからだ。 この本もその後の『戦争が遺したもの』『1968』にも繋がる鶴見俊輔・小田実へのシンパシー(その前の章に置かれている吉本隆明、江藤淳との対照的な事か)や、『生きて帰ってきた男』として完成される、父謙二さんのこれまでの生き方についてに紙幅が割かれている事に著書同士の大きな連動性を感じる。 大病の後、『生きて帰ってきた男』もそうだが、『社会を変えるには』や『日本社会のしくみ』等、より今にコミットした著書が増えているので、体調に留意しつつ刺激させる研究を続けて行って頂きたい。 後、編集能力の高さが岩波の編集者時代に繋がったのかな? 現在遡って『〈日本人〉の境界』を読書中。 楽天にて購入。

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2020/10/11

戦後75年ということで、手に取った 戦後の思想家たちの群像劇ともいえるだろう。戦争に参加したといっても、内地で食事にも困らない日々を過ごした人もいる。慰安婦の世話や上官の自殺、東京裁判に出頭したものもいる。空襲にあったといっても、本当に空襲を受けた人もいればのと、それを見ていた人...

戦後75年ということで、手に取った 戦後の思想家たちの群像劇ともいえるだろう。戦争に参加したといっても、内地で食事にも困らない日々を過ごした人もいる。慰安婦の世話や上官の自殺、東京裁判に出頭したものもいる。空襲にあったといっても、本当に空襲を受けた人もいればのと、それを見ていた人でも実感が全く異なる。ただ、戦争参加した人々は戦争中のことを伝えていなかった。それが戦後の人々へ共有されなかったことが歪みを生み、いまにも続いていることが実感できる。 また構成としては最後の章で鶴見俊輔という知の巨人と小田実という行動派の小説家をとりあげているが、著者が最後にこの二人を紹介することには、明確な意思を感じる。それはこれからの歴史に対しての希望を持ちたいとも考えていたのだろう さらに、最後のあとがきを読み終えたとき、この著書にまるで血が通うかのような感覚を覚えた

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2020/04/03

世代間で原体験がこれだけ異なり、思想や行動にこうも影響を与えてしまうとは、単純に驚きだった。一つ導き出される教訓は、共通の基盤があるとは、単純に思わないことであろう。 また、言説分析については、初めて良質な実践例を見たように思った。

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2019/05/18

民主と愛国が同居し、そして対置される。 それを中心に戦後思想を巡る本。重厚だけど読みやすく、読んでよかった。 言説という概念は大学のゼミで聞いたことあったけど、なんとなくで卒業したあと、これを読んで腑に落ちた。我々は今ある社会の言葉でしか語れない。そして、第三の戦後である今、...

民主と愛国が同居し、そして対置される。 それを中心に戦後思想を巡る本。重厚だけど読みやすく、読んでよかった。 言説という概念は大学のゼミで聞いたことあったけど、なんとなくで卒業したあと、これを読んで腑に落ちた。我々は今ある社会の言葉でしか語れない。そして、第三の戦後である今、民主と愛国、ナショナリズムといったなんとなくで語りがちな概念に、新たな言説を生み出せるのか。 この本が出されて15年近く。まだその概念に新たな言説は生み出されていない。それとも過去になった時点で、生み出されていたと気付くのだろうか。少なくとも、何となくで使いがちな言葉を鵜呑みにする姿勢では、社会の在り方は掴み取ることは出来ない。 ベ平連の部分は、社会を変えるには、で読んだ、市民運動のあり方の原型だった

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2019/07/28

大変に重要かつ素朴なことが二つ描かれている。 ひとつは、戦後思想は総じて各人の戦争体験に基づいているといこと。 もうひとつはその戦争体験について、本人の属するジェネレーションや戦争との関わり方の相違により、極めて多種多様であること。他者の戦争体験を無視するがごとく自説を振りかざす...

大変に重要かつ素朴なことが二つ描かれている。 ひとつは、戦後思想は総じて各人の戦争体験に基づいているといこと。 もうひとつはその戦争体験について、本人の属するジェネレーションや戦争との関わり方の相違により、極めて多種多様であること。他者の戦争体験を無視するがごとく自説を振りかざす姿は、それだけ各人にとっての個人的な戦争体験がヘビーであったことの裏返しである。 本書は民主と愛国を対置するが、民主と民族へと読み替えたほうが分かり良いのでは。 本書で述べられていることは、敗戦後の民族の前に、天皇も軍部もアメリカも歴史も、時には国家すら相対化された事実ではないだろうか。 長らく民主と愛国を対置させてきたのは革新勢力と右翼勢力であるが、唯一民主と愛国を調和しえた勢力は広い意味での保守思想だったように感じた。

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2019/03/13

 考えてみれば、この本が世に出てもう、20年近くたっているわけだけれど、この本が検証した内容なしで、憲法や沖縄を語ることはできないと思うが、レビューがもう2年も3年も書かれていないことに驚いた。  戦後文学、思想について、かなり網羅的に調べて書かれている労作。分厚いけれど、読みは...

 考えてみれば、この本が世に出てもう、20年近くたっているわけだけれど、この本が検証した内容なしで、憲法や沖縄を語ることはできないと思うが、レビューがもう2年も3年も書かれていないことに驚いた。  戦後文学、思想について、かなり網羅的に調べて書かれている労作。分厚いけれど、読みはじめると読み進めることは難しくない。近代史や、現代史に関心を持つ若い人に読んでほしい好著。

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2016/10/16

江藤淳について詳しく、ページ数も割かれているとの情報を得て手に取る。 戦後思想史について知りたいとする欲望に応える本では。

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2016/03/29

大著『1968』と同じく、分厚い本だ。 しかし、身に沁みる内容だね。 特に、戦艦武蔵に乗ってた渡辺清が実体験した、天皇の戦争責任について記述は、考えさせられる。

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