ドキュメント 戦争広告代理店 の商品レビュー
ボスニア・ヘルツェゴビナがPR企業とともに、国際世論を味方につける中、セルビア側はPR戦略の遅れからイメージを悪化させていく。 国際政治、戦争の舞台において、PR企業が暗躍しているということ自体、知らない世界だったので、衝撃を受けた。民族浄化という言葉は現代ではすっかり定着してお...
ボスニア・ヘルツェゴビナがPR企業とともに、国際世論を味方につける中、セルビア側はPR戦略の遅れからイメージを悪化させていく。 国際政治、戦争の舞台において、PR企業が暗躍しているということ自体、知らない世界だったので、衝撃を受けた。民族浄化という言葉は現代ではすっかり定着しており、その効果は計り知れない。 ウクライナにおいても、どこかのPR企業がついているのだろうか。
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★縁遠い世界に引きつける鮮やかな切り口★旧ユーゴスラビアを巡る紛争はたまに振り返ってみるがいつも理解できない。今更ながら読んだが、ボスニア・ヘルツェゴヴィナとセルビアに焦点を絞ったことで理解しやすい。なじみのない構図を簡潔に示す構成力がまず素晴らしい。 PR企業が自らの成果を誇...
★縁遠い世界に引きつける鮮やかな切り口★旧ユーゴスラビアを巡る紛争はたまに振り返ってみるがいつも理解できない。今更ながら読んだが、ボスニア・ヘルツェゴヴィナとセルビアに焦点を絞ったことで理解しやすい。なじみのない構図を簡潔に示す構成力がまず素晴らしい。 PR企業が自らの成果を誇らしげに協会に提出して受賞しており、そのデータを読み込んで担当者に取材。ある種の必要悪のような立場として、戦争の現場から離れたところで国際世論が形作られることを指摘する。きっとウクライナにもこうした企業がついているのだろう。東京五輪でもめた電通がどれだけの力を持っているのか。ぜひ誰かに分析してほしい。 著者は「PR企業」としか書いておらず、NHKの放送でのタイトルは「民族浄化~ユーゴ・情報戦の内幕」だった。書名で「戦争広告代理店」としたのは講談社の編集者のさすがのセンス。一気に身近になる。サブタイトルも「情報操作とボスニア紛争」であって、聞きなれない地名は最後に持ってくるのがうまい。
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もしコナン君が読んだらどう言うのか…少なくとも「真実はいつもひとつ!」とは言えなくなるのでは…。 本著、1990年代前半の、ユーゴスラビア連邦崩壊に伴うボスニア紛争における「情報操作」がいかに行われたか、を纏めたドキュメンタリー。NHKスペシャルをそのディレクターが書籍化したもの...
もしコナン君が読んだらどう言うのか…少なくとも「真実はいつもひとつ!」とは言えなくなるのでは…。 本著、1990年代前半の、ユーゴスラビア連邦崩壊に伴うボスニア紛争における「情報操作」がいかに行われたか、を纏めたドキュメンタリー。NHKスペシャルをそのディレクターが書籍化したものです。 ボスニア・ヘルツェゴビナとセルビア、本著を読む限りだと正直「どっちもどっち」感がありましたが、前者はアメリカのPR会社と契約してロビイングや西側メディアへの効果的なPRをした結果、セルビアは完全に悪者扱いされ、大統領は戦争犯罪者として収監されるに至る…これを当時のキーマンへのインタビュー等を通じて精緻に描きあげたのが本著です。 ボスニア・ヘルツェゴビナのことわざ「泣かない赤ちゃんは、ミルクをもらえない」が引き合いに出されましたが、いかに効果的に声を上げるか、勘所をわかっているPRのプロがいるというのは強い。 「完全な嘘」はつかないものの、「1を10に、100に」誇張して報じるくらいは平気でやっていて、強制収容所の「鉄条網越しの痩せた男」の写真はパッと見たらその存在を信じざるを得ないものだけど、実際には鉄条網は「たまたま紛争前から張られていた有刺鉄線」で、別に施設を囲むものでは無かったと…。 しかし、このスクープをした記者はピュリッツァー賞に輝いたということで、モヤモヤしたものを感じますね。。 特に怖いと感じたのは、「異論を唱えることが許されない空気」を作ってしまったコトです。 PR会社としては「悪いのはセルビア」であって、「どっちもどっち」ではない。後者の意見を唱えた人を社会的に抹殺してしまうまでやる恐ろしさ。 今も同じようなことが起きていないか、勝ち馬だと調子に乗って、みんなで「悪いもの(結果的に弱いもの)」を叩くことをしていないか、自戒が必要だと感じました。 本著が取り上げた紛争から30年。インターネットの普及で個人が発信することもできる世の中になったと思います。 ただ、PR会社なり国家なりも進歩は同じようにしていて、程度の差こそあれ、一定の情報操作(テレビCMくらいのかわいいモノから、世論操作まで)には日々さらされているのが現状だと思います。 「真実」ではなく「事実」は何なのか?を求める姿勢と、片側の考え方に染まりきらず、疑う姿勢を持つこと。あらためて心がけていきたいと感じました。
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すごく興味深いお話でした。 戦争を広告代理店がイメージ操作する。 悪か善で戦争を単純化することには不安を覚えます。 今のウクライナとロシアの戦争は、ウクライナ側からの報道が多いですね。ゼレンスキー大統領のほうが、メディアの使い方はうまいように思えます。 ただ、それでも現実世界はう...
すごく興味深いお話でした。 戦争を広告代理店がイメージ操作する。 悪か善で戦争を単純化することには不安を覚えます。 今のウクライナとロシアの戦争は、ウクライナ側からの報道が多いですね。ゼレンスキー大統領のほうが、メディアの使い方はうまいように思えます。 ただ、それでも現実世界はうまくいかない。 今回の戦争と重ね合わせながら、この本を読むことができました。
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ウクライナとロシアの戦争が継続している今、読むことで新たな側面を知ることができる本として有益だと思う。 実際、ロシアの言い分としては、病院や教会を爆撃したのはうちのミサイルじゃないと言い続けているし。 日本人は勧善懲悪、盛者必衰、因果応報を信じているから、ロビー活動とか強烈にプッ...
ウクライナとロシアの戦争が継続している今、読むことで新たな側面を知ることができる本として有益だと思う。 実際、ロシアの言い分としては、病院や教会を爆撃したのはうちのミサイルじゃないと言い続けているし。 日本人は勧善懲悪、盛者必衰、因果応報を信じているから、ロビー活動とか強烈にプッシュしている印象はないけれどPAが必要である、ということがリアルにわかった。
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This is a documentary book about the back side of the public relations strategy during the Bosnian conflict in the 1990s. It is said that it...
This is a documentary book about the back side of the public relations strategy during the Bosnian conflict in the 1990s. It is said that it was the "shadow gimmicks" of the American public relations company that decided the victory or defeat of the Bosnian conflict. Jim Half, who was in charge of public relations for Ruder Finn in the United States, skillfully guided public opinion to turn sympathy to client Bosnia and Herzegovina.
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広告代理店のハーフという人物がどのようにボスニアヘルツェゴビナを善に、セルビアを悪に仕立てたかについて詳細に説明した本である。 他の書物でも同じような内容のものが翻訳である。
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戦争報道の見方を改めて考えさせられる一冊でした。今、読むのは意味があると思いました。 sns時代ではないので少し状況は違うかもしれないが、PR企業が果たしている役割はおおきいのだろう。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
PR(public relations) 日本だと現在でも広報、広告と混同して使用されることが多いPRについて、その米国一企業の業務を具体的に掘り下げて、その活動の空間的人的な幅広さと奥深さを描いたノンフィクション。 ボスニア戦争においてボスニアを顧客としたPR企業ルーダー•フィン社のワシントン支社ジム•ハーフ。 ハーフはボスニア外務大臣のシライジッチをスポークスマンに仕立てて、彼を強力にバックアップして国際世論の形成に多大な影響を与えていた。 一方でセルビア、ユーゴスラビアにはそのようなPR会社が不在であった。 誰がどんなタイミングで発言や行動をするか、またその取り扱われ方は恣意的であり、それをコントロールすることを専門に考えている知能の高い人物がいることを覚えておかなければいけない。政治家やメディアが彼らの影響を受け、そして私たちがその影響を受ける。 私たちが受け取る情報は限定的で偏っており、それを届ける人たちは何らかの意図を持っているのだ。 戦争においてもそれは変わらない。 ピュアな人間は、苦渋を舐める。 1992年から30年がたち、インターネットが発達して私たちが得られるはずの情報も多く深くなっているが、情報それ自体やPR関連業務への理解は不十分である。 本書はPR会社の社会の情報に関する影響を知り、私たちが情報に対してどう向き合うかを考えることのできるものである。 またハーフの優れた文章術、仕事術、コミュニケーション術、人脈形成術もビジネスマンとして勉強になり、それだけでそれぞれ一冊のビジネス書が書けそうである。 なお、ボスニア戦争に関して、本書はPR活動の多彩さの紹介を通じて理解を深める一方で、戦争の全体像を描いているわけではないことには留意が必要である。
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PR企業が国際政治に多大なる影響を及ぼしている。 本来は白黒はっきりしない民族間の問題が、PR企業により悪者のレッテルを貼られることにより、結末へ向かっていく。 危機管理におけるPR力の凄まじさの一片をみた。 サブタイトルにある、情報操作という意味においてではなく、世論形成プロセ...
PR企業が国際政治に多大なる影響を及ぼしている。 本来は白黒はっきりしない民族間の問題が、PR企業により悪者のレッテルを貼られることにより、結末へ向かっていく。 危機管理におけるPR力の凄まじさの一片をみた。 サブタイトルにある、情報操作という意味においてではなく、世論形成プロセスの妙によって、このような結果を迎えたのだと感じる。 最後の筆者の意見にあるように、紛争や人の生死が関わる状況に対して、PR企業の暗躍が影響を与えるということの倫理上の問題はあると思う。しかし、大切なことは、PRの現場が、地球規模で様々な案件に拡大していることを強く認識する必要がある、という点だと思う。 また、日本におけるPRの実情も気になった。
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