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クルド人もうひとつの中東問題 の商品レビュー

3.9

17件のお客様レビュー

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2023/10/13

クルド人には祖国が無い。最近ハマスのイスラエル砲撃に端を発したイスラエルのガザ侵攻。パレスチナ人も特定地域に封じ込められ虐げられている現状があるが、その数は凡そ1000万人、クルド人はその4倍以上の4600万人程居るそうである。どちらも世界中に散らばっており、数としては前者が半数...

クルド人には祖国が無い。最近ハマスのイスラエル砲撃に端を発したイスラエルのガザ侵攻。パレスチナ人も特定地域に封じ込められ虐げられている現状があるが、その数は凡そ1000万人、クルド人はその4倍以上の4600万人程居るそうである。どちらも世界中に散らばっており、数としては前者が半数以上がガザに居住するもののパレスチナ国として国家が存在する。後者クルド人には国が存在しない。彼らも世界中に居住地を求めるが、移民受け入れに積極的なドイツやフランスに多く、中東近隣ではトルコが最大の受け入れ先となっている。その数2500万人近くに上っている。だがそれも移住者の扱いに変わりなく、クルド人は国を持たない最大の民族と言われる所以だ。 ニュースでイスラエルとパレスチナ人の戦いが流れる度にクルド人の事が頭に思い浮かぶので本書を手に取り、その歴史に触れてみた。内容としては期待通りクルド人の歴史から現状までを新書という少ないページながらもコンパクトに纏まっており、一挙に概要を掴むには丁度良い。 読んでいて常に思い浮かぶのは何故人は争うのかという根本的な部分に尽きる。クルド人は確かに国という安定した居住地を持たず歴史を過ごしてきた。それは大半外部との戦いであるなら納得できるが、複雑なアラブ諸国の中にあり、彼らは同じ民族同士でも争う。各国の利害にまき込まれるだけでなく、同じ民族同士でも宗派の違いや、利益関係のもつれ、主義主張の違いにより争いが絶えない。こうなると国を持つ以前に民族の統一すらも困難な状況になってくる。そしてそれは民族とは別次元の問題になってしまい、本質的に人が争う性質であることを体現しているように思えてくる。 彼らが国を持つ日がやってくるのか、それとも民族内の対立を続け世界に散らばり続けるのか、それは彼ら自身の選択でしか無い。因みに日本では埼玉県の川口市に大きなコミュニティを築いているようである。どの様な考え方を持っているのかいつかインタビューしてみたくなる。そうした気持ちになる一冊である。

Posted byブクログ

2023/03/09

パレスチナ問題に関しては、ニュースで取り上げられることもあり、書籍も豊富にある事から結構目にする機会も多い。 ところがクルド問題になると急にトーンが下がるし、あまり詳しい事は分からないのが正直なところ。 先日日本に住むクルド人の難民をテーマにした小説を読み(マイスモールランド)、...

パレスチナ問題に関しては、ニュースで取り上げられることもあり、書籍も豊富にある事から結構目にする機会も多い。 ところがクルド問題になると急にトーンが下がるし、あまり詳しい事は分からないのが正直なところ。 先日日本に住むクルド人の難民をテーマにした小説を読み(マイスモールランド)、急に興味が湧いたので一冊読んでみようと思って手に取ったのが本書です。 日本でのクルド人の話題と言えば、蕨周辺でコミュニティーを形成しており「ワラビスタン」なんてポップな名称も付いているのですが、彼らがどれだけ不安定な状態で日本に住んでいるのか分かっている人は非常に少ないと思う。僕自身あまり知らなかった。 そもそも難民として日本にいるものの、日本は難民として認めておらずあくまで一時的な措置として日本に居住しているだけで、いつ在留資格を失うか分からないという状態です。この辺は是非「マイスモールランド」を読んで頂きたい。 そしてこの本はかなりディープにクルドと周辺諸国との軋轢を書いているので、正直読んでいて全然覚えられないのが正直なところです。無数の争いを細かく書いているので、もっとおおざっくりな本もう一冊よみたいなあ。あるのかな?

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2022/01/16

映画『東京クルド』を観て以来少しずつ読書しようと思い手に取った(2冊目) クルド人問題についての概説書。20世紀頃までの歴史が新書でまとめてある。コンパクトながら内容充実。世界史・地理の知識不足の自分は読み進めるのに苦労した(中東関連書籍を読む時毎度感じる事だけど) 読みなが...

映画『東京クルド』を観て以来少しずつ読書しようと思い手に取った(2冊目) クルド人問題についての概説書。20世紀頃までの歴史が新書でまとめてある。コンパクトながら内容充実。世界史・地理の知識不足の自分は読み進めるのに苦労した(中東関連書籍を読む時毎度感じる事だけど) 読みながら非常に複雑で根深いものがあるのだなと痛感させられた。大国の国際政治に翻弄され、内部の分断で対応がままならない様子にはやり切れない思いを抱いた。こんな事言うと怒られるかもしれないが朝鮮近代史を読みながら感じたやり切れなさに近いものを思い起こした。 未消化部分が多々あるので、理解を深めながら読み返していきたい。

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2021/04/15

中東問題で広範囲にからむクルド人について、特におおむね20世紀までの期間における、彼らの複雑な政治活動の様相をまとめた本。もともと閉鎖性の強い部族制の中で生きてきたこと、近代に分画された国家によって分断されていることが、問題を複雑化していたことが理解できた。出版から約20年経過し...

中東問題で広範囲にからむクルド人について、特におおむね20世紀までの期間における、彼らの複雑な政治活動の様相をまとめた本。もともと閉鎖性の強い部族制の中で生きてきたこと、近代に分画された国家によって分断されていることが、問題を複雑化していたことが理解できた。出版から約20年経過したので、さすがに現状を反映はしていないが、問題の発端を知るには手軽な一冊だと思う。

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2020/06/12

トルコ、イラン、イラク、シリアを中心に各国における内部的クルド人勢力との争いや、外部勢力の支援の様子など、クルド人を中心とする中東の歴史が分かりやすく語られている。 最後のまとめがわかりやすい。 他の中東の本とも混ぜ合わせながらもう一度時系列を整理していきたい。

Posted byブクログ

2017/10/09

クルド側のまとまらなさや頑固さにイラっとさせられるが、大国の思惑にも腹が立つ。なんとかならないものだろうか。最終章の要因のまとめがわかりやすかった。

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2017/02/19

シリア内戦でアメリカにIS掃討の為に利用され、日本では近年勇敢な戦士のように紹介されたりもしたが、トルコではテロ(政府側の呼び方)を起こし戦いを続けるなど今も問題を孕みながら日本ではあまり表沙汰にならないクルド人問題。 タラバ二、バルザニ、オジャランなどの英雄達を詳細に紹介しなが...

シリア内戦でアメリカにIS掃討の為に利用され、日本では近年勇敢な戦士のように紹介されたりもしたが、トルコではテロ(政府側の呼び方)を起こし戦いを続けるなど今も問題を孕みながら日本ではあまり表沙汰にならないクルド人問題。 タラバ二、バルザニ、オジャランなどの英雄達を詳細に紹介しながらも、諸外国に利用され裏切られたり、独立のチャンスも妥協点を見つけられず逃したり、内部対立で団結する事ができなかったりするクルド側の問題も客観的に記されており、今後報われない民族への同情を過度にせず深く調べる良いきっかけとなる本だった。とは言えやはり巻き添えを食らう一般市民クルド人にはやはり同情は大いにある。一先ず蕨市のクルド人お祭りに行ってみよう、、

Posted byブクログ

2016/03/14

[隠された難題へ]日本のニュースではあまり取りあげられることがないクルド人問題。トルコ、イラク、イラン等にまたがるこの問題の複雑な歴史を丹念に追った作品です。著者は、朝日新聞社で中東アフリカ総局長を務めた経歴を持つ川上洋一。 中東についてあまり馴染みのない方にとっては正直理解...

[隠された難題へ]日本のニュースではあまり取りあげられることがないクルド人問題。トルコ、イラク、イラン等にまたがるこの問題の複雑な歴史を丹念に追った作品です。著者は、朝日新聞社で中東アフリカ総局長を務めた経歴を持つ川上洋一。 中東についてあまり馴染みのない方にとっては正直理解が難しい(なにせ見慣れない人物名や略称がじゃんじゃん出てくる)のではないかとも思いますが、21世紀初頭までのクルドの歩みを考える上で大変参考になる作品でした。日本語での類書もあまり多くないため、クルド人問題を知りたい方への入門書としてオススメです。 多くの中東問題をクルドという視点から眺めるとどうなるかもわかり非常に興味深かったです。また、「クルド人」と一口に言ってもその運動は多様で、時の地域・国際情勢によって力関係が大きく影響を受けることも本書から大いに学べるかと。 〜クルド人は「祖国なき最大の民」と言われるが、もともとクルド民族解放運動は、クルド人の統一された祖国を建設しようというはっきりした狙いをもつ運動ではなかった。……運動は、住んでいる国の中央政府への反逆、抵抗の形をとってきた。掲げた目標は、それぞれの国内での自治、あるいは分離、連邦であり、独立ではなかった。〜 これは読んでおいて良かった☆5つ

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2014/10/09

祖国なき最大の民と言われるクルド人。なぜ祖国を持てなかったのか、その歴史と現在までが書いてある。多くはトルコ、シリア、イラン、イラクに跨って居住し、それぞれの国で少数派と呼ばれる存在というのは国際感覚に疎い私には想像すら難しい。宗教や宗派や民族や各国の思惑や大国の干渉や、ややこし...

祖国なき最大の民と言われるクルド人。なぜ祖国を持てなかったのか、その歴史と現在までが書いてある。多くはトルコ、シリア、イラン、イラクに跨って居住し、それぞれの国で少数派と呼ばれる存在というのは国際感覚に疎い私には想像すら難しい。宗教や宗派や民族や各国の思惑や大国の干渉や、ややこしすぎる。

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2014/10/08

[ 内容 ] 祖国なき最大の民といわれるクルド人。 居住地域はクルディスタンと呼ばれ、おもにトルコ、イラン、イラクにまたがり、面積はフランス一国にも匹敵する。 さらにその人口は二五〇〇万人とも推定され、パレスチナ人約八〇〇万を大きくしのぐ。 クルドの名は、古代シュメールにまで遡り...

[ 内容 ] 祖国なき最大の民といわれるクルド人。 居住地域はクルディスタンと呼ばれ、おもにトルコ、イラン、イラクにまたがり、面積はフランス一国にも匹敵する。 さらにその人口は二五〇〇万人とも推定され、パレスチナ人約八〇〇万を大きくしのぐ。 クルドの名は、古代シュメールにまで遡り、かのイスラムの英雄サラディンもクルド人であった。 十九世紀末以降、自治、独立を求める戦いを激しく繰り返すが、常に居住国の中央政府、西欧列強、近隣諸国の利害に翻弄されつづけ、分断されてきた。 九一年の湾岸戦争後、クルドはようやく日本でも報道されるようになるが、問題の大きさに比べて、その認識はまだまだ低い。 本書は、パレスチナとならぶ中東地域における大きな火種のひとつ、クルド問題に光をあてるものである。 [ 目次 ] クルドの地を訪れて トルコ、オジャランの武装闘争 イラクの「クルド地域政府」 クルド人とは クルド前史 第一次大戦が終わって 新生トルコとパーレビ王朝 バルザニ兄弟の抵抗―イラク 幻のマハーバード共和国―イラン ホメイニ革命とクルド―イラン バルザニとタラバニの反目と抗争 イラ・イラ戦争はじまる PKK、トルコ政府と対決 トルコでの弾圧 国際関係のはざまで “祖国”建設への展望 [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]

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