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赤ひげ診療譚 の商品レビュー

4.2

99件のお客様レビュー

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  2. 4つ

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2018/01/02

宮部みゆきの小説「淋しい狩人」を読んでいた時にエピソードの一つに登場した本で、すごく印象に残ったので取り寄せ読んでみることにした。 一言で言い表すならば、傑作ですね。 この本が出版されてから半世紀以上経過しているが、作品の魅力は全く衰えていない。 おそらく今後数十年たっても読み継...

宮部みゆきの小説「淋しい狩人」を読んでいた時にエピソードの一つに登場した本で、すごく印象に残ったので取り寄せ読んでみることにした。 一言で言い表すならば、傑作ですね。 この本が出版されてから半世紀以上経過しているが、作品の魅力は全く衰えていない。 おそらく今後数十年たっても読み継がれていく稀有の傑作小説だろう。 主人公である医学生 保本登は、長崎遊学から戻ったばかりで医学を出世のための手段としか見ていない。 また、許嫁がいたが遊学中にほかの男と駆け落ちしてしまい、このことが彼の心に影を落としている。 彼が赴任した小石川養生所には、赤ひげと呼ばれる名物医長がいる。 赤ひげは一見して無頼漢のような雰囲気をもつが、高い知性と高度な医療技術そして人生の酸いも甘い理解している稀有の男であり、日夜世の下層で生活する街の人々の診療に邁進している。 当然、主人公の保本はこの赤ひげに最初反発するが、次第に彼のものの考え方に傾倒していき彼自身の人格も次第に人として成長していく。 全部で八篇の短編からなる本書は、赤ひげと保本が様々な境遇の町の人を患者として診療する過程で、その人々の生活が明らかになっていくという形式で、現代的に言えばサイコスリラーのはしりの様なものから、胸が張り裂けそうになる悲恋の話、ちょっとおかしな話等バラエティーに富んでいる。 しかし、どの話にも共通するのが、現代よりはるかに生活が厳しかった江戸時代の下層の人々の生きざまのリアリティーであろう。 フィクションであるが、あたかも実際に存在した人々のように感じられる。 善良なもの、悪人、弱いもの、苦しんでいる者、様々な人間がいて存在するが、作者の彼らへの眼差しは優しい。 最後に保本は重大な決断をし、自らの人生を有意義なものにしようとする。 そこに至るまでの彼の人としての成長は見ていて心地よかった。 今後百年でも読み継がれてほしい本である。

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2017/11/16

何を今更という感じもありますが、突如周五郎を読みたくなって、久しぶりの再読です。 周五郎さんの円熟期の作品であり、かつ映画やテレビ番組にもなった有名な作品です。 やはり周五郎です。全体に暗いトーンながら、その底に暖かさを感じさせる物語です。 けれど、今回読み直してみて、やや...

何を今更という感じもありますが、突如周五郎を読みたくなって、久しぶりの再読です。 周五郎さんの円熟期の作品であり、かつ映画やテレビ番組にもなった有名な作品です。 やはり周五郎です。全体に暗いトーンながら、その底に暖かさを感じさせる物語です。 けれど、今回読み直してみて、やや説教臭さが気になりました。多くは赤ひげの独言としてつぶやかれるのですが. ”あえて言わせている”という感じなのです。 評価が低くなるのは再読のせいかもしれません。また、周五郎=高得点という私の図式の中で、この作品に少し違和感を覚えたせいかもしれません

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2017/10/22

17年秋にBSプレミアムで船越英一郎、中村蒼でドラマ化。赤ひげって話は前から知ってたけど、読んだのは初めてで、赤ひげが主役と云うより登の成長物語って初めて知った。

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2017/08/23

・あらすじ 幕府の御番役というエリートコースを歩むべく長崎遊学から戻った青年が貧者を相手に治療を施す小石川養生所の医師「赤ひげ」に呼び出され、見習い勤務を命ぜられる。理想とかけ離れた現実に、青年は激しく反発するが、赤ひげの真の医師としての信念、最下層の悲惨な境遇の人々との触れ合い...

・あらすじ 幕府の御番役というエリートコースを歩むべく長崎遊学から戻った青年が貧者を相手に治療を施す小石川養生所の医師「赤ひげ」に呼び出され、見習い勤務を命ぜられる。理想とかけ離れた現実に、青年は激しく反発するが、赤ひげの真の医師としての信念、最下層の悲惨な境遇の人々との触れ合いを通し、青年は医師として、一人の人間して大きく成長してゆく。 ・感想 話の骨子としてはヒューマンドラマにありがちな設定とも言えるが、読み終えた後に本が付箋だらけになり、自然と分厚くなっていた。ついつい拾いたくなる(使命感すら覚える)台詞がこの本にはたくさん詰まっているのだ。山本周五郎の作品には思わず身が震えるような台詞がぽろっと忍ばせてあるのは読者ならご存知の通りだが、とりわけこの本はそれが多い。本作の舞台が底の底とも言える最下層の人々にスポットライトが当ててあるからかもしれない。「赤ひげ」こと新出去定は、この世の最低最悪の場所とも言えるところで立派な医師をしている。助けたところで見返りはない。患者から感謝の言葉ではなく罵声を浴びることさえもある。パトロンである幕府は、下層の実情には目もくれず予算をカットし自分達に回す。くそったれ。そんなサイテーな世界にいながら赤ひげが医師であり続けるのは何故だろう?それは彼が医師だからだと思う。病で苦しんでいる人がいれば助けるのが医師の使命である。単純である。単純だけれど実行に移すのは難儀である。とりわけこんな環境ならなおさらだ。それだけに胸を打つものが大きい。人間嫌いになりそうになるが人間は素晴らしいものだ、と山本周五郎の作品を読む度に感じる。聖人とも称せる赤ひげは余りに理想的な人物かもしれないが、自分が人間嫌いにならずに済んだ事に感謝したい。

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2017/01/25

医療問題以前に、人間の心や貧困の改革がなければ、その問題は解決しない。そう思った。 所詮、人間の生命力次第で医療はなんの力もない(そんな感じだったかな)という言葉は正しいと思ったが、同時に、死にゆく病というのは生命力ではどうしようも出来ないとも思った。

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2016/12/19

幕府の御番医という栄達の道を歩むべく長崎遊学から戻った保本登は小石川養生所の“赤ひげ”とよばれる医長新出去定に呼び出され医員見習い勤務を命ぜられる。 貧しく蒙昧な最下層の男女の中に埋もれる現実への幻滅から、登は尽く赤ひげに反抗するが、その一見乱暴な言動の底に脈打つ強靱な精神に次第...

幕府の御番医という栄達の道を歩むべく長崎遊学から戻った保本登は小石川養生所の“赤ひげ”とよばれる医長新出去定に呼び出され医員見習い勤務を命ぜられる。 貧しく蒙昧な最下層の男女の中に埋もれる現実への幻滅から、登は尽く赤ひげに反抗するが、その一見乱暴な言動の底に脈打つ強靱な精神に次第に惹かれてゆく。 傷ついた若き医生と師との魂のふれあいを描く。

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2018/11/14
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

1964年発売 時代物だからではなく 少しも古くささを感じない。 それどころか 出てくる人々の人也が 今現在でも通じる 常識と情を持ち合わせており 少しの違和感も無い。 ページ的には少しも多くない本なのに 一人の若い医師がしっかりと 成長していく様が生き生きと書かれており、 鬼籍に入ってもなお 名の残る作家の表現力は 素晴らしいと改めて感動した。

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2016/02/14

江戸時代に実際に存在し、病気の治療だけでなく貧困民の生活保護までカバーしようという志の下建てられた「小石川養生所」。そこで無骨ながらも、病気だけでなく社会悪や人の心の弱さにまで目を向けようと奮闘する赤ひげ先生の姿は、現代にも通じるところが多々あると思いました。

Posted byブクログ

2015/12/16

主人公の心情の変化を引き起こす、赤ひげ先生の懐の深さ、人間らしさすてきでした。 狂女の話と、三度目の正直の話が印象的でした。 昭和34年の作品ということでしたが、社会的に恵まれない人々の心情や、奉仕の心など、古く感じることはありませんでした。

Posted byブクログ

2015/11/30

男と女の愛憎の話し、人間の悲哀が書かれ、診療のはなしが主体と思ったが大違い。人間の業の深さを感じさせる。非常に感銘深い良書。

Posted byブクログ