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時雨のあと の商品レビュー

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27件のお客様レビュー

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短編集

雪明り、闇の顔、時雨のあと、意気地なし、秘密、果し合い、鱗雲 短編集。武家物四つ、市井物三つ。

いけだ

江戸の町に暮らす町人…

江戸の町に暮らす町人や下級武士たちの報われなくも必死に生きる姿を、哀切に描く庶民人情物語。「時雨のあと」「雪明かり」など藤沢さんの江戸市井ものの名作7編。

文庫OFF

江戸時代の、庶民の暮…

江戸時代の、庶民の暮らしの哀しさを描く傑作短編集。

文庫OFF

2024/02/12

人間としての優しさや、ダメさ、それらを温かく見られる世界感にじんわりと、心ほどける。 ささやかな幸せ、ささやかな感動に、清々しさを覚える。 英雄豪傑は出ないけれども、普通の人間の人情を深く味わえる。

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2022/10/18

なぜ時代小説を書くのか。 さらになぜ江戸期の話が多いのか。 著者あとがきに語られている。 古い時代にはその時代特有のもの、反面親子や男女の愛のように現代と共通する人間に不変なものがありこの二面を捕まえないと正確に古い時代を把握したことにならない。 そして江戸期になると現在と共通す...

なぜ時代小説を書くのか。 さらになぜ江戸期の話が多いのか。 著者あとがきに語られている。 古い時代にはその時代特有のもの、反面親子や男女の愛のように現代と共通する人間に不変なものがありこの二面を捕まえないと正確に古い時代を把握したことにならない。 そして江戸期になると現在と共通する部分が多くでてきて今の生活感覚からも理解しやすいと。 なるほどなあ。 TVドラマでも江戸の市井物が気楽に楽しめるのはそういうところもあるのだろう。 武家物4編、市井物3編。 「雪あかり」 何度読んでも心地よい話だ。 嫁ぎ先で虐げられていた義理の妹を助け出し、養子先と絶縁し、その娘との婚約も破棄して自分の持っているもの全てを投げ出して義理の妹とこの先の人生を共にする。男だなあ。 とは言え、彼の周囲の人々、特に親類縁者は困っただろうな。 「闇の顔」 時折性格の真っ直ぐな人に出会う事がある。 人間の付き合いの中には、お世辞や小さな嘘がある程度必要な事がありそれが人間関係を円滑にしている所がある事を否定できない。 けれどそういう事ができない性格の人がいる。 真っ直ぐで正義感が強く思ったことを忖度なしに述べる。 正しい人なのだ。 けれども友人としては付き合えない。そして身近な家族だと困った人だと言われることさえある。 藩の不正に気付き正そうとする事は正しい事。 けれどもその手法は直情的ではまずい。 「闇の顔」では結果として不正が暴かれ結果としては良かったが、もう少し手段を考えれば犠牲は少なかったはずだ。 「時雨の後」 私には兄弟姉妹というものがない。 と言ってまるきりひとりっ子と言うわけではなく早逝した兄と妹がいた。兄の顔は知らないが妹とは3年一緒に暮らした。 この話の兄は真面目な鳶だったが怪我が元で博打に溺れ、身を売って商売をしなければならなくなった妹から金をせびる。 怪我をするまでの優しく真面目だった兄が、今でも真面目に働いていると信じていつでも金を都合する妹。 そんな妹が兄の正体を知っても庇おうとする姿に兄はやっと立ち直る気になるのだ。 兄と妹の愛、それを私は知らない。 「意気地なし」 女房に先立たれ乳飲み子を抱えて生きる術がわからず惚けたような伊作を見かね、隣家のおてつは何かと手を貸すうちに、祝言が決まっていた作治の中に不誠実さを見出し、反対に伊作に心を寄せる。 「秘密」 年老いて先の望みもなくなりただ生きているだけのような男にも生きた証の過去がある。 それが自分が犯した罪であっても。 ただそんな過去があった事をぼんやりと覚えていても経緯までハッキリ思い出せずに苦しむ。 ある日そのぼんやりとした記憶が霞が晴れたように蘇った時、男は人生を生きた事を確実な事実と認識して満足する。 「果し合い」 部屋住みの厄介者である大叔父と姪の心のつながりが温かい。 果たし合いによる怪我が元で人生の歯車が狂い始めた佐之助と心通わせるのは姪の美也だけ。 その美也の窮地を救い彼女が愛する男と生きていく為に佐之助は残りの人生を捨てる。 P216 「大叔父はあっけらかんと言った」 このあっけらかんは誤用ではないか? P218 知っているのは、男と会う時の闇だけである。 「鱗雲」 主人と娘を亡くし、母と息子二人暮らしの寂しい家に、春の日差しのように明るい娘がやってきた。 P261 「あの娘さんには腕に竹刀だこがありますよ」 竹刀だこならば「手に」あるいは「手のひらに」と言うべきではないだろうか?

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2021/11/14

『雪あかり』で、由乃が嫁ぎ先でむごい仕打ちにあっているのを、主人公が世間体もはばからずに助け出すというシーンは、映画「隠し剣鬼の爪」で使われていました。松たか子がいじらしく、不覚にも涙したのを思い出しました。 『時雨のあと』の、どん底にあっても再起を誓う姿は、頼りなげでありながら...

『雪あかり』で、由乃が嫁ぎ先でむごい仕打ちにあっているのを、主人公が世間体もはばからずに助け出すというシーンは、映画「隠し剣鬼の爪」で使われていました。松たか子がいじらしく、不覚にも涙したのを思い出しました。 『時雨のあと』の、どん底にあっても再起を誓う姿は、頼りなげでありながら、心に暖かなものを感じさせます。 心を洗われるような珠玉の短編集です。

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2021/09/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 藤沢周平「時雨のあと」、1982.6発行、再読。雪明り、闇の顔、時雨のあと、意気地なし、秘密、果し合い、鱗雲(うろこぐも)の7話。どれも味わい深く読み応えがあります。「雪明り」の由乃、「意気地なし」のおてつ、「鱗雲」の雪江に幸多からんことを願っています! 「鱗雲」のラスト、最高です(^-^)

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2021/03/06

1982(昭和57)年発行、2002(平成14)年改版、新潮社の新潮文庫。7編。あとがき有。解説は藤田昌司(文芸評論家)。下級武士や町人が主人公なので市井物ということになろうか。比較的希望が見える形で終わるものが多い。家族や職場の関係が主題なので舞台は江戸時代でも現代に通じるもの...

1982(昭和57)年発行、2002(平成14)年改版、新潮社の新潮文庫。7編。あとがき有。解説は藤田昌司(文芸評論家)。下級武士や町人が主人公なので市井物ということになろうか。比較的希望が見える形で終わるものが多い。家族や職場の関係が主題なので舞台は江戸時代でも現代に通じるものがある、と解説にはある。なるほどそのとおりかも。『果し合い』のように厄介者の家族の中で唯一味方になっていた人のために死んでいも良いよいような結末なんか考えてみると現代的かも。『鱗雲』は代表作時代小説で読んだばかりだがそれは偶然。 収録作:『雪明かり』、『闇の顔』、『時雨のあと』、『意気地なし』、『秘密』、『果し合い』、『鱗雲』、他:「あとがき」、「解説」藤田昌司

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2021/01/29

藤沢周平にはまっている。映画「隠し剣・鬼の爪」を観てからだ。といっても、以前から読んではいたが、独特なやわらかいタッチの文体にどうしてもなじめなかった。 しかし、この映画を観てから、本腰入れて(笑)、今度こそ藤沢作品を読破してやろうと思い始めてしまった。 映画の「隠し剣・鬼の爪」...

藤沢周平にはまっている。映画「隠し剣・鬼の爪」を観てからだ。といっても、以前から読んではいたが、独特なやわらかいタッチの文体にどうしてもなじめなかった。 しかし、この映画を観てから、本腰入れて(笑)、今度こそ藤沢作品を読破してやろうと思い始めてしまった。 映画の「隠し剣・鬼の爪」は、秀作である「雪明かり」(「時雨のあと」に収録)とドッキングさせたという無茶といえば無茶な内容だが、藤沢作品がもつ人情の世界や琴線に触れるようなやさしい雰囲気は充分伝わっている。何よりも、松たか子がよかった。

Posted byブクログ

2019/04/01

短編集は一話ごとの完結が潔くて、読んでいて心地よい。 「果し合い」を以前テレビドラマか何かで途中から見かけた。なぜ果し合いに行ったのかわからないままだったので、それがわかってすっきりした。 藤沢周平さんは読後感がさわやかでまた手に取りたくなる作家さんのお一人。

Posted byブクログ