血と骨(下) の商品レビュー
読んでうれしくなる本がいい。 この本はその反対。 読んだ後に、ぼーっと脱力感がある。 でも読んでよかったと思う。
Posted by
下巻である本書は太平洋戦争終結後の混乱の時代から金俊平の死までが綴られています。 上巻と同様にこの下巻もおもしろくありません。しかし、これまた上巻と同様に読み始めると止まりません。 この一見して矛盾している状態は上下巻通して徹底されています。 また、この下巻では家族につい...
下巻である本書は太平洋戦争終結後の混乱の時代から金俊平の死までが綴られています。 上巻と同様にこの下巻もおもしろくありません。しかし、これまた上巻と同様に読み始めると止まりません。 この一見して矛盾している状態は上下巻通して徹底されています。 また、この下巻では家族についてかなり厚く綴られていますが、良い意味で期待を裏切りながらも金俊平の家族に対する態度も終始徹底されています。 さらに、本書では在日朝鮮人についてや彼らの社会について、そして彼らが日本でどういう状況に置かれていたかということについて、本来は隠したくなるようなことまでも赤裸々に綴られています。これも上下巻通して徹底されています。 様々なことがとにかく徹底された作品です。これだけ徹底されていると、気持ちが良いくらいです。
Posted by
圧倒的な暴力、暴力、暴力。だがのめり込んで読んでしまう得体の知れないものがある。果てない暴力と欲望、だがそれは世界を変えるようなものではない。ただ己の力で家族や周囲に圧倒的な立場を守ろうとするもの。そんな男に力で抑えつけられながらも離れることもままならない家族。昭和初期、どれほど...
圧倒的な暴力、暴力、暴力。だがのめり込んで読んでしまう得体の知れないものがある。果てない暴力と欲望、だがそれは世界を変えるようなものではない。ただ己の力で家族や周囲に圧倒的な立場を守ろうとするもの。そんな男に力で抑えつけられながらも離れることもままならない家族。昭和初期、どれほど多くの朝鮮の人たちが日本に働きに来たのだろう。日本全国に最底辺の労働をするためにどれほどの人たちがいたのだろう。そして結婚し子供が生まれあるものは帰国しあるものは帰化し、そしてその子たちにも子が生まれ・・・上巻で金俊平は金と女への欲望のまま暴力を振るう。恐ろしいと思う。その金も博打や酒のためのもので、極道よりも極道な生き方。物語は金俊平中心からその妻英姫へと移る。美人で働き者で商才もあり手堅く生きていたのに金俊平に無理やり妻にされてからその暴力に脅えながらそれでも4人の子供を生み、戦中と戦後を働きづめに働き子供を育て夫に食い物にされながらも生き抜く。朝鮮のオモニは強い。その時代の女の人だからだろうか。下巻に入り金俊平の子供たちが父の暴力に脅えながらそして抵抗しながら成長する。金俊平も蒲鉾工場を立ち上げ金を手に入れるが、それを家族のために使おうともせずただ吝嗇に溜め込み執着する。そして次々と妾を作るが、性の対象としか考えずあるものは出奔しあるものは脳腫瘍で介護が必要となり最後の女は新しい子供たちを生むが老いた金俊平からその金を奪っていく。壮絶な生き方が老いて暴力で支配することが出来なくなったとき手痛いしっぺ返しを金俊平に与える。以前玄月という人の芥川賞をとった小説を読んだが、こちらのほうがはるかに力強く在日朝鮮人社会のつながりの深さ、その底辺の生活から生まれる苦悩とか立場が出ているような気がする。迫力があると思う。解説に、読み捨てられるティッシュペーパーのような小説が大衆小説で純文学ではなく、この小説は在日朝鮮人文学の傑作であり日本語文学の傑作とある。確かに後世まで残るのはこちらのほうだろうと思うが、何故そんなジャンル分けが必要なのだろうかと思う。そして時にはティッシュペーパーが必要なときもあるだろうにと思うのだ。06・12・3
Posted by
<内容> 敗戦後の混乱の中、食俊平は自らの蒲鉾工場を立ち上げ、大成功した。妾も作るが、半年間の闘病生活を強いられ、工場を閉鎖し、高利貸しに転身する。金俊平は容赦ない取り立てでさらに大金を得るが、それは絶頂にして、奈落への疾走の始まりだった…。身体性と神話性の復活を告げ、全選考委員...
<内容> 敗戦後の混乱の中、食俊平は自らの蒲鉾工場を立ち上げ、大成功した。妾も作るが、半年間の闘病生活を強いられ、工場を閉鎖し、高利貸しに転身する。金俊平は容赦ない取り立てでさらに大金を得るが、それは絶頂にして、奈落への疾走の始まりだった…。身体性と神話性の復活を告げ、全選考委員の圧倒的な支持を得た山本周五郎賞受賞作。
Posted by
【2006.12.22.Fri】 1930年ごろ、蒲鉾工場で働いていた、在日朝鮮人の金俊平。誰もが恐れる巨漢と凶暴さをもった男の生き様を描く。作者の実在の父親をモデルにした私小説である。文章は、視点がいくつも変わり、繰り返しも少なくない。つまり、一見雑に見えるのだ。しかしそれが、...
【2006.12.22.Fri】 1930年ごろ、蒲鉾工場で働いていた、在日朝鮮人の金俊平。誰もが恐れる巨漢と凶暴さをもった男の生き様を描く。作者の実在の父親をモデルにした私小説である。文章は、視点がいくつも変わり、繰り返しも少なくない。つまり、一見雑に見えるのだ。しかしそれが、まるでこの時代の大阪を表すかのように、雑多な塊となって胸に飛び込んでくる。混沌とした背景がそのままスクリーンとなって、この世界へ引き込んでしまう。日本人と朝鮮人の衝突、血と骨を分けるもの同士の葛藤。他者との関わりの最大限が、この作品には詰まっているように思う。人間は本当の意味で人間を憎むことが出来ないのかもしれない。それは素晴らしきことのようにも思えるが、呪縛という名の苦痛にも思えるのだ。戦前から戦後の市井の人々の生活も描写し、私にとっては大変興味深いものであった。
Posted by
上巻から継続される金俊平のすさまじい暴力。家族の資金と労働を犠牲にしながら蒲鉾工場を創業し莫大な財産を得るが家族への還元はほとんどなし。そこからラストまで転落人生。上巻に比べ、息子の成漢がたくましく成長したので、少し安心して読める。生きる原動力に、暴力と全ての他人に対する根拠のな...
上巻から継続される金俊平のすさまじい暴力。家族の資金と労働を犠牲にしながら蒲鉾工場を創業し莫大な財産を得るが家族への還元はほとんどなし。そこからラストまで転落人生。上巻に比べ、息子の成漢がたくましく成長したので、少し安心して読める。生きる原動力に、暴力と全ての他人に対する根拠のない恨みしか存在しない人間のなれの果て、という感じです。
Posted by
映画は見てないけど、確か主人公は北野武が演じた様だけど、ピッタシだな〜って感じです。主人公の韓国人、金俊平の圧倒的な暴力的な人生の事が書いてあるので、それには圧倒されるけれど…。
Posted by
戦前・戦後の在日朝鮮人社会の在り様といった文学的なところも無いわけではない。 が、“血と骨”は何も考えずに、考える必要もなく、ただただ彼を楽しむに尽きる。 その卑劣で卑小な人間を!
Posted by
思わぬ結末・・・ 「血」についてちょっと考えてしまった。鎖みたいなしがらみみたいな。 この後、成漢はどうしたんだろう。
Posted by
すごいすごい。すさまじい。面白かったです。エゴを凝縮したような 在日朝鮮人の男性と周辺のお話しなのだけれども、こんなものなのです。 みんなきつと。いやあ、化け物。読了後、ぐったりしてください。
Posted by