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シドニー! の商品レビュー

4.2

29件のお客様レビュー

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2012/12/31

大前提としてオリンピックは「平和」を冠にした「競技」を通した「国家間の戦争」の代わりであることを認識しておかないと著者の言いたいこと、感じたことはただのオーストラリアでの滞在記録と感想にしか感じることが出来ない。 著者は、その国家間の戦争の優劣をメダルの数で表現して、富国強兵を裏...

大前提としてオリンピックは「平和」を冠にした「競技」を通した「国家間の戦争」の代わりであることを認識しておかないと著者の言いたいこと、感じたことはただのオーストラリアでの滞在記録と感想にしか感じることが出来ない。 著者は、その国家間の戦争の優劣をメダルの数で表現して、富国強兵を裏であることに対して、著者独自の視点で見ているに過ぎない。だから戦争を煽り、メダリストに対して簡単に英雄をつくるメディアに対し、一石を投じている。ただ残念ながら正義は勝利の側にあることは普遍だ。だから戦場を誘致する活動は馬鹿馬鹿しいし、空しい。 ただ戦争は金を生み、金を集める。資本主義が良い悪いでなく(社会主義が同じく良い悪いではなく)オリンピックを通して4年に一度、世界の息抜きとして存在する平和な戦争を、国家としてのナショナリズムの煽動や簡単に影響を受けてしまうその国民に対して、とてもわかりやすく、そしてあえて遠まわしに表現している。そしてその戦争の中に身を投じて、自分で見て感じて表現しなければただの評論家に成り下がることを案じてこの本を書いたのではないだろうか。 人であれ、コアラであれ、カンガルーであれ、鮫であれ同一の生命としての平等な存在として優しく個を見つめる。「変なの」はいわゆる世間一般の「雰囲気」や「愛国心がなければ人でない」のような空気だ。だから博物館やコアラの話、ワラビーの話も全部必要なのだ。(そうでなければこの人は絶対に書かない。無駄のない文章はこの人の特徴だ) それゆえ、いわゆるオリンピックの花形の競技であれ、人気のないスポーツであれ、5位6位の勝負であれ、その競技自体にあまり意味はなく、一生懸命「人間」として行動する個人を見つめ、考える。(ただちょっと長距離競技に対して、著者がマラソンをしているから興味が深いのは最もだし、走る人だからわかることもある。) 有名無名に問わず、その人間性の裏側にあるものを見つめ、人生に表彰台はなく、いかに悔いなく過ごしたか、高みに至ったかが、その人の深さにつながり、それは著者にとっては順位というものにはあまり関係がない。 だから高橋尚子に感じた競技翌日のインタビューの違和感は「金メダルをとるためにあまりにも良く作られたヒト」なのだと思うし、僕もあの優等生な感じは今でも違和感を感じる。どんなスポーツも、オリンピックという一種の異常状態では「楽しむ」ことなんてオリンピックでは選ばれたエリートでも感じることはできない人が多いし、ましてや普通の人は推して図るべしだ。(だって競技自体は他にもワールドカップやアジア大会や世界水泳やその他の大会などで行なわれているでしょう) ただし、戦争の中に悲劇もあれば感動も生まれる。それはもう一つの事実だ。一種の極限状態に置かれた人たちの生む独特の空気は必ず存在する。競技は競技でしかないのに、4年に一度の存在が人を狂わせ、人生をかき回す。 著者はシドニーをオーストラリアをそんなに悪い国ではないと思っている。(これはとても重要なことだ)。だけどそんな国で平和なスポーツの祭典が行なわれたことがとても残念なことなのだと思う。きっとオリンピックがなければなかなか行かなかった地で、でもオリンピックという理由がなければ訪れなかったろう南半球の地で、矛盾を抱えながらも「個」と向き合う著者の考えは、諦観ではなく達観にまで昇華され、そして幾分の消化不良を残しながら、いつまでも続く野火の未消火活動のようにくすぶったまま、文章を通して私達に生きる難しさと少しの喜びを教えてくれる。

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2012/08/28

ロンドンオピンピックの興奮が覚めやらぬうちに!と、読んでみました。 「オリンピックは勝つことにではなく、参加することに意義がある」と言ったとされているピエール・ド・クーベルタン男爵だが、実際は(村上春樹が読んだ本によると) 「人生において大事なことは、勝利ではなく、競うことで...

ロンドンオピンピックの興奮が覚めやらぬうちに!と、読んでみました。 「オリンピックは勝つことにではなく、参加することに意義がある」と言ったとされているピエール・ド・クーベルタン男爵だが、実際は(村上春樹が読んだ本によると) 「人生において大事なことは、勝利ではなく、競うことである。人生に必須なのは、勝つことではなく、悔いなく闘ったということだ」 と言ったらしい。 これなら納得。それにこれならスポーツ選手じゃない全ての人に当てはめられる言葉だと思うしね。

Posted byブクログ

2012/03/04
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オリンピックほど退屈なものはないと言い切ってしまう村上春樹氏が 自らシドニーオリンピックの現地での観戦レポートを書いた作品。 10年以上前のことながら当然懐かしいあの時の興奮等を 思い出しつつスポーツの読み物として楽しむことも出来るし 村上春樹的な人物描写が架空の人物を描いた小説のように 読むことも出来る作品だと思いました。 春樹氏自身がランナーでもあるのでどのように高橋尚子の 物語を書いてくれるのだろうと期待していましたが 意外とあっさりと書かれていました。 むしろ有森裕子や犬伏孝行についてのインタビューを交えた レポートはかなり読み応えがありました。 両氏ともあれ以来ランナーとしての輝きを取り戻すことは 結局出来なかったみたいですが。 オリンピックの観戦レポートもありきたりではなく 普通の記者なら書かない部分を書いていたり オーストラリアの歴史や旅行記のようなものまで 幅広く描かれていて飽きることがありませんでした。 現地の新聞から面白い部分を抜粋して 紹介してくれたりしてますし。 そしてオーストラリアの歴史を踏まえた上での キャシー・フリーマンの金メダル獲得シーンの描写は 感動的ですらありました。

Posted byブクログ

2012/02/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

シドニーオリンピックの取材とオーストラリアの風土と歴史に関する強烈に主観的な取材メモ。長距離種目に対する作者の大きな愛と描写の妙は、マラソンの超人性を引き立てる。メディア一般の、人間味あふれるエピソードや模範的な回答から構成される安易なドラマではなく、洞察を通した主観的な、書く者によって責任がとられた文章が心に残る。巨大な集金マシーンと化してスポンサーや関係者の利害が渦巻くオリンピックという舞台とアスリートたちの挑戦。作者が、最近活躍している教職員ランナーの川内 優輝に取材したどんな話になるのかな、と想像してみたりした。

Posted byブクログ

2011/02/27

淡々とシドニーオリンピックを村上春樹の視点で眺める。ひねくれながらもユーモラスにオーストラリアを描いている。オリンピックだけでなく、コアラや潜水艦やサメやワニの話もとても楽しい。

Posted byブクログ

2011/01/20
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

うわーショック。 これ書いたの村上春樹じゃないですか。 中学生の時読んだんだけど先日までずーっと村上龍だと思ってた‥。 ということで一番最初に読んだ本は使いみちのない風景ではなくSydney!だったわけね。 今までの五輪の中で一番熱くなったのがシドニーだったので、非常に冷めた目線でオリンピックが語られているのに怒りを覚えた程です。 またいつの日か、読み直してみようかな。

Posted byブクログ

2010/02/08

あたしが大好きな作家村上春樹さんの本 ジャンルはなんだろう?エッセイ?トラベル紀行?スポーツ解説? シドニーオリンピックで彼が実際に見てきたものがまとめられている 村上春樹さんの小説はもちろんエッセイもすっごく好き 彼の独特の視点、表現方法、and more やっぱり彼はおも...

あたしが大好きな作家村上春樹さんの本 ジャンルはなんだろう?エッセイ?トラベル紀行?スポーツ解説? シドニーオリンピックで彼が実際に見てきたものがまとめられている 村上春樹さんの小説はもちろんエッセイもすっごく好き 彼の独特の視点、表現方法、and more やっぱり彼はおもしろい。 なんと言ってもちょっとひねくれているのが素敵 オリンピック・ゲームほど退屈なものはない、と言っている彼が実際に23日間現地でその中心でオリンピックとはどういうものか?というのを味わうのだから。 誰もがなかなか口に出して言えないことをズバズバ言ってくれるもの良い。 例えば、開幕式ー10万円もして編集社がやっと手に入れたチケットだったのだがーを途中で帰ってしまったり。 春樹さんの本を読んでいると、元々持っている人生観と全く違う人生観を見れて しかもそれを素直に受け入れられるのが不思議だ

Posted byブクログ

2009/12/05

シドニーオリンピックを観に行った村上さんのエッセイ?ドキュメンタリー? ゆるく、ユーモラスな文ですが 時々どきっとする繊細な箇所があります 動物園のくだりなんかはほとんどギャグですが 最後がまじめに締めてあるので、きりっと仕上がっています

Posted byブクログ

2011/09/04

ひたすら走る作家村上春樹がオリンピックのひらかれているシドニーに3週間滞在し、現地でリアルタイムにつづったルポルタージュです。なんで、オリンピックなんかに取材に来ているのか、なんでマイナーなハンドボールなんかにあつくなるのかもうぜったにオリンピックの取材はしない、といいながらやっ...

ひたすら走る作家村上春樹がオリンピックのひらかれているシドニーに3週間滞在し、現地でリアルタイムにつづったルポルタージュです。なんで、オリンピックなんかに取材に来ているのか、なんでマイナーなハンドボールなんかにあつくなるのかもうぜったにオリンピックの取材はしない、といいながらやっぱり1万メートルはいいといいきるシドニーでもちゃんと走っていましたなかなかおもしろいよみものでした

Posted byブクログ

2009/10/04

村上春樹のオリンピック観戦記。…観戦記というにはまったりしてる?これを読んでから、シドニーに行く機会に恵まれたのですが、どうも私にはあそこでオリンピックをやったのだという事実が信じられない。「オリンピックを開催したシドニー」を想像できない。なんでだろう。

Posted byブクログ