黒と茶の幻想 の商品レビュー
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この本を初めて読んだのは、中学生か高校生のときで、 それ以来、屋久島は私の憧れの地となりました。 近日、いよいよ、屋久島へ行ってきます。 行く直前に、原点回帰ということで再読。 大学の同級生である4人の男女が、Y島を旅する物語。 旅の企画者である彰彦は、残りの3人に招待メールを送った。 ”『美しい謎』持参のこと。” 今ではそれぞれに家庭を持ち、別々の場所で仕事をしている彼等。 太古の森を歩く中で、お互いに持ち寄った『美しい謎』を推理するうちに、 皆で共有する過去、自分自身の内側にある過去へと迷い込んでいく。 かつて恋人だった蒔夫が自分の親友を殺したのではと思う、利枝子。 なぜか紫陽花に恐怖を感じる、彰彦。 太古の森の中で死んだはずの女を見る、蒔生。 内気な性格が180度変わったきっかけに覚えのない、節子。 そして、4人の記憶の中に残る美しい女、憂理。 彼らは過去という森に潜む『美しい謎』を解き明かせるのか…。 皆思っていることをズバリと聞かないんですよ。 それは、この関係性を崩さないためのそれぞれの気遣いでもあり、 謎が解けたときに自分がどう振る舞うかを自分自身が畏れているからでもあるのです。 でも、外堀を埋めるようにじわじわと、一人ずつ、謎の核心に近づいていく。 それにより、少しずつ4人の心境と雰囲気が変わっていく。 4人の微妙なバランスで保たれている空気感が、臨場感たっぷりに伝わってきます。 4人がこの結末を迎えられたのは奇跡としか思えない。 非常に満足のできるラストです。 恩田作品には珍しい丁寧なラスト。笑 彼らが51歳になった時のスピンオフとか書いてほしいなー。 その時は、今回の旅のきっかけになった、 故郷でがんばっている潔も呼んでさ。 私は蒔生が再婚していない方に賭けるな。 利枝子の「しないで」に意外とやられているのでは。
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恩田作品3作目。 読むのにかなり時間がかかりましたが、面白かったです。 恩田さんの作品は不思議と読み逃しが勿体無くてじっくり読んでしまう。 すっかり好きになってしまいました。 今作は三月シリーズという事ですが、憂理が出てきてびっくり。 利枝子の事が好きになるあたり、やっぱり麗子の呪縛からは逃れられなかったのかな、なんて思ってしまったり。 利枝子にはモヤモヤ、蒔生はひたすら気持ち悪いし、彰彦と節子のお陰でこの旅は円満に終われたのだとヒシヒシと感じます。 三月は~の流れからの「黒と茶の幻想」のタイトルなのであまり深い意味は無いのかな、と思ってもいるのですが、英題がBLACK & TAN FANTASYだったので、「TAN」が「BRAUN」でも「BEIGE」でも無い事がずっと引っかかっていました。 調べると、TANは赤茶色、丹色。赤茶は錆の色だなぁ、と。 心の錆を吐き出す旅なのかな、という事で個人的には納得出来たので私の中の「謎」も解けました。笑 Y島やJ杉などになっていたのは三顧の桜がフィクションだからなんですね。そんなのあったら是非見てみたかった!とちょっと残念。 「美しい謎」もどれも面白くて良く出来ているし、最後に「節子」を持ってくる事で気持ちのいいラストになっているあたりも良く出来ていると思います。 女性作家ならではの巧みで繊細な心理描写がすごく面白かった。
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分厚いが、すっと読めた。仲の良かった4人の男女が中年にさしかかり、旅行に行き、過去のことを語り合う話。それぞれの人物が魅力的で所々にある謎解きもおもしろく、一気に読めた。
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自分たちで計画して行ったにもかかわらず 何かに導かれていたみたいな感覚にとらわれて 気持ち悪かった。 しかし三センチ超の厚みはさすがに疲れる・・
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正直、話自体はどうでもいい。会話が楽しい。 「学生時代に戻ったみたい」というのが本当に感じられる。爆笑って言うんじゃなくて、なんてことないのに、どこをとっても楽しくて心地いい会話。 読了日2012/03/31①
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終わりはあっけない感じはしたが経過が非常に感情移入でき満足だった 4人の登場人物それぞれの考え方や各自のほかの人についての考え方に感情移入がしやすい
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「三月は深き紅の淵を」関連の本。 第1章:利枝子、第2章:彰彦、第3章:蒔生、第4章:節子と それぞれの視点で描かれている。 それぞれが「美しい謎」を持って屋久島を旅する。 いろいろな謎が出てくるけど、解決しないものが多い。 でもそれが良いんじゃないかと思う。正解ってないしね。...
「三月は深き紅の淵を」関連の本。 第1章:利枝子、第2章:彰彦、第3章:蒔生、第4章:節子と それぞれの視点で描かれている。 それぞれが「美しい謎」を持って屋久島を旅する。 いろいろな謎が出てくるけど、解決しないものが多い。 でもそれが良いんじゃないかと思う。正解ってないしね。 どの登場人物にも感情移入できて、 それぞれに秘められた想いが伝わってくる。 他に重要な役割を持っている紫織、憂理もまた魅力的。 心理描写や登場人物の描き方が上手いなぁって思う。 何度読んでも引き込まれる物語。 (図書館→購入)
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すごく分厚いんですが、ずーっと読み続けていました。おもしろい。 先が気になる。やめられない。三度の飯より続きが!みたいな感じ。 それぞれ別の家庭を持っている、学生時代の友人たち4人が再開して旅行するっていうのもすごくいい。 以前読んだのは学生の頃だったけれど、社会人になった今の...
すごく分厚いんですが、ずーっと読み続けていました。おもしろい。 先が気になる。やめられない。三度の飯より続きが!みたいな感じ。 それぞれ別の家庭を持っている、学生時代の友人たち4人が再開して旅行するっていうのもすごくいい。 以前読んだのは学生の頃だったけれど、社会人になった今のほうが共感できる部分が多い気がする。 家庭を持ったらさらに共感できるようになるんだろう。この先の楽しみが増えました。 思い出話のような、クイズのような不思議な会話を繰り返しながら、それぞれが過去を振り返っていく、過去の自分と向き合っていく様はすごくおもしろく興味深かったです。 またその話のひとつひとつが伏線としてきちんと生きているんですよね~素晴らしい。 最初にも書きましたが何しろ長いお話なので、ゆっくり時間が取れるときのご褒美的な本として大切にしまっておきたいと思います。 また、この本を読む前にはぜひ「三月は深き紅の淵を」をどうぞ。
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