プラハの春(下) の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
下巻はチェコスロバキアの民主化運動からワルシャワ条約機構軍の軍事介入・武力による制圧までの経緯が膨大に事細かに書かれている。恐らく著者の外交官時代の体験談が入っているので緊迫感があり、かつ生々しい。最後の締めが淡々としていたので悲劇的には感じられなかった。展開も速いので思ったより読みやすかった。作品内ではプラハの綺麗な街並みが描かれていた。写真でしか観たことないが、やはりいつかはこの本を旅のお供に実際にプラハ中心街を訪ねてみたい。そして金木犀の匂い漂う女性に出会ってみたいものだ。
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ソ連軍の侵攻が始まり、チェコスロバキアの兵士が為す術なくただただ泣いているという描写を、なぜか覚えています。
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プラハにおける民衆の熱い思いは、無惨なまでに簡単に壊されてしまいます。チェコスロバキアという一国家での出来事と、一人の女性の犬死にとまでいえる悲しい人生から、「ベルリンの壁」崩壊のドラマは始まっていたことを私たちは知るべきでしょう。
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歴史の流れに身を委ねる勇気と忍耐を持つ きっとチャンスがめぐってくる 時を待つことも闘い そして いつだってモルダウは静かに流れている
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東西冷戦当時の東欧は、私にとって謎だらけの世界だった。そんな時代に外交官としてプラハの春を体験した著者が、整理された文章で綴った緊迫の日々。これは小説なのか、と何度も思った。小説ではあるが、歴史の事実を丁寧に追って、時に歴史の本を読むように話が進んでいく。 ドゥプチェクを中心と...
東西冷戦当時の東欧は、私にとって謎だらけの世界だった。そんな時代に外交官としてプラハの春を体験した著者が、整理された文章で綴った緊迫の日々。これは小説なのか、と何度も思った。小説ではあるが、歴史の事実を丁寧に追って、時に歴史の本を読むように話が進んでいく。 ドゥプチェクを中心とした流れの中、少しずつ解放に向かう体制と、その裏に渦巻く別の動き。チェコを取り巻く東欧各国の思わく、ソヴィエト侵攻、国民の無念が、作り話とは思えない真の迫力で迫ってくる。ヤン・パラフの悲劇や外交官堀江と反体制活動家カテリーナの悲恋など、事実との境目が解らないほどの充実ぶり。 これでやめるワケにはいかない。またも長女の置きみやげ、『ベルリンの秋』に突入する。
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残念な結果に終わったプラハの春だからか、 この話の結末も悲しい事に。 2人の愛とプラハの春が盛り上がる辺りはこっちも気分がよかった。 私がベルリンの壁、東ドイツ、ソ連、ハンガリー動乱に興味をもった話。 表紙デザインが好きじゃない。
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以前、駅前の本屋さんの天井まである本棚にこの本はあったのです。当時は文庫本でなくてハードカバーで、プラハに興味ある私としては、タイトルのプラハの文字にひかれたのですけど、1968年のチェコの民主化運動を舞台に、冷戦の非情に翻弄された若き外交官の恋とサスペンスっていうのがちょっと引...
以前、駅前の本屋さんの天井まである本棚にこの本はあったのです。当時は文庫本でなくてハードカバーで、プラハに興味ある私としては、タイトルのプラハの文字にひかれたのですけど、1968年のチェコの民主化運動を舞台に、冷戦の非情に翻弄された若き外交官の恋とサスペンスっていうのがちょっと引っかかって、そのまま買わずにいたのでした。 (その当時は知らなかったのですけど)「プラハの春」というのは小説のタイトルではなく(小説のタイトルでもあるんですけど)、1968年のチェコの民主化運動を「プラハの春」ということを知り、プラハの街を見るには避けて通れない歴史であることを感じて、文庫本で読むことにしました。 内容は、書いたように1968年のチェコの民主化運動を舞台にしています。当時のことを思うとメキシコオリンピックあたりだし、大阪万博はその2年後。中学でもチェコスロバキアは習いましたが、社会主義の国というくらいで、こんな事件が起きているとは思いませんでした。当時は、新聞を読んでいないせいでしょう。こうした土壌があったからこそ、ビロード革命につながったのかもしれません。しかし、ドイツの壁の崩壊やソ連の崩壊に至るまでにこんな時代にすでに政治的にも経済的に破たんしかかっている状態だったというのが驚きでもあります。 本書はその時代を背景にした、日本からの若き外交官と東ドイツのDDR反体制活動家カテリーナという叶わぬ恋の物語ということですが、私自身はあまりこの恋愛部分には興味がなくって、全体的には歴史の流れ自体に大変興味を持ちました。作者自身が外交官としてこのプラハの春を見てきている臨場感が何物にも代えがたいことだと感じています。 いつもなら眠くなる本が、次が読むたくてしょうがなく、全然眠れず寝不足になってしまいました。 プラハの街はこうした軍事介入があっても奇跡的に中性の街並みを保っています。この本に出てくるホテルやレストランやビアホールなどがガイドブックなどでも紹介されているお店だったりして、今も健在であることを思うとなんだか嬉しくなりますね。スメタナの「我が祖国」を聴きながら読むと、ますます感情移入出来るかも(^^)。 ちなみに中欧三部作と言って、このあと「ベルリンの秋」「ウィーンの冬」というのがあるらしいので次の機会の楽しみにしておきます。
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上巻を読んだあと早く読みたかったのになかなか読めなかった下巻をやっと発見 重い話だし政治用語がたくさん ヘタすれば途中で諦めてしまいそうな字の細かさ だけど面白い!名作ですカテリーナの美しさ、二人の愛の深さ、プラハの春にかける人々の熱情。すべてを完璧なまでに描きだせたのは作者...
上巻を読んだあと早く読みたかったのになかなか読めなかった下巻をやっと発見 重い話だし政治用語がたくさん ヘタすれば途中で諦めてしまいそうな字の細かさ だけど面白い!名作ですカテリーナの美しさ、二人の愛の深さ、プラハの春にかける人々の熱情。すべてを完璧なまでに描きだせたのは作者が実際に立ち会った人間だからかフィクションとなっているが名前の一致などから実話に思えてならない 世界史を勉強しただけではわからないものを得られた気がする。亮介も言ったけれど事件後 非難を浴びることになったチェコスロバキア大統領の反革命派を制した一言が凄くかっこよかった 人それぞれ国を守るやり方があった。それが理解されてもされなくとも貫き通した愛国心は変わらない 物事は必ず流れ繰り返す それでもわたしたちはプラハの悲劇を繰り返してはならない 今度こそ冬が終わり本当の春が来るように…
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(上巻の感想からつづく)ベルリンの壁が崩壊して1年後くらいだった時期だと思うが、ベルリンを訪ねる機会があった。ベルリン市街、旧西側と旧東側では町並みが全く違っていた。東側は、明らかに、というよりも、話にならないくらい西側に比べると貧しい生活を強いられていたということが明らかに分か...
(上巻の感想からつづく)ベルリンの壁が崩壊して1年後くらいだった時期だと思うが、ベルリンを訪ねる機会があった。ベルリン市街、旧西側と旧東側では町並みが全く違っていた。東側は、明らかに、というよりも、話にならないくらい西側に比べると貧しい生活を強いられていたということが明らかに分かる違いだった。その時に感じたのは、落差の大きさよりも何よりも、「なぜこのような明らかな違いを持った貧しさが、そして、その貧しさをつくりだした社会的なシステムが、かくも長い間、生きながらえることが出来たのだろう」という疑問だった。学生時代に学んだ経済学は、近代経済学であった。近代経済学とは、モデルとしての「完全自由競争」下における家計や企業などの経済主体の行動を学習する学問であるが(ちょっと乱暴かな?)、その中で繰り返し出てくる命題は、「完全自由競争の前提条件が損なわれた場合、世の中の資源配分には無駄が発生する」というものだった。無駄が良いとか悪いとか、という価値判断の問題を言っているのではなくて、理屈としてそうなる、ということなのであるが、それでも、基本的に私有財産を許さない、「市場」というものが基本的に存在しない純粋な共産主義の経済というのは、経済効率という面では相当に劣る体制だろう、ということは近代経済学をかじったことのある人間であればすぐに考えることである。少なくとも単純な学生であった私はそう思ったし、今でもそう思っている。効率の悪い社会って長続きしないよね、っていうのが学生時代の私の結論だったのだけれども、でも、この小説に書かれているような社会主義とか、共産主義にまつわる色々なドラマは、そういった浅薄な学生の考えでくくれるものでは、勿論ない。何を書きたかったのか分からなくなってしまったけれども、ともかくそういったことを考えた。この本は私の敬愛する上司であったWさんから勧められた小説である。Wさんは先月、出張先のヨーロッパで急逝された。Wさんには仕事はもちろん、色々なことを、言葉や態度や生き方で教えていただいた。感謝しきれない。心からご冥福をお祈りしたい。
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冬の厳しい社会主義国に訪れた一瞬だけ訪れた春のような自由化の波。 はかなく散っていく姿にせつなくなります… 「ワイルド・スワン」と同じく、社会主義国家中枢の残虐な弾圧は、もう、目を覆うばかりです。 ひとって信じるもののためには、そして信じていなくてもただそこで生き残るために、感情...
冬の厳しい社会主義国に訪れた一瞬だけ訪れた春のような自由化の波。 はかなく散っていく姿にせつなくなります… 「ワイルド・スワン」と同じく、社会主義国家中枢の残虐な弾圧は、もう、目を覆うばかりです。 ひとって信じるもののためには、そして信じていなくてもただそこで生き残るために、感情や自分を消したり押さえたりできるんだなと、おもいます。
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