銃・病原菌・鉄(下巻) の商品レビュー
p.50 しかし、人の脳の作りに人種間の差異がないとしたら、技術の発展が大陸ごとに異なっていることはどう考えればよいのだろうか。一つの答えは、非凡な天才が技術を進歩させるという考え方である。そして、人類の進歩の技術は、そうした個人によって突然もたらされたようにも見える。ヨハネス・...
p.50 しかし、人の脳の作りに人種間の差異がないとしたら、技術の発展が大陸ごとに異なっていることはどう考えればよいのだろうか。一つの答えは、非凡な天才が技術を進歩させるという考え方である。そして、人類の進歩の技術は、そうした個人によって突然もたらされたようにも見える。ヨハネス・グーテンベルグ、ジェイムズ・ワット、トーマス・エジソン、ライト兄弟。彼らはみな、生っ粋のヨーロッパ人かヨーロッパ人の子孫である。アルキメデスをはじめとする古代の天才たちもみなそうである。そういう天才はナミビアやタスマニアでは誕生しなかったのだろうか。人類の科学技術史は、類まれな天才たちが誕生した場所の偶然性によって左右されるものにすぎないのだろうか。 p.112 これまで見てきたように、地域の人口規模と社会形態の間には、相関関係がある。つまり、人間集団においては、そこで暮らす人びとの数が、その集団の社会的複雑性をもっともよく示している。小規模血縁集団は人口数十人程度の集団である。部族社会は数百人、首長社会は数千人から数万人、そして国家は一般に五万人以上の集団である。また、同じ分類に属する集団でも、人口が多いところは、社会的により複雑な集団を形成する傾向にある――首長社会でも、人口が多いところは、人口が少ないところよりも、より集権化され、より階級化されていて、より複雑である。 p.260 それぞれの人種が、人種ごとにきわめて多様であることを認めるにやぶさかでない。ズールー族、ソマリ族、イボ族は、互いに非常に異なっている。したがって、それらの人びとを恣意的に「黒人」という人種に分類するのは、それぞれの個性を無視することである。そしてわれわれは、アフリカに住むエジプト人とベルベル人をひとまとめにするときも、この二つの人種間の違いを無視するし、スウェーデン人を「白人」と分類するときも、他のヨーロッパ人との違いを無視する。また、黒人、白人、その他といった人種分類にしても、それぞれの間にはっきりした境界線があるわけではない。地球上の人種はどれも他の人種と混血している。つまり、人種の分類そのものが恣意的なのである。
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「なぜ現代に持つものと持たざるものがうまれたのか?」という人類史上の素朴な疑問に、人種的・個人要因的な観点からではなく地理的な観点から答えた本。 地質学・植物学・動物学・文化人類学・技術史学etcといった様々な観点から歴史の検証がなされている。焦点がふらついたり同じ主張が何度も...
「なぜ現代に持つものと持たざるものがうまれたのか?」という人類史上の素朴な疑問に、人種的・個人要因的な観点からではなく地理的な観点から答えた本。 地質学・植物学・動物学・文化人類学・技術史学etcといった様々な観点から歴史の検証がなされている。焦点がふらついたり同じ主張が何度も繰り返されることもあるが、それなりの説得力をもって自説を主張している点は感心する。 最後のエピローグの「学問ごとの検証方法の検討」の部分は常日頃の自分の問題意識とマッチするものだった。不確かではあるがそれでも歴史研究を行う意味とは?おぼろげでも「未来に仮説を持つ力」を手に入れられることがその答えかもしれない。 また今回この本を読むことで自分の地理的知識の無さが浮き彫りになった。地理の勉強をしてからまたこの本に取り組みたい。
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上巻読書中にちょうど朝日新聞書評に載ったこともあって、下巻が図書館で回ってくるまでにずいぶん時間がかかった。 上巻よりはペースがつかめたが、10日ほどかかって読了。ここまで長文であるのは、正確を期すためとはいえ、言ったことの繰り返しやくどい言い回しの文章のクセにもよる。もうちょっ...
上巻読書中にちょうど朝日新聞書評に載ったこともあって、下巻が図書館で回ってくるまでにずいぶん時間がかかった。 上巻よりはペースがつかめたが、10日ほどかかって読了。ここまで長文であるのは、正確を期すためとはいえ、言ったことの繰り返しやくどい言い回しの文章のクセにもよる。もうちょっと歯切れよくリズムある文章であれば理想的だが、内容に関しては文句なくすばらしい。
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発明が用途を生む 実際の発明の多くは、人間の好奇心の産物であって、何か特定のものをつくりだそうとして生み出されたわけではない。発明をどのように応用するかは、発明がなされた後に考えだされている。 発明が受容される4つの要因 1)既存の技術と比べての経済性 2)経済性より社会性ステ...
発明が用途を生む 実際の発明の多くは、人間の好奇心の産物であって、何か特定のものをつくりだそうとして生み出されたわけではない。発明をどのように応用するかは、発明がなされた後に考えだされている。 発明が受容される4つの要因 1)既存の技術と比べての経済性 2)経済性より社会性ステータスが重要視される 3)既存のものとの互換性 4)メリットが見分けがつきやすいか
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ジャレド・ダイヤモンド『銃・病原菌・鉄 一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』(下)を読む。 UCLA医学部教授が執筆した学際的人類史。 著者が日本語版への序文として書いた文章のタイトル、 「東アジア・太平洋域から見た人類史」が 本書のエッセンスを伝える。 家畜化、栽培できた野生...
ジャレド・ダイヤモンド『銃・病原菌・鉄 一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』(下)を読む。 UCLA医学部教授が執筆した学際的人類史。 著者が日本語版への序文として書いた文章のタイトル、 「東アジア・太平洋域から見た人類史」が 本書のエッセンスを伝える。 家畜化、栽培できた野生動植物の種を多く持ち、 技術の伝播を比較的容易にする東西に広がる大陸であることで ユーラシアは他大陸に生きる人類より優位に立った。 人種の違いより環境の違いが 征服する社会、征服される社会を決定する最大の要因になった と著者は説く。 一万三〇〇〇年の時間の物差しでモノを考えることは普段はない。 しかし、著者の複数領域の学問にまたがる洞察の成果で、 そうした視点、思考法を読者である僕たちも 手に入れることができる。 余剰食糧の確保が人類社会の発展を進め、 同時に解決困難な問題を生んだ源になったとは なんと皮肉なことだろうか。 飢えからの脱出が、次なる欲望を生み出すことに直結した。 草思社は経営困難を乗り越え、この本を発売。 以来10年、ロングセラーとなってきた。 志ある出版社の存在は、社会の共有財産である。 身銭を切って本を購入することで 僕もそうした出版社の活動を支援していきたい。
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2010 6/1読了。筑波大学図書館情報学図書館で借りて読んだ。 上巻で述べた栽培可能・家畜化可能な動植物の分布、大陸の構造といった環境要因の考察を、オセアニア、中国、アフリカ、そして新旧大陸における人口推移にあてはめて考えてみる第4部が中心。 オセアニア、中国、アフリカの考察に...
2010 6/1読了。筑波大学図書館情報学図書館で借りて読んだ。 上巻で述べた栽培可能・家畜化可能な動植物の分布、大陸の構造といった環境要因の考察を、オセアニア、中国、アフリカ、そして新旧大陸における人口推移にあてはめて考えてみる第4部が中心。 オセアニア、中国、アフリカの考察については言語学的な話も増えてきて、作者の知見の範囲はいったいどうなってるんだろうねこれ。 上巻ほどのわくわく感はなかったけど、面白かった。
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食料を備蓄出来ることにより国家が誕生したとは習ったけど、今でも狩猟採集民がいることの不思議について解き明かしてくれる。 ヨロッパ人がアメリカ大陸に植民する、何故中国人ではなかったのか?中国がずっと一つの国家であった為とうい発見は面白かった。それは日本の鎖国にも共通する。
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まったくゼロの状態から文字システムを考案することは、既存のシステムで使われているものを拝借するのにくらべ、比較にならないほどむずかしい。発話、つまり、コミュニケーションの目的で人間が発する一連の音素を最初に文字で表そうとした人は、いま、われわれがあたりまえと思っている言語学的法則...
まったくゼロの状態から文字システムを考案することは、既存のシステムで使われているものを拝借するのにくらべ、比較にならないほどむずかしい。発話、つまり、コミュニケーションの目的で人間が発する一連の音素を最初に文字で表そうとした人は、いま、われわれがあたりまえと思っている言語学的法則を、自分で見つけださなければならなかった。(p.18) 現代社会では、誰もが車輪の有用性を認めている。しかし、その認識を持たなかった社会も過去には存在した。古代のメキシコ先住民は、車輪のおもちゃを発明しながら、車輪を物資の輸送に使っていない。われわれにとって、これは信じられないことである。しかし、メキシコ先住民は、車輪のついた車を牽引できるような家畜を持っていなかったため、人力で運ぶことにくらべ、車の経済的利点は何ひとつなかったのである。(p.59) 1873年に開発されたQWERTY配列は、非工学的設計の結晶なのである。このキーボードは、さまざまな細工を施し、タイプのスピードを上げられないようにしている。頻出度の高い文字を(右利きのタイピストに、力の弱い左手をあえて使わせるために)キーボードの左側に集中させ、しかも、上中下の三列に分散させている。こうした非生産的な工夫がなぜ施されたのかというと、当時のタイプライターは、隣接キーをつづけざまに打つと、キーがからまってしまったからである。そこでタイプライターの製造業者は、タイピストの指の動きを遅くしなければならなかった。(p.60) 文字は、天然素材を観察しているうちに自然発生的に誕生するものではない。したがって発明としては土器よりもむずかしく、発祥地は世界に数カ所しかない。アルファベット文字に関しては、まったく独自に発明されたのは、人類史上、一度だけである。このほかにも発明自体が難しい例としては、水車、回転式ひき臼、歯車、磁針、風車、写真術などがある。これらは、新世界ではまったく発明されていない。旧世界でも一度か二度発明されただけである。(p.70) 結論を述べると、ヨーロッパ人がアフリカ大陸を植民地化できたのは、白人の人種主義者が考えるように、ヨーロッパ人とアフリカ人に人種的な差があったからではない。それは地理的偶然と生態的偶然のたまものにすぎない。しいていえば、それは、ユーラシア大陸とアフリカ大陸の広さのちがい、東西に長いか南北に長いかのちがい、そして栽培化や家畜化可能な野生祖先種の分布状況のちがいによるものである。つまり、究極的には、ヨーロッパ人とアフリカ人は、異なる大陸で暮らしていたので、異なる歴史をたどったということなのである。(p.296)
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西暦1500年時点における、技術や政治構造の各大陸間の格差、 人類の歴史は、征服と疫病と殺戮の歴史 歴史は、異なる人々によって異なる経路をたどったが、それは、人々のおかれた環境の差異によるものであって、人々の生物学的差異によるものではない
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上巻で、世界の格差を生んだものとして銃・病原菌・鉄、について述べられたのち、下巻では「コトバ」について深堀されていく。
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