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日暮れ竹河岸 の商品レビュー

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24件のお客様レビュー

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 浮世絵に題材をとっ…

 浮世絵に題材をとった掌小説集で2シリーズの構成になっている。「江戸おんな絵姿十二景」は、十二ヶ月の季節に対応した江戸市井に生きる女の姿がそれぞれの季節にオーバーラップして描かれる。原稿用紙にして11枚程度の掌小説であるがとても味わい深い。作者生前最後の作品集。四季折々の季節の中...

 浮世絵に題材をとった掌小説集で2シリーズの構成になっている。「江戸おんな絵姿十二景」は、十二ヶ月の季節に対応した江戸市井に生きる女の姿がそれぞれの季節にオーバーラップして描かれる。原稿用紙にして11枚程度の掌小説であるがとても味わい深い。作者生前最後の作品集。四季折々の季節の中で作者が見つめ、つむぎ出す女は、どこかに孤独感を漂わせ、或いは不運の陰を引いているが、私には、魅力のあるいい女に見える。一編一編に登場する女たちが、作者の見事な風景描写のなかに描かれている。「夜の雪」他11編。シリーズ2は広重の「

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表題作「日暮れ竹河岸…

表題作「日暮れ竹河岸」他6編は、安藤広重の「名所江戸百景」に材を取った短編集。原稿用紙にして、20枚程度の作品だが、繊細な風景描写のなかに情緒的に描かれる、日常の何の変哲もない庶民の暮らしの中で、男や女が息づいている。「飛鳥山」は、もう決して若くはない、結婚に失敗して、一人暮らし...

表題作「日暮れ竹河岸」他6編は、安藤広重の「名所江戸百景」に材を取った短編集。原稿用紙にして、20枚程度の作品だが、繊細な風景描写のなかに情緒的に描かれる、日常の何の変哲もない庶民の暮らしの中で、男や女が息づいている。「飛鳥山」は、もう決して若くはない、結婚に失敗して、一人暮らしをする女の心の寂しさを、飛鳥山の花見客の喧騒と対比して描く。「雪の比丘尼橋」は、女房に先立たれたすね者の悲哀を、雪の比丘尼橋付近を舞台に描かれ、この男がなんとも哀れに思えてくる。他に、「大はし夕立少女」「猿若町月あかり」「桐畑に雨

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江戸の人々それぞれの…

江戸の人々それぞれの生活のちょっとした場面を切り取った短編集。短いのに一本一本が心に残る。

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江戸に生きる人たちを…

江戸に生きる人たちを描いた作品集。こういうのを書かせたら著者の右に出るものはいないかも。

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2023/03/20

私は最近YouTubeを「聞いて」驚くように直ぐに眠りにつくことができている。ラジオ深夜便の朗読を聴いている。この前たまたま明け方に聞き直した。藤沢周平の『日暮れ竹河岸』の中の「江戸おんな12景」の掌編から2編のみ取り出した38分のしっとりとした女性の朗読で、ずっと虫の声が聞こえ...

私は最近YouTubeを「聞いて」驚くように直ぐに眠りにつくことができている。ラジオ深夜便の朗読を聴いている。この前たまたま明け方に聞き直した。藤沢周平の『日暮れ竹河岸』の中の「江戸おんな12景」の掌編から2編のみ取り出した38分のしっとりとした女性の朗読で、ずっと虫の声が聞こえているのだけど、佳境に入った時だけ何かしらの音楽が流れる。 『うぐいす』 井戸端でのお喋りが大好きな若い女性は亭主から「どうしてそんなに何時迄も喋れる事があるのか」と呆れられるほどだった。いつも喋り倒してはコロコロと笑っていた。けれども、自分にはそれは当たり前のことであり、世界の様々なことがそれだけ新鮮で可笑しいのものに満ちていただけのことであった。お喋りの日々は、自分の長屋玄関から聞こえてきた2歳になる子供の泣き声で終わりを告げる。息子が火に触って火傷をして亡くなったのである。亭主は怒り、近所は冷たくなり、夫婦は長屋を去り、それでも一切会話のない陰気な夫婦が2年半続いた。春が来て亭主の「子供を作らないとな」との一言で、許されたような気になる。女は井戸端に近づき、とっておきの「うぐいす」の話を始める。 女性のお喋りが生まれる世界の観方が目に見えたよう。だからこそ2年半の無音の時が、恐ろしい。けれども夫婦は別れなかった。其処にはきっと何かしらの「愛情」があったのだろう。 『明烏』 花魁の処で遊んでいた男が急に「今日はやはり帰る」と言い出す。花魁は慌てず訳を聞くと「明日は店が無くなるから、泊まるつもりだったけどその気になれなくなった」と平然という。聞けば、妻や子とも別れたという。聞けば分不相応な遊びをしたからだという。4年前花魁を見た時その美しさに、花魁に近づきたい、その為に湯水のように金を使ったと言う。実際に半年前に花魁と話をするためだけにも茶屋に払う金は100万両と尋常じゃなかった。男は平然と去っていった。勿論花魁に感謝こそすれ、非難の言葉は投げつけなかったし、花魁もそんなことは梅雨とも思いつかない。花魁は翌日男の店が取り壊されているのを見、男が夜逃げした噂を聞いた。 この一編を発表した時にアイドルへのオタク文化は無かった。けれども、日本には長い長い花柳界への貢ぎの文化があった。男は、買春の為にだけ女に貢ぐわけではないのである。男の平然ととした様、そんな男を理解できない花魁の姿が印象的だった。 この2編だけ切り取っても、長編にしてもいい様な話だった。藤沢周平の短編は総てがそうなのだが、男と女は江戸時代からこの現代まで、おそらくずっと同じことをしてきたのかもしれない。と思って仕舞うのである。

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2023/01/21

内容(「BOOK」データベースより) 江戸の十二カ月を鮮やかに切りとった十二の掌篇と広重の「名所江戸百景」を舞台とした七つの短篇。それぞれに作者秘愛の浮世絵から発想を得て、つむぎだされた短篇名品集である。市井のひとびとの、陰翳ゆたかな人生絵図を掌の小品に仕上げた極上品、全十九篇を...

内容(「BOOK」データベースより) 江戸の十二カ月を鮮やかに切りとった十二の掌篇と広重の「名所江戸百景」を舞台とした七つの短篇。それぞれに作者秘愛の浮世絵から発想を得て、つむぎだされた短篇名品集である。市井のひとびとの、陰翳ゆたかな人生絵図を掌の小品に仕上げた極上品、全十九篇を収録。これが作者生前最後の作品集となった。 令和5年1月19日~23日

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2022/07/07

『江戸おんな絵姿十二景』の括りで、江戸の十二カ月を12人の女と絡めての一風景が描かれている。 『広重「名所江戸百景」より』の括りでは、著者が選んだ7枚の広重の絵から、藤沢氏が触発されて綴った物語7編が収められている。 掌編小説は、ある意味藤沢氏の作家としての芸が最も端的に現れる分...

『江戸おんな絵姿十二景』の括りで、江戸の十二カ月を12人の女と絡めての一風景が描かれている。 『広重「名所江戸百景」より』の括りでは、著者が選んだ7枚の広重の絵から、藤沢氏が触発されて綴った物語7編が収められている。 掌編小説は、ある意味藤沢氏の作家としての芸が最も端的に現れる分野かも知れないなと、僭越ながら私は勝手に思っている。 ちょっと粋な江戸時代の人々の暮らしを切り取った小咄は、とても気持ちよく読み進む事ができた。

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2021/12/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 藤沢周平「日暮れ竹河岸」、2000.9発行。江戸おんな絵姿十二景と広重江戸名所百景よりの2部構成。おんな絵姿の方は、とても短い12話。超短編でありながら12人の女性の心の内を見事に表現。江戸百景(7話)の方は、その後どうなるのかという「余韻」を味あわせるのが著者の狙いかw。

Posted byブクログ

2020/10/21

流石に安定の内容だが、1作が余りに短いので感情移入する前に終わってしまう。 それでもすべての作品にピーンと張りつめた緊張感と言うか凛とした部分を感じるのは流石。 長編物を読みたくなった

Posted byブクログ

2018/10/25

藤沢周平の最晩年の作品らしい。絵からショートストーリー風に、あるいは点景の解説風に、作家の創造力と想像力の凄みを感じてしまう。

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