プレーンソング の商品レビュー
異なった「旋律」たちが、シンプルに 幸福に 絶妙に、共存・共鳴する 煩くなくて最高に心地よい曲みたい。猫も人も、この同じ曲のなかで 融合する。 好きー
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猫と競馬と共同生活と海。 それらについて描きながら、しかし何かが起こるわけではない、ただそこにゆるやかに流れる時間を切り取ったような小説。 そういったこの小説のあり方はほとんどのシーンでビデオカメラを回し続ける「ゴンタ」という登場人物がどういった映画を撮りたいか、といったこと...
猫と競馬と共同生活と海。 それらについて描きながら、しかし何かが起こるわけではない、ただそこにゆるやかに流れる時間を切り取ったような小説。 そういったこの小説のあり方はほとんどのシーンでビデオカメラを回し続ける「ゴンタ」という登場人物がどういった映画を撮りたいか、といったことを話す言葉の中に集約されている。これは多分保坂和志自身が映画なり小説なりに意識している部分を語らせたんだろうと思う。 「(略)でも、筋って、興味ないし。日本の映画とかつまんない芝居みたいに、(略)そんなんじゃくて、本当に自分がいるところをそのまま撮ってね。(略)生きてるっていうのも大げさだから、『いる』っていうのがわかってくれればいいって」 こういった(おそらくは保坂和志自身の)芸術論が実践として作り上げられたのがこの小説なのだろう。僕はなんだかこの独白にすごく共感してしまった。ちょうど主人公が「ゴンタの話が気持ちよくて、同感を伝えるためにたまに『ふんふん』と相槌を打ちながら聞いて」いたように。 そしてこの考え方が最も顕著にあらわれるのがクライマックスの、5人が借りたゴムボートで海に浮かぶシーン。 どうでもいいような(そしてごく自然な)会話だけが、なんの描写も一切挟まず15ページにわたって延々と続けられる。そこには何の物語もないが、「ゴンタ」の言う『いる』という感覚はすごく皮膚的に身体的に伝わってくる。ゆるりと生きる5人がそこに『いる』という感覚。それを描いた小説として、これはすごく成功してるんじゃないかと思う。
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それでも日々は続いていく。その瞬間、その瞬間を肯定して。また肯定して。頼りないけれど、否定するよりはだいぶいい。この作品からにじみ出る世界観からしばらく抜け出したくなかった。4人の海での会話が絶品。
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保坂和志さんのデビュー作だそうです。 私が読んだのはけっこうこの中央公論の文庫が出て初めてだったので、結構後でしたが・・・ ルーツがあるのかなともうのは何とも、物語が幸せに進む。 ”あったらいいな””ああ、あるある”という幸せな時間が読んでるうちに過ごせるのではないかと思います。...
保坂和志さんのデビュー作だそうです。 私が読んだのはけっこうこの中央公論の文庫が出て初めてだったので、結構後でしたが・・・ ルーツがあるのかなともうのは何とも、物語が幸せに進む。 ”あったらいいな””ああ、あるある”という幸せな時間が読んでるうちに過ごせるのではないかと思います。 で、作者のホームページ(保坂和志でぐぐれば出てくると思います)にはこの登場人物達のモデルが書いてあって、特にモデルが無くて創作しているキャラの根拠がおもしろいです。 読んだ後、確認すると良いと思います
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『カンバセイション・ピース』を読んだ時にすげぇやこの小説!と仰天した保坂のデビュー作。読んだ後にタイトルの『プレーンソング』を辞書で引いてみて深い感動がやってきた。こういう何もない先にあるものを描く小説がいいなぁ。
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保坂和志は小説家のための小説家っていう印象があるけど、この作品はまさにそんな感じ。全てを文章にした上で、読み手に表現の起伏を委ねるかのような。それはそれで淡々としていてすごく面白いのだけれど、ちょっと疲れた。クライマックスの対話シーンはスピードはないのにスピード感が感じられて良い...
保坂和志は小説家のための小説家っていう印象があるけど、この作品はまさにそんな感じ。全てを文章にした上で、読み手に表現の起伏を委ねるかのような。それはそれで淡々としていてすごく面白いのだけれど、ちょっと疲れた。クライマックスの対話シーンはスピードはないのにスピード感が感じられて良い。
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いちばん最初に買った保坂和志の作品で、個人的にはこれがいちばんしっくり来る。特別何も起こらない毎日。でも別にそれも悪くない。「最近つまんなーい」なんてことばかり言っている人たちにこそ読んでほしい。
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柴崎友香とか保坂和志とか、ひとからげにして日常系の小説が好きだけど、保坂さんにくらべると柴崎友香はやっぱり女目線でカラフルで読みやすいな、と保坂和志の本を読みながら思った。 逆を言えば、考え方とかいちいち新鮮で保坂和志もおもしろい。
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主人公の僕を中心に、茶と白縞の子猫を媒体としての人間関係。競馬を媒体とした、電話を媒体とした其々の人間関係を何気ない日常生活の中で後半を「 」でくくる会話体の中で、ひょうひょうと描く作品。
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